お許し下さい、筆が乗ってしまったのです
元の世界で知り合いだったバジルから聞かされた言葉にツナは動揺を隠せずにいた。
この世界にボンゴレが無いかもしれないという不安があるからだ、それは自分が元の世界に戻る確率が低くなるとも言える。
「あの、沢田殿?いかがなされましたか?」
「え、あ…ううん、なんでもないよけれどそうだね能力検査は止めておくよ
誰に言えば良いかな?」
「それでしたら昼休みに保健教諭の方へ伝えておくでござる、とりあえず今は教室に向かいましょうぞ」
「うん、そうだね…」
バジルから不安そうにしながらツナに尋ねると、胸中の不安を抑え込んでからツナは心配いらないと言い、能力検査を休むことを伝える。
連絡についてはバジルが代行することを了承したツナは同じ口調ながら立場が全く違うバジルに寂しさを覚えるのであった。
その後、ツナはバジルに案内され教室へと入る。他の生徒には記憶喪失になったという事は伏せてあるという説明をバジルから受けて、ツナは普通に接してくる同級生に話を合わせるようにして同級生からの会話を回避していった。
この世界のツナも元の世界と同じで運動も勉強もダメかつ能力も微妙という事も付け加えられたダメツナという蔑称で呼ばれていた。
それから能力検査を体調不良という事で欠席をした、その結果、ツナはレベル2からレベル0という事になってしまう。
理由としてはいかなる状態でも能力を図れないのであるならレベル0として扱わなければならないからという。
バジルからは励ましの言葉を受けたがツナ個人としては能力が使えないという事で問題にならなくて良かったと思うのであった。
それから時間が流れ放課後になり、ツナは校門前で待っていた。
初春と別れる際に放課後になったらここで待つように言われたからである。
「あ、沢田さんお待たせしました」
「ううん、待っていないよ」
初春がツナに呼び掛けながらかけよってくる。首を横に振ってからツナは答え、初春の呼吸が整うのを待つが運動が苦手なのか、初春の呼吸はなかなか整う事はなかった。
「あ、大丈夫?」
「はい、大丈夫です…待たさせたら悪いかなと思いまして急いできたんですが結果的に待たせてしまいましたね
」
初春を心配し声をかけると、苦笑を浮かべながら初春は答えた。
「それでどうして校門で待ち合わせにしたの?」
「それはですね、今日は「うーいは、るーっ!!」…へっ…」
「んな!?」
初春の呼吸が落ち着いたのを確認してから、ツナは本題に取りかかる。
ツナの質問にどこか得意気に初春は話そうとするしかし話を遮るように背後から少女の声が聞こえた途端、初春のスカートが勢いよく捲られた。
いきなりの事に初春はすっとんきょうな声を出し、ツナは見えてはいなかったが顔を赤くして声を上げた。
「ひ、ひゃあああああっ!!?」
「ほうほう、今日はピンクの水玉か…うん、ナイスセンス!」
「さ、佐天さん!!い、いきなり何をするんですか!?」
「何って挨拶と確認だよ、初春が今日もパンツはいてるかなっていう「そんなこと確認しなくてもはいてますよ!!」あはは、ごめんごめん…っておやおやぁ?」
捲られたスカートを押さえて初春は悲鳴を上げた。そして捲った少女はまるで値踏みするかのようにすれば親指を立てて称賛する。
少女は初春の知り合いらしく初春は名を呼びながら抗議をした。食いかかってくる初春に佐天と呼ばれた少女は宥めるように言い、訳を話すが涙ぐみながら初春は答えた。
やりすきだかなと謝る佐天だったがツナを見つけた途端に悪い笑みを浮かべた。
「どうしたんですか?佐天さん」
「いやいや、初春が男を連れてるなんて大人になったと思ってさ~うんうん」
「ち、違いますよ!沢田さんとは風紀委員で今後一緒に行動する事になったので、お付き合いとかそんなんじゃないですから!!えぇ全く!!!」
「おおう、何もそこまで言わなくてもいいんじゃない?言っといてなんだけどあたしでも同情するよ?」
ニヤつく佐天に初春はきょとんとした表情を浮かべて尋ねると、わざとらしい態度をとって佐天は初春とツナの関係をからかう。
交際などしていないと初春がはっきりと否定したことに佐天は苦笑いを浮かべながら言う。
「あう、ごめんなさい沢田さん…」
「あはは、大丈夫だよ気にしてないから」
「?ねぇ初春、この人ってうちの学校の沢田さん?」
佐天の問いかけに気がついた初春は、直ぐにツナに頭を下げて謝る。
実際に事実であるからツナは大丈夫と答えるが、はっきりと言われた事に若干ショックは受けていた。
