とあるマフィアの平行移動(パラレルシフト)   作:梟本つつじ

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最近はやる気が下降し一ヶ月に一本しか上げられないことに申し訳ないと思ってます



第14話b:多才能力

高速道路 高架下

 

「死んでも死にきれない、か…君みたいな中学生が使うには些か早すぎると思うよ?」

 

 目の前に立つ少年が口にした言葉に木山は寂しげに呟く。ツナは一世のマントを解除してから拳を握りしめて対峙した。

 

「ツナ…その力…」

 

「ごめん、あの時は本当に最後のつもりで言ったんだ…でもこれは俺にとって必要なモノなんだ、ちゃんと話すから…今は任せて欲しい!」

 

 額と手に燃える炎を見て、御坂は小さく言うとツナは背を向けたまま言葉を返せば足に力を込めて地面を蹴る。その瞬間、御坂と木山の視界からツナの姿が消えた。

 

「っ!?瞬間移動…いやこれは」

 

 姿が消えた瞬間、木山の表情が驚きの物に変わるが次の瞬間、木山の背後から地面が柱のように隆起する。

そこには背後から木山を取り押さえようとしているツナの姿があった、ツナは相手の反撃に捕まる事を諦め、距離を大きく空ける。

 

「危ない危ない、動体感知からの自動防御が無ければ掴まっていたよ」

 

「多才能力の応用か…」

 

「そうだ、一つ一つでは驚異にはならないが組み合わせるとここまでのモノになる

しかし、不思議な能力の使用だな…炎をぶつけたりするのでは無く推進力として炎を噴射…額に灯しているのはコントロールが行き届いていないのか…いかんいかん、研究者としての考えをつい巡らせてしまうな…」

 

 離れたツナに向けて少しばかりワザとらしい口調で木山は返す、その言葉からツナは攻撃のしくみについて呟くと木山は隠す事無く返せば、ツナの能力について考察していくが直ぐに考えを払うように呟いた。

 

「それにしても、不意を突ける機動力があるにも関わらず、取り押さえにきたのは余裕の表れか?だとしたらスグに捨てる事を勧めるよ…この多才能力の前では意味が無いからな」

 

「俺は…貴女を傷つけたくはないです」

 

「これはまた…随分、不思議な事を言う…高レベルの能力を複数扱える多才能力者を傷つけたくないか…

それは実に傲慢だよ、それは本気を出せば私くらいならば一瞬で片付くと捉えるべきかな?」

 

 木山はツナの動きについて一つ、解せない点がある事を口にしどういう意図があるかを聞きつつも無意味だと言い放つ。

 しかし返ってきた答えは木山にとって意外な物で少しばかり苛立ちを見せながら返答をする。

 

「違う!貴女はこんな事を望んでいないんじゃないかって思う、俺には貴女が苦しんでいるように見えます!」

 

「おかしな事を言う…人の脳を回路のように中継してネットワークを構築し能力を上げる技術を開発したならどれほどのものか試す、研究者ならば当然だろう」

 

「だったら、自分を元にしなくても出来るんじゃないですか?機械を使ったり別の誰かを使う事も出来たはずだ!」

 

 ツナは身構えながらも木山の問いかけに返した、苦しんでいる、その言葉に木山は頭に手を当て言葉を振り払うように言い放つ。

しかしそれでも退くこともなくツナは返した。

 

「なるほどな、結論だけなら機械と人間は繋ぐ事は出来ない

絶えず変化をする脳波を合わせるには機械では厳しくてね人間を使うのが良かったんだよ

更に言えば私は出不精でね…あまり人の知り合いや協力者を探すのは技術を作るよりも大変なのさ、だから自分を使ったその方が観察と経過がわかり易いからな」

 

「それは本当、ですか?」

 

「疑り深いね、事実だよ…私は迷ってる暇はないんだ…やらなければならない事があるからね」

 

「それはなんなんですか?教えて下さい!皆で力を合わせればこんな事しなくて済むんじゃないですか!?」

 

 ツナの問いに木山は苦笑を浮かべながら返す、しかし目を細めながらツナは尋ねる。

納得のしないツナに木山は苦しげな表情を浮かべながら、突き放すように答える。

だがそれでもツナは食い下がるように言葉を投げかけた、その瞬間、言葉を遮るように地面が隆起した。

 それは木山がこれ以上、対話をするつもりがないという意思であった。

 

「君の言葉をあまり長々と聞いていたくはないな…これ以上は口を噤んでもらえるかな?」

 

「嫌だ」

 

「そうかい、なら…仕方ないね」

 

 手で顔を隠すように覆いながら木山は口に出してツナにハッキリと伝えるが、考えの変わらないツナにため息混じりに呟けば手近の瓦礫を複数浮かせると大砲のように撃ち放った。

 迫りくる瓦礫にツナは身構えるが、鉄屑の塊がツナの前にせりあがり瓦礫を防いだ。

 

「ったく、見てらんないっての…」

 

「御坂…」

 

 驚くツナの背後からの御坂の声が聞こえてきた、どうやら彼女が能力を使い鉄屑を盾がわりに操ったのだろう。

御坂はツナの隣に立てば軽くツナの肩を叩いてきた。

 

「あんたが相手の事をどう思おうと向こうが止まる気が無いなら、戦うしかないわ

それにいくら昏睡状態を直すって言ってても身体にどんな副作用があるかわからないでしょ?

