死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか?   作:スキマ時間

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鍛冶はお金がかかります

バベルの塔の前にて。

 

ミアハがロキと会談しているころ、ピュラとベルはギルド職員のエイナと防具を買いにバベルの前で待ち合わせた。

 

「ようやく揃ったわね。じゃあ、ちゃんとした防具を買いましょう。」

 

「昨日、ミノタウロスを倒した魔石を売ったお金がそこそこあるから、多少はなんとかなるかな。」

 

「え、あれ全部ピュラさんが倒したから、僕がもらうわけには。」

 

「共同探索だから等分だよ、ベル。ただし、恥ずかしがって、昨日みたいに逃げたらちょっとお仕置きなんだからね。」

 

「ナ、ナァーザさん。ほんとうにすみません。」

 

「わかればよろしい。私は後衛だから、ベルのこと頼りにしてるんだからね。」

 

「はい、がんばります。」

 

「それにしても、塔か、懐かしいな。みんな元気にしてるかな。」

 

「ん?ピュラさんのいたところにも塔があったんですか?」

 

「ビーコンタワーといって、世界中の連絡網を担っていた通信塔。私が守れなかった場所。今は、魔物の巣窟になって、たぶん各国は孤立していると思うわ。とても無念だわ。」

 

「あ、つらいことを聞いてしまって、ごめんなさい。」

 

「いえ。そのときの戦いで武器も防具もなくしてしまったのよね。いいのがあると助かるんだけど。」

 

「その武器や防具って、どんなものだったんですか?」

 

「短剣から槍に変化する武器。ライフルとしても使えたわ。防具は円盾ね。頑丈で魔法の炎も跳ね返すし、投げれば敵に斬りつけることもできる便利な盾ね。」

 

「うわ、ピュラって、それで体術も使えるんだよね。味方で良かったわ。ベートはご愁傷さまね。」

 

「ナァーザさん、昨日、あのあとなにかあったんですか?」

 

「豊饒の女主人で、ベートがベルを揶揄して、それでベルが店を飛び出した後、ピュラがベートに無双したのよ。」

 

フラ~。エイナはちょっと気が遠くなった。

 

「ちょっと、エイナ!大丈夫。真っ青だよ。」

 

「ナァーザさん、胃薬を持ってませんか。ものすごくお腹が痛い。」

 

「ナァーザ、胃薬よりセンブランスを使ったほうが早いよ。」

 

「ピュラ、自重してください。ここだと目立ちすぎます。」

 

「ピュラさん、僕が情けないばかりにすみません。」

 

「あ、ベル、そんな顔するんじゃないの。あなたはきっと強くなる。しっかりと鍛錬しましょ。」

 

「ひぁい。」

 

「ベルさん、ピュラさんの鍛錬って、そんなに厳しいんですか?」

 

「わたしもいっしょにやってるけど、ほとんどの怪我が回復できるから。遠慮なくボコボコにされるわ。すくなくとも、耐久と力は、みるみるあがるわね。ボコボコにされたくないから素早さはもっと上がるね。もはや、ボコボコにされ具合で言うなら、たいがいのモンスターなんて目じゃないわね。中層の階層主が相手でも、あそこまでボコられない気がする。もうなにも怖くない。そう、なにも怖くない。なにも」

 

あ、ナァーザさん、ハイライトが消えてる。大丈夫かな。

 

「え、そんなにひどいことはしてないはず。ノーラとの鍛錬ほどは。。。。」

 

「ふ、二人とも大丈夫ですか。ちゃんと防具を用意しましょう。ピュラさんにボコられても大丈夫なのように。」

 

「あれ、エイナさん?今日って、そういう目的だったかしら?」

 

「いえ、なんとなく。階層主以上の問題が目の前にいるような気がして。」

 

「とにかく鍛冶屋に行くわよ。」

 

ナァーザさん、元気になってよかった。

 

 

ヘファイストスの鍛冶屋、掘り出し物コーナーにて。

 

兎と書いてある防具をベルが気に入って購入した。

ナァーザも、軽くてしっかりした防具を購入した。

 

これで二人はピュラにボコられても大丈夫だ。

 

「あれ?なんかわすれているような。」

「ピュラ、そういえば盾や武器は見つかりましたか?」

 

「うーん。しっくりくるのがないかな。」

 

「おや、見かけない顔だな。手前は椿・コルブランドという。そちの名はなんという?」

 