すると佐天はツナの制服を見て、初春に尋ねてきた。
「そうですけど…佐天さん、沢田さんのことを知っているんですか?」
「いやいや、ある意味有名人だよ?この人
勉強ダメ、スポーツダメ、おまけに能力微妙のダメツナってので、噂だと風紀委員に入ったのは友達がふざけて推薦したからだとか…初春、そんな人と一緒にいるのは止めた方が良いって」
(なんか凄い言われ方されてる気がする…まぁなんとなく予想はつくけど…)
ツナについて尋ねられ初春は不思議そうに返す。すると佐天は耳打ちをするようにツナの事を初春に伝えた。ツナにはほとんど聞こえなかったか、佐天の表情から自分のダメっぷりを話しているのだろうと思った。
「佐天の言う事はわかりました、けれど沢田さんが風紀委員になれた事は凄い事だと思います
風紀委員の訓練がツラいのは私が身を持って知ってますから!」
「初春…」
「それに今の沢田さんは記憶喪失なんですから、風紀委員としてサポートしなければいけませんからね」
「ん?ちょい待って記憶喪失って何?どういう事」
「あ…」
佐天の言葉に初春は、ツナが風紀委員として働けているのは十分誇れる事だと言う。
初春の言葉にツナは自分の事では無いけれど嬉しさを感じた。
だが次の瞬間、初春はうっかり口を滑らせて記憶喪失の事を口にしてしまった、佐天もその言葉を聞き逃す事無く尋ねてくるのであった。
ーーーーーーーーーーーーー
「なるほどねぇ、頭を打って記憶喪失…そんな漫画みたいな事あるんですのねぇ」
「もう、笑い事じゃないですよ?佐天さん」
「あはは、自分でもそう思うよ」
校門では人目がつくという事もあり、初春はツナと佐天を連れて街へと出て学生が少ないのを見ながらツナの事を話した。
話をきいた佐天はツナに笑みを見せながら問いかけると不謹慎だと初春は注意をする、ツナは軽く笑いながら佐天の言葉に同意を示す。
「あれ?そういえばうちの学校、今日は能力検査でしたけど受けたんですか?」
「ちょっと、体調が優れなくてさ…検査は受けてないんだ、そのおかげでレベル0だってさ」
「そうなんですか、まぁテストを受けても私みたいにレベル0ってのもいますから、気にしない方が良いですよ?」
佐天は少し気になった事があり、ツナに質問を投げ掛ける。ツナは苦笑を浮かべながらレベルが下がった事を話す、すると佐天は深く気にしなくていいと指で丸を作ってフォローを入れた。
口調は軽いが佐天の表情がどこか暗い事にツナはなんとなく感じた。
「んで初春はレベル上がったの?」
「ふぇっ!?このタイミングで聞きます?…私はレベルそのままの1でしたよ…」
「初春の能力でレベルが上がったらどうなるんだろう?」
「んー…寒い中でも体温が下がらないとか?
まぁそれはおいといて、なんで初春は沢田さんと待ち合わせしてたの?」
気まずい空気を変えるように佐天は初春に話題を振る、いきなりの問いかけに初春は慌てながらレベルが変わっていない事を話す。
初春の能力についてツナは思いだしながら、疑問を口にする。その疑問に本人では無く佐天が答えそのまま話題をすり替えてしまう。
「佐天さんから話題を振ったのに…今日は沢田さんに風紀委員の仕事を教えようと思ってたんです、だけど!!」
「「だけど?」」
自由奔放な佐天に、ため息をついてから初春は今日やろうとした事を話していくが意気揚々と急に声を上げた。
穏やかな初春とは思えない変貌にツナと佐天は声を揃えて尋ねた。
「実は今日、白井さんからあの御坂さんを紹介して貰える事になったんです!なのでごめんなさい、沢田さん!」
「えっと…ミサカさんて?」
「常盤台が誇るレベル5ですよ、初春ってお嬢様学校に憧れてる上にミーハーなとこあるんですよねぇ」
「あ、佐天さんと沢田さんも一緒に御坂さんに会いにいきませんか?このまま帰るのは勿体ないですって!」
初春は瞳を輝かせながらツナと佐天に訳を話し始めた。しかし御坂という名前にいまいちピンと来ていないツナは佐天に問いかけると、佐天は声を潜めながら説明をしてくれた。
意気揚々としていた初春は興奮気味に二人に同行するのを薦めてくる。
「え、あたしは遠慮したいかな…常盤台でしかもレベル5でしょ?絶対小馬鹿にされるのがオチだって」
「俺もかな、女の子の集まりに男子が混ざるのは流石に不味いし」
「二人とも、そんな弱気じゃダメですよ!さぁさぁ!行きましょう!!」
「ちょっと、初春!?」
「うわわっ」(意外と力が強っ!?)
