死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか?   作:スキマ時間

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エイナの災難

ベルを追いかけてギルドへ向かった。ベルがギルドの職員に注意されているのが目に入った。

 

「ベル、なんで先に帰っちゃうかな?かな?」

 

ナァーザが今にもベルに噛みつきそうな勢いで怒っている。

 

「ヒッ!す、すみません。ナァーザさん」

 

ベルを担当しているギルドの職員が声をかけてきた。

 

「ベルさんの担当のエイナ・チュールです。ベルさん、先に帰ったとのことですが、どういうことでしょうか?」

 

ギ、ギ、ギ。錆びついた蝶板のようにベルくんがエイナのほうを向いた。

 

「ミアハファミリアからヘスティアファミリアに共同探索のクエストを発注していたのですが、5階層で4体のミノタウロスに襲われて、一緒に逃げたあと、ロキ・ファミリアの剣姫に助けられたんです。ところが、血まみれで恥ずかしくなって、お礼も言わずに逃げてしまったと。」

 

「5、5階層ぉぉー。ベルさん、どういうことですか?冒険者は冒険してはいけないとあれほど言っておきましたよね。」

 

ピュラは、エイナの言葉に命を懸けてグリムと戦うハンターとして、また、過去の偉大なハンター達を思い浮かべ、感じた違和感が言葉をついて出た。

 

「エイナさん、ちょっと待って。災難は何の脈略もなく訪れるもの。冒険者が命を懸けて戦わなかったら、ギルドや街の人たちが犠牲になるだけ。」

「ハンターの矜持にかけて、冒険してはいけないなんて甘い言葉はなんの慰めにもならない。むしろ、難敵と戦い切磋琢磨しなくては、本当に避けようのない災難に出会ったとき、為す術もなく命を散らすことになる。この私のように。」

 

「ピュラさん?!」

 

「わ、私はそういうつもりで言ったのでは。。。いつも冒険者の方たちを迷宮に送り出すたびに何名かは帰ってこないことがあるんです。ベルさんにはそうなってほしくない。だから。。。。」

 

「あなたの優しさはわかる。でも、現実は御伽話のようにいかない。だからこそ、少しでもましな世界にするために、ハンターは命を懸ける。必要な準備や修練は怠らない。冒険者のアドバイザーなら、そこだけは間違えないでいてほしい。そして無事帰ってくることを信じてあげてほしい。そうならないことがあったとしても。」

 

「正直な気持ちとして、まだ冒険者なりたてのベルさんには、冒険して死んでほしくない。たしかに、私の我儘なのかもしれない。。。では、ベルさん、どんなことがあっても、必ず帰ってくると約束してください。」

 

「はい、エイナさん!必ず帰ってくると約束します。」

 

「うん。これでいい。」

 

「ところで、ナァーザさん、ピュラさんとは初めて会うんですが、levelはいくつですか?」

 

「ピュラは。。。level1ですね。はい。」

 

「え?でも、装備や纏う雰囲気、お話をうかがっているかぎり、初心者やlevel1にはまったく見えないんですが?」

 

「そうですね。エイナのことはギルド職員のなかでも信用しているので、今後のためにもちょっと話しておいたほうがよいかもしれませんね。談話室に行きませんか。」

 

「?いいですが、ちゃんと正直に話してくださいね。」

 

「ええ。」

 

 

談話室にて、

 

「あらためまして、ピュラ・ニコスです。よろしくおねがいします。」

 

「よろしくおねがいします。で、ナァーザさん、話とは?」

 

「まず、最初に言っておくと、level詐称はしてません。というかそれ以前に、私はピュラが恩恵なしだったときですら、手も足もでませんでした。その理由はよく分かっていません。」

 

「そんな馬鹿な。ナァーザさん、level2ですよね。」

 

「ええ、それと、今日のピュラはミノタウロス2体と、ミノタウロスの強化種1体を倒しています。この魔石が証拠です。私とベルが逃げていたのは、ピュラが倒し損ねた普通のミノタウロスです。ピュラは命懸けで強化種を相手取って、私達を逃してくれたのです。」

 

「あの黒いミノタウロス、私の友達のノーラより力が弱かったけど、そんなに強かったの?」

 

「アハハ、ハァー。ピュラ、あなたの友達って本当に人間ですか?」

 

「うーん、まあ、わたしやチームメイトも、ときどきそう思ったことがあるんだよね。本人の話だと、雷に撃たれて生きていたら、センブランスに目覚めて、電気の力で体重の5倍の重りを持ち上げられるようになったって言ってたからね。一緒に鍛錬すると、みんな大怪我してしまうような子だったから。。。腹筋800回に腕立て伏せ400回とかやって、汗一つ掻いてなくて、本格的な鍛錬はこれからだってやられたときも。。。」白目

 

「ヒッ?!」

 

「なぜか、ピュラが本当に人間か疑わしくなってきました。」

 

僕、この人に弟子入りして大丈夫だったのかなぁ。。。

 

「ミノタウロスの強化種って、適正レベル4と5ですよ。そんな馬鹿な。」

 

「まあ、実際のところ、武器がスコップしかないんで、ちょっと苦戦するけどね。」

 

「え?わたしのこと、誂ってるんですよね。」

 

「エイナ、ピュラはあまり冗談は言わない。全部本当のこと。」

 

「じゃ、命を散らしたというのも?ピュラさん、生きていますよね。」

 

「話をするより、分かってもらえる方法があるよ。エイナ、ちょっとだけ触れるね。」

 

「あー。エルフは潔癖だからだめだよー。」

 

いろいろ遅かった。

 

「いやぁー。」

 

ピュラがエイナの肩にしっかり手をかけて、エイナのオーラを覚醒させていく。

 

「いやいや。なんかくすぐったい。やめ、はぁ~~~!」ボフン!

 

真っ赤になったエイナが跪いた。

 

「エイナは結構オーラの量が多い。才能があるかもね!なにか感じない?」

 

「なにか体が軽いし、なにか呼び出せそうな気が?」

 

「あ、それ召喚術が使えるかも、出会ったことのある魔物を思い浮かべて。」

 

床に魔法陣が現れる。そこから太い手が出てくる。だが、途中で魔法陣がしぼんでしまった。

 

「惜しい。でもセンブランスに目覚めたかも。」

 

「ピュラ、何てことしちゃったんですか。彼女、冒険者じゃないんですよ。」

 

「あ、しまった。わたしがいたレムナントだとだれもができることだったから。。。」

 

『レムナントって、魔境なん(だ)ですね。』

 

ベルとナァーザの気持ちがひとつになった。

 

「エイナ、このことは秘密に。エイナもあまり神に知られたくないでしょ。」

 

「え、ええ。今の何、魔法?でも、私、恩恵うけてないのに。ピュラは何者なの?」

 

「私達もよくは分かってないわ。ただ、光輝く塵から人の形になって、死にかけていたのをミアハさまが助けたことだけが事実。オーラが使える人。それ以上はわからない。」

 

「こんなに混乱した事態になると思わなかったけど、エイナ、このことは秘密にしてね。」

 

「わ、わかったわ。でも、この力で私ももしかして誰かを助けることができるのかな。そう思うと、さっきピュラが言っていたこともわかる。」

 

「そういうことです。でも鍛錬しないと使えないので、無理は禁物ですよ。」

 

(つづく)

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