死にかけの無敵少女を拾うのは間違っているだろうか? 作:スキマ時間
ナァーザはピュラに素材集めを手伝ってもらうため、迷宮に入れるようにする決断をした。
「ミアハさま、ピュラにお店を手伝ってもらうことで相談したいのですが。」
「なにか問題でもあったのかい?」
「いえ、ピュラに向いていることがなにか話し合ったのですが、彼女はモンスターを倒すことを生業にしていたそうで、そのための力、オーラというのを持っているんだそうです。それで、素材集めを手伝ってもらおうかと思うのです。」
「実際、いっしょに鍛錬してみたら、私より技や速さ、力、あと不思議な回復力があって、圧倒されてしまいました。」
「なんと、恩恵なしで第三級冒険者の実力を上回るというのか。」
「それと、彼女はオーラという魂の力について詳しくて、私のオーラを開放してくれました。私のステータスにも、もしかしたら、変化があるかもしれません。」
「わかった。ステータスを更新してみよう。ただ、彼女は恩恵を受ける意味をわかってくれているのかい?」
「いえ、それはまだ説明していません。まずは、ミアハさまに、彼女への迷宮探索依頼の許可をいただいてから説明しようかと。」
「ふむ。ピュラ、恩恵についての説明は私からしよう。」
「ええ、よろしくおねがいします。ただ、ナァーザさんのオーラを開放したときに、彼女のオーラから恩恵についてなんとなく感じました。」
「君はよほど魂への感受性が高いのだね。とはいえ、オーラについて私はなにも知らないのだ。君を知るためにも、オーラを開放したナァーザについて先に確認させてくれるかい?」
「はい。」
「ミアハさま、ステータスの更新は久しぶりですね。ちょっと緊張してしまいます。」
ナァーザはベッドにうつ伏せになり、背中をはだけた。ピュラはちょっとびっくりして、顔を真っ赤にした。
「ああ、そうだったね。うっかりしていた。神の恩恵(ファルナ)は背中に神の血(イコル)を媒介として刻むのだよ。」
「恩恵自体はどの神が刻もうと変わらない。子どもたちが得た経験が経験値(エクセリア)として対象の能力を押し上げる。」
「では、ステータスを更新しようか。」
ミアハは指の先をナイフで切って血を垂らし、ナァーザのステータスを更新した。
ステータスの値はほとんど変わらなかったが、スキルが発現した。
「ナァーザ、おめでとう。スキルが発現したよ。書き写しておこう。君にぴったりのスキルだと思う。」
オーラ 100%
【スキル】
他者のオーラの増幅: 対象のオーラを増幅し、傷を癒やしたり、センブランスの効果を増幅する。
「えぇ、これは!ありがとうピュラ!」
ナァーザはピュラに抱きついた。
「ヒャ!う、うん。よかった。」
「ピュラ。私からも礼を言う。ありがとう。」
「え、ええ、どういたしまして。」
涙を流して喜んでいるナァーザを見て、ちょっと嬉しくなった。
「ピュラ、あなたのおかげでずっと諦めていたことが叶った。ミアハさまは私の恋人だけど、ピュラ、あなたは私の運命の人。私のわがままかもしれないけど、できれば家族になってほしい。」
「え、えと、どういうことでしょうか?」
「ナァーザ、嬉しいのはわかるけど、落ち着きなさい。順を追って説明しないと何を言っているかわからないよ。」
「ピュラ、君のいた場所で、グリムという化物と人々が戦っていたように、ここオラリオではモンスターはダンジョンから無限に湧き出てくる。」
「約千年前、天界から神々が降りてきて人の子たちに恩恵を授けた。」
「神の眷属となった子どもたちは神の家族(ファミリア)となってモンスターに対抗した。やがて、ダンジョンの上にバベルという塔を建設し、モンスターを閉じ込めた。」
「かつて、神が降臨する前、御伽噺に語られる時代には、恩恵なしでモンスターに立ち向かった英雄がいたと伝えられている。」
「今では神の恩恵を頼りに、多くの人々がにモンスターに立ち向かうようになった。」
「よいことばかりではない。下界に降りてきた神は、すべてが善神というわけではない。天界で娯楽に飢えて下界に降りてきた神のなかには、子どもたちを苦しめて楽しむような者もいる。」
「君は才能に溢れ、たぶん、いろんな神に目をつけられるだろう。才能を隠す道もある。だが、ナァーザと私は君を家族に迎えたいと思う。」
見知らぬ場所でまた大切な繋がりを持つ人たちができるという嬉しさが半分、一方で秋の乙女となる選択をしたときのように私が私でなくなるのではないかという怖さが半分。
わたしはどうしていいのかわからなくなった。
『俺の知るピュラ・ニコスなら困難から逃げたりしない。本気で世界を救うのが運命だと思うなら、君はなにがあってもやり遂げる。』
『ジョーン!?』
「恩恵を受けることで、私が私でなくなったりしませんか?」
「恩恵は君の経験を形として後押しするだけだ。力に溺れるなら別だが、人格が変わったりするわけではない。そういう意味でも、恩恵はどの神から受けてもいっしょなのだ。」
「だから、家族になるというのは力を求めてなるのではなく、もっと純粋で、精神的なものだ。」
「それに、恩恵を受けてしばらくはもとの人とほとんど変わらない。そこからいろんな経験をして、それを糧として変わっていくんだ。」
「恩恵はそれを後押しするだけだ。」
「神ミアハ、あなたは運命を信じますか?」
「運命を信じないから天界から降りてきたのさ。人の子の魂の輝きを見たい。どの神もそれが願いだ。」
「私は運命とは、逃れられないことではなく。一生をかけて成し遂げるものと思っていました。今もそう思っています。」
「ピュラ。ひとつ約束してほしい。どんなことがあっても、生きて帰ってくるんだ。君は一人じゃない、家族を頼ってほしい。」
「ミアハさま、そのためには家族を増やさないとですね!」
「そうだな、ナァーザ」
「わかりました。家族にむかえていただいてもいいですか?」
『ジョーン。私、今度こそ成し遂げてみせる。あのとき一人で行ってしまってごめんなさい。』
「もちろん、零細なファミリアだが、よろしく頼む」
(つづく)