とあるマフィアの平行移動(パラレルシフト)   作:梟本つつじ

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ほぼ1年以上放置していました、それでも待っている方々に答えようと考え書き上げました。

Twitterにて一応これまでの経過を書くつもりです
もしもこの先も続けて欲しい方、先が読みたい方は感想やリプをお願いします


第15話:AIMバースト

 響き渡る声、それが怒りによる絶叫か威圧する咆哮か、どちらかは理解出来なかったが目の前にいるソレが()であるとツナは察した。

 

「御坂!!」

 

「っ!」

 

 ソレの周りの大気が収縮を始めた事に気付いたツナは、相手の異様な雰囲気に気圧されている御坂へ呼びかける。

 呼びかけられ御坂が意識を戻した瞬間、大気中に氷の槍が形成され御坂に向けて放たれた。

ツナは死ぬ気の炎を噴射し御坂の側へ移動すれば彼女の身体を抱えて大きく後退した。

 

「あれは、いったいなんだ?まるでわからない…なんだか酷く歪に見える」

 

「少なくとも友好的じゃないわね、いきなり攻撃をしかけてくるからには相当ね…とりあえず降ろしてくれる?」

 

「ゴメン、咄嗟だったから…」

 

「御坂さん!ツナさん!」

 

 ある程度ツナが離れるとソレは攻撃を止めてその場を漂い始めた。

ツナは呼吸を浅く繰り返しながら超直感にて感じた感覚を口にする。

 ツナの言葉に御坂は目を潜めながら相手が敵意がある事を言えば、未だに抱えられてる状況について不満を口にしてきた。

 御坂の言葉にツナはバツの悪そうにしながら地面に下ろした時である、瓦礫を避けながら初春が声をかけてきた。

 

「初春さん!大丈夫?どこかケガしてない?」

 

「私は大丈夫です!けど、これはいったいなんですか?上から見てた限りじゃわからなくて」

 

「木山さんから抜け出たってくらいしか俺達にもわからない、うく…」

 

「ツナ!?大丈夫?」

 

 駆け寄ってきた初春に向けてケガの有無を確かめる御坂、強い口調で何もない事を返し初春は目の前に浮かぶソレについて訪ねた。

 初春の問いにツナはわかっている限りの事を返した瞬間、視界がブレだし膝をつくと同時に超死ぬ気状態が解除された。

疲弊しているツナに御坂はスグに駆け寄り呼びかけると浅く呼吸をしながらツナは軽く頷く。

 

「さっき木山さんの記憶を見た影響だと思う…初めての事だったから疲れが一気に回ったのかも」

 

「無理無いわよ、他人の深層意識の情報を見るなんて高ランクのテレパシストやサイコメントリーでもなきゃ出来ないわ、多才能力とはよく言ったものね…」

 

 激しく痛む頭を押さえながらツナは答えると御坂は同意するように返しながら深い息をついた。

レベル5の御坂でも木山の追体験を見るのは負荷がかかっていたようであった。

 その時である、浮遊していたソレの真上から無数の銃弾が降り注ぎ、表面の皮膚を抉りだした。

 

「警備員!?無事だったみたいですね!」

 

「けど、銃弾くらいじゃ…?なんか大きくなってない?」

 

 橋の上からマシンガンを構えて銃弾を放つ警備員、ソレは回避する動作をせずにその身体を傷つけていく。

御坂は銃弾によって巻き上がった砂塵に目を細めつつ観察をしていく。そしてソレが銃弾を受けた箇所から一回り大きく再生している事に気付く。

 だんだんと膨れ上がったソレは自身の一部分を伸ばし橋へと取り付いた、その時にはその身体はかなり肥大化していった。

 

「あたしは警備員を逃がすわ、多分だけどアイツを刺激するのはマズイ気がする」

 

「御坂さん、なら私も行きます!!」

 

「初春さんはツナと木山を保護して、あの人から生まれたんだから何かしらわかると思うの!」

 

 肥大化していくソレを見据えながら御坂は初春とツナに向けて告げる、風紀委員として初春は御坂についていこうとするが、御坂はソレを制して倒れている木山へと視線を向けてから二人に頼みこむと、雷撃を使い高速道路の上へと移動した。

 残された初春とツナは視線を合わせてから木山の元へと向かった。

 

「う、ぐ…私は…」

 

 倒れていた木山は、ゆっくりと目を開けてから状況を確認しようとする。そして伏していた体を仰向けにすると空中に浮かぶ半透明の物体が視界に入り込んできた。

 

「まさか、あれは…ははっ…学会に発表すればさぞ大騒ぎになるだろうな…」

 

「木山さん!!」

 

 銃撃を受けながらも肥大化していく異形の存在に木山は軽く笑えば自傷するように笑えばその存在について理解をした。

するとそこへ、ツナの声が響きわたり木山の側にツナと初春が駆け寄ってきた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、体に異常はない…が体に上手く力が入らないな…ごっそりと抜け落ちた気分だよ」

 

「木山さん、アレは何なんですか?」

 

