とあるマフィアの平行移動(パラレルシフト)   作:梟本つつじ

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今回からレベルアッパー編をすすめていきます
その間にUAが達成しても記念はやらない方向でいきます、なんというか作者の気持ちやテンションが切れてしまいますし、読者も話が続いた方が読みやすいでしょうし


第11話a:踏み出す一歩と離れる心

学園都市 第七学区

 

 佐天から見せたいものがあると聞いて、ツナと初春、そして山本は街角にて佐天を待っていた。

 

「見せたいものってなんだろうな?」

 

「全然、検討がつかないや…」

 

「右に同じです、良いものとしか聞いていませんでしたから」

 

 呼び出した佐天本人がまだ集合場所にいない為、ツナ達は首を傾げながらどんな用事で呼び出したかを考えていた時であった。

 

「やっほーい!初春!!」

 

「ひやぁあああ!?」

 

 背後から急に姿を表した佐天が豪快に初春のスカートをめくりあげた。

いつもよりも勢いのあるスカートめくりに初春は涙目になりながらスカートを抑え、不敵に笑っている佐天にポカポカと叩き始めた。

 ツナと山本は思わず目を伏せて視線をそらした。

 

「それで、一体なんのようなんですか?」

 

「怒らない怒らない、実はね…ついに手にいれたのあの噂のアイテムを!!」

 

「「?、アイテム?」」

 

 頬を膨らませながら佐天に問いかける初春、すると頬を緩ませながら佐天は得意げに語り出した。

しかしイマイチ内容を理解していない山本とツナは疑問を浮かべながら首を傾げた。

 

「いざ、刮目せよー!」

 

「「………」」

 

「ただの音楽プレイヤーじゃないですか」

 

 意気揚々と佐天はポケットに入っていた物をツナ達へと突きつける。

しかし、それは特に変哲のない携帯に表示された音楽プレイヤーのアプリであった、ツナと山本はキョトンとする中で初春は冷めた視線で佐天を睨み付けた。

 

「いやいや、重要なのは中身、これにはすんごいの入ってんだから

けど、ここじゃなんだし、どっかファミレスでも行こうよ」

 

「呼び出したのは佐天さんじゃないですか!」

 

「まぁまぁ、立ち話もなんだしね?それに暑さで倒れたらまずいでしょ?」

 

「もう、佐天さんは勝手なんですから…」

 

 疑いの眼差しを向ける初春に佐天は慌てて音楽プレイヤーの中身が重要だと言う、呼び出しておいて更に場所を変えようと言い出した佐天に、初春は文句を口にする。

 不貞腐れる初春に佐天は笑いながら、背中を押して移動を始めた。

 

「とりあえず、俺らもついていくか、良いものってのも気になるしな」

 

「そうだね、それに…」

 

「どうした?ツナ」

 

「いや、なんでも無いよ!ほら二人を追わないと」

 

 歩き出した二人を見ながら山本は朗らかに笑いながら佐天の見つけた物を見たいという。

ツナは特に反対はしなかったが、どこか神妙な表情を浮かべていた。

 心配をする山本にツナは笑みを浮かべて答えると二人を追いかけ始める。その時、ツナの頭には今朝の記憶があった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ツナの自室

 

 それはツナが佐天から指定された向かおうとした時であった。

 

「沢田さん、少しいいですか?」

 

「どうしたのユニ?」

 

 扉に手をかけた時だった、洗い物をしていたユニがツナを呼び止める。

振り替えるとユニが不安な引っ掛かりを浮かべているのが見えた、ツナは息を飲んだ。

 

「その上手く言えないのですが…近いうちに何かあるような気がするんです…」

 

「それって何かを予知したって事?」

 

「はい、けど…私の能力はとても不安定でハッキリ見えない場合があるんです

ごめんなさい、不安にさせるような事を言ってしまって…」

 

「ああ、気にしないで!何かあるってわかってるんなら心構えくらいはできるからさ」

 

 ユニは言いにくそうな表情を浮かべながら予知に出てきた事を告げるが、あまりにも不明瞭な情報にユニは申し訳なさそうに謝る。

 肩を落とすユニにツナは苦笑を浮かべながらフォローをいれた。

その後、不安げにしているユニをなんとか言い聞かせてから家を出たツナ。

 

 佐天の良いものがどういうものか全然わからなかったがユニの言葉と関係するのかと思いながらも山本と共に佐天達の後を追うのであった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

第七学区 ファミレス

 

 ツナ達がファミレスに向けて移動し始めたのと同じ頃、ファミレスのテーブル席にて獄寺が自前のパソコンを操作しながら昨日まで調べた情報を整理していた。

 

