「えっと、つまり…この街の大半は学生で、しかも超能力を使う事が出来る…っていう事であってるのかな?」
「まぁざっくりですけどあってますよ、そして学園の治安を守る為に風紀委員と警備員(アンチスキル)なのです
沢田さんも風紀委員で活動するなら覚えておいてくださいね?」
病院に移動したツナは診察を待っている間に初春から学園都市について説明を受けていた。
初め聞いた時には信じられない単語ばかりでツナは戸惑っていたが、何とか理解した事を言うと初春は柔らかく笑いながら頷き捕捉を加えた。
「あのさ、超能力ってどの位あるの?ここには沢山の人がいるんだよね?白井さんや固法さんみたいな能力ばかりじゃないんでしょ?」
「そうですねぇ、私も全部は知りませんけども書庫(バンク)を調べればわかると思いますよ
ちなみに沢田さんは書庫の情報によるとレベル2の発火能力みたいですよ、ただあまり成績が良くなかったみたいでレベル1に近いみたいですね」
「俺も超能力者だったのか…」
「あ、ちなみに超能力者って呼び方はレベル5だけなんで不用意に口にしないでくださいね?人によってはかなり怒る方もいますから、沢田さんは異能力者、覚えておいてくださいね?」
学園都市の総人口、230万という数字からツナは初春に質問を投げ掛けた。
考え込む仕草をしてから初春はすべてを把握するにはデータベースを調べれなくてないけないと言う。
初春からこの世界の自分が超能力を扱えた事を知りツナは自分の手を見つめた。
すると初春が一度咳払いをしてから超能力者の名称について訂正を加える。
「レベル2、それってどうすごいの?」
「はっきりと申し上げれば一般人と大差ありませんわ、書庫のデータによれば沢田さんの能力は指先に火を灯すくらいで、言うならマッチ程度の役割ですわね」
「うへぇ…」
自身が能力を使えるというのがどのくらいの事かを尋ねると、ツナの背後に座っていた白井が退屈そうに答えた。
マッチと大差が無いと言われツナはげんなりしたように声を洩らす。
「白井さん、そういう事を言っちゃダメですよ!火を出せるなら私より凄いと思います!」
「確かに物体の温度を一定に保つ定温保存(サーマルハンド)よりは熱を操る事に関して、ですが沢田さんに軍配は上がりますわね
ただ初春の能力はそれ以上にハッキング能力の方が凄いと思いますわよ」
「ハッキング!?」
肩を落とすツナに初春はフォローを加えると、白井は保有する能力について同意をするが、初春の良さはそれでは無いと語り出す。
不穏な単語が出た事にツナは目を丸くして声を上げる。
「いやいや、全然そんなことありませんよ!
それにハッキングと言っても私のやってる事は簡単な事で、ダミーサイトに適度なレベルのセキリュティウォールをかけて、そこを突破する人を通報するくらいですから」
「え、あの…それって十分凄いんじゃ」
「沢田さん、この子はこういう子ですの深く気にすると疲れますわよ」
驚くツナに手をバタつかせて慌てながら初春は返事をした。そして苦笑をしながらいつもやっている事を口にする、だがサイトを作り上げて防壁まで構築することは決して簡単とは言わないのでは、とツナは白井に視線を向けつつ言う。
白井に至ってはもう慣れていると言わんばかりに気の抜けた回答を返した。
そうして三人が談笑しているとき、看護士がツナの名前を呼び診察室へと案内をかけてきた。
ーーーーーーーーーーーー
(ヤバい…これ凄く不味いよな)
診察室に呼ばれたツナは、最初に外傷が無いかのチェックを受けてから、CT検査とMRI検査を行い、今は診察室で医師との問診を初める事なった。
しかし、ツナの記憶喪失は口からのデマカセで精密な検査をすれば嘘だとバレてしまう。
だがそれ以上に問題がツナに判明していた。
(もう10分以上は経っているのに、効力が全然切れない!?)
それは十年バズーカによる転移の効力が無くならない事だった。
時刻は既に6時半を過ぎ7時になろうとしていた、本来の十年バズーカならば5分で効果が無くなり元の世界へ戻るのだが、そんな気配は全くなかった。
(ジャンニーニが改造した事で時間が伸びてるのか?けどそれっていつまでなんだ?)
