死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか?   作:スキマ時間

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みんな、ごめんなさい

私はビーコンのCCTタワーでの戦いで、秋の乙女となったシンダーに敗れ、炎の弓矢で胸を撃たれた。

 

息ができない。苦しい。力が抜ける。視界が狭くなり、黒い闇へと溶けていった。

 

『これが私の運命なの?みんな、ごめんなさい。』

 

シンダーのセンブランスで、体が光る塵になり、サラサラと散っていくのを感じる。

 

「ピュラァーーーーーーーーーーーーーー」

 

ルビーが泣いている声が聞こえる。そのとき、塵となった体が、ものすごい光を浴びて何かが起きた。

 

どのぐらい時間が経ったかわからない、塵となっていた私が集まる。体が動かない。目を開けることすら面倒だ。

しばらくすると、何か胸に水のようなものを掛けられた。温かい。オーラがみるみる回復するのを感じる。

 

『ふぅ。』

 

息ができる。疲れた。もう少し休ませて。

 

『ジョーンやみんなが無事だといいな』

 

 

どのくらい寝ていたかわからない。目覚めると犬耳のファナウスの女の子と目が合った。

 

「はっ!体がある!」

 

「大丈夫?胸と足に大怪我をしてたけど、もう治ってるから心配いらないわよ。」

 

女の子が手を握って安心させてくれる。

 

「ごめんなさい。あなたが助けてくれたのですか。」

 

「助けたのはミアハさま。今、呼んでくるからちょっと待っててね。」

 

しばらくすると優しそうな男性が部屋に入ってきた。

 

「やあ、もう起きても大丈夫そうだね。私はミアハ。このファミリアの主神で、この子はナァーザ。私の家族だ。」

 

「こんな姿ですみません。私はピュラ・ニコス。助けていただいてありがとうございます。」

「あの、聞き間違いでなければ、神様とおっしゃいましたか?」

 

「ああ、そうだよ。ここオラリオでは珍しくないはずだが。」

 

「神様が珍しくない?とは、どういうことでしょうか?ごめんなさい、私のいたところでは神様は世界から去ってしまって御伽噺のなかの存在だったので。」

 

「ミアハさま、そんな世界があるんですか?」

 

「ナァーザ、思っていたよりもっと厄介な話かもしれん。」

「ピュラくん、君のいた場所について教えてくれるかい。誰もが知っていることでいいから。」

 

「そうですね。では、自己紹介も兼ねて、私はヴェイル王国のビーコンアカデミーの学生です。ビーコンタワーがどうなったか知っていますか?」

 

「いや、まずヴェイル王国という国やビーコン・タワーについて聞いたことがない。ちなみに、ここオラリオはこの世界で栄えている場所の一つで、田舎だから知らないというわけではないよ。」

 

「まさか!大陸間通信については?」

 

「なんのことだい?」

 

「私のいた場所では、離れた場所同士でもCCTを利用して話ができたのです。つい最近、私が死ぬまでは。ここは死後の世界なのでしょうか?」

 

「ずいぶん物騒な話をしているね。君がここにくる前、なにがあったんだい。」

 

「ここにくる前、私は秋の乙女という世界に4人しかいない魔法の使い手の1人、シンダーという名の女性ハンターと、通信タワー、そしてビーコンアカデミーの仲間を守るために対決していました。ですが、戦いに敗れ、タワーは壊され、最後に炎を纏った弓矢で射られたあと、シンダーの魔法の力で光輝く塵と化したのです。」

「その直後、友人のルビーが泣き叫ぶ声が聞こえて、ものすごい光に覆われ、気がついたら塵が集まって私になったように思います。」

「私、生きてますか?」

 

私は今、自分がどんな顔をしているかわからない。きっと、いつものように仮面をかぶって、心で泣いているのを我慢しているのだろうか。

 

「ミアハさま、この子大丈夫でしょうか?」

 

「ナァーザ、大丈夫だ。この子は強い。」

「ピュラ君、我慢することはない。辛いとき、悲しいときは泣いてよいのだよ。」

「君に出会ったとき、たしかに光り輝く塵からヒトガタになったのを見た。そのとき、君は息もしていなかったが、あわてて傷に回復ポーションを掛けたら、信じられない勢いで治ってしまったのだ。そして君は息を吹き返した。今、君はたしかに生きている。」

「ここは薬屋でね。もし君さえよかったら心が休まるまで、ここで店の手伝いでもしながらすごしたらどうだい。貧乏で猫の手も借りたいぐらいなんだよ。ね、ナァーザ」

 

「ミアハさま、その笑顔はずるいです!でも、手伝ってくれるとありがたいのは本当ね。悲しむ暇なんてないぐらい、みっちり教えてあげるから。」

 

この人達の気遣いを感じる。今、嘘でも笑えているかな。

 

「ありがとうございます。しばらく、お世話になってもいいですか?」

 

「じゃあ、食事にしよう。少しにぎやかになるね。」

 

「では、あらためて。ピュラ、私はナァーザよろしくね。」

 

「ナァーザ、ありがとうございます。お世話になります。」

 

自分でも、今は心がとても弱っているのがわかる。よい人達に出会えてよかった。

ジョーン、ノーラ、レン、ルビー、ワイス、ブラック、ヤン。みんな、ごめんなさい。

 

心優しいミアハとナァーザに助けられ、友人たちを思い出したピュラは泣いてしまった。

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