(レベルアッパー、なんとか情報は集まってきた…けどやっぱり実物がねぇとイマイチだな)

 

「あのぅ、すみません…お客様…」

 

「あぁ?」

 

「ひぅ、すみません相席をお願いしたかったんですがよろしいですか?」

 

「相席?まぁ…別に構わねぇけど…げ…」

 

 メガネを外し、一気に襲ってきた疲労感を感じながら獄寺はレベルアッパーについて考えていた。

その時であるファミレスの店員が獄寺に声をかけてきた、長時間もの間、パソコンを見ていた為に獄寺は目を細めながら聞き返す。

 店員にはそれが威嚇に感じたらしく思わず小さく悲鳴を上げ、若干早口で要件を伝えてくる。

相手をビビらせてしまった事に若干、罪悪感を感じながら了承をするが店員の背後に見えた姿に獄寺は嫌そうな声を上げた。

そこにいたのは初対面の時から友好的ではない白井であり、その後ろには御坂と獄寺は見たことが無い白衣姿の女性が立っていた。

 

「…で、なんでファミレスに来てんだ?良いとこのお嬢様だろ、お前ら」

 

「いろいろ事情がありますの、貴方こそファミレスで何をしているのですの?」

 

「情報整理だよ、レベルアッパーのな」

 

 獄寺は向かい座った白井と隣にいる御坂に視線を向けながら尋ねると、白井は自分の隣にいる白衣の女性に視線を向けつつ答える。

そして獄寺のパソコンを視界にいれつつも質問を投げ掛ける。答える事を面倒そうにしながらも、ツナから白井や御坂に協力するように言われていた為に獄寺は白井達に自分がしていた事を話した。

 

「すご…これだけのデータ、良く集めたわね…獄寺くん、だったわよね?」

 

「まぁ、蛇の道は蛇、っていうからな…けどまぁ、これ以上は情報は無くてな

やっぱり実物を手にいれない事にはレベルアッパーの解析は進まねぇな」

 

「かなり怪しいですが情報としてはかなり有益ですわね」

 

 パソコンにまとめたデータを見て、御坂は素直に感心をする。獄寺は集めた経緯については語らずにまだ完全ではないことを話す。

獄寺のデータに白井は複雑な表情を浮かべてながらも称賛を口にする。

 

「どれ、少し確認させて貰えるかな?」

 

「んお!?そういや誰なんだコイツは…」

 

 二人が感想を言い終えた時に、今まで黙っていた女性が獄寺のパソコンに目を通し始める。

今まで言葉を発してなかった為、獄寺は驚きつつも白井に女性について尋ねる。

 

「今回の事件に協力してくれる大脳医学研究者、木山先生ですの

レベルアッパーを使用したと思われる方達に共通している事態が起きてますの」

 

「共通?」

 

「ふむ、なかなか良いデータだ…話をする前にそこにいる子は君たちの知り合いかな?」

 

 獄寺の問いかけに特に当たり障りなく答える白井、そして木山が話をしようとした時、窓の外を指でさした。

 獄寺達がその方向に目を向けるとそこには佐天が窓に張り付くようにしながら手を振る姿があった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「いやぁ!大所帯ですんません!!」

 

「まぁ、初春や沢田さんには後で伝えるつもりでしたけど…いくらなんでも多すぎですの!?」

 

 ファミレスへと入った佐天、初春、ツナ、山本は同じ席に座ろうとしたが流石に多すぎた為、男女で別れて座り席についた佐天がおおらかに言い出す。

 白井はため息混じりに呟き、改めて人数の多さにツッコミを入れた。

 

「おや、また会ったね…えっと沢田くんだったかな」

 

「ええ、まぁお久しぶりです…木山さん」

 

「なんだ?ツナ、知り合いなのか?」

 

「少し前に道案内をしたくらいだよ」

 

 騒ぐ白井を気にせずに木山はゆったりとした口調でツナに話しかける。

以前、車のキーを無くした時に振り回された事を思いだしながらツナは苦笑を浮かべた。

 

「さてと人数が増えてしまったからどこから始めた方が良いかな?なにぶん、どこまで喋ったかを忘れてしまった」

 

「この際、初めからお願いできます?私もイマイチ、ピンときませんので」

 

 木山は話を再開しようとするが事態が転々とした為、話が飛んでしまった事を話す。

すると、白井も同じよう情報をまとめる為に提案をする。

 

「良いだろう、確か同程度の露出でも何故、水着は良くて下着はダメなのかだったかな?」

 

「「いや、違います」」

 

