更新ペースが落ちるかもしれませんがこれかもよろしくお願いします
それは街の中で突然起きた出来事だった。植木の中に置かれたぬいぐるみがまるで中心に引き込まれるように収縮していき、軽快な破裂音が辺りに広がった。
「虚空爆破(グラビトン)、ですか?」
「うん、あんまり話にはなってないけど最近騒がれてるんだ
スプーンやアルミ缶といったアルミニウムを小さなカバン、ぬいぐるみに隠して爆発みたいな事を起こしてるみたい」
「うわー、小さい子どもとか巻き込まれたら大変ですね」
放課後の帰り道、ツナは校門前で待っていた佐天と共に歩きながら最近起きている事件について話した。
聞き慣れない単語に佐天が聞き返すと、ツナは軽く説明をしていく。
ぬいぐるみやカバンに隠されていると聞いて佐天は嫌な表情を浮かべて呟く。
「けど、なんであたしにその話を?普通は関係者以外は話しちゃダメですよね?」
「初春が、佐天なら噂を嗅ぎ付けて首を突っ込むかもしれないから注意して欲しいって言ってたから」
「あたしは犬かい…けれどなんでアルミ?そんな能力なんですか?虚空爆破って」
「えっと…本当なら量子変速(シンクロトロン)って能力でアルミを基点に加速して、周囲に放出するらしいよ
まぁ簡単に言えばアルミを簡単に爆弾に変える能力みたいって白井さんが言ってた」
佐天は風紀委員のツナが無関係の自分に何故、事件の情報を話したのかを尋ねる。
不思議そうにする佐天に、初春から佐天が勝手に行動しそうだからだと言われた事を話すツナ。
佐天はツッコミをいれながら返せば虚構爆破について尋ねる。ツナは白井から聞いた情報を佐天に説明していった。
「なるほど、それじゃあ一応気をつけますね…というかぬいぐるみとか気になるタイプじゃないですけどね
まぁ初春がせっかく注意しとくようにって気にかけてくれたからするだけはします」
「そうだね…あれ?そういえば、今日は初春と一緒じゃないんだ…なんか珍しいね」
「実はツナさんと一緒に帰りたくて待ってたんです…」
「…いや、それ嘘だよね?掃除当番だったから一緒にいなかったんだよね?」
「あ、バレました?」
虚構爆破について理解した佐天は、軽く笑いながら趣味では無いと語っていく。
初春について、ツナはふと気になった事があり佐天に問いかけた。
すると佐天は口元に手を当てて恥ずかしがるように言う。しかしツナは怪しむような視線を向けながら問いかけるとカラッとした態度で佐天は笑みを浮かべた。
「ビックリさせないでよ…もう」
「ツナさんなら引っ掛かると思ったんですけどねぇ…なんでわかったんです?」
「鼻の頭にチョークの粉がついてたからもしかしたらって思ってさ」
「嘘!気づかなかった!!」
ケラケラ笑う佐天にツナはため息まじりに返すと、佐天は笑いながら見破られないだろうと予想をしていたと話し、ツナに気付いた理由を尋ねる。
するとツナは自身の鼻先を指して答えた。その瞬間、佐天は慌てて腕で汚れを払うように拭いだす。
「気付いていたのなら言って下さいよ~…もう、なんで最先端の学園都市でアナログの掃除なんて…教育なんだか知らないけど納得出来ない…」
「あはは、虚構爆破もそうだけど早く帰るんだよ、いつ事件が起きるかわからないからね」
「わかってますよ…私は御坂さんみたく能力が使えたら良かったのになぁ、そしたら…何かできるのにな…」
「そうかな…俺はそうは思わないよ、能力を使えても戦う事になったら傷つく…それは嫌だな、誰も傷つかない方が俺は良い」
教えてくれなかったツナに佐天は不満を口にし、そして未だに手で学校の掃除をすることに肩を落として呟いた。
佐天に笑いかけながらツナは、気をつけて帰るように言う。すると佐天は自身の手を見つめながら能力が使えない事を悔やむ。
能力を求める佐天を見ながらツナは首を振り、傷つく事がない事を願った。
「ツナさん…」
「ゴメン、これから固法先輩と合流しなきゃならないんだ!行くね、それじゃあ!」
ツナの言葉に佐天は言葉を紡ごうとするが、この前に話を切るように言い別の方向へと走りだしその場には佐天のみが残った。
「あたしは…それでも能力が欲しいです…どれだけ傷ついても良い…能力が使えるのなら…」
走り去るツナの背中を眺めながら佐天は絞り出すように呟いた。