乗り気な初春とは対照的に佐天とツナは遠慮がちに断る、だがそんな二人の手を引き初春は白井との待ち合わせ場所へと向かいだした。
か細い腕からは計り知れない勢いに佐天とツナはなすがまま引かれていくのであった。
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初春に連れられツナと佐天は、白井と待ち合わせている場所まで連れてこられた。
待ち合わせ場所にはすでに白井と同じ制服を着た短髪の少女が待っていた。
(あれ意外にもお嬢様っぽくないですよね、あの人が御坂さんですかね?)
(多分、白井さんも一緒にいるみたいだし、そうだと思う)
「初春、確かに私はお姉様を紹介する約束はしましたが、他にもいるとは聞いてませんでしてよ?」
おしとやかというより快活的な雰囲気の少女を見て、佐天は第一印象をツナにひっそりと尋ねる。
同じく声を小さくしてツナは返すと、目の前にいた白井が咳払いをしてからツナと佐天、主にツナを睨み付けて聞いてきた。
(今日びお姉様とは、流石お嬢様学校!)
(そこ感心するとこ!?)
「ええっと、はじめまして!白井さんと同じ風紀委員の初春飾利です!本日はお会い出来て光栄です!」
(見るからに緊張してる!?)「えっと、沢田綱吉です…白井さんと初春と同じ風紀委員です、レベル5の人に会ってみたくて初春に無理を言ってきました」
(楽しみにしてた本人が一番ガチガチじゃん)「どーも、佐天涙子でーす、初春のクラスメイトでレベル0です、よろしくお願いしまーす」
「佐天さん、流石にそれは!?」
白井の御坂への呼び方を聞いて佐天は拳を握って納得し思わずツッコミを入れるツナ、そして白井に名を呼ばれた初春だが、目の前にいる御坂に対して緊張しっぱなしで声が聞こえていないようであった。
見るからに緊張してる初春に負担をかけないようにツナは着いてきた理由を話すと、白井の目が鋭くなったような気がした。
そんな中で佐天はどこか投げやりな態度で御坂に挨拶をした。
初春が嗜めようとするが、御坂は特に気にする様子はなかった。
「初春さんに佐天さん、それに沢田くんね…私は御坂美琴、よろしくね」
「え、あ、はい…」
「はえ?」
頷くような仕草をしてから御坂は、三人の名前を呼び自己紹介をした。
余りにも意外な行動に、初春と佐天、ツナは呆気にとられていた。
そんな中で白井はやれやれとため息をついていた。
「とりあえず立ち話もなんだしゲーセンにでもいかない?」
「ゲーセン?お嬢様なのに!?」
「?変かな?私はよく行くんだけど」
「お姉様、流石に常盤台生としてあまり軽率な行動はやめてください」
「いいじゃない、それに男子もいるんだしカフェに行くより楽しめるわよ?よし、それじゃあ行くわよ!」
御坂は場所を変えようと提案をしてきた。そこは余りにも意外な場所で佐天は目を丸くしながら問いかけると御坂ははにかにながら、いつも行く場所だと教えてきた。
すると白井が腰に手を当てて、御坂に注意を投げ掛ける、しかし御坂はその言葉をどこ吹く風のようにあしらい先導するように進みだした。
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「なんだか、意外過ぎて言葉も出ませんね…」
「そうだね、あんな普通に接してくるとは思わなかったよ」
御坂の隣に初春と白井がつき、佐天とツナはその後ろに続きながら二人は御坂の印象について話していた。
二人が話す前で初春が御坂に質問をしながら、白井にどやされている。
「そういえば、白井さんはさん付けで初春は呼び捨てなんですね、沢田さんって」
「ああ、うん…昨日、どう呼んだら良いって聞いたら初春は年下だから呼び捨てにしてくださいって言われてさ」
「初春らしいですね、それじゃああたしも佐天で良いですよ、初春と同じ学年なんで
一応、年上なんで敬語は無くしませんけど」
「一応…」
前を歩く三人を眺めながら佐天は、ツナに質問をする。呼び方について聞かれツナは昨日あった事を話していく。
初春の意見に佐天は笑みを浮かべつつ、ツナに自分の呼び方を教える。
最後に付け足された言葉にツナは苦笑を浮かべる。
「それで白井さんはどうだったんですか?」
「見ず知らずの人に名前を呼ばせる気はないってさ後、まだ信用しきれていないからさんは付けて欲しいって言われた」
「なるほど、お嬢様学校ですし男子には警戒しますもんね」
「当然ですわ」
「「っ!!?」」
それから白井の呼び方ついて尋ねるとツナは苦い顔をしながら答えた。
その理由に佐天が納得した時、ツナの隣から白井の声がした。二人が目を向けると先ほどまで御坂の隣にいた白井がツナの隣に立っていた。
「私はお姉様の露払いをしておりますの、佐天さんは問題ないですが…沢田さん?