 木山は白井の案に乗り、自分が覚えている限りの古い情報を提示するが御坂と白井は声を揃えて否定した。

 

「私達は、昨今学園都市で起きている能力が異様に向上した人間の事件にレベルアッパーという代物が関わっている事を睨み調査していますの」

 

「ああ、そうだったね…しかしそのレベルアッパーというのはどういうシステムかな?形状は?どうやって使う?」

 

「残念ながらその辺りはわかっておりませんの、ただ」

 

 咳払いをして白井は木山に向けて、事の始まりを話だした。説明を聞いてようやく思い出した木山は、白井にレベルアッパーについて詳細を求める。

しかし、都市伝説の代物でしかないレベルアッパーについて不明な点が多い事を話し、獄寺に視線を向ける白井。

 

「レベルアッパーを使用した人間はほぼ確実に能力が向上しているというが調べた結果だな

レベル0なら能力が使用できて、レベル1や2なら4まで跳ねあがっている」

 

「それなら、なんで公にならないんだろうな?学園都市って能力開発をしてんだろ?

それだけ確実なら作った奴は表彰もんだろ」

 

「残念ですが、そう上手い話ではありませんの…使用した人間は数日、いえ早ければ使用してすぐにでも意識不明の昏睡状態になってしまいますの」

 

 獄寺は集めたデータを読み上げていく。内容としてはとても優れた代物だと山本が呟くが、白井は首を振ってから使用者の状態を話せば、脇に置いていたカバンから意識不明者のリストをツナ達に見せる。

 そこにはツナが学園都市に来てから関わってきた事件の容疑者達が表示されていた。

 

「なるほど、意識不明の原因が能力が急激に上昇した反動か、レベルアッパーを使用した副作用か

まだそこは確立していないんだね?」

 

「はい、木山先生には能力向上による脳内の調査とレベルアッパーを解析をお願いしたいのです」

 

「なるほど、確かに私は大脳医学の研究者だ…話を持ち込むのは妥当だね…むしろ是非協力したい案件だ

しかしその為には現物が必要だね」

 

「あ、それなら私「それと所有者も保護しなきゃならない…そうよね?黒子」

 

 話を聞いていた木山は少し考えながら自分なりの解説をしていくと白井は頷いてから協力を要請した。

頼んできた経緯を理解した木山はレベルアッパーの解析について快く快諾した。

 そして現物を求める木山に佐天が言葉を口にしようとしたが言葉を遮るように御坂が白井に尋ねてきた。

 

「どういう事なんです?」

 

「先ほど話した副作用もそうですが、レベルアッパーには犯罪を促進させる増長作用もあるかもしれません

他にもまだ把握していない事もありますの、ですからレベルアッパーを所持している方は使用有無に関わらず拘束しようと考えていますの」

 

「佐天、どうかしたの?…そういえば良い物があるって言ってたけど…」

 

「え、いや…その…」

 

 話を聞いていた初春が内容について、白井に尋ねると白井は肩をすくめてから説明をしていく。

話を聞いている最中に、ツナは佐天の様子がおかしい事に気付き声をかける。声をかけられた佐天は言いづらそうに言葉を濁らせ、思わず側にあった飲み物を倒してしまった。

 

「おや…」

 

「うわわわ!ごめんなさい!?」

 

「ああ、気にしなくてもいいよ、濡れたのはストッキングだけだから脱げばいいだけだからね」

 

「「「「んな!?」」」」

 

 溢れた中身は木山のストッキングにかかってしまった、佐天は慌てて飲み物を拭こうとしたが木山は手でそれを制すれば、立ち上がりストッキングに手をかけて脱ぎ始める。

 いきなりの行動にツナ達は驚きの声を上げた。

 

「会った時もそうでしたが、不用意に服を脱ぐのはお止めください!!」

 

「しかし、私のような起伏に乏しい身体に劣情を催す事など無いと思うのだが…」

 

「男性は狼ですの!?それに同性でもそういう方はいますの!もう少し危機感を持ってください!!」

 

 服を脱ぎ始める木山に白井は服を着せながら怒鳴り付ける、少し困ったようにしながら木山は返答をするが、白井は食い入るように木山へ説教をぶつけた。

 白井の発言にツナや御坂は苦い表情で眺めていた、それから日が暮れるまで御坂達は木山と共に情報交換を行った。

 木山が歩いて帰るのを見送る中で、ツナは佐天の姿がない事に気付いた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

高架下

 

(やっぱり手放したくない…まだ使ってもいないし…それにやっと手にいれたコレを手放したくないよ)

 