「さて、沢田綱吉くんだったね?」
ツナの内心で情報が目まぐるしくなりつつある中で、目の前に座っているカエルような顔の医師が声をかけてきた。
「は、はい」
「僕は別に警備員ではないから、特にどうしようという訳では無いが君…記憶喪失では無いよね?」
「うぐ…」
ビクつくツナに対して穏やかな口調でカルテを手にしながらカエル顔の医師は前振りをしてから率直に尋ねてきた。
直球の問いかけにツナは反論することが出来ずに素直に頷いた。
「学園都市での外来をしているとね、能力の負荷とか暴発によって記憶が飛ぶ生徒がたまにいてね…
君の頭部にはそれらしい外傷が無い、よって記憶が無いと言うのは君の嘘という事になる
本来ならばこういうのは止めて欲しいと注意を促す所なんだが、その前に聞いて良いかな?」
「なんでしょうか?」
「君は本当に学園都市の生徒なのかね?」
「…どういう、意味ですか」
ツナが頷いたのを確認してからカエル顔の医師は、カルテを見つつ過去の症例とは違う点を上げていきツナの嘘という結論をつけ、そこから更に言葉を続けた。
「学園都市の生徒の大半が能力を使えるのは知っているね?」
「はい、レベルっていう形で分けられているんですよね?」
「そうだよ、ちなみに超能力がどう発現しているかはわかるかね?」
「いえ、わかりません」
カエル顔の医師はツナに質問を投げ掛けてくる、能力者について聞かれ初春から教えてもらった事を思い出しつつ答えるツナ。
カエル顔の医師が更に質問を続けるが、超能力の発現の仕方までは教えてもらっていないので素直に首を横に振るツナ。
「ふむ、僕は教師では無いから詳しくは教えられないが能力を使用するには脳の演算が必要になっていてね
個人の演算の精度によって能力が強弱が変わるんだよ
更に言えば、レベル1だとしても使用者の脳内では複雑な演算処理が行われている、それだけの演算を行っている脳はどんな風になっていると思うかな?」
「えっと、普通の人より大きくなっているとか」
「残念だが外れだよ、能力を使う生徒の脳神経は同年代の子供達と比べて多いんだ
だが、君の脳内をスキャンしたものだが他の能力者に比べて少ないんだよ
あぁ、少ないと言っても一般的な子供と変わらないからそこは安心して欲しい」
カエル顔の医師は少し悩むようにしてからツナに教えていき、問いかけを投げ掛ける。
いきなりの質問にツナは戸惑いがちに応えると、首を振り医師は返した。
その上でツナの脳内が学園都市の生徒としてはありえないと言いつつフォローを入れた。
「だがね、書庫のデータでは君はギリギリだがレベル2となっている
この食い違いはとてもでは無いが見過ごせなくてね、仮にこの問題に強引な正解をつけるのであれば書庫に登録された能力を使えるキミ(沢田綱吉)はある日、突然に別世界の能力の使えないキミ(沢田綱吉)と入れ替わった…そう定義した方が辻褄が合いそうだ」
「………」
「その沈黙は肯定として受けとっておくよ、さて僕から君に出せる提案が二つある
一つ、記憶喪失というのを理由に学園都市を離れる。二つ記憶喪失を演じながら学園都市に残る
という選択肢だ、僕個人としては一つ目を選んで欲しいね…この都市は数年先の技術、超能力の開発という一見希望に見える場所だが本質は違う
医者として君は離れるべきだと思うよ?」
カルテを机に置き、指でリズムを刻むように叩きながらカエル顔の医師は自分の仮説を口にした。
強引と言いつつも的中している仮説にツナは顔を伏せる、その様子に医師はツナに向けて指を二つ立てて提案をし善意からツナに学園都市を離れる事を勧めてきた。
詳しくは喋らなかったが医師の言葉の重みをツナは直感的に感じ思案を巡らせた。
重い空気の中でツナはなんとか口を開く。
「お、俺は…」
ーーーーーーーーーーーーー
「あ、沢田さん!どうでした!?」
「初春、そんな食いぎみに為さらずとも良いのでは?それでずいぶんと時間をかけていましたが何かありましたの?」
日が暮れた待合室にてツナを待つ初春と白井。ツナが診察室から出てくるを見て初春は駆け寄っていき、白井は呆れながらも診察の結果を尋ねる。
「あ、それなんだけど…傷とかは大した事はなかったみたいだから経過観察をしながら風紀委員を続けても良いってさ」
「そうなんですか、じゃあこれからよろしくお願いしますね沢田さん」
「全く、風紀委員を続けるのでしたらちゃんと覚悟を決める事ですわ
この仕事は甘くはありませんのよ?」
「まぁまぁ白井さん、そんなに脅さずに仲良くいきましょうよ」
二人の問いかけにツナは苦笑を浮かべながら医師の診断を伝える。
