死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか?   作:スキマ時間

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稲妻つながり

リリがミアハファミリアの探索に加わるようになった。

 

いつものサポータの姿だと、身バレする可能性が高いということで、ピュラの友達のノーラの姿絵を元に化けることになった。武器もノーラが使っていたミョルニルハンマーを元にヘファイストスファミリアで作成してもらった。

 

「ピュラの友達のノーラって、巨大な岩のようなモンスターでもハンマーで吹き飛ばすハチャメチャな女の子だよね。オラリオだとものすごく目立つと思うんだけど。大丈夫なの?」

 

「むしろ、そのほうが正体がリリだと気づかないのではないかなと。」

 

「わ、わたし、そんなすごい子になりきれるかな。」

 

「ノーラは元はいじめられっ子だったのが、レンに助けられてすっかり性格が変わったそうなのよね。たまたまなんだけど、リリとびっくりするぐらい状況がよく似てるのよね。」

「それと、リリのセンブランスの電気を瞬間的にヘファイストスの鍛冶屋にもらった指輪に流すとわたしと同じように大爆発するわ。魔剣と同じような威力があるはず。」

「この指輪をハンマーの後ろにはめて、相手にぶつける瞬間に爆発させればダストがないオラリオでも同じような威力になるわ。リリは体格がかなり小さいから、わたしが空高く吹き飛ばして落ちてくるときの勢いを利用したり、ハンマーを空中で体ごと何回も回転もさせて、その勢いを相手に叩きつけたりして体重の軽さを補えば問題なし。」

「モンスターをそのピンク色のハンマーで豪快に吹き飛ばしましょう。そんな姿から以前のリリを思い浮かべる冒険者なんているはずがないわ。」

 

『うわぁぁぁ』

 

空高く飛び上がったリリのピンク色のハンマーで、階層主が頭から粉々に打ち砕かれる姿を幻視して、ナァーザとベルはドン引きしている。

 

「それと、衣装も用意したわ」

 

黒のベスト、背中にはハンマーと稲妻が描かれている。白いノースリーブのトップスは、胸にハート型の穴がある。指先の無いピンクのグローブ。それとピンクのスカート。白い靴。靴底もピンクで、紐もピンク色。胸と腹に簡易の防具。ノーラのトレードマークの衣装だ。

 

「こ、これは、恥ずかしすぎます。」

 

「え、ものすごく似合ってるわ。」

 

「お、お姉さん。本気ですか?」

 

「かわいい!リリだとは絶対わからないよ。」

 

「お、お姉さんがそう言うなら。えへへ。」

 

「オラリオの人気者ナンバーワンは決定だな。本名がバレるとまずいから、電撃娘リルムという二つ名で売り出そう。」

 

「ミ、ミアハさま!わたしのことをお忘れですか!」

 

「あ、いや、ナァーザもかわいいよ。青の薬舗の看板娘は君しかいない!」

 

「ええ、そうですとも。」

 

ああ、みんな強すぎる!頑張って、僕ももっと頼れる冒険者にならないと。

 

ピュラ、ナァーザ、リリ、ベルの4人で探索するようになり、さらに深い階層へと向かう。

 

 

リリはハンマーの使い方をピュラから教わる。ミョルニルハンマー(鋼)と名付けられたその武器は、先端の片側が円筒、反対側は尖っており、電撃で起爆する指輪を差し込む場所がある。柄はリリの背丈より少し長い。重さはリリの体重の5倍ほど。全体が鋼鉄製である。後々はオリハルコン製のものを用意するが、それには素材を集めねばならない。

 

「すごく大きいです。」

 

「これをセンブランスの力で振り回す。センブランスを使いすぎるとオーラを消費して防御もできなくなるので、使うのは一瞬。あなたはナァーザを守りたいという心でセンブランスを目覚めさせた。誰かを守りたいという心で魂を震わせるのがよいと思う。」

 

「はい。」

 

「じゃ、私に思い切り振り回してきて。」

 

「え?いいんですか?」

 

「わたしはノーラといつも訓練をしてきた。遠慮はいらないわ。」

 

リリは重量のあるハンマーを軽々と振り回し、柄が曲がって見えるぐらいの勢いでピュラに襲いかかった。

 

「やぁあああああああ!」

 

ビューン、ズガーン。ピュラは軌道を読んで躱すが、地面に大きなクレーターができ、瓦礫と粉塵が巻き上がり、視界が悪くなる。

 

『ひええ、ほんとにリリ?どう考えてもレベル1の攻撃じゃないんだけど。』

 

ベルとナァーザは驚愕した。

 

「う、うそですよね。こ、これがわたしの力。」

 

「当たればね。どんどん鍛錬しましょう。しっかりグリップを握る。相手に向けてしっかり足を踏み込む。そして、思い切り振る。まず、基本の動きを繰り返してね。」

 

「はい」

 

リリはぎゅっとハンマーを握り、足をしっかり踏み込み、思い切り振り切る。ハンマーを振るときに風切り音がするぐらいに鋭くなった。

 

何十回、何百回。途中でポーションで回復して繰り返していく。ベルやナァーザも見様見真似で同じように剣を振り、動きを洗練していく。

 