 初春達から離れ、佐天は人目を避けるように駆けていく。そして誰もいない事を確認してからポケットから音楽プレイヤーを取り出して守るように手で包みこんだ。

 

「佐天?」

 

「うえ!?ツナさん?」

 

「急にいなくなるから心配したよ」

 

 一息ついた時、後ろから追いかけてきたツナに声をかけられた。

びっくりした佐天はすっとんきょうな声をあげるとツナは苦笑しながら追いかけてきた理由を話した。

 その言葉に佐天はホッと息をつけばいつものように笑みを浮かべる。

 

「いやぁ、風紀委員でも無いのに話を聞いていてもあたしじゃ力にはなれませんからね

御坂さんはレベル5だし、獄寺さんはレベル3でいろんな情報を集めてる、山本さんは友達を助ける為…けれどあたしは特に何もない…それなら聞く意味ないですよ」

 

「…?佐天、何か落ちてるよ?」

 

「うえ?あ、落ちゃってましたね…これ、お母さんがこっちに来る時に渡してくれたんです、おかしいですよね

科学の街でこんな願掛けみたいな事…ホントバカみたい…」

 

 頭を軽くかいてから佐天は笑い飛ばすように言うと、肩を落として力なく呟いた。

佐天に声をかけようとしたツナは佐天の足元にお守りが落ちている事に気づく。

 お守りが落ちた事に言われてから初めて気がついた佐天は拾い上げてから苦笑を浮かべて言う。

 

「そうかな、俺もあるよ、お守り」

 

「それ、手作りですか?ずいぶんと手が込んでるみたいですけど」

 

「うん、大事な場面の時に、気のせいかもしれないけど力を貰えてるような気がするんだ…だから、佐天の言ってる事はおかしくないと思うんだ」

 

 苦笑をする佐天にツナはポケットに入れていたお守りを見せる。

ツナのお守りをジッと見ながら尋ねるとツナは頷いてから大事そうに握りしめてから答える。

 

「…たまにですけど、期待が重い時あるんですよね…いつまでもレベル0で何をやってもさっぱりで…」

 

「佐天…逃げても…逃げだしても良いんじゃないかな?期待が重くて嫌なら、無理に能力に目覚める必要とか無いんじゃないかな?」

 

「ツナさん…」

 

 ツナと同じようにお守りを握り締めながら佐天は弱々しく呟く。

今にも折れてしまいそうな姿を見て、ツナは佐天に向けて不意に尋ねた。

 佐天は視線を一度泳がせてから、小さく笑いながらツナへ手を差し出してきた

 

「じゃあツナさん…あたしと逃げてくれますか?」

 

「え?」

 

「あたしはそんな大それた事にふんぎりはつきません、けどツナさんが手を引いてくれるなら逃げ出せると思うんです

行き先はわかりませんけど、ツナさんとならどこにでもいきますよ、あたし」

 

「佐天…」「なーんて!冗談ですよ!冗談!!」

 

 弱々しくも確かな言葉で佐天はツナに尋ねてきた。自分の言葉ながらツナは驚きを表情に浮かべる。

その上で、佐天は更に言葉を紡ぎツナの答えを待った。

 手を強く握り締めてからツナは考えを巡らせる、そして意を決したように顔を上げた瞬間、佐天は先ほどまでの弱々しさを打ち払うように声をあげてツナに背を向けた。

 

「んもう、悩んでるのバレバレですよ?ツナさん、そこは佐天!黙ってついてこい!!って叫んで手を引く流れなのに、ホントにダメだな~」

 

「あ、うぅ…」

 

「けど、ありがとうございます…周りはみんな能力、能力ってばかりだったから

正直初めてでした、逃げても良いって言われたの…

ツナさんって本当に変わってますよね?能力に対して欲がないっていうか、全然興味ないっていうか…」

 

 佐天は明るく振る舞いツナに向けてダメ出しを行った。

先ほどまでの雰囲気とはうって変わって快活的な佐天にツナは驚き戸惑うと、佐天は柔らかく笑みを浮かべて自分の気持ちを口にした。

 そしてツナの背後に回れば思いっきり背中をはたいた。

 

「いっつぅ!!?」

 

「それじゃあ帰りましょうよ!流石に夜道は危ないですからね」

 

 いきなり叩かれた事にツナは思いっきり悲鳴をあげると佐天は沈んだ空をさして帰りを促すと先導するように歩きだした。

 ツナも痛がりながらそれに続くのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

翌日 第177支部

 

「獄寺さんが調べた情報とネット内に上がった情報を整理してレベルアッパーの取引をすると思われる場所をピックアップしました」

 

