待っていた方にはお待たせしましたとひれ伏しながら申し上げます
気が付いたら7万UAを超えている事におどろいている今日この頃です
学園都市 一般道
「リボーン!?なんでお前が…」
『チャオッス、先に言っとくがオレはお前が知ってるリボーンじゃないぞ』
いきなり現れた家庭教師にツナは慌てながら呼びかけるが、映し出されたリボーンは淡白な口調で答えてきた。
ツナはその言葉の意味がわからず唖然とする、その瞬間、エアバイクのハンドルが急に動かなくなった。
「なんだ、これ!?」
『慌てんな、今はオレがこのバイクの操作権をもってるだけだ
オレについて説明してる最中に脇見運転は危ないからな』
「これってホログラムに投影されたAI?けど、なんで赤ん坊なの?」
立て続けに起きた状況に慌てるツナに、映像のリボーンは顔色一つ変えずに答えてくる。
ツナ以上に状況が理解出来ない御坂だがリボーンの状態がどうなのかなんとなく理解できた。
『流石だな、オレの正体がわかるか、お前は御坂美琴だな?データとしては登録はしてはいるぞ』
「AIってそうなのか?リボーン!」
『まぁな、獄寺がお前に渡したディスクがあるだろ、アレがオレの本体みたいなもんだ
エアバイクの機能がお前のだけちょっと多いからな、ガイド役でオレの導入が決まった
まぁオレがモデルなのは1からAIを育てるより楽だからだ、ついでに情けないツラをしているツナを蹴り飛ばせると思ってな』
御坂の指摘にリボーンは表情を変える事なく返せば自身が機械であるかのように振る舞った。
畳み掛けるように増えていく情報に困惑しながらツナが問いかけるとリボーンはさらりと答えると、自分が存在する理由を説明していき、最期に不吉な言葉を放ってから笑みを浮かべた。
『とりあえずオレについてはこのくらいで十分だな、説明を続けても良いが今はそんな状況じゃねえだろ』
「そうだった、リボーン!さっき、スピードが出るとか言ってたけどどうすればいいんだ?
俺達は急がなきゃならないんだ!」
『慌てんな、ツナ、今からオレの言う通りに操作しろ』
「わ、わかったよ!」
ざっくりとした説明だけをしてきたAIリボーンは、ツナに向けて尋ねてくる。
リボーンについて詳しくは知りたい状況だが、初春の元へ向かう為には今はAIリボーンの言葉に乗るしかないと考えて、ツナは返した。
ツナの言葉にわかっていたと言わんばかりにAIリボーンは言葉を返し、ツナは息を呑みつつ頷く。
『まずはクラッチレバーを引いてから右グリップの根本にある赤いボタンを一回押せ』
「クラッチを引いてから、ボタンを押す…」
『目の前のタンクに大空のリングと同じマークと匣が出てくる筈だぞ』
「ああ、出てきた!次は?」
AIリボーンの言葉に従い、ツナはエアバイクを操作していく。
ボタンを押し込むとカチリと音が鳴り本来ならガソリンが注がれる部分がダイヤルのように稼働し〘Vongola〙という表示が現れ、更にオレンジ色の匣が迫り出してきた。
未だに理由は明かされないがツナは何故だか少しだけ気分が高揚している気がした。
『匣を開けるように死ぬ気の炎を注ぎやがれ』
「こうだな!」
『最後だ、そのまま鍵を開けるみたくリングを捻ろ、そうすりゃ…』
AIリボーンの言葉のままにツナは死ぬ気の炎を匣へと注入する、そしてそのまま強く手首を捻った瞬間、エアバイクが一瞬だけ浮かび上がるのを感じた。
「へっ?…んなぁあああっ!?」
「うわ、ああああっ!?」
『物凄いスピードが出るぞ』
着地と共にツナと御坂に強烈な負荷がかかりエアバイクの速度が格段に跳ね上がった。
ツナと御坂は、いきなりの加速に悲鳴を上げAIリボーンはどこ吹く風と言わんばかりにさらりと言い放った。
「リボーン!なんだよ!これは!?」
『こいつは、予めチャージしておいた死ぬ気の炎を開放してエアバイクの強化するシステムだ
