とあるマフィアの平行移動(パラレルシフト)   作:梟本つつじ

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※はイメージBGM として仮面ライダーゴーストの『心の叫びを聞け!』を推奨します


第11話b:踏み出す一歩と離れる心

第七学区

 

 177支部を離れエアバイクにてリストに記載された箇所を回っていくツナ。

怪しげな場所はいくつか存在したが、取引現場という訳では無く捜査は難航していた。

 

「こちら沢田、一枚目のリストに記載された部分が終了したよ」

 

《お疲れ様です、次はもう少し遠くにいきますか?》

 

「そうだね、コレがあるならある程度離れられそうだ…白井さんの方はどう?」

 

《今花冠がサポートしてますが、空振りだらけだそうですね》

 

 エアバイクを止めてから最初のページを終えた段階でツナは、支部に連絡をいれる。

エアバイクに取り付けられたコンソールから獄寺の声が聞こえてきた、出された提案に頷きつつツナは白井の状況を尋ねると獄寺は同じ状況だと返した。

 花冠というのが初春の事だろうと考えながら、エアバイクのエンジンをかけて次の場所へと向かう事にするのであった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

(消した方が良いんだよね、ううん…初春達に相談した方が…でも…そうするとコレを手放さなきゃいけない)

 

 時刻は昼下がり、人気のない高架下で佐天は携帯を見つめていた。

音楽プレイヤーのアプリを起動した画面にはNoNameと表示されていたがそれこそが今、ツナ達が必死に探しているレベルアッパーであった。

 

 佐天がそれを発見したのは偶然で、音楽ストアから曲をダウンロードした時にたまたま押した項目にレベルアッパーをダウンロードできる裏サイトへの入口だった。

 すぐにレベルアッパーをダウンロードした佐天だがあまりにも簡単に手に入ってしまった事と胡散臭さから使用を躊躇っていた。

 

 更に御坂が言っていた風紀委員がレベルアッパーを所有している人間を拘束するという言葉もあり佐天は誰にも言い出す事が出来ずにいた。

 

(やっと手入れたレベルアッパー、これがあればあたしは能力者になれる…これさえあれば)

 

 まるで呪詛のように携帯を握り締めて再生のボタンを押そうとした、しかし、佐天の脳裏にツナの言葉が浮かび指を離した。

 使えば意識不明になるかも知れないそんな物を使ってまで能力者になりたいのか?佐天の中には二つの考えがせめぎあっていた。そんな時であった…

 

「お願いだ!譲ってくれよ!!レベルアッパー!!」

 

「っ!?」

 

 いきなり聞こえてきた男の声に佐天は思わず携帯を隠すが、その言葉は自分にではなく曲がり角の先から聞こえてきた。

 息を殺しながら覗き見るとそこには小太りの男と明らかに人相が悪い三人組がいた、どうやらレベルアッパーの取引現場のようで三人組の一人が札束を手にしていた。

 

「だぁから、譲ってやるよ…けどな、あいにくレベルアッパーってのは大人気でな

ちょい値上がりしたんだ、まぁほしけりゃもう十万持ってこい

そしたら渡してやるよ」

 

「だったら…また金は用意するから今支払った分は返して「あぁん?んな事するかよ!コイツは先払いとして俺達が貰ったんだ、なんで返さなきゃなんねぇんだよ!!」

 

 小太りの男に対して男達はゲスな笑みを浮かべながら説明をすると、小太りの男は金を返すように求めるが、札束を手にした男は威嚇するように吠え、小太りの男を蹴り飛ばした。

それでも小太りの男が食い下がろうとするが、男達は殴り蹴りだした。

 佐天は目を閉じその場を早足で離れていく。

 

(どうにも出来ない、あたしなんかじゃ…そうだ!風紀委員か警備員に!)「マジ!?充電切れ?なんでこんなときに…」

 

 周りに誰もいない事を確認してから佐天は通話ボタンを押そうとするが、その瞬間、画面に電池のマークが表示される。先ほどまでアプリを開いていた為に電池が切れてしまった。

 

「しょうがないよ…向こうには見るからにヤバい三人で…あたしはついこの間まで小学生だった…何かしようって方が間違い…間違いなんだから!」

 

 佐天は小太りの男を助けようと考えている自分に向けて言い聞かせるように叫ぶ。

 無能力者がどう足掻いたって敵わない。

見ない振り聞かない振りをしていれば危険は無い、助けても何か変わる訳じゃない…そう思っても考えても…

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「やめなさいよ!!」

 