それなら早い内が良いわ、話ならそれからでも良いはずよ」

 

「ああ、わかった…今は捕まえる事に集中する」

 

(前は気付かなかったけど、今のツナってまるで別人よね…能力が発動すると人格が変わる?ってそんな事は後ね)「ツナ、私に考えがあるからアイツを惹きつけてくれる?ついでにその場から動かさないようにしてくれるならなお良し」

 

 戦う事を躊躇っているツナに向けて、御坂はキツく言い放つ。

その言葉にツナは佐天や意識不明者の事を考え、頷いて答えれば拳を構え直した。

 普段との雰囲気の違いを改めて感じつつ御坂は指示を出した。

 

「わかった、なんとかしてみる」

 

「オッケー、頼んだわよ!ツナ」

 

「作戦会議は終わりかな?君たちの能力は大体把握した、二人がかりだろうと遅れはとらないよ」

 

「それは…「「やってみなきゃわからない!!」」

 

 出された指示にツナは思考を巡らせながら答える、御坂はその言葉を信じて返す。

それと同時に御坂が作り出した壁に大きな穴が空きその先から木山の声が聞こえてきた。

 木山の自信に満ちた言葉にツナから言葉を放ち、二人で宣言するように答えれば、二人は一斉に地面を蹴った。

 

(相手をその場から動けなくするには零地点突破が一番有効だけど、相手は死ぬ気の炎を使えないが多数の能力を使える多才能力者…なら!)「周りを囲う!!」

 

 木山に向かいながらツナは思考を巡らせる、そして取捨選択をしていき一つの方法を考えつけば、炎を噴射し木山の周りを高速で回転していく。

 ツナの炎は竜巻のように立ち昇り木山を覆い隠した。

 

「X(イクス)ストリーム!!」

 

「炎の竜巻か、下手に動けばダメージを受け、動かなくても熱気により力を削ぎ落としていく…悪くないが、この多才能力には効かないよ、?」(炎が、操れない?)

 

 竜巻を作り上げたツナは大きく後退する、炎の中に佇みながら木山はオレンジ色の竜巻を眺めながら振払おうと手を伸ばす。しかし、発火能力を行使して炎を霧散させようとするが炎の竜巻は揺らぐばかりで木山の意思を介そうとはしなかった。

 

「この炎は能力とは違う性質を持っているのか、マズいな…周囲と視界を遮られたか…」(彼らの会話から考えるなら御坂美琴が決め手をかけてくる、しかし彼女の電撃は通らないようにしている…それなら最大火力である超電磁砲か?)

 

 閉じ込められた事に対して木山は焦る事なく思考を巡らせていき、仕掛けてくる攻撃方法を予測する。

だが、その選択に関して少し疑問が残った。

 

(彼らは私から話を聞き出したい、ならば超電磁砲を使うのはあり得ないか…自慢じゃないが耐久性に関して一般人より劣っている、それなら彼らは…)

 

 ツナ達が必要としている事を考え超電磁砲の可能性を除外する。

その瞬間、瓦礫の塊が竜巻を突き破り木山へと迫った。

 

「これは電撃で固めた瓦礫か…確かにこれならば私に反らされる事は無いだろうな…だが!」

 

 迫りくる瓦礫に手を突き付ける木山、掌に空気が急激に収束していき瓦礫に向けて集めた空気を放つ。

その瞬間、瓦礫の塊が赤く発光していき音もなく崩れさった。

 

「空力使いで高密度まで集めた空気の壁さ、かなりの質量だったが局所的に大気圏レベルまで重ねた空気の層は超えられなかったようだな」

 

「そうね、だけどいい目くらましになったわよ」

 

「なに!?」

 

 瓦礫を崩した原理を説明していき、視線を前に向ける木山。しかしそこには御坂の姿は無く背後から声が聞こえ振り返ると御坂が木山の腰にしがみついてきた。

 

「アレでどうにかなるなんて考えてなかったわ、そして1万人の能力者を集めたみたいだけど、流石にあのバカみたいな能力者はいなかったようね

アイツには効かなかったけどあんたにはどうかしら、ね!!」

 

「ウ、ぐぁああああ!?」

 

 飛ばした瓦礫を隠れ蓑にし、御坂は木山の背後へと回っていた。

そして不敵な笑みを浮かべ0距離で木山にむけて電撃を放った。

 密着した事により電撃を受け流す事が出来ない木山は苦悶の声を上げた、激しく鳴り響く音と光に離れて見ていたツナは目を細めた。

 