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「………」
「紹介するわね、沢田くん、今日の活動の手伝いをしてくれる別の支部の」
「御坂です、よろしくお願いします!」
待ち合わせにしていたファミレスの前にたどり着いたツナ、そこには固法と何故か風紀委員の腕章を付けた御坂がそこにいた。
言葉を濁すツナに、固法はにこやかに紹介し、御坂はまるで初めて会ったかのように接してきた。
「それじゃあ、沢田くん、御坂さん、最初の場所に行くわよ?」
「え、あ、はい!」(御坂、なんで風紀委員の腕章を!?)
(いや、これには深い訳があって…実は)
「二人とも?どうしたの?」
「「い、今行きます!!」」
自己紹介を終えた事で、固法は二人を先導するように歩きだす。
ツナは、固法に聞こえないように御坂に事情を尋ねる、御坂も合わせて声を潜め説明しようとするが、固法が振り返り二人に声をかけてきた。
二人は慌てて固法の後を追うことにした。
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「えぇ…初春が忘れた腕章を持っていたら間違えられた?」
「そうなのよ、固法先輩だっけ?あの人が勘違いしちゃってね
それに、いつも黒子がお姉様は一般人なのですからとか風紀委員は大変だって遠ざけるから私がどれだけやれるか証明してやろうって思ったのよ」
「…あのさ、御坂…多分だけど想像している状況にはならないと思うよ?」
移動しながらツナは御坂から事情を聞いて、思わず声をあげた。
腕を組みつつ御坂は頷けば、いつも白井から止めらるからこの機会を逃せないと言ってきた。
意気揚々としている御坂に、ツナはため息をついてから言う。しかし、御坂にあまり聞こえてはいなかった。
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コンビニ前
「それじゃあ、まずはここの掃除から始めるわよ」
「あの、ちょっと待って下さい…私たち風紀委員、ですよね?」
「?そうだけど、どうかしたの?風紀委員の研修で経験していると思ったんだけど」
「え、ああ!その…そうでしたね、忘れてました」
ゴミが散乱しているコンビニへとたどり着いた固法はちりとりと箒を手に御坂とツナに告げる。
御坂は戸惑いながら、自分達が風紀委員である事を確認する。御坂の問いかけに不思議そうな表情で研修でやった事で当たり前の筈だと返した。
すると御坂は、視線を泳がせながら取り繕うように答え掃除に取りかかりる、そして固法に隠れながらため息をついた。
「御坂さ、もしかして風紀委員がいつも事件を追っていてドッタンバッタンと悪人と戦っていると思っていたんじゃない?」
「ぎくっ!…まーさかー、風紀委員は治安維持が目的なんでしょ?これも立派な治安維持活動よね!うんうん」
(わかりやすい…あの顔は絶対に図星だったんだな…)「確かに最近は、あちこちで事件が起きているけど俺達がやる事はこういう事なんだよ」
ため息をつく御坂にツナは大きめのゴミを袋に入れつつ尋ねる、すると御坂は明らかに動揺しながら掃除に力をいれていく。
ツナは内心で呆れながら御坂に風紀委員の仕事について説明する。
「そうなんだ、黒子は全然話さないから知らなかったわ」
「多分、御坂にはあまり風紀委員に関わって欲しくないから話題にしなかった筈だよ…俺も大分しごかれたし…」
「それって、少し前にやってた短期特別研修の事?」
御坂は箒を動かしながら白井からは風紀委員の活動を聞いた事がなかったと話した。
白井の性格と御坂の性格を考えて、ツナは答えると少し前の事を思い出して身震いをした。
すると御坂は箒を止めてツナに尋ねてきた。この言葉にツナは思わず目を丸くした。
「なんで、御坂が知ってるの!?」
「その時期に黒子がボヤいていたのよ、変な事故で記憶喪失になった同僚の再指導なんてやってられないって…
まぁあれは独り言だったんだけど、なんか耳に残ってたのよね…」
「御坂、その事についてなんだけど…」
「言いふらしたりしないわよ、というか私になんの得があるのよ
ツナが記憶喪失だってバラすことに、それにあんたが私とあった時にはもう何も覚えてなかったんでしょ?