不用意にお姉様に近づいた場合はこの黒子が許しませんわ、主に30mは離れて下さいまし!」
「それってさっさとどこかに行けって事!?」
「そうと言っていますわ、もしもゲーセンに行ってお姉様とあんな事やこんな事をしようものなら、どうなるかわかりますわよね?」
「いや、どんなことだよ!?」
白井は自身の胸に手を当てて、宣言をすれば払うような仕草をしてツナに言い放つ。
明らかに邪険な態度をしている白井にツナが聞き返すと、白井は殺気を漲らせた視線をツナに向けながら忠告をしてきた。
しかし余りにも抽象的な言い回しにツナは思わずツッコミを入れた。
「はぁ~?よくもぬけぬけと言いますわね?男は狼、わかっておりますのよ!?ゲームをする振りをしてお姉様と肩を並べ、手を握り、あまつさえあの慎ましやかな身体に毒牙を、へぶっ!?」
「あんたは、往来で何を口走っての!少しは常識を考えたらどうなの!?」
ツナの言葉に、白井は声を張り上げて言うと事細かに説明を始めるが途中で御坂の拳が白井の頭に直撃した。
顔を赤くしながら御坂は街の真ん中で叫ぶ白井にキツく言いつける。たが、白井は怯む事はなかった。
「いいえ、お姉様!この際ですから男性の危険性を学ぶべきですの!!そして、自分の服装などにも気を付けるべきですわ!!!」
「ちょっ!?いきなりなにを言い出すのよ、あんたは!」
ビシッと指を突き付け白井は御坂にハッキリと言い放つ。服装という単語にツナたちは首を傾げ、御坂は思わず後退りをする。
「お姉様には常盤台生としての品格が足りませんわ!まずスカートの下に短パン!」
「いいじゃないの!この方が動き易いんだから!」
「更にその下はキャラ物の下着!」
「な、なんでわかるのよ!?見せてもいないのに!!」
白井はまるで裁判所の検事のように御坂へと言い放つ、指摘された瞬間、御坂は思わずスカートを押さえて反論する。
だが白井の追及はまだ終わらず更に言葉を重ねてきた、とりあえず側にいたツナはそっと耳を塞ぎ出来るだけ聞かないようにしていた。
「お姉様の事ならこの黒子にわからないこと等ありませんわ!!さぁお姉様、ゲーセンなど行かずにこの黒子と魅惑のランジェリーショップへと参り、そして最後には二人が大人の階段を「だ・れ・が行くかぁああっ!!」ザッ、ヘヴン!!!」
自身の顔を覆うようにして言い放つ白井、そして行き先を変えようと提案した瞬間、御坂の怒号と共に電流が発生した。
バチンと大きな音がなり、そこには電気によって身体をヒクつかせる白井の姿があった。
「えっと、大丈夫なの?白井さんは」
「手加減はしてるわ、それに黒子にとっては日常よ…それよりもさっきのし、下着の話はすぐに忘れる事良いわね!?」
「は、はい!!」
痺れている白井にツナは御坂へ確認を取ると、髪を払い御坂は日常茶飯事であると返してから、ツナに白井の言っていたことを忘れるようにと強く言う。
その目には、忘れなければ次はお前だと語っておりツナは思わず背筋を伸ばして返事をするのであった。
「御坂さんってこんな人なんだ…」
「ごめんね、騒がせてそれじゃあ気を取り直して、ゲーセンに…」
「どうしました?」
御坂と白井のやり取りを見て初春は思わず呟いた、そして気を取り直してゲーセンへ向かおうとした時、御坂は一つのポスターに目を留めた。
張り出されているポスターをじっと見ている御坂に佐天は問いかける。
ツナも視線を追いかけてポスターを見るとそこにはクレープ屋が新装開店セールをしているという内容だった。
「えっと、先着100名様までに特製ゲコ太ストラップ?…なにこれカエルのマスコット?」
「どうやら近くでやっているようですね、御坂さん?」
「へぇ…近くなんだ…ふーん」
ポスターの内容を読み上げて佐天は首をかしげた。初春は記載された情報から近くの広場でやっている事を告げると御坂の様子がおかしい事に気づく。