「あん?」

 

 動かずにいられなかった、助ける為に行動しなきゃと考えずにいられなかった。初めて会った時にツナが身を挺して行動していた姿を見ていたから…

 

「その人、怪我してるし、そのままだと死んじゃう…それに今に警備員や風紀委員が来るからアンタ達、全員捕まるよ…だから…」

 

「ハッ!!」

 

 佐天は不良の前へと立ち小太りの男から手を引くように言う。相手の命を奪う事の懸念と警備員が来るという出任せを口にした。

 しかし風紀の一人が佐天を近くの壁へと追い詰めると佐天の顔の近くに蹴りを放つ。

 

「上等だよ!風紀委員だろうが警備員だろうが相手になってやらぁ!

けどまぁ、バカな奴だよな…知りもしない相手を助けるなんてな!」

 

「あぐぅ!?」

 

「ガキの癖に生意気だぜ、なんの力もねぇくせによ!」

 

「っ!」

 

 蹴りが撃ち込まれた場所は大きくへこみ男の力を示しているようであった。

不良は佐天の髪を掴み未だに反撃してこない事から無能力者であると判断をして、突きつけるように言い放ってきた。

 自分でもわかっていた事を改めて他人に指摘され佐天はショックを受け目を大きく見開いた。

 

「貰い物の力で横暴な振る舞いをするあなた方に彼女を非難する権利はありませんわ」

 

「なんだ、コイツ!いつからそこに!?」

 

「風紀委員ですの!暴行と傷害の現行犯で全員拘束します!」

 

 凛とした声が響き渡り、不良達は声の方向に目を向けるとそこには白井の姿があり突きつけるように腕章を見せながら不良達へ宣言をした。

 しかし風紀委員の存在に不良達は怯む所か不敵な笑みを浮かべていた。

 

「へっ、一人で俺らの相手をする気か?ガキが舐めてんのかよ!」

 

「ナメるですか、まぁ当然ですわね…相手の力量も図れない輩には気も抜けますわ

ですが散々、無駄足を踏まされた挙げ句に友人がヒドイ目にあわされたのです」

 

「ガハッ!?」

 

「今日の黒子は容赦ありませんでしてよ?」

 

 不良の一人が白井へと威嚇しながら近付き、肩を掴み力を込める。

肩を捕まれたが、スンとした表情を浮かべながら白井は笑い飛ばすように言えば不良の胸元に手を当てれば相手の身体をひっくり返して地面へと叩きつけた。

 叩きつけた衝撃で気絶した不良を見下ろしながら白井は残りの不良を睨み付けた。

白井の言葉に反応して不良が突撃をする、それと同時に近くの廃材が不良に引き寄せられていく。

 

(サイコキネシス?いえ、磁力操作?)「なんであれ、来るのがわかっているのであれば、対処は可能ですわ」

 

 相手の能力を分析しながら白井は地面を蹴り、同時に空間転移を行い廃材をかわした上で相手の懐に飛び込み、手にした鞄で相手の頬を殴り飛ばした。

 不意を突いたその一撃は相手の意識を刈り取るのに十分であった。

 

「空間転移か、ハッ!いかにもな高能力じゃねぇか」

 

「次はあなたの番ですわ!」

 

 昏倒する不良を一瞥もせずに佐天を捕まえていた不良は白井を見ながらゲスな笑みを浮かべる。

髪を払う仕草をしてから白井は不良を見据えて宣言をした。

 

 あっという間に不良を二人倒した白井を見ていた佐天は助かったと思いながらも、大能力者(白井)と無能力者(自分)の差を痛感して顔を伏せた。

 

「佐天!大丈夫!?」

 

「ツナ、さん?…なんでここに…?」

 

 意識が沈みかけた瞬間、聞きなれた声が聞こえ佐天が顔を上げるとそこには息を切らしているツナの姿があった。

 

「白井さんから佐天が不良に絡まれてるって連絡が入ったんだ」

 

「そうなんですか…けどもう大丈夫です…白井さんがすぐにやっつけて」「あぐっ!?」

 

 倒れている佐天を起こしつつツナは自分がここに来れた理由を説明をする。佐天は顔を伏せながら力なく笑みを浮かべた瞬間、鈍い音が響き渡り白井の悲鳴が聞こえてきた。

 