あぁ、こんなふうにジョーンともっと鍛錬したかったなぁ。

 

次にピュラが盾を上に構え、リリが盾の上に飛び乗り、盾ごとピュラが打ち上げる。リリは空高く吹き飛ばされ、最初は空中での姿勢が崩れて落ちてきた。

 

「い、いやぁあああああああああああ!高い高い高い、高いですーーーーーー」

 

あわてて、ベルが受け止めようとするがピュラが止める。

 

「あのハンマーごと落ちてくるのを受けると死にます。リリ、ハンマーを地面に打ち付けるように動いて!今のあなたなら、オーラの防御で落ちても死なないから。」

 

くぅ。無茶振りを!クルクル回転しながらなんとか地面にハンマーを打ち付ける。

 

「やぁああああああああああ」

 

ズガァーーーーン!

 

『ただのハンマーの攻撃がこんな凄まじいことに』

 

すごい威力だが、落ちてきたリリもうまく受け身を取れず大ダメージのようだ。

 

「今のをハンマーを振り出す反動で、体の姿勢を保って着地まで決めれれば必殺の一撃となります。空中姿勢を保つところから頑張ってね。ふわっと上がりきるまで勢いにまかせるのがコツかな。」

 

「ひゃい」

 

回復ポーションを飲みながら、リリが答えた。

 

それから何度も飛ぶうちにリリは楽しくなってきた。こんなふうに空を飛べるなんて思いもしなかった。自分がこんな力を出せるなんて。空中でちょっとニヤリと微笑んでクルッと体をまわし、地面のどこを叩くか目測を立て、ハンマーとともに回転しだす、一回転、二回転、さらに勢いを増して三回転、四回転、五回転、柄も折れんばかりに振り回して叩きつける。

 

ズズズ、ズガァーーーーーーーーーーン!

 

反動でふわっと体が浮いて着地した。

 

『す、凄い。』

 

振動がダンジョンに響き渡った。

 

「で、できました!」

「やった!」

 

リリがピュラに飛びついてきた。4人で抱き合って喜んだ。小さくてアクロバットで力強い戦士がここに爆誕した。

 

その後も、何千回と鍛錬して、アクロバットな動きを身に着けていく小さな戦士。ベルはピュラとの組手で駆け引きや身のこなしを洗練させ、ナァーザは空中で無防備なリリが狙われないように、弓や魔法が飛んできたときを想定して、ピュラが投げた砲丸を撃ち落とす訓練をする。

 

ひと月ほどしたころ、チームは12階層のモンスターを圧倒し、殲滅するぐらいには強くなった。

 

 

ある日、ベルが豊饒の女主人でシルから受け取った本を読んで魔法を学んだ。

 

目覚めた魔法はサンダーボルト。稲妻を放つ魔法。リリの近くで放つとリリがその電流を溜め込んで、凄まじい力を発揮することが判明した。

 

「リリって、もはや冒険者を超えたなにかなのでは?!」

 

ベルが呆然としてつぶやいた。ナァーザも首を縦に振っている。

 

「いっ?なんだかベルさんの雷に撃たれるとその底力が湧いてくるといいますか。わたしってもはやなんなんでしょうね。あの魔法ってどう考えてもやばいやつですよね。大抵のモンスター相手だと一撃ですし。それを平気で吸っちゃうわたしって、人間やめてしまったのでしょうか?」

 

「大丈夫。リリはリリだよ。」

 

ナァーザがリリを抱きしめて慰めた。

 

「たぶん、リリのセンブランスの影響だと思うわ。ベルの魔法とすごく相性がいいね。」

「魔法ねぇ。使えるようになりたかったな。」

 

「え、ピュラさんも魔法を使える可能性があったのですか?」

 

「え、いや、レムナントで死ぬ直前に戦った理由というのが、秋の乙女という魔法の力を悪い人に渡さないためだったんだよね。もしもそこで勝っていたら。レムナントで4人しかいない乙女の一人となって、世界を守る運命を受け入れていたのかもって思って。」

 

「そういえば、ピュラには属性として秋っていうのがステータスにあったよね。もしかしてあれのこと?」

 

「属性だけですね。乙女は死ぬときに直前に強く思い浮かべた相手に力が継承されるそうなので、今の秋の乙女を私が倒さないかぎり、そんなことは起きないですね。もう会うこともないので、ありえないですね。」

 

「なんというか呪いのような力ね。そんな力が必要な世界って、レムナントは本当に怖い場所ね。」

 

「すみません。ちょっと昔を思い出してしまって。でも友達のルビーが持っていた力はその魔法よりも明るくて強かったのかも。おかげで私、死んだはずだったのに、今は生きてますから。」

 

「うんうん、ピュラにはそういう明るい力が似合っているね。おかげで、私達もすごく強くなれたし。」

 

「たぶん、僕もその影響を受けたんだと思います。グリモアを読んだとき思い浮かべたのがピュラさんのセンブランスで生じる稲妻だったから、あの魔法になったんだと思うんです。ピュラさん、ありがとうございます。」

 

「そうなんだ!わたしたち稲妻つながりだね。」

 

4人は不思議な繋がりにとても嬉しくなった。

 

(続く)

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