「私はピュラ・ニコス。」

 

「珍しい素材でできた鎧を着ているな。もしかして、それと同じような素材の武具をお探しか?」

 

「わかりますか?」

 

「わかるとも。その鎧には、鍛冶師を唸らせるような気配がある。」

 

「もしその鎧のメンテナンスをさせてくれるなら、武具の調達を手伝ってもよいが、どうだ。」

 

「え、そんなことでいいんですか?」

 

「もちろん、素材は自分で集めてもらわないといけないがな。」

 

「それなら。問題ありません。」

 

「ほんとうか!では、ちょっと主神様に紹介するからこちらへ来てくれるか。」

 

「え、はい。」

 

「ナァーザさん、なんかえらいことになってますよ。ピュラさんの鎧って、そういえばすごく高級品のようにみえますよね。」

 

「そうね。ベルの言うとおり、ピュラと初めて出会った夜、ミアハさまもおっしゃっていたけど、あの鎧はちょっと普通じゃなさそうなのよね。エイナ、ちょっと厄介事になったかも。」

 

「さっそくなのですね。胃薬はありますか?」

 

「大丈夫。常備薬として多目に持ってきてる。」

 

 

「主神様、入ってよろしいか?」

 

「あら、椿、どうかしたの?」

 

「じつは、この子の鎧のメンテナンスを引き受けることにしたのですが、あまりにも変わった素材のように思うので、観てほしいのです。」

 

「はじめまして、ピュラ・ニコスと申します。」

 

「主神のヘファイストスよ。椿がそこまで執着するなんて珍しいわね。」

「ふーん。あなたが着ている鎧ね。あら、それってオリハルコンだけど、なにか普通じゃないわね。」

 

「あ、もしかして極性をいじっているのが影響しているかも。」

 

「極性をいじるって?どういうこと?」

 

ピュラは2つの鉄球を取り出した。ちょっと集中すると、2つの鉄球が磁力を帯びて反発しながら回転しだした。ときどき周囲に小さく青い稲妻が飛び散っている。

 

「はああああああ?いったいどうやったの?」

 

「これは私のセンブランスで、Polarity(磁力操作)といって、金属の極性を変えれるのです。」

 

「ずいぶん変わった能力ね。」

 

「主神様、よくわからないのだが、どういうことが起きるのだ?」

 

「わかりやすいところでいうと、離れたところにある盾を呼び寄せたりできるということね。」

 

「あとは、小さなリングに強力な磁力を一瞬で込めると爆発するでしょうね。」

 

「つまり、それ自体は鍛冶とはあまり無関係ということか。」

 

「そうね。ただ、この鎧の素材の品質は一級品ね。純度がとても高いわ。これは素材集めも、加工も大変ね。普通に作ったら、このファミリアが破産してしまうわ。」

 

「そうなのか。主神様、わしは愚かだったかもしれぬ。この鎧のメンテナンスを安易にも引き受けてしもうた。」

 

「そうなの。でもその子はそんな非道なことは言いそうにもないわよ。」

 

「はい。椿さん、この鎧や武器の製法は私も知っているのですが、残念ながら素材や道具がないのです。私のいたところでは、武器や鎧は自分で製作したり、メンテナンスしたりするのが当たり前でしたから。」

 

「ピュラ、あなたは良い戦士であり、鍛冶師でもあるのね。惚れ惚れするわ。特別に椿の立ち会いの元で、うちのファミリアの鍛冶場を使うことを許可するわ。」

 

「主神様、ありがたい。今から楽しみだ。お主の知っている製法や武具のこと、いろいろ教えてくれ。」

「ところで、今は武器や盾を持っていないようだが、目的の品ができるまで、わしの試作品であれば、貸し出しするぞ。条件としては、使ったあとに評価をすること。それと、手入れの費用は持ってもらうぞ。それでどうだ。」

 

「願ってもないです。よろしくおねがいします。」

 

「よかったね、ピュラ。うちのファミリアも破産するところだった。胃薬を飲んどこ。」

 

「エイナ、ありがとう。おかげで、助かりました。」

 

「いえ、どういたしまして。防具だけで破産の可能性があったなんて、うう、私も胃薬ほしい。」

 

鍛冶ってお金かかるんだ。ヘスティア様、僕のファミリアもお金だいじょうぶでしょうか。

 

(つづく)

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