ボックスギアシステム、試作段階だがなかなかだろ?今は大空属性を開放して最高速度を上げている状態だ』
「予め!?ってことは、死ぬ気の炎を入れる必要なかったんじゃないか!!」
『まぁな、元々チャージしていた分に更に上乗せされた状態だから体感速度はかなりのもんだろ
一応、忠告するが手は離すなよ?エアバイクの周りにはツナの柔の炎と似た出力の大空の炎が展開して、本来かかるはずの衝撃を緩和しているがその範囲から出たら、簡単に腕が吹き飛ぶぞ』
「こ、怖い事を言うなよ!?てかリボーン!カーブが見えてきたけどこの速度で曲がれるのか!?」
『まぁ、まず無理だなどうやっても不可能だぞ』
急激に速度を上げるエアバイクのハンドルを握りしめながらツナが叫ぶとAIリボーンは、不敵に笑いながら説明をしてきた。
AIリボーンの説明にツナは自分が言われるがままにした事が無意味だったのでは無いかと尋ねると、悪びれる様子も無くAIリボーンは答える。
更に付け加えてきた情報に対して反論すると目の前の道路が大きく曲がっている事にツナは気付く。
慌てながら尋ねる、それに対してAIリボーンはカーブを眺めながら他人事のように返した。
「じゃあ!どうしろってんだよ!?」
『ツナ、さっきと同じ手順でギアボックスを作動させろ、早くしねぇと諸共ツッコむ事になるぞ?』
「わ、わかったよ!」
相手の返し方にツナは泣き言を口にするとAI リボーンは励ます事も叱咤する事もなくただ淡々と指示を出す、ツナは言われた通りに操作を行う。
ダイヤルが回り、雨のマークが表示され青色の匣がせりでてくる。何が起こるかわからない恐怖があった、それでもツナは死ぬ気の炎を注ぎ匣を開口する。
その瞬間、緩和されながらも身体にのしかかっていた負荷が無くなり、エアバイクは速度をそのままにコーナーを曲がり走っていく。
「…すごい、簡単に曲がった?」
『高速で曲がる際にかかる負荷を雨の鎮静を利用して限りなく少なくしてコーナーをぬける
まぁ理論を説明してもいいがお前には難しいだろうから曲がり易い状態だって思っとけ
そんじゃ、そろそろ操作権を戻すぞ?』
「はぁ!?こんな凄いスピード扱えるわけないだろ!!」
『甘ったれんな、コイツの行き先はお前が決めたんだろ?なら最後までやり通しやがれ、オレ、いや本体の生徒なら出来るだろ?』
速度を維持したまま悠々と走り抜けていく事にツナが呆けているとAIリボーンが説明をざっくりとしてから自動操縦を解除すると言ってきた。
しかし出した事もない速度のエアバイクを操れるわけがないとツナが返すと、AIリボーンはきっぱりと言い放ち、その上で尋ねてきた。
AIリボーンの言葉にツナは相手が本物では無いことを改めて痛感し、その上でバイクのグリップを握りしめた。
『良い顔だ、ちっとはマシになったな
多少のサポートはしてやる、だから突っ走れ、ツナ』
「わかった!」
ツナの表情を見てから激励の言葉をかけると今まで安定していた挙動がブレ始める。
自動操縦が切れた事にツナは頷いてから答えると速度を維持するためにアクセルを開けるツナ。
「ごめん、御坂…バタバタしちゃって…」
「もうなんだか慣れたわ、けど今更降りたりしないからしっかり送り届けてよね!」
「うん、わかった!」
落ち着いて操作が出来るようになったツナは、後ろに乗る御坂に申し訳なさそうに声をかけると呆れたようにしながらも御坂は、ツナへと呼びかけた。
相手の信頼を裏切らないようにツナはアクセルを開け高速道路を進んでいくと、数百メートル先で煙が上がっているのに気付いた。
「なんだろう?事故かな?」
「違うわ!どうやら追いついたみたいよ!!」
煙の発生源についてツナは呟くと御坂はその先に見える車両から、木山達であると判断した。
エアバイクを止め、御坂は直ぐに木山の車へと駆け寄り、ツナもまたエアバイクを戻してから後を追いかけた。
「初春さん!?大丈夫?しっかりして!」