御坂はしきり広場の方向に目を向けてソワソワしだしていた。
「お姉様、好きですものねぇ、ゲコ太」
「「「えっ?」」」
「なにを言ってんのよ、ゲコ太ってカエルでしょ?両生類を好きってのは無いわよね?」
「あ、」
ソワソワしている御坂にいつの間にか復活した白井が呆れたようにため息をつきながら言う。白井の言葉に三人は声を揃えて驚く。
すると御坂は慌てて否定するが、ツナはカバンからでているゲコ太のストラップに思わず声を上げた。
ーーーーーーーーーーーーー
御坂の興味がゲコ太ストラップに移った為、五人は新装開店セールが行われている広場へとやってきた。
そこには既に沢山の客と多くの子供で賑わっていた。
「なんだか凄い子供が多くないですか?」
「あれじゃない?市内見学ツアーだってさ学園都市に通う予定の子供を案内してたみたい」
走り回る子供を避けながら初春は困ったように言う、その隣にいた佐天は、近くに停車しているバスを指してこの人の多さを説明する。
「これだと座る事も難しいですわね、私と初春で場所を確保しますわ」
「てことはあたしと御坂さん、沢田さんと並ぶって事?」
「すみません、佐天さん沢田さん、お願いします」
人の多さから白井は手分けをするべきだと言う。残された佐天は慌てながら聞き返すと、初春は頭を下げて白井と共に列から離れていく。
残されたツナと佐天は顔を見合わせてから、後ろを見ると腕組みをしながら待つ御坂の姿があった。
「ん?なに?」
「「いや、なんでもないです」」
少し焦るようしている御坂にツナと佐天は首を振って列に並び直した。
周りで楽しくはしゃぐ子供たちの声を聞きながら佐天はどこか居心地悪くしていた。そして前に並ぶツナに目を向け意を決してツナの袖を引いた。
「あの、沢田さん…」
「うえ?どうしたの佐天」
いきなり声をかけられツナは少し驚き、後ろに目を向けた。
すると佐天は声を潜ませなが尋ねてきた。
「記憶喪失になってから能力って使えたんですか?」
「いや、使い方もさっぱりわからなくてさ…ちょっと困ってるかな」
「そうなんですか、こんな事聞きにくいんですけど…能力が使えなくなって何か変わりました?」
佐天の問いかけにツナは首を振ってから嘘をつく、ツナの言葉に佐天はさらに言葉を続けてきた。
正直、ツナには能力の有無の感覚はわからなかったが、それでも佐天の問いかけに真面目に答える事にした。
「変わらないよ、俺は俺のままだと思う」
「そう、ですか…すみません変な事を聞いちゃって…あ、そろそろ沢田さんの番ですよ」
自分の中にある力がなくなっても自分は変わらない、ツナの言葉に佐天は苦笑を浮かべてから、列が進んだ事を伝える。
初春と白井の分は佐天と御坂が購入するため、ツナは自分の分だけを頼んだ。
「お待たせしました、バナナクレープとゲコ太ストラップ、最後になります」
「え、これで最後?…」
手渡されるクレープとカエルのマスコットがついたストラップを受けとるツナ、しかし店員の最後という言葉にツナと佐天は後ろに目を向ける。
そこには地面に手をついて落ち込む御坂の姿があった。
「ゲコ太~…」
「あの、御坂さん?良かったらいる?」
「いいの!?」
「俺が持つより御坂さんが持っている方が良いと思うから」
「ありがとう!!」
落ち込む御坂にツナはゲコ太ストラップを差し出す。その瞬間、落ち込んでいた御坂は顔を上げて反応する、ツナは苦笑しながら言うとゲコ太ストラップを大事に手に納めながら御坂は礼を述べた。
その様子にツナと佐天は笑みを浮かべた、そして二人もクレープを買い初春と白井の元へ向かった。
楽しげに会話をしながら御坂達はそれぞれのクレープを食べ比べ等をしていた。それを見ながらツナはクレープをほお張った。
