死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか?   作:スキマ時間

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ベルとヘスティアはずっと一緒

遠くで大きな稲妻の音と爆発音が響き、大きな歓声があがる。

 

他の場所で暴れていたモンスターが倒されたのだろう。あの音はピュラさんのセンブランスだろうか。僕もあんなふうにみんなを守りたい。

 

でも今、僕は神様を連れて、大きな猿のモンスターから逃げている。悔しい、僕では勝ち目がない。神様だけでもなんとか生き残って欲しい。なぜかモンスターは神様のあとを夢中で追いかけてくる。撹乱するために、細い通り、曲がりくねった道、大きなモンスターが通れない道、どれだけ駆け抜けただろう。とうとうどこに向かっているか自分にもわからなくなった。

 

地下道への鉄柵が設けられた場所を見つけた。ここに神様を隠そう。僕が囮になるんだ。すみません、神様。ここでお別れです。

 

「神様、ちょっとここで待っていてください。必ず、必ず助けを連れてきます。」

 

カチャ、鉄柵の扉の鍵を閉める。これで神様とはお別れだ。きっと神様のことだから嘘を言ってもばれてついてきてしまうから。

 

「何をしているんだベルくん。僕が君を一人にするわけがないだろう!置いていくなぁ!」

 

「すみません。」

 

ベルは走り出した。

 

「化け物め。お前の相手は僕だ。こっちへ来い。」

 

「ウガァァァァァ」

 

大猿は闘技場で縛られていたときに腕につながっていた鋼鉄の鎖を振り回す。

ベルは紙一重でよけて、短剣で斬りつけるが、傷つけることすらできない。

 

飛んできた鎖を短剣で受けると、短剣は砕け散り、鎖に吹き飛ばされた樽が体に当たり通りの端まで吹き飛ばされる。この間買ったばかりの鎧のおかげで、致命傷は免れたけど路地に転がり、動けなくなった。

 

『もう武器もない。これまでか。神様すみません。ピュラさん、僕もきっと強くなれると言ってくれたのに。ごめんなさい。』

 

大猿は倒れたベルを見て、勝鬨を上げて、胸を叩きドラミングを始めた。そして、鎖を振りかぶって、僕に叩きつけようと構えた。

 

「下がりたまえ、我が家族を手に掛けようなど、わたしが許さない。」

 

少しだけ神威を発したヘスティアがベルの前に立ちはだかる。

 

「神様ぁ、なんで来てしまったんですか!そんなことしたらだめです。」

 

「ベルくん、僕は我儘な神様なんだよ。大事な家族が傷つけられてだまってられるような親じゃないんだ。それでお別れすることになってもごめんよ。」

 

大猿は一瞬だけ神威にひるんだが、まるで呪われたようにヘスティアに気を向けて掴みかかろうとした。ベルは必死に飛びついて地下通路の下へとヘスティアとともに転がった。

 

「どうして、どうして来てしまったんですか。僕なんかのために。」

 

ベルは泣いていた。強くない自分が情けない。悔しい。

 

「理由なんてベルくんのことが好きだからに決まってるじゃないか。それと、君は僕の家族なんだから、あんなやつに負けたりしないのさ。」

 

「でも、もう武器も壊れてしまいました。倒すことはできそうにないです。」

 

「なにを言っているのさ。君は強くなる。そのために僕も準備したんだ。この剣を受け取って。君だけのための僕からの贈り物さ。今からステータスも更新する。その剣は僕そのものさ。だから、僕たちはこれからいつもいっしょに戦うのさ。だから君と僕で必ず勝つ。いいね。」

 

「はい!神様!」

 

『すごいステータスが伸びてる。それに、これはもしかしてピュラくんの言っていた魂の力?!』

 

「心から勝とうとすれば、きっと道は拓けるさ!さあ、勝つぞベルくん」

 

「勝ってきます。神様」

 

建物を乗り越えて通路の反対側に大猿が飛び降りてきた。

 

「うぉおおおおおおお」

 

ベルは、心の底から勝ちたいと魂を震わせ通りを駆け抜けて大猿に向かった。途中でなぜか、白い稲妻のように体が変化して形を失い、気がついたらすごい勢いで大猿の顔の前まで飛び上がっていた。その勢いのままに大猿の目をヘスティアから受け取った短剣で斬りつける。

 

「ギャァァアアアア」

 

大猿は目をやられて、むちゃくちゃに鎖を振り回している。斬りつけたあと、一旦着地して、大猿が腕を振り抜いたすきにその腕伝いに駆け上がり、胸の中心に勢いをのせた突きを放ち、魔石を砕いた。

 

ドスン

 

大猿が倒れて、塵となり消えていった。まわりで見ていた人々から大歓声があがる。

 

『やったぁぁああああああ!』

 

「神様、僕、やりました。」

 

「ベルくん、ベルくん。やったね。」

 

ベルくんが無事なのを見て、ヘスティアはふらついて倒れた。

 

「か、神様ぁぁあああ。」

 

.

.

.

 

たまたまその姿を見たシルが「豊饒の女主人」に二人をつれて行った。ヘスティアはベルくんにナイフをプレゼントするために頑張っていたせいで疲れて寝てしまっただけだった。

 

ベルは嬉しそうに神様にもらった剣を携えてヘスティアを看病していた。

 

「僕、神様にいただいたこの剣といっしょに強くなります。なぜかこの剣を携えていると神様といっしょにいるような気がします。大切にしますね、神様。僕も神様のことが大好きです。」

 

魂の力に目覚めたベルは魂の気配にすこし敏感になっていた。

 

(つづく)

 




ヘスティアナイフは原作以上に、ヘスティアの魂を感じられる剣としてベルくんに大事にされそうです。

ヘスティアはベルくんの告白を聞き逃すという大失態。無念。
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