「白井さん!?」

 

(どういう事ですの?確かに私は背後に周り込んだ筈なのに、相手は後ろにいた…それに!)「ぐぅっ!!」

 

 壁に叩きつけられた白井にツナが声をかける、白井は咳き込みながら立ち上がり攻撃を受けた状況を思い返し不自然な点を特定しようとするが、不良は殴りかかってくる。

 白井は鞄で拳を防ごうとするが相手の攻撃はガードをした方向とは真逆の方向から白井の身体へ打ち込まれる。

 

「げほ!げほ!!」(検討違いの方向からの攻撃…何か仕掛けがある…見極めなくては)

 

「へっ、しぶといじゃねぇか!そうでなきゃ楽しくねぇな!!風紀委員!!」

 

 咳き込みながら白井はなんとか後方へ転移し混乱しかけている頭をなんとか冷静へと戻し、対策をとろうとするが相手は更に連続で攻撃を仕掛けてきた。

 防戦一方の白井に佐天は表情を曇らせる中でツナの瞳には相手の力が何なのか理解できた。

 

(アレは骸や幻騎士みたいな霧の幻覚みたいな物で、見えているのと本体は別にある…俺ならやれる筈だ…)

 

 白井の受けている攻撃のカラクリに気付き、ツナはあらかじめ用意していたXグローブと死ぬ気丸のケースを取り出す。

 自分の超直感なら闘えると思い一歩踏み出す、しかし不意に自分の手が引かれるのを感じた。

振り替えると佐天がツナの手を引いているのが目に映りこんだ。

 

「ツナさん…ダメですよ…白井さんだって苦戦する相手なんですよ?ただじゃ、すまないですよ…あたし達は見ているしか出来ないんです…」

 

「佐天…」

 

 ツナが不良に向かおうとしたのに気付いたのか、佐天は弱音と共にツナを引き留める。

白井なら、なんとかなるだろうと考えたがツナにはそのまま見ている訳にはいかなかった。

 

 

(ゴメン、獄寺くん…)「それでも、ここで動かなきゃ…俺は、自分が許せない!」

 

 平行世界の人間に深く関わってはいけないという獄寺の言葉を思い出しつつ、ツナは心の内で謝れば佐天の手を離れ白井の元へ走り出した。

 走り出すツナの背に佐天は手を伸ばすが、その手は届く事はなかった。

 

「細い癖に、ずいぶん粘るがここまでだ!」

 

「っ!」

 

 打撃を何度も浴びせられ、白井の息は上がり始めていた。不良は拳を握り締めて大きく振りかぶる、普通ならストレートが来る場面だが攻撃の軌道がわからなかった。

 重い一撃を覚悟した白井だが、その一撃が来ることはなかった。不良と白井の間に入ったツナが攻撃を止めたからだ。

 

「なに!?」

 

「ここで助けられなきゃ…俺は、死んでも死にきれない!!」

 

 腕を交差して不良の拳を止めたツナ、自分の攻撃を完璧に止められた事に不良は驚きの表情を浮かべるとツナの手が鮮やかに光、毛糸の手袋がX グローブへと変化しツナの言葉と共に額に死ぬ気の炎が灯った。

 

「沢田さん、あなた!」

 

「悪いが…コイツは俺に任せてくれ!!」

 

「ぐぅ!?」

 

 ツナの様子が変化した事に気付き白井は声を上げるが、その問いに答える事なくツナはハッキリと返せば足に力を込めて不良を押し返した。

 距離を離したのを見てからツナはXグローブに炎をまとわせて構える。

 

「今度は発火能力かよ!けどなぁ、まぐれで防いだ位で調子に乗んなよ!?」

 

「まぐれか、どうか試してみろよ」

 

 ツナの炎に対して不良は怯む事なく蹴りを放つ、その蹴りはまるで蜃気楼のように歪み、足が三本あるように見えた。

 受け止める事に躊躇う場面だがツナその中から的確に本物を見切り肘で足を止めて言い放つ。そして攻撃を防いだ事により身体が止まった不良の腹部にツナの拳が打ち込み大きく吹き飛ばした。

 

「ガハッ!?…まぐれだ!まぐれに決まってる!てめえなんかに俺の能力がわかるわけねぇ!!」

 

「お前の能力は、周囲の光をねじ曲げて相手に虚像を見せる能力…だろう?」

 