その時、ふと向かいの銀行のシャッターがしまっていることに気がつく。
「初春、あそこの銀行って今日は休みなのかな?」
「ふえ?…んー、この辺りの銀行の休日は明日のはずでしたけど…」
「っ、沢田さん!腕章を腕に着けて下さいませ!」
ツナは少し気になり隣にいる初春に声をかけた。クレープを食べつつ初春は首を傾げて記憶にある休みの日付を口にすると、何かに勘づいた白井はクレープを一気に食べてからツナに指示を出した。
その時であった、突如、銀行のシャッターが内側から弾け飛んだ。
「銀行強盗!?」
「初春は警備員に連絡を、沢田さんは周りの人を近づけないようにしてください!」
「はい!」「わ、わかった!」
「黒子!「いけませんわ、お姉様!」
中から出てきたのは目出し帽を被った三人組だった、ツナが声をあげると即座に風紀委員の腕章を着ける白井と初春。
そして初春とツナに指示を出し白井は銀行強盗へ向かおうとした時、御坂が立ち上がって白井の名を呼ぶが全て言い切る前に白井は制止をかけた。
「お姉様が首をつっこみたがる性分は理解していますわ、けれど風紀委員でも無いのに能力を他人に使用することはいくらレベル5のお姉様でも許されません、そうなればこの黒子、たとえお姉様であったとしても確保しなければいけませんわ」
「黒子…」
「大丈夫ですの、あの程度のゴロツキ、片手でひねってきますわ!」
御坂の性格から銀行強盗を捕まえようとするのを予測した白井は強い口調で言い放つ、そして余裕の笑みを浮かべ白井はテレポートを使い、銀行強盗の先へと回り込んだ。
「ダメです!今は危険ですから離れていて下さい!!」
「けれど、子供が一人いないんです、バスに忘れ物をしたから取りに行ったきり帰ってきてないんです!」
「わかりました、子供は私達が探してきます!沢田さん!!」
「わかった!」
「私も手伝うわ!それくらいならできるわよね?」
「あたしもやります!」
白井を見送った御坂の耳に初春の声が聞こえてきた、視線を向けるとそこにはバスガイドを引き留めている初春の姿があった。
バスガイドから話を聞いた初春は、風紀委員である自分達に任せて欲しいと言う。
ツナが頷いて答えると、御坂と佐天が子供の捜索に名乗りでてきた。
初春とツナは頷いてから手分けをして子供の捜索を開始した。
ーーーーーーーーーーーーー
side:佐天
初春の迫力から思わず手伝いの名乗り出たけど、正直見つかる気配が全くしなかった。
初春と御坂さんは、バスの周辺をあたしと沢田さんはバスから少し離れた植え込みの辺りを調べる事にした。
子供を、探しながらあたしはチラッと白井さんの方に目を向ける。自分よりも遥かに大きな体格の相手に怯みもせずに白井さんは殴りかかってきた相手を転ばし、太ももに仕込んだ杭みたいなのを空間転移で移動させて、器用に服だけを縫い付けるようにしていく。
あれがレベル4、大能力者…それよりも凄いのがあの御坂美琴さん。
レベル0のあたしじゃ逆立ちしても無理というかまず能力すら発現してないんじゃ土俵にすら上がれない…なんでこんな事してんだろ…
「ひぐ、えっぐ…」
「あ、いた!」
暗い気持ちがあたしの中で大きくなっていく中で、近くに止まっていた車の側で泣いている 子供の姿を見つけた。
けれど安心したのもつかの間だった。
「ちょうど良い、お前を人質にしてやる!」
「ひ、おじさん誰?」
「良いから来やがれ!」
白井さんから逃げてきた犯人の一人が子供の側へと走ってきた。たぶんだけど、あの車は犯人が逃走用に置いていたんだと思う。
そしてお決まりのように子供の手を掴んで連れていこうとした。
あたしは慌てて沢田さんや初春達に伝えたようとするけれど直感的にそれじゃあ間に合わないと思った。
(おいおい、何を考えてるあたし、無茶をするんじゃない!)