 その時であるツナの頭の中にまるでテレビの砂嵐のように映像が流れ混んできた。

 

「っく、これは…いったい…」

 

《き……せん…い!きや…せんせい!》

 

 断片的かつ一方的に流れ混んでくる情報にツナは膝をつく、見たことも聞いた事もない子供の声が途切れ途切れに聞こえてきた。

 子供の声にツナはこの映像が木山の物である事に気付き、その声に耳を傾ける事にした。

 

ーーーーーーーーーー

 

 最初に見えてきたのは白衣の老人だった、その老人は木山に向けて教鞭をとるように言ってきた。

老人の言葉に木山は眉を潜めるが、学園都市の統括理事会からの実験の為だと言ってきた。

 そうして彼女に任せてきたのは、学園都市から様々な理由で捨てられた子供達、『チャイルドエラー』の詳細なデータを取る為に木山に教師を依頼してきたのであった。

 

 木山は最初は乗り気ではなかった、統括理事会からとはいえ子供が苦手な彼女に教師役は苦痛でしかなかった。だが子供達と関わっていく内に子供達の言葉を聞いていく内に認識が変わりだしたのがわかった。

 

 そしてある日の事である子供達は一つの実験を受ける事になった。

木山は、子供達に実験の為の処置をしていく、だが次の瞬間、目の前が歪みだし次々と研究者の言葉が流れ込み思考が埋め尽くすされそうになった。

 そして、まるで嵐のように過ぎ去ったあとに聞こえてきたのは無機質な機械音と

 

「木山くん、よくやってくれた…彼らには気の毒だが科学の発展にはつきものだよ」

 

老人の無慈悲の言葉であった、その瞬間ツナの意識は弾かれるように離れていく。

最期に映り込んだのら血塗れのベッドに残されたカチューシャだった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「っハ!?…ハァハァ…い、今のは…」

 

 現実へと引き戻されツナは膝をつく、身体に伝わる感覚からツナは思い出したように呼吸を繰り返した。

 そして、御坂達に向けて視線をむけた。

 

「今のは…?」

 

「見られたのか?…う、ぐぅう…」

 

 電撃を放った御坂にも見えていたその表情は驚愕に満ちていた。

木山は御坂の言葉から、自分の過去が多才能力を通して流れでた事に気付き電撃のダメージに苦悶を口にする。

 

「あれは…表向きにはAIM拡散力場を制御するための実験とされていた

だが実際は暴走能力の解析用誘爆実験だった…AIM拡散力場を刺激して暴走の条件を知るのが本当の狙いだったわけさ」

 

「それじゃあ、まさか!」

 

「ああ、暴走は意図的に仕組まれていたのさ…もっともこの事実がわかったのはもっと後だったがね…」

 

「人体実験…」

 

 知られた以上、隠すことなく木山は実験について語りだした。

実験の内容を聞き、御坂は感づいたように言えば木山は吐き捨てるように答えた。

 

「あの子達は実験の後も目覚める事なく今も眠り続けている!…私達はあの子達を使い捨てのモルモットにしたんだ!!」

 

「でもそれなら警備員に「23回…」え?」

 

「あの子達を回復させる方法、事故の原因を探る為のシュミレートする為に『樹形図の設計者』の使用を申請した回数だ

『樹形図の設計者』の演算能力ならあの子達を助けられる筈だ、もう一度日の下を走らせて上げられる筈だった…だが却下された!23回全て!!」

 

 木山は今まで誰に語る事も出来ずにいた言葉を吐き出すように叫んだ。

自身の悔恨と行ってきた努力を叩きつけるように言い放つ。

 

「統括理事会もグルなんだ、奴らが関わっている以上、警備員も動かない!!」

 

「だからって!こんな事!「君に何がわかる!!あの子達を助ける為なら私はなんだってする!全てを敵に回してでも成し遂げなきゃならないんだ!!っぐ!アァア!?」

 

 学園都市にいる全てが自分の敵で、残された手段がこれしかない事を叫んだ時であった。

木山は頭を抑えて苦しみだし始めた。

 

「木山さん!?」「ちょ、ちょっと!!」

 

「ネットワーク、の暴走…!」

 

 苦しみだしその場に倒れた木山にツナと御坂は、かけ寄ろうとする。

しかし倒れた木山の首から白い糸のようなものが飛び出すと一つの形を形成していく。

 

「なにあれ…」

 

「コイツは…」

 

「御坂さん!ツナさん!」

 

 白い糸はまるで赤子のような姿をつくりだした、御坂とツナがその異色の存在に圧倒される中、背後から初春の声が聞こえてきた瞬間、赤子が真っ赤に染まった瞳を開き、衝撃波のような咆哮を上げるのであった。




閲覧ありがとうございます、次回は感想でも言われておりましたので前後編を一つにまとめてみたいとおもいます

それでは、出来るだけ来月中には完成させたいです

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