死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか? 作:スキマ時間
ピュラとナァーザはリリという少女をつれて「青の薬舗」に帰った。
ナァーザは、重傷を負ったリリを助けるために彼女のオーラを覚醒させ、そのときにナァーザとリリの魂が交わり、彼女の事情のかなり深いところまで知ってしまった。
そして、リリはナァーザの呼びかけを心の支えとして覚醒した。すべてを知られてしまった気まずさと、そのお姉さんのピンチを今までにない自分の力で救うことができたという驚きで、ドギマギしながら顔を赤くしてついてきた。
ナァーザはミアハにことのあらましを話した。
「ミアハさま、怪物祭りで事故があったようで、ピュラとわたしで町に溢れ出た下層のモンスターと戦い、そのとき近くで怪我をしていた彼女を助けたのですが。。。」
「ふむ、まずは3人が無事でよかった。」
「リリとやら、ナァーザのことを助けてくれてありがとう。」
「そ、そんな。私こそ、死にかけていたところを救われました。あの、あのときお姉さんが危ないと思ったら、無我夢中で、不思議な力が湧いてきたんです。それと、私のすべての事情はお姉さんに知られてしまいました。ちょ、ちょっと、いや、かなり恥ずかしいです。リリは、もうどうしたらいいのでしょうか?」
「ご、ごめん、リリ。とっさのこととはいえ。」
「うちの娘が、す、すまない。」
「本当のところ、もともとソーマファミリアには居場所はありません。お姉さんに知られてしまったとおり、ソーマ様はお酒の事以外なにひとつ興味がないですし、眷属は神酒を手に入れるため、弱い眷属からお金をむしり取るばかり、改宗もできないと思います。だからほとんどすべて諦めていました。もしかしたら、悪どい方法でもお金をこっそりためたら、ファミリアから脱退できるかもしれないという儚い夢だけが生きている希望でした。」
本当にどうしようもなかった。でも今はお姉さんがいる。そしてあのよくわからない力。レベルアップもしていない私が手にした不思議な力。
「ミアハ様、あの不思議な力のおかげで、いまお姉さんとこうして生きていっしょにいられるんだと思うと、それだけでドキドキします。わたしどうしたらいいでしょう。」
ピュラは、少女がピンク色の雷を放ちながら大きな木箱を受け止めたときのことを思い出していた。この子はオーラの力だけでナァーザを救った。あのオーラはレムナントで身近にいたチームメート、ノーラにとても似ていた。どうしてかはわからないが、ノーラに似た力に目覚めたのなら、もしかしたらこの子の力は今とんでもないことになっていて、恩恵に縛られる必要など、かけらもないのではないかと思い始めた。
それはそれでオラリオで悪目立ちするのが問題なのだが、ピュラはそこまでは気づいていない。
ピュラはこの懐かしい感じのするオーラを調べてみるしかないと思った。
「リリさん、あなたの力を試させてもらってもいいですか?あなたの力はわたしの友達だった子にとても似ているのです。もしもそうだとしたら、恩恵なんてなくてもわたしより強いかもしれない。」
「ははは、何を言っているのピュラ?ちょっと悪い冗談はやめてよね。あなたは下層のモンスターを3頭もぶち殺すぐらい強いのよ。それがなんでこの子より弱いってことになるの?」
「えと、鍛錬のときにちょっとだけ話したかもしれませんが、覚えてますか。腹筋800回、腕立て伏せ300回を一緒にやる羽目になって、それでも汗一つかかない友達の女の子。ノーラというんですが、その子はわたしよりだいぶ小柄ですが、センブランスの影響で筋肉の力を高めて、自分の体重の5倍の重りを持ち上げたり、巨大なモンスターを人にはとても持てない巨大なハンマーでぶん殴るんですよ。わたしもチームメートも一緒に鍛錬すると骨折したり重傷を負いました。もしかしたら、あくまで可能性の話なんですが、オーラの雰囲気から同じ気配を感じるんですよね。」
「ハハハ。う、嘘でしょ。わ、わたしがそんな怪物のような人のはずがありません。」
「ま、試してみればすぐわかることです。ちょっと腕相撲をしましょう。わたしの骨が折れたら治してくださいね。ナァーザ。」
「ほ、本気なの、ピュラ」
「わかりました。手加減してくださいね。わたし痛いのはいやなので。」
このお姉さん、化け物みたいに強かった。きっとわたしのことバカにしてからかってるんですよね。わたしが、下層の魔物を軽くひねり殺すお姉さんより強い?馬鹿なんですか?そんなことあるはずないじゃないですか。今までの苦労を馬鹿にしてるんですか?そうですよね。
二人は腕相撲を始めた。リリはバカにされているんだと勘違いして、思い切り力をこめた。リリの髪の毛が逆だって小さな稲妻が迸る。
ボキッ!
ピュラの腕の骨が折れた音がした。
「へ?嘘!キャァーーー。ごめんなさい。ごめんなさい。」
リリが顔を真っ青にして驚いている。
「あうぅ。痛い。ナァーザ、ポーションをお願いします。」
やっぱり、ノーラと同じなんだ。ピュラは納得したと同時にすごく懐かしい気がして、涙が溢れた。
「ピュラァーーーーーーーーー。回復ポーションです、すぐ飲んでください。」
回復ポーションを飲ませて、ナァーザがあわててセンブランスで治療した。
「ピュラ、大丈夫か。」
「はい、だいぶよくなってきました。」
「リリ、大丈夫です。おめでとう。ものすごい力に目覚めましたね。これなら、恩恵について気にしなくてもやっていけますよ。もう一人じゃない。わたしもあなたの友達です。だから、気にしないでください。昔の友達を思い出してちょっと泣いてしまっただけですから。」
「わ、わたし、ほんとにこれからどうしたらいいですか?ミアハ様、教えて下さいーーー!」
リリは青くなったり、赤くなったり、忙しい。
「ソーマのことはオラリオの治安を守るガネーシャやギルドにも探りを入れてみる。君は変装して私のファミリアに身を寄せないかい?」
「とてもご迷惑をかけてしまうかもしれませんよ。それでも構わないのですか?」
「ハハハッ。ピュラによると、それは魂の力なのだそうだ。ピュラがその力でナァーザを助け、ナァーザが君を助けた。その力は神の恩恵ではないが、私の家族の力には違いない。ある意味、君はもう私の家族なんだよ。」
リリはミアハに抱きついて大泣きした。そんな小さな女の子を、ナァーザとピュラも抱きしめた。
ミアハファミリアにちょっと変わったいきさつの眷属が増えた。オラリオのファミリアのあり方がすこしづつ変わろうとしていた。
(つづく)
リリルカ・アーデさんがベルくんに惚れるルートがなくなってしまいました。ごめんなさい。もうヘスティアナイフが盗まれることもありません。
リリが密かにもつ聡明さ、魂の輝きはノーラと近しいものを感じて、こんな設定にしました。m(_ _)m