 駆け寄ってきた初春が木山を支えるように身をよせ、安否をたしかめてくる。木山は驚きつつも自身の身体の状態ついてはなしていく。

問題がない事を確認してから、ツナは木山の身体から出てきた怪物について尋ねる。

 

「あれか…そうだな、仮に名付けるとするならばAIM拡散力場の集合体…AIMバースト…レベルアッパーによって一万人の思考から生まれたものだろうな」

 

「AIMバースト…」

 

 ツナの問いかけ木山は真上を眺めると警備員や御坂の雷撃を受けているそれの名前をつける。

木山がつけた名前をつぶやきつつツナはAIMバーストについての対策を考えるが、能力者でも研究者でもないツナにその答えは浮かばず、ツナは木山に視線を向けた。

 

「木山さん、アレを止めるにはどうすればいいですか?」

 

「なぜ私に聞く?いや生み出した張本人だものな…当然か、だが無理だ…あれは私にはどうしようもできない」

 

「どういうことですか?」

 

「あれはすでに私の制御下にないからだ、完全に独立して暴れていると思われる…もしもなんとかするのであれば」

 

 ツナの問いかけに木山は怪訝な表情を浮かべて答えるがすぐに合点がいく、しかし木山は首を横に振ってから答えた。

 何もできないと答える木山に初春が訪ねるとAIMバーストの状態を憶測を交えて説明をすると初春の手に視線を向けた。

 

「レベルアッパーのワクチンプログラム、それがあればあるいは打開策になるかもしれない」

 

「これがですか?」

 

「あれはレベルアッパーによってまとめ上げられたものだ、ならばワクチンプログラムをつかえば多少なりとも奴に影響を与えられる気がする、はずだ」

 

 初春の手の中にある小さなチップについて木山は説明をしていく。初春は手の中のチップに視線を移しながら訪ねると、少し不安げな口調で木山はにAIMバーストが発生した理由を自分なりに予測しその解決方法をは二人に提示してきた。

 

「君たちが私の言葉を信用するかどうかだが…「信じます」…ん?」

 

「木山さんは嘘は言っていないと思います、それに止めたいって考えてくれますよね?」

 

「!?」

 

 木山は自傷するように答える、するとツナはその言葉に対して間を置かずに返した。

ツナは木山をまっすぐ見据えてから言い放つ、木山はその言葉を聞き、目を丸くして驚きを浮かべた。

 

「初春、そのワクチンプログロムをなんと警備員に事情を話してそのプログラムを被害者たちに!」

 

「はい!わかり、っ!?」

 

 ツナと初春が行動をしようとした時、真上からAIMバーストの咆哮が響き渡った。三人が上を見上げると傷を回復させながらAIMバーストは高速道路とは逆の方向に向けて進み出した。

その先には大きな工場施設があり相手の進路はそちらへと向かっていった。

 

「マズイな、アレは原子発電所だ…このまま奴に暴れられては学園都市に深刻な被害が出てしまう」

 

「「!?」」

 

 AIMバーストの行先の建物を見て木山は小さく呟いた。ツナと初春は息を飲んだ。

原子施設がもしも被害を受けたのあれば学園都市の全域を巻き込むことになるレベルアッパーの被害者を治ったとしても街に被害が出てしまったのでは意味はなかった。

 ツナはAIMバーストを睨みつけながら、思考を走らせていく。AIMバーストを止める事を優先するかワクチンプログラムを警備員に届けるか。

しかし、それを考えたのは一瞬だった。

 

「初春、アイツは俺がなんとかする…だからそれを警備員に届けて欲しいんだ」

 

「な、なにを言っているんですか!レベル5の御坂さんですら倒しきれないですよ!それをツナさんだけで!「大丈夫」っ!」

 

ツナは崩れていない非常階段を指でさしてから、ポケットから匣を取り出すとボンゴレリングに死ぬ気の炎を灯した。

 

「任せて、アイツは必ず止めてみせるから…だから佐天達を頼む」

 

「わかりました、私、ツナさんを信じます!」

 

 匣を開け中から飛び出してきた死ぬ気丸のケースを手にして、ツナは確かな口調で返した。

初春は息を飲んでから応え、階段方へと駆け出した。

 

 初春の言葉を聞きツナは内心で礼を言えば死ぬ気丸を口にし、超死ぬ気モードへとなる。

 

「行くぞ、っ!!」

 

 Xグローブに炎を宿すとツナは踏み込みと同時に炎を噴射し、AIMバーストの背後から強襲をかけた。

 

ゆったりと移動していたAIMバーストだが、その動きを止めぐるりと身体の向きを変える。

しかし、その時にはツナはAIMバーストの目の前まで迫っていた。

 死ぬ気の炎を宿した拳が半透明の身体に触れようとした時であった、拳がピタリと止まってしまう。

 

「念動力か!?けど!!」

 

 拳に伝わる透明の壁のような物の正体に感づくツナ、死ぬ気の炎の出力を上げて押しきろうとするが、その瞬間背後から鈍い衝撃が走り、地面へと叩きつけられてしまう。

 