 日が変わり白井達はレベルアッパーを確保する為に取引現場を差し押さえ、現物を直接手にいれる事を決めて、初春はまとめ上げたリストを白井とツナに手渡した。その量は二人で割ってもそれなりの量であった。

 

「結構ありますわね…」

 

「これ、全部が取引現場なの?」

 

「すみません、十代目…取引現場は毎回転々としていて、これでもだいぶ絞り込んだ方なんです」

 

 リストの多さに白井とツナが引き気味に言えば、初春と共に情報を整理していた獄寺が申し訳なさそうに頭を下げた。

神妙にツナにだけ頭を下げる獄寺に白井は苛立ちを覚えた。

 

「何故沢田さんには謝って私にはなにもないんですの!?」

 

「てめえはテレポートがあるからマシだろうが、それとも何か?頑張れとでも言ってやろうか?ァアン?」

 

「結構ですわ、この類人猿!!」

 

「二人とも落ちついて、今はレベルアッパーの方が先だよ」

 

 獄寺に食い付く白井、すると苛立ちを露にしながら獄寺は言い返した。

悪意以外込められていない労いの言葉に白井は眼光を向けながら返した。

 そんな二人の間に割って入るようにツナは仲裁に入ると二人は同時にソッポを向いた。

 

「とりあえず、私は遠い箇所からあたりますの、沢田さんは近場をお願いできます?」

 

「わかった、気をつけて」

 

「それはこちらのセリフですわ、もし取引現場を見つけても迂闊に動かないで下さいね?」

 

 息を整えてから白井はリストの中から現在地より離れた場所へ向かう事を告げる。

近場の場所を確認してからツナが頷くと、白井は普段よりも優しい言葉をかけてからテレポートで移動をした。

 

「私達は現在、レベルアッパーの取引が無いかネットワークの監視をしましょう!獄寺さん」

 

「わかった…十代目、ちょっといいですか?」

 

「なに?獄寺くん」

 

 白井が移動したのを確認してから初春はパソコンの砲に向き、獄寺に呼び掛ける。

獄寺は初春がパソコンに向かったのを確認してから小さくツナへ呼び掛ける。

 声を潜める獄寺にツナは首を傾げながら近づくと、獄寺はツナの手に一つの匣を握らせた。

 

「移動はなにかと大変なので使ってください、大丈夫です

許可は固法って奴に取りましたから」

 

「え、あ、うん!わかった!」

 

 ツナが匣について聞こうとしたが獄寺は初春に聞かれないように答えてからツナの背を押してその場を離れさせようとした。

 中身がわからないが便利な代物だと考えツナは初春から隠れるように外へと向かうのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

第177支部前

 

「一体、何が入っているんだろ?」

 

 外へと出たツナは匣を眺めながらとりあえず開口しようと考え、リングに炎を灯して匣に差し込み開口した。

すると、匣の中からオレンジ色の炎に包まれたバイクが姿を表した。

 

「これ、もしかしてエアバイク!?デザインが違うみたいだけど…」

 

《十代目、聞こえますか!?》

 

「獄寺くん!?これって一体…」

 

 重い音を立てて地面に置かれたバイクを見て、ツナは直感的に理解をした。

 それは未来での闘い、チョイスでツナ達が使った死ぬ気の炎を動力源としたエアバイクであった、しかし未来での物と違い、ちゃんと車輪がエアバイクに装着されていた。

 ツナがエアバイクに手を触れるとバイクのコンソールから獄寺の声が聞こえてきた。

 

《それは改良型のエアバイクです、俺達の世界からもってきました

ジャンニーニや入江、スパナが改造したエアバイクXカスタムです

通常のバイクと空気圧で浮くホバーへ切り替える事が出来る代物で、十代目は風紀委員で幅広く動く必要があるかもと前々から申請してました

勿論、技術を流出しないようにしたので安心してください》

 

「ありがとう、獄寺くん…使わせてもらうよ」

 

 エアバイクの説明を聞きながら、チョイスの準備でさんざん乗り回した事を思いだすツナ、そして獄寺に礼を告げてから座席に収納されたヘルメットを被りエアバイクに乗り込む。

 軽く走らせてから身体が運転を覚えている事を確認してからスピードをあげ、リストにある最初の候補地へと向かうのであった。




佐天とのやりとりを見ていたらギャルゲーとかにある一枚絵が脳内に浮かびました
読んでくれた方にもわかってもらえたのなら嬉しいかなと思います
アンケートが続きを所望する声が圧倒的だった事に驚いた作者です
なんというかありがたいですね
それでは次回は出来るだけ早めに投稿したいですが…出来るかなぁ!

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