死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか? 作:スキマ時間
ナァーザたちが合同探索の調整のために、模擬戦をしていたころ。
ロキ・ファミリアが遠征の帰りに出会ったミノタウロスの群れは、一斉に上の階層にむかって逃げ出した。
災難は何の脈略もなく訪れる。
1頭のミノタウロスがロキ・ファミリアの冒険者に倒されたとき、その魔石をそばにいたミノタウロスが喰らった。そのミノタウロスに追いかけられて、他のミノタウロスはさらに逃げ足を速める。
『ヴモォー』
1頭の黒く大きなミノタウロスに追いかけられ、3頭のミノタウロスが上層へと一気に駆け上がった。
3人は模擬戦を終えてから、モンスターを苦もなく倒し、5階層へとさしかかったところ、モンスターの咆哮が遠くから聞こえてきた。
「ナァーザ、牛さん?のような鳴き声が聞こえなかった?ここって牛のモンスターがいるの?」
「ピュラ、警戒してください。この咆哮は、このあたりの階層で出てくるモンスターのものではありません。信じがたいですが、ミノタウロスだと思います。それも複数いるようです。」
「ナァーザさん、ミノタウロスって、中層のモンスターですよね。」
「ベル、ピュラ、レベル1のあなたたちは逃げることを考えてください。強制停止の咆哮を受けると、動けなくなってお終いです。」
「ベル、もしも咆哮を受けたら、オーラで抵抗して。動ければ逃げれるから。大丈夫。私が食い止めて時間を稼ぐから、二人とも逃げて。」
ミノタウロスがものすごい勢いで向かってきた。しかも4頭もいる。ベルとナァーザは逃げるため、全力で走り出す。
「なんてこと!ピュラ、無理しないで、一緒に逃げて!」
「大丈夫、任せて!」
ピュラは先頭を走っていたミノタウロスの顎を鍋でかち上げ、角を掴むと振り回して後ろのミノタウロス2頭に思い切り投げつけた。ストライク。2頭の首が折れて、倒れたようだ。だが、1頭の大きく黒いミノタウロスに体当たりされて、吹き飛ばされてしまう。
「ピュラさん!」
「ベル、今のうち!全力で逃げるわよ。ピュラが命がけで時間を稼いでくれているのを無駄にしないで。」
「はい!」
ベルは歯を食いしばって、走り出す。
『悔しい。だけど、ナァーザさんは後衛だ。僕が守らないと』
イタタタ。投げつけた1頭はダメージが少なかったようで、立ち上がってベルたちを追いかけていってしまった。
黒く大きいやつがこちらに向かってきた。オーラで盾を補助し、突進を跳ね返す。力は互角だ。ノーラほど強くない。角をつかんで、押し返す。そこへ、太い右腕が横薙ぎに振られた。
とっさに角から手を放し、飛び上がって、頭を踏みつけ、空中で伸身の一回転。さらに捻りをいれて、ミノタウロスの背後を取り、バックドロップを決める。
相手の動きが一瞬止まったところへ、止めをさす。出し惜しみはなしだ。センブランスで鉄球2つを宙に浮かせ、渦のように高速回転させて、相手の頭に全力で叩き込む。
首から上が吹き飛んで、虹色の魔石を残してモンスターは消えた。
魔石と鉄球を拾うとピュラはベル達を追って駆け出した。そこへ、後ろから、風に煽られた一人の冒険者がすごい速さで吹き抜けていった。
『今の冒険者、まるでルビーみたいに飛んでいった。』
ベルは行き止まりで、一度ミノタウロスに吹き飛ばされ、ナァーザをかばって立ちすくんでいた。
『もうダメだ。ナァーザさん、すみません。守りきれなかった。』
バシャ。
諦めかけた瞬間、ミノタウロスが2つに裂け、モンスターの血だらけになってしまった。
「大丈夫?」
きれいな女の子がレイピアを振り抜いた姿勢で尋ねてきた。
「うぁああああ。」
はずかしさと、生きている喜びが一緒くたになって走り出してしまった。
「あ、コラ。ベル、どこへ行くというの。落ち着けー、戻ってこいー」
置いていかれたナァーザが叫ぶが早すぎて、止めることができなかった。
「アイズさん、ご無沙汰してます。ありがとうございます。」
「あ、ナァーザだったんだ。」
「ええ、さっき逃げってたのは、まだ新人のベルくんです。失礼しました。」
「おーい、ナァーザ。大丈夫だったー。」
向こうからピュラが駆けてきた。
「私は大丈夫。助かった後にベルがパニックになって、逃げちゃった。」
「うふふ、すごい格好。たしかにそれで女の子に出会ったら。恥ずかしくって、逃げちゃうかも」
「あー。私も体洗わないと、やばいわね。」
「えと、あなたは?」
「私はピュラ・ニコスといいます。ナァーザとベルを助けていただいたようでありがとうございます。」
「いや、あのミノタウロスは私達から逃てたみたいで、ごめんなさい。そういえば、さっき変異種のミノタウロスを倒していたね。あなた強いね。でも名前を聞いたことがないような。」
「アイズさん、彼女は、最近、オラリオにきたばかりなんです。」
「ふーん。ちょっと手合わせしてみない?」
「いや、今はナァーザも血まみれだし、ベルを追いかけないといけないので、また今度。」
「うん。わかった。約束。」
「ええ。それじゃ、すみません。お先に失礼します。」
『うーん、さっきの鉄球を使った攻撃は見事。魔法かな。ミノタウロスを投げ飛ばした体術もすごかった。知りたいな。うずうずする。ナァーザの仲間ということは青の薬舗にいけばいいか。すごく楽しみ。』
心のなかで、幼いアイズがもやもやしてます。
この後、ベルはナァーザとピュラにからかわれて、ボコボコに。。。。南無。
(つづく)