風紀委員を続けても良いという診断に初春は手を合わせて挨拶をし、白井は再びため息をついてからツナを睨み付けつつ尋ねると初春はほんわかなした口調で言う。
「それじゃあ私は帰りますわ、寮の門限が過ぎてしまいましたから」
「えっと、なんかゴメン俺の付き添いしたからだよね?」
「まぁ事情は説明してありますから、多少の小言で済みますわ
それよりも沢田さん!」
「は、はい」
初春の言葉に白井は特に反論せずにすれば帰る事を二人に告げる。
門限が過ぎたと聞き素直に謝るツナ、すると白井は髪を軽く弄りながら問題にならないと返した上で強くツナの名を呼ぶ。
突然の事にツナは思わず身を固くしてしまう。
「貴方を自宅に案内するという名目で初春を同伴させますが、私の友人に何かしたら末代まで後悔させてあげますわよ」
「そんな事しないよ!!?」
「そうですよ、私だって風紀委員なんですから心配する必要ないですよ!」
指を突き付けツナに詰め寄る白井。白井の気迫にツナはたじろぎながら強く返すと、すると初春は意気込むように返してきた。
初春の言葉にツナは苦笑をし、白井は額に手を当ててため息をついた。
その後、白井は空間転移で移動しツナと初春は病院の受付へ向かい歩き始めた。
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ツナが診察室から出ていき、カエル顔の医師は一人レントゲン写真を眺めていた。
そして、思考を巡らせながら先ほどのツナの言葉を思い出していた。
❪俺はこのままこの街にいます、いなきゃいけない…そんな気がするんです❫
❪ふむ、止めはしないがそれはかなり困難な選択だよ?❫
❪覚悟は、できています❫
ツナの言葉に医師は最後の確認を取るように尋ねると息を呑んでから答えた。
その表情を見て医師はそれ以上、言葉を紡ぐのを止めた。
「覚悟か…あの年代の子供が言えるとは思えない言葉と重みだったね、あれは」(それとは別に彼にはもう一つ聞いておきたかったけどね…)
ツナの言葉に受けた印象を口にしつつ医師はレントゲンの一点を見つめていた、それはツナの額の辺りであった。
(傷が無いように見えるけど僅かに射創がある、しかも一回ではなく何発も…それなのに彼の脳組織に傷は無い、不思議なものだ)「彼も計画の一部なのかな?アレイスター」
常人ではわからない程の痕跡から、なんの傷なのかを特定し医師は暗闇となっている外に目を向けて小さく呟いた。
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病院の会計を終えてツナは、初春の案内を受けて学園都市にあるマンションまで来ていた。
「着きました、ここの2階212号室が沢田さんの部屋ですよ!部屋の鍵は持ってますよね?」
「あ、うん…カバンの中に入ってるよ…というか部屋の番号まで書庫に登録されてるの?」
「学園都市の生徒は大抵、登録されてますよ、例えば過去の筆記テストや能力テストも調べればわかります
見てみます?個人情報の為、見るのは沢田さんのテストですけどね」
「いや、遠慮しとくよ…」
初春がまるでガイドのようにマンションを指してから確認をとってきた、ツナはカバンの中から部屋の鍵を取り出してふと疑問を初春に投げ掛ける。
初春は書庫から得られる情報について話すと、ツナに尋ねてみる。別世界だとしても自分のテストの結果を聞くに気にはならずツナは首を振って返した。
「それじゃあ私は帰りますね、明日は学校に案内する為に迎えに来ますね」
「いや、流石に悪いよ!ねぇ地図か何かは無いの?」
「携帯の地図アプリに登録すれば可能ですけど…学園都市の交通機関って、かなり複雑で一度間違えたら別な学区に行きますけどそれでも一人で行きますか?」
「お願いします…」
「はい!わかりました、時間は7時前には来るのでちゃんと起きていて下さいね!それじゃあお疲れ様でした!」
ツナを送り届けた為、初春も自宅に帰ると言いツナに明日について話し始めた。
年下に迎えにくると言われツナは照れ臭くなり、最初は断るが初春がにこやかに本当に一人で大丈夫かを尋ねてきた。
それを聞いてツナは項垂れながら案内を頼むと、初春は向かいに来る時間を告げてバス停に向けて走り出した。
「あ、初春!送ってくよ!」
「大丈夫でーす、それでは沢田さん、また明日!」
走っていく初春にツナは白井に言われた事を思い出すと、初春は手を振って返し丁度到着したバスに乗り込んでいった。そしてツナが駆け寄る前にバスは発車し、ツナは一人その場に残されてしまった。
「とりあえず部屋に入ろう…」