「心配いらないよ、攻撃の余波で気絶しているだけだからね」
車の中でグッタリしている初春に御坂が呼びかけているとダウナー気味の口調で木山が返してきた、口調こそ前と変わらないが彼女の背後には吹き飛んだ警備員や何かが叩きつけらて大きく凹んだ車両があった。
「木山さん!貴女がコレをやったんですか?」
「ん?ああ、そうだよ…銃を向けられたからね、正当防衛というヤツだ、けど殺してはいないはず
力加減がイマイチ効かないがそれほど大出力ではやってない、しいて言うなら重症と言った所かな…」
佇む木山にツナが警戒をしながら尋ねると木山は背後に目を向けながら冷静に状況を説明してくる。
初春に呼びかけていた御坂は、ツナの前へ周り身構える。
「驚いたわね、あんた…能力者だったの?」
「いや、私は能力開発は受けていないよ
君たちがここに来たという事は、状況は理解しているね?コレはレベルアッパーの副産物と言った所だよ
1万人の脳をネットワークで繋いだ事により、本来は一人一つしか使えない能力を私は複数、使用できるようになったのさ」
「それって、多重能力者(デュアルスキル)!?実現したっていうの!」
周りの惨状から木山が超常的な能力を使ったと予測し、御坂は警戒を強めながら尋ねる。
すると、木山は小さく首を振ってから仕組みを話していき証明するように左手に空気、右手に水を集めていく。
同時に能力を使用した事に御坂は、架空とされていた呼び名を思い出した。
「あんなモノと一緒にしないで欲しいな、アレは一個人だけで引き起こすモノだ…私の場合は、そうだね多才能力(マルチスキル)と呼ぼうかな」
「どうでも良いわ!あんたを捕まえる事に変わらないんだから!!」
木山は収束させていた空気と水を解除してから白衣に手を入れ、自身の力の呼称を口にする。
余裕の態度を取る相手に、御坂は先手必勝とばかりに電撃を打ち放つ。
しかし、電撃は木山を避けるようを地面へと直撃した。
「おや?何を驚いている?1万と言ったろ、それなら君と同じ電撃使いがいても不思議じゃない、電撃を操れるなら自分に当たらないようにするのは簡単だ
一人一人が君よりレベルが低くても数百、数千も集まれば君と並ぶ位にはなるだろう
もしかしたら、君よりも高位になるかも知れないね」
「言ってくれるじゃない…けど電撃だけじゃないわよ!!」
電撃が逸れた事に御坂が驚きの表情を浮かべていると木山は、当然のように返してきた。
そして余裕綽々と言わんばかりに御坂を挑発してくる、御坂は、近くに散らばる瓦礫を電気を使い引き寄せれば木山に向けて撃ち放った。
「なるほど、物理攻撃は有効だ…しかし」
飛来する瓦礫に木山は避ける仕草は見せずに手をかざすとコンクリートが隆起し瓦礫を簡単に打ち砕いてしまう。
「多才だと言ったろ?…さて、学園都市に七人しかいないレベル5、君に…1万の脳を統べる私を止められるかな?」
「止められる?ですって止めてやるわよ!!」
簡単に御坂の攻撃を防いだ木山は、改めて宣言をするように言葉を投げかける。
今まで事件に首を突っ込んできた御坂だが、ここまで圧倒的な相手はいなかった。それでもハッキリとした口調で返し、御坂は走り出した。
だが、木山は手も動かさずに御坂の足元のコンクリートを抉りとる。
出鼻を挫かれたが御坂は体勢を立て直し木山へと接近する、だが木山はコンクリートに亀裂を走らせると自分ごと御坂を崩落に巻き込んだ。
「御坂!?」
落ちていく御坂にツナは叫びながら、穴の方へと向かう。すると、いきなりの事に戸惑いつつも電気を柱に放ち電気磁石へと変え御坂は側面に着地していた。
そして木山も平然と瓦礫を避けて地面の上に立っていた。
「ホント、なんでもアリね…その能力…」(自分を巻き込むのもお構い無しか)
「流石のレベル5もこの程度か、拍子抜けだよ」
「なにを、っ!しまった!?」
平然としている木山に御坂は顔をしかめながら呟くと木山は呆れたようにため息をついた。