だったら別に何も変わらないわ、私が知ってるツナは今のツナだけなんだから」
白井と二人だけで行った地獄の苦行に近い研修を何故、風紀委員でもない御坂が知っているかを尋ねると御坂はさらりと教えてきた。
記憶喪失の件が知れ渡るのは不味いと考え、ツナは御坂に誰にも言わないように頼み込もうとするが、御坂は呆れた表情を浮かべて返し、御坂は笑みを浮かべながらツナの額を小突いた。
「ありがとう、あんまり大事にしたくなくてさ…」
「だから良いって、それよりも記憶喪失ってどんな感じなの?見たこと無かったから気になるのよね」
「えぇ、そのぅ…なんて言うか…えっと」
「こぉら!二人共!サボってたらいつまで経ってもおわらないわよ?」
「「は、はい!!」」
御坂に礼を言うツナ、すると御坂は軽く笑いながら記憶喪失の心境などを問いかけてくる。
実際は記憶喪失でもなんでもない為、ツナは言葉を濁していると固法がサボっている二人を叱りつけた。
二人は一緒に返事をし、掃除を再開した。すると固法の携帯が鳴りだし固法は素早く携帯に出た。
「はい、私だけどどうかしたの?…うん、わかったわ…それじゃあこっちで探してみるわ」
「何かあったんですか?固法さん」
「実はね、初春さん達がバックを落とした女の子を保護したの
それで外にいる私達に探して欲しいって連絡が入ったのよ」
固法は頷いて携帯を切る、深刻そうな表情をしている固法に、ツナが何が起きたか声をかけた。
すると固法は初春から入った連絡をツナへと伝えた。
「それってかなり不味いんじゃ!」
「そうねぇ、子供用だから落としたら犬か何かに持ってかれるかも」
「犬!!?なら、早く探さないと!掃除は終わりましたから行きますよ!」
固法の言葉を聞き、御坂が食いつくように聞いてきた。
焦る御坂に対して固法はのんびりとした口調でバックの行方を考える、御坂はすっとんきょうな声を出しキレイになったコンビニ前を指でさしてからすぐに探そうと提案をしてきた。
「そうね、わかったわ…それじゃあ沢田くん、御坂さんと二人でバックを探して貰えない?私は、交番の方に行って落とし物が無いかを確認していくわ
探す場所は初春さんが指示を出してくれる筈だから」
「「わかりました!」」
掃除が終わった事を確認した固法は、ツナ達に指示を出せば近くの交番を目指しはしりだした。
ツナと御坂もお互いに顔を見合せると、同時にツナの携帯に初春からの指示が届いた。
「まずは近くの川原からだね、なんだか大分動いたみたいだ…」
「そうね、早く行くわよ!誰かに拾われたら大変だわ!!」
「う、うんわかった!とりあえずまずはこっちだよ!」
「よし、わかったわ!」
初春から送られてきた状況と地図を確認しツナは、御坂に場所を教える。
何故か御坂は急かすようにツナに指示を促した、戸惑いながらツナは御坂を連れて川原へと向かうのであった。