短いため息をついてからツナはマンションに向けて歩きだした、暗くて全体が見えなかったがマンションはかなりの高さで部屋の数もそれなりだった。
部屋は2階だったが疲労が溜まっていたツナは備え付けられたエレベーターへと向かいボタンを押す、しかし待っていてもエレベーターが降りてはこなかった。
「もしかして壊れてる?…はぁついてないな…階段を使おう」
何回か押しても反応しないため、ツナは階段のマークがついた扉へと向かいに重い扉を引いて開けた。次の瞬間だった、突然目の前に白い何かが飛んできたのだった。
「へぶっ!?…なんだ?ビニール袋に入った食材?」
回避することが出来ずツナは顔面で白い何かを受け止めそのまま後ろに転んでしまう。
とっさにビニール袋を抱え、痛みに耐えながら中身を確認する。
その中にはネギやジャガイモ、卵などが入っていた。
「悪い!!大丈夫か?ケガとかしてないか!?」
「え、はい…大丈夫、ですけども」
なんでビニール袋が落ちてきたのかを考えていると、階段の上から心配する声と共に人が降りてきた。
それは、ツナよりも体格が良くだいたい高校生くらいでワイシャツにスラックスを身に付けていた、そしてその頭部はくせ毛のように尖っていた。
黒い頭の男がツナの安否を確認してくると、ツナは呆気にとられながらも返事をした。
「良かったぁ、エレベーターが使えなくて階段を使おうとしたらまさか階段の上に猫がいるとは思わなくて、その尻尾をおもいっきり踏んづけて、荷物を落としちまったんだが…いやぁケガが無くて良かったよ、ほんと」
「そうだったんですね、あ!中身は大丈夫みたいですよ俺の顔がクッションになったみたいなんで…」
「マジか、特売で買ったのが初めて無駄にならなかった気がする
助かった、ありがとう!!」
「あ、あはは…」
男は落とした経緯をツナに話していき、巻き込んだツナにケガがなかった事に安堵の息をつく。
絵にかいたような不幸の連鎖にツナは苦笑を浮かべながらビニール袋を男に渡す。
中身が台無しになっていない事に男は驚きながらツナに心からの礼を言ってきた。その様子にツナは若干引き気味に笑みを浮かべるしかなかった。
「なんか礼をしたいとこだけど、悪い!今はこの戦利品を部屋に持っていかなきゃならないんだ…悪い」
「良いですよ、おんなじマンションに住んでるようだしまた別の機会にでも」
「そっか、ありがとな!んじゃその言葉に甘えさせてもらう、じゃあな!」
ビニール袋を守ってくれた事に男は礼をしようとするが、また同じ事が起こらない内に部屋に行きたいとツナに頭を下げる。
必死な様子にツナは苦笑を浮かべて、日を改めるようにと提案をすると男は嬉しそうに笑いそのまま階段をかけ上がっていった。
また転ばないかと心配をしつつツナは自分の部屋を目指す事にした。
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ツナの自室
「ただいま~…って誰もいないよな…」
部屋に着き鍵を開けて部屋に入るツナ、しかし一人暮らしをしていると事前に聞かされていた為、部屋からは何も返答はなかった。
「はぁ、疲れた…」
部屋に置かれたベッドへと飛び込みツナは深い息をついてから、天井へと身体を向けた。
「結局戻らなかったな…いつ切れるのかな?もしかして俺、ずっと一人でこのままなのか?」
《ガウ、ガウ》
「ナッツ?そっかお前、一緒に来てたもんな」
ツナが不安を口にした時、胸元のリングから動物の声が聞こえてきた。
それは自身の相棒でもあるリング化したボンゴレ匤(ボックス)、天空ライオン(レオネ・ディ・チェーリ)のナッツであった。
ツナはリングに死ぬ気の炎を灯し、ナッツを具現化させる。
「ガーウ、ガウ」
「お前、心配してくれるのか?ありがとう…そうだよな不安になっている場合じゃないよな」
自身の指を舐めてから身体を擦りつけてくるナッツを見てツナはその意図を何となく察して、礼を良い決意を改めた。
病院にて医師から選択肢を提示された際、ツナは直感的に残る事を選んだ。
今はそれが最善だと思ったからだ、きっとなんとかなる…ツナはそう考えた。
「とりあえず、今日は寝よう!ナッツ、悪いけど明日起こしてくれないか?」
「ウー…」
「なんだよ、自力でなんとかしろってか?はぁ…わかったよ…それじゃあおやすみ」
まずはする事を決めてからツナは、ナッツに目覚ましを頼むが不服そうな表情と鳴き声をあげるナッツ。
起こして貰えないことにため息をついてからツナはそのままベッドへと潜り込み目を閉じる事にした。
ナッツもツナの邪魔にならないように丸まり同じように目を閉じるのであった。
ツナが来たのはアレイスターの計画ではないです