「なっ!?」

 

 腹部を抑えながら不良は起き上がり、ツナが自分の能力を見切った事を認めずに喚きたてる。

しかし、ツナの静かな指摘に不良は驚愕を顔に出す。

 

「光の屈折…だから攻撃の軌道や動きが読めなかった…けど、たった数度で読みきるなんて」

 

「どうする?…まだ、やるか?」

 

「ふざけんな…ふざけんな!ふざけんな!!なんなんだよ!てめえは

ひょっこり現れて、全部見透かしたような顔で神様気取りか!?なめんじゃねぇえよ!!」

 

 不良の能力について白井は自分の攻撃や相手からの攻撃の謎が解けた事、そしてそれを数手で見破ったツナの洞察力に驚きを隠せずにいた。

 不良の攻撃を見抜いた上で戦いを続けるかを尋ねるツナ、不良は喚き散らしながらツナに向けて殴りかかってきた。思考が追い付いていないのか不良の身体はブレるばかりで能力をマトモに使えてなかった。

 

「っ!」

 

 戦う事を止めずに向かってくる不良に、ツナは強く歯を食い縛ると炎を噴射し、不良の真上を取れば拳を顔面へと打ち込んだ。

 轟音と鈍い音が辺りに響き渡り、後にはツナの荒々しい息遣いの他には静けさだけが残った。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 日が西へと落ち始めた頃、気絶した不良達は警備員へと引き渡された。

事情を説明した白井は手の中にある音楽プレイヤーを見つめた。

 

「まさか…レベルアッパーがこのような代物だなんて…それと…」

 

 不良に金を巻き上げられていた小太りの男から話を聞き、音楽プレイヤーを回収したが白井には音を聞いただけでレベルが上がる事が信じられずにいた。

 そして、今まで記憶喪失という事で能力が使えなかった筈のツナが明らかに能力のような炎を出した事、白井にはわからない事ばかりであった。

 

 本人に詳しい話を聞こうとしたが、ツナは話せないと答えてから白井が警備員に事情を説明している最中に姿を消していた。

更に不良の被害にあっていた筈の佐天もいつの間にかいなくなっていた。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「佐天…どこにいったんだ?」

 

 一方、白井から離れたツナは佐天を追っていた。

戦いを追えて死ぬ気の炎について問い詰められた時、走り去る佐天の姿が見え白井には誤魔化しをしてから佐天が心配になり後を追いかけていた。

 現場から大分離れた辺りで、ツナは高架下に佇む佐天の姿を見つけた。

 

「佐天!ようやく見つけた…どうしたの?いきなり離れて…白井さんも心配してたみたいだから、一度病院に…「触らないで!!」…え?」

 

 佇む佐天に呼び掛けるツナ。

そして手を伸ばした瞬間、その手を払い拒絶の言葉をツナへとぶつける佐天。

 驚くツナの目には涙に濡れた佐天の顔が薄暗闇の中でもハッキリと見えた。

 

「佐、天…?」

 

「なんで…嘘を、ついていたんですか?能力が使えないだなんて…」

 

「それは…」「あたしがレベル0だからですか?いつまでも能力に目覚めないから?同情したっていうんですか!?」

 

 佐天の行動にツナは呆然と呼び掛けるが、佐天は振り絞るように尋ねてきた。

問いかけに答えようとしたが佐天は更に言葉を重ねてくる、今まで溜め込んできた物を叩きつけるようにツナへぶつけ始めた。

 

「ツナさんは、わかってくれるって思ってた…能力が無いこと…特別でもなんでもない、あたしの事をちゃんと見てくれるって思ってたのに!」

 

「佐天!俺は!!」

 

「嫌!聞きたくない!もう何も信じたくない!!もう放っておいて!!!」

 

 自分の中にあった物が崩れ佐天は自分の中にあった感情をぶつけていく。そして耳を塞ぎツナの言葉を拒絶すればツナを突き飛ばして走り去っていくのであった。




次回予告

ツナ「自分のした事が間違いだったのか、俺にはわからなかった…
そんな中で事態は加速していく…そして譲れない物があるもの同士がぶつかり合う

次回、とあるマフィアの平行移動…第12話:譲れぬもの
それでも後悔はないって俺は思ってる」


今回は少し短い上に時間がかかりました
書きたかったけど書く気が起きなかったシナリオでしたので、人が嫌われるのは見ていて嫌ですな
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