死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか? 作:スキマ時間
ベルといっしょに3人でダンジョンへ。
「ナァーザさんたちはいつもどのくらいまで降りているんですか?」
「いまは、装備がダメダメだから7階層までね。」
「そういえばピュラさん、なぜに鍋とスコップを?」
「うん、ちょっと前の戦いで盾と武器を失くしちゃってね?これが盾と槍の代わりなんだよね。いざとなったらフランスパンとかお皿でも少しは戦えるけど、食べ物を粗末にしたらだめだからね。」
「へ?ナァーザさん、ピュラさんてちょっと面白い人ですね。」
「あぁ、君も戦い方をみたらすぐに分かるよ。まあ、なんというか、さすがわたしの運命の人なんだよ。」
「ナ、ナァーザさん??」
「そうだ!ベル、ピュラの動きを知っておくためにも、体術だけで軽く模擬戦をしてみたほうがはやいかな。ちなみにわたしはピュラにまったく勝てないよ。」
「え?ナァーザさんてレベル2ですよね。」
「ミアハさまがヘスティア様に事情を話されたそうだし、いいかな。他言無用でお願いしたいけど、恩恵なしのピュラに手も足もでなかったんだよ。」
「えええええ!ピュラさんはハンターだったと聞いてますけど、もしかして御伽噺の英雄みたいな人なんですか?」
「え?英雄?!そんなことはないよ。偉大なハンターになるのは、一生をかけた夢ではあったけどね。オーラをどれだけうまく使えるかどうかの差だと思うよ?子供ころから、偉大なハンターになって人々を助けたいって、ずっと夢見て鍛錬してたからね。じゃあ、ちょっと手合わせしてみましょうか。」
「そんな強い人に手合わせしてもらえるなんて、いいんですか?」
「ピュラ、このあと探索があるから、軽くだよ。軽く。」
「もちろんです。ベルさんの普段の動きを見てみたいので、そのナイフは使ってください。心配はいりません。武器を持った相手との戦いは慣れているので。本気でかかってきてください。」
「え?本当にいいんですか?」
「ベル、悪いけどかすりもしないと思う。わたしもピュラの素手を避けるだけで精一杯だったし。」
「そう言うなら、本気でいきます。」
ベルの目の色が変わった。
『いい目をしている。これは楽しくなりそう。ジョーンを思い出しちゃうな。』
「はじめましょう。」
「ヤッ!」シュッ。ドスン。
ベルは突きから入った。ピュラはその腕を掴んで投げ飛ばしたが、地面に叩きつける前にベルを引っ張って、ダメージを減らした。
「ふぇ!」
「年を重ねたグリムは、人間の意思を読み取って、狡猾な動きをするの。今のような相手の動きを想定していない突きだと、あっさり利用されて致命的な攻撃を受けるわ。」
「相手もこちらの動きを読むということを考えてね。」
「これで終わりなはずがないでしょ。どんどんいきましょう。あとで回復してあげるから心配はいりませんよ。」
「ひぁい!」
「ヤァー」ヒュッ。ボカン。
「トォ」シュッ。ドス。「ぐはぁ」
『あ!スイッチはいっちゃった。ピュラって、見かけ以上に熱血なんだよね。でもピュラが戦っていたグリムって、意思があるとか、オラリオの魔物だと階層主ぐらいだよね。そんなのが、町の周辺を闊歩しているとかって、信じられないぐらい危険な場所にいたんだね。そりゃ偉大なハンターになりたいっていうのもわかる。これは、わたしも気合をいれて鍛錬しないと。』
ピヨピヨピヨピヨ。5分後、ボロボロになった白兎がいた。
「あ、ちょっとやりすぎたかな?約束通り、回復してあげるね。」
ピュラがごく自然な感じでベルの肩に触れて、オーラを覚醒させていく。白兎が光に包まれていく。
「ピュラさん、なにを?く、くすぐったい。あぁぁ」ボフン!
ちょっと元気が出て、顔を真っ赤にした。白兎がいた。
「ああぁ、やっちゃった。ピュラ、オーラのことベルに話すの忘れてた。」
「そ、そういえば。あとでヘスティア様にも説明しとこう。」
「あれ、なんか体が軽いです。」
「それがオーラ、君の魂の力。オーラは、今みたいに回復、防御、攻撃に使えるの。オーラを実体化するとセンブランスといって、君だけの個性的な技も使えるようになるよ。」
「ありがとうございます。でもピュラさんは、僕との模擬戦でまったくオーラを使ってなかったですよね。」
「そうね。オーラは消耗すると体が疲れ切って動けなくなるから、切り札としてなるべく取っておくの。相手がスキを見せたら、ここぞというときに使うのが基本ね。防御でも同じで常に発動しているとあっという間に消耗して、いざというときに身を守れなくなったり、攻撃の切り札がなくなったりするから、普段は体術や防具、武器、今はないけどダストで補うの。
あと、オーラを使うと小さな怪我はあっという間に治るわよ。」
「え?もしかしてポーションが要らないんですか?」
「ベル、それは違うわ。」
「ナァーザさん。」
「回復にオーラを使うとやはり体力を消耗するから、より早く動けなくなるわね。これは秘密にしてほしいのだけど、オーラはポーションの効果を高めるわ。」
「わかりました。でも戦いの幅が全然ちがってきますね。」
「そうね。私達、ポンコツコンビも、今日からはポンコツ兎コンビにアップグレードね。」
「へ?なんですか、それ?」
「だって、ベルは剣術も体術も防御もなにもかも素人って感じみたいだから。ベル、恥ずかしがることはないからね。私もそうだったし、ピュラにたくさん教わるといいよ。ピュラって教えるのがすごくうまいのよ。きっとすごく強くなれる。」
「というわけで、ベルさんのスコップを一本用意しておきました。」
「ベルさんもスコップを使って、オラリオで一番のスコップ使いになりましょう!」
「やめてー。その称号だけはいやぁーーーー!」
(つづく)