「っく!今のは、っ!?」

 

 叩きつけられたツナはすぐに起きあがり、状況を確認する。

その瞬間、肌をざわつかせる気配を感じ、その場を飛び退くとツナのいた位置に空気の弾丸が3発続けて撃ち込まれた。

 それはAIMバーストが空力使いの能力を用いた攻撃だった、ツナを空中から叩き落としたのもその攻撃であった。

 

 ツナの死ぬ気の炎を警戒してか、AIMバーストは距離を積めさせないように空気の弾丸を増やして攻撃をしかけていく、更に頭の上には氷の矢が生成され始めた。

 

「撃たせるか!なっ!?」

 

 逃げ場のない攻撃を撃ち落とそうとツナが構えた瞬間、AIMバーストは念動力にて縛り上げてきた。

動けなくしてから氷の矢を放つ、木原よりも容赦なくかつ的確に攻撃をしかけてくる状況にツナは焦りを浮かべた。

 だが、放たれた氷の矢は横からの電撃により一掃された。

 

「ツナ!」

 

「御坂、ありがとう…助かった」

 

 身を翻して地面に着地したツナの元に御坂が駆け寄ってくる。

礼をいいつつすぐに立ち上がりAIMバーストへと視線を向けた。

 

「別に良いわよ、けどどうするつもり?攻撃しても修復するし多才能力で迎撃されてちゃジリ貧になるわ」

 

「今、初春がワクチンプログラムを警備員に届けてる、そうしたら!」

 

「この状況を打開出来るって訳ね?わかったわ」

 

 ツナと同様にAIMバーストに向けて視線を向ける御坂。帯電をしながら睨み付けながら尋ねるとツナは高速道路の上に上がりきった初春を見ながら返した。

ワクチンを広げるまでAIMバーストを見据える2人、再生するにしてもその場に留める事は可能だと考えた。

 

「それじゃあ、行くわよ!」

 

「ああ!」

 

《……して……》

 

2人が攻撃を仕掛けようとした時である、突如頭の中にノイズ混じりの声が聞こえてきた、タイミングはほぼ同時でありツナと御坂は辺りを警戒しつつも見回すが、周りにはAIMバーストと自分達以外はいなかった。

 

《どうして…能力がつかえないんだ…なんで皆と、一緒じゃないんだ》《うやらましい…ねたましい…どうして僕ばかり》《レベル0だから、無能力者だからって、バカにしやがって》

 

「これって、まさか」

 

「レベルアッパーを使った人達の声?」

 

頭の中に聞こえてくる悲壮に満ちた声がだんだん、はっきりしてくる。

更に声は1つでは無く、共鳴するように複数聞こえてきた。

ツナと御坂はその声の主が今も意識を取り戻していない被害者であると気づく。

2人が動きを止めたのを見計らい、AIMバーストは無数の触手を振り上げて一斉に襲いかからせてきた。

迫り来る触手を2人は寸での所でかわすが、使用者達のテレパシーははっきりとした声になりその数も増えてきた。

 

「っく、随分やな攻撃をしてくるわね、これじゃあ集中できない!ツナ、大丈夫!?」

 

「ああ、けど…《期待が重い時あるんですよね…いつまでもレベル0で何をやってもさっぱりで…》っ!」

 

攻撃を回避しながら御坂は気休めに耳を抑えつつツナに呼びかける。使用者の声に動きを鈍らせるツナ、その時いつか聞いた佐天の言葉が響き渡る。

その時、ツナの中に1つの疑問が浮かび上がる、ワクチンを使うだけで良いのか?使用者の心が前に向いていないのであれば意味が無いのでは無いかと思った。

 

 

(けどどうすればいい?この状況でなにが出来るんだ!?)

 

拳を握りしめながら答えの無い自問をするツナ、その時に自身の死ぬ気の炎が目に入りふと案が浮かんできた。

 

(出来るのか?いや…やるんだ!)「御坂!アイツに近づきたい、援護してくれ!」

 

「ツナ!?ちょっと!」

 

自分の案に疑いを向けるが、考えている余裕や意見を求めている場合では無いと考えツナは構えながら御坂に呼びかけると、彼女の応答に答えずに炎を噴射して飛び上がる。

 

迫り来る触手を紙一重で回避しながらAIMバーストの前へと移動し顔のらしき部分に手を伸ばした、しかし触れる間際にツナの腕が念動力により止まる。

ツナは止められながらも動かそうとするが、一際強い斥力を受けて地面へと叩きつけられた。

 

「っぐ!」

 

「ツナ!!」

 

超死ぬ気モードで強化されていても高度から叩きつけられた事により、息を吐き出すツナ。

御坂はツナを助け起こそうと駆け寄るが、その好機をAIMバーストは逃さずに1本の触手を枝分かれさせ、さながら散弾銃の弾のように回避できないように広範囲にかけて一斉に放ってきた。

起き上がろうとしたツナだが、回避するよりも先に触手の散弾に呑まれてしまった。


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