バカにされたような言い方に御坂は食いつくが、突然、電磁石となっているコンクリートの支柱がキレイに切り取られ、そのまま押し出されるようにせりあがったコンクリートの破片に巻き込まれ、地面へと落ちていった。
「もう止めにしないか?私は君や警備員と争うつもりはない…攻撃をしたのは、すまないと思っているが私には私のやらなければならない事がある、そのためには邪魔をされる訳にはいかないからだ
事が済めばちゃんと皆を解放する、そうすれば誰も犠牲にはならない筈だ…」
「ふざけんじゃないわよ!!あれだけ大勢の人を巻き込んでおいて、人の心を弄んでおいて!見過ごせる訳ないでしょ!!」
立ち上がる御坂に目を向け木山は、小さくため息をついてから停戦を呼びかけその上で被害者の回復を持ちかける。
しかし、意識不明という状況が行っている以上、御坂は回復するから見逃すという考えはなかった。
「レベル5と言っても所詮は世間知らずのお嬢様か…」
「人前で服を脱ぎだすあんたには言われたくないわ!!」
「君は、この街で行われる能力開発をどう思う?」
退く気のない御坂に対して木山は小さくため息をついてから言い放つ、相手の言葉に御坂は指をさして返すと木山は一つの質問を投げかけてきた。
「君達の能力開発が安全で人道に反していないと誰が証明した?学園都市の上層部は能力開発の核心を秘匿している、それが何かもわからずに大人達は日々、子供達の脳を開発している…」
「随分、興味深いけど…それはあんたを捕まえてから詳しく聞かせて貰うわ!!」
「悪いけど捕まる訳にはいかない、大人げないが手荒な真似をさせてもらうよ」
木山は淡々とした口調で御坂に日常的になっている能力開発の異常を語っていく。
問いかけられた事に興味を示しながらも御坂は地面に手をつけば電気をまとわせた砂鉄を巻き上げ、木山に向けて矢のように放つ。
迫る砂鉄を木山は念動力で巨大な瓦礫を動かし防ぐと、近くのゴミ箱をエアロハンドで打ち上げる。その中には大量の空き缶が詰め込まれており打ち上がった瞬間、空中へと空き缶が舞い上がった。
「グラビトン!?」
「さぁて、コレだけの爆弾を防ぎ切れるかな?」
「舐めんじゃないわよ!?」
御坂の脳裏に以前、介旅の記憶が蘇る。恐らく多才能力者の木山が使えばあの時よりも威力が跳ね上がっていると思われた。
木山の言葉と共に空き缶が一斉収縮を始めた。空中で爆発すれば御坂だけではなく上にいるツナや初春も巻き込む事になる、それを防ぐ為に御坂は電撃を放ち空き缶を余す事なく撃ち抜いていく。
収縮の途中で衝撃を受けた事により、空き缶は次々と爆発していった。
「よし!撃ち落とした!!」
「いや、これで終わりさ」
「あ…」
全て撃墜した事に御坂は安堵するが、木山の攻撃はそれだけではなかった、突きつけるように指を動かすと木山の足元から空き缶が御坂に向けて射出された。
御坂が迎撃するよりも速く空き缶は収縮し、爆発が木山の視界を覆った。
「いくら電撃使いと言えどこの不意打ちはかわせないだろう、悪いね…正々堂々というやり方をしないのが大人のやり方なんだ」
「だったら、正々堂々、俺達は貴女を止めるだけだ」
「ほぅ…」
自分に迫る衝撃を念動力で逸らせば、木山は小さく自傷気味に呟く。
その時である、煙の向こうから声が響き渡るとオレンジ色の炎が巻き上がり、煙を吹き飛ばした。そこには御坂を庇うように立つ外套を纏ったツナの姿があった。
死なない程度に威力を抑えたが、それでも威力はあると思っていたが塞がれるとは思っていなかった木山は、興味深い視線を向けた。
「まさか、君がそれほどの能力者とは思わなかったよ、沢田綱吉くん」
「木山さん、貴女を止める…じゃなきゃ俺は死んでも死にきれない!!」
黒い外套と黒いグローブそして手と額に燃え盛るオレンジ色の炎を見て木山が呟くとツナは、一世のマントを翻して言い放った。