内心では、自分の行動を止めているけども身体は既に動き出していて今にも連れ去られそうな子供の身体にしがみついていた。
「てめぇ!?何をしやがる!!」
「ダメ!行かせない!!」
あたしが子供の身体にしがみつくと犯人は声を上げてきた、何をやってんだろあたし…
けれどこのままにはしておけない、そんな強い気持ちのままあたしは強く叫んだ。
犯人が拳を振り上げるのが見えた、あたしは痛みを覚悟して目を閉じたけれど痛みがくることはなく代わりに
「くそ!離しやがれこのガキ!?」
犯人の叫び声が代わりに聞こえてきた。
ーーーーーーーーーーー
佐天が恐る恐る目を開けるとそこには犯人に組み付くツナの姿があった。
「くっ…佐天、早くその子を連れてくんだ!」
「くそ、なんつう力だ!離せ!痛い目にあいてぇのか!?」
組み付きながらツナは佐天と子供に逃げるように叫ぶ、犯人はツナを引き剥がそうとするが中学生とは思えない力に焦りながら脅しをかけてきた。
「今、お前を離して、二人がケガをしたら、俺は!死んでも死にきれない!!」
「く、くそガキが!!」
「がっ!?」
「沢田さん!!」
ツナは一歩ずつ前に進みながら、腹の底から叫んだ。その気迫に怯んだ犯人は腕を振り上げてツナの顔面を強く殴りつける。
顔面に直撃した事でツナは鼻から出血をし、力を緩めてしまう。
佐天の声が響くのと同時に犯人はツナを蹴り飛ばし車へと乗り込んだ。
「しまった、このままでは逃がしてしまいますの!「黒子!!!」…お姉様?」
「悪いけど手を出させて貰うわよ?あんな事をされて黙ってる程、私は聖人君子じゃないから」
逃げた犯人を追う為に空間転移しようとする白井に御坂の声が響き渡り、御坂は走ってくる前に立ちふさがった。
そしてそこからの流れは驚く程、簡単だった。
御坂がコインを指で弾いた瞬間、コインは凄まじい速度で撃ち出された。
その一撃は地面を抉り走ってくる車を撥ね飛ばす程の威力を出した、そして自身の背後に落ちる車など気にする事なく御坂は己の髪を払い余裕を見せた。
「すご…ふごっ!?」
その一部始終を見ていたツナは御坂の行動に素直な感想を口にした途端、コインが抉った破片がツナの頭の上に落ちてきた。打ち所が悪くツナはそのまま気絶してしまった。
ーーーーーーーーーーーーー
「…あれ?ここは…」
「あ、起きました?沢田さん」
風の音が聞こえてツナは目を開けた、そこには木の枝と茜色の空が広がっていた。
呆けながら空を見ていると視界を塞ぐように佐天が顔を覗かせてきた。
「佐、天?…なんで?」
「沢田さんが気絶したから介抱してたんです、初春と白井さんは警備員への報告、御坂さんは飲み物を買いに行ってます
強盗犯は全員捕まりましたよ」
「そうなんだ…あの子は?」
「無事です、沢田さんが身体張って助けてくれましたし」
ツナは不思議そうに佐天に尋ねると、人差し指を立てて佐天は説明をしていく。
事件が解決した事に安堵しツナはいなくなっていた子供についても尋ねた。
佐天は柔らかく笑いながらケガはしていないと返してツナの身体の上に飴玉を置いた。
「それ、お礼です…あの子が風紀委員のお兄ちゃんにって」
「そっか、良かった」
「凄いですね、沢田さん…全然ダメじゃなかったですよ?」
「そんな事ないよ、俺が頑張れたのは佐天があの子を見つけたからだよ
出なかったらあの子は拐われてた、あの子を助けたのは佐天だよ」
「そう、ですかね…あはは」
飴玉を不思議そうに持つツナに、佐天は子供が渡してくれた事を話す。ツナは嬉しそうに飴玉を眺めていると佐天はしみじみ言うようにツナの事を称賛した。すると目を閉じてから、身体を張れた理由を話してから佐天に向けてツナは言う。
初めはキョトンとしていた佐天だが嬉しそうにはにかみながら返した。
「…それはそうと、起きたならそろそろどいてもらえます?あたしの膝の上から」
「え?うわっ!ごめん!!」
気恥ずかしくなったのか佐天は話題を変えるようにツナに向けて言う。そこで初めてツナは自分が佐天に膝枕をされていることに気付き慌てて起き上がった。
すると佐天は少しふてくされた表情を浮かべた。
「どいて欲しいとは言いましたけど、そんな露骨に避けられたらいくらあたしでも傷つきますよ?」
「あ、ごめん…」
「なんて冗談ですよ、そういうとこもダメなんですね、ツナさんは」
「あはは…あれ?名前?」
慌てるツナにやれやれと肩をすくめて佐天は言うと、肩を落としてツナは頭を下げる。
するとイタズラ子っぽく佐天は笑い冗談であるとツナに言う。
ダメだと指摘されて苦笑を浮かべるツナは佐天が呼び方を変えた事に気付いた。
「命の恩人ですからね、名字呼びはなんか嫌だったんでダメツナから取ってツナさんにしました
あ、ちゃんと敬語は使うんで安心して下さい」
「あ、いやそれは別に構わないけど「それじゃあ私もツナって呼んでもいい?」うひゃあ!?」
呼び方を変えた理由を佐天は説明し、その上で敬意は表すと言ってきた。
ツナとしてはその辺りは気にはしないと言おうとした瞬間、背後から御坂が缶ジュースをツナの首筋に当てて尋ねてきた。
いきなりの事にツナは慌ててたじろぎそのまま尻餅をついてしまう。
「あてて…」
「ちょっと大丈夫?」
「御坂さん、いつの間に」
倒れたツナに手を貸す御坂、特に音を立てる事なく近づいてきた事に佐天は微妙な表情を浮かべて尋ねた。
「少し前よ、ツナが目を覚ました辺りかな?」
「それ、ほとんど最初からでしょ!?」
「というか、なんで御坂さんも名前で?」(というか既に定着してる!?)
