死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか? 作:スキマ時間
夜、夢を見た。崩れるビーコンタワー、周辺から集まり続けるグリム、ビーコンを去っていく仲間たち。
『ああ、ビーコンは陥落したんだ。守れなかった。ごめんなさい。』
秋の乙女になって、私が私でなくなってしまったときにとジョーンにメッセージを残しておいたけれど、まさか死んでしまうなんて。
『ジョーン、ごめんなさい。』
でも、今は生きている。ルビーから溢れた光、あれはなんだったんだろう。たぶん、あの光が死んでしまった私を助けてくれたのだ。
『ルビー、ありがとう。まだ私生きているよ』
今は少し休もう。
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早朝、目が覚めた。店裏の空き地で体を動かしてみる。シンダーの矢でアキレス腱を切られたはずの足は、何事もなかったように動く。
『もう歩けないかと思っていたのに。』
息を大きく吸って、吐いて。
『私、生きている!』
そういえば、ミロ(槍)は壊されて、アクオ(盾)はどっかに飛んでいってしまったし、サークレットもなくなってしまった。
でも、体は動く。オーラは失われていない。
さて、支度をしないと、今日は店のお手伝い。まずはそこから。
ナァーザと店で何を手伝うか話し合った。まずは自分がハンターを目指していて、グリムというモンスターを相手取ってきたこと。
戦いは得意だけれど、他はなんというか、あまり得意ではない。ちなみナァーザは薬師でありながら、弓が得意ということだ。
「今、新しいポーションを開発したいと思ってるんだけど、特殊な素材を集めるお金も時間もないんだよね。今のまま普通のポーションを売っていると、借金が増えていくばかりで、どうにもならなくなりそうなのよ。」
「ミアハさまは、人がいいからホイホイ無料でポーションを配ってしまうし。そう、あなたにホイホイ使ったみたいにね。」
「ごめんなさい。」
「いや、私もミアハさまに助けられた身だから、あなたのことは言えないのよね。でもね、だからこそ利幅のよい、他の店にない商品を用意しないとまずいことになりそうなの。そこであなたよ。」
「はい。私で手伝えることであれば。」
「ピュラの話を聞く限りだと、恩恵がなくても相当な強さのようね。」
「まだこの世界のモンスターの強さは知らないですが、どのぐらいの強さなんですか?」
「オラリオの外で普通に出会うモンスターはそんなに強くないわ。私は理由があって、モンスターと戦えなくなってしまったけど、あなたの力を測ることぐらいはできるわよ。怪我をする前は上級冒険者だったのよ。」
「それなら、まずは私のことについてもう少し話しておいたほうがいいですね。」
「そうね。教えてくれる。」
「私のいたところでは、人はグリムという化物の脅威にさらされていました。人々は魂の力であるオーラを纏って、ダストを利用した武器で戦うのです。オーラによって、防御、攻撃、回復ができます。」
「もしかして、回復ポーションの効果がとんでもないことになっていたのは、そのせいかしら。」
「かもしれませんね。小さな怪我ならオーラで塞がってしまいますから。」
「そんな力があるだなんて。ちょっと羨ましいかも。」
「次に、オーラをより実体化させたものをセンブランスといって、人によって個性があります。オーラは魂の力なので、だれにでも備わっています。きっと、ナァーザにも。そして、オーラを持つ者は他者の眠っているオーラを目覚めさせることができます。」
「え、私も持っているの?」
「危険はないと思うので目覚めさせてあげましょうか?」
「ええ、やってみて。どうすればいいの?」
「体に触れるので、じっとしていてください。」
ピュラの手が触れたところからじわっと白い光が広がる。体が温かい。耳がびくっとなった。
「ナァーザのオーラの他に、もう一つ力強いオーラを感じます。もしかして、これが恩恵でしょうか?」
「ああ、くすぐったい。ちょっと、もうだめ。」バフン
顔を真っ赤にして、頭から蒸気が出た。
「うーん。どうでしょう。これで開放できたはずです。なにか感じませんか。」
ナァーザは気合いをいれるとなんか体が軽くなった気がした。
「まだよくわからないけど、元気がでたような気がする。」
「センブランスはなにかのきっかけで発現するようになるので、あわてず鍛錬しましょう。」
「では手合わせしてみましょう。よろしくおねがいします。」
「え、武器はいらないの?」
「グリム相手なら武器はあったほうがいいですけど、鍛錬なら体術も使えるから問題ないですよ。」
「うわ、私、とんでもない相手と組手することになったのかも。」
「はじめましょう。」
ピュラはジョーンにトレーニングしていたときと同じように構えた。
左手を盾のように掲げる。右手をしっかり握る。足を前にしっかり踏み込む。
「行きます」
右手で突きを放つ。シュバッ
「うわ」
「さらに」
突きから裏拳を放つ。シュバッ
「うひゃ」
「さらにもう一度」
裏拳から回転を加えて体勢が崩れたところへ全力で殴りつける。シュバッ
「ひぇ」「聞いてた以上に強そうなんだけど。なんとか避けたけど、弓兵の自分だとぜんぜん敵わないかも。」
「ふふ、基本の型通りにやってるだけですよ。いつもジョーンと練習してたのを。」
『ジョーン、頑張っているかな。』
「これなら、十分手伝ってもらえそうかな。」
(つづく)