ツナを立たせてから御坂は自分が来たタイミングを教えると佐天は思わずツッコミを入れ、ツナは御坂に呼び方を変えた理由を尋ねつつ特に問題なく言っている事に内心でツッコミを入れた。
「気に入ったからかな?ああやって、人の為に身体張れるのって嫌いじゃないし
だからツナって呼ぼうとしたのよ、ツナも私の事を名前で呼んでも良いわよ?確か、同い年でしょ?」
「いや、それだと白井さんに「…お姉様?」ひぃ!?」
呼び方を変えた訳を御坂は話していき、ツナに名前で呼ぶように言ってきた。
ツナはそんな事をすれば露払いを自称している白井が黙っていないと言おうとした時、背後から白井の低い声が聞こえてきた。
振り替えるとそこには黒いオーラを出す白井と心配そうにしている初春がいた。
「まさか、私がいない間に名前を呼び合うまでに関係が進むとは…かくなる上は今すぐにでも既成事実を組み上げるまで、お姉様~っ!!」
「はぁ!?ふざけないで、私にそんな趣味は、ってこっちに来るな!!?」
「モーマンタイですわ、お姉様!朝まで寝かせませんですのよ!!」
白井は顔を抑えながら言えば、飛び上がり御坂を押し倒そうとする。
飛びかかってきた白井を避けて、御坂は距離を開けるが白井はそれだけでは止まらず御坂を追いかけ始める。
「沢田さん、ケガは大丈夫ですか?」
「うん、まだ痛むけど大丈夫だよ初春」
「また記憶喪失になっちゃいますね、ツナさん」
「いや、流石に何度もなられても困るから」(てか本当に記憶喪失になるわけにはいかないって!)
ツナに傷の状態を尋ね心配をする初春に、軽く笑いながら答えるツナ。
すると佐天が意地悪そうな笑みを浮かべながらからかってきた。
苦笑を浮かべ、内心ではかなり焦りながらツナは返答をするとそんな二人を初春は不思議そうに見ていた。
「佐天さん、いつから沢田さんを名前で呼ぶようになったんです?」
「さっきだよ、あ、初春も名前で呼びたいんでしょ?」
「え!まぁ正直、名字より呼びやすそうですけどいいんですか?」
「俺は大丈夫だよ、初春」
呼び方が変わった事について尋ねると佐天はあっけらかんとした口調で答え、初春に絡むように聞いてきた。
初春は若干目を反らしながら答えるとツナに確認をとってきた。
それに対してツナは軽く笑いながら了承をした。
「わかりました、よろしくお願いしますね!ツナさん」
「こちらこそ…所で白井さん止めなくていいの?」
「私には無理ですね、白井さんを止めるのは」
ツナから了承を貰い、初春は喜びながら頭を下げる。そして未だに追いかけっこをしている二人にツナは苦笑をしながら尋ねると、初春はキッパリと答えた。
「いい加減に、しろぉおおおおっ!!」
「あふん!!?」
追いかけられ続けられついに御坂は我慢出来なくなり、電撃を白井に浴びせる。
白井は悲鳴を上げるのだがその表情はどこか誇らしく爽やかであった。
そんな光景にツナ達はそれぞれに苦笑を浮かべるのであった。
次回予告
ツナ「御坂達と出会ってから一週間が経過した、そんな時に御坂から買い物に付き合って欲しいと頼まれる事になる
うえ?白井さんには内緒?なんかあるのかな…
次回、とあるマフィアの平行移動 第3話:記念と買い出し
女の子の買い物ってなんかやな予感がする…」