マクロスΔ スイートプリキュアの軌跡 作:水無月 双葉(失語症)
カナメの手拍子に合わせカナメを除くワルキューレの4人と響達3人合計7人でダンスの練習をしている。
響は自分の前で踊っているフレイアのタイミングがずれているが気に成っていると、案の定カナメから鋭い声が掛かった。
「フレイア!」
「す、すみません」
フレイアは謝りながら頭を下げる、そこにカナメの叱責が入る。
「もう一度初めから、余計な事は考えないで」
叱責を受けるフレイアに目線を送る奏、その奏の視界に不機嫌そうに髪をいじくる美雲が入り奏は渋い顔をした。
シャワーの併設されたロッカールームで汗を流した後、思い思いが寛いでいる。
エレンがシャワールームから首元を拭きながら出て来ると、下着の様な姿のマキナとレイナは寄り添いながら何かの端末を確認しており、カナメはラフな格好で化粧をしていた、部屋の隅に視線を動かすと下着姿の響が同じく下着姿の奏とダンスの振り付けを確認し合っている。
「フォールドレセプター、ノンアクティブ……生体フォールド波反応なし……」
レイナの端末を除いているマキナがドライヤーで髪の毛を乾かしながら小さく呟く。
「なんでかなぁ……」
「フォールドレセプターは私達の精神に呼応して生体フォールド波を発生させるもの、戦場や命がけの状況で精神が高まった方がより力を発揮する……」
カナメは化粧をしていた手を止めると、何かを思い出しているかのような口調で話す、その口振りにエレンはきっとカナメも辛い時期があったのだろうと感じていた。
「本番じゃないと駄目なタイプかもね……」
自嘲気味に笑うカナメ、エレンは何か話すべきかと逡巡する。
「足元が見えていないのよ」
言葉と共に現れた美雲は、頭と体にバスタオルを巻いたままの姿で出てきてエレンはギョッとした。
「空ばかり見上げていては飛べないわ」
美雲は不敵な笑みを浮かべ言い切り、エレンはそんな美雲の言葉に昔の自分を思い出し自嘲する。
いつもの練習室で、フレイアのフォールド波を計る為に1人で歌っている姿を見ながら響は心配していた。
不運にも今日はミラージュとハヤテの勝負の日でもあり、フレイアにとっても大切な測定の日だからだ、響は覇気の無いフレイアの歌声を聞きながら、何か自分で出来る事は無いかと悩む。
歌声が段々小さくなり、歌うのを止めてしまったフレイアを見て響はカナメと美雲に目線を送る、響と目が合った美雲は大げさに肩をすくめ溜め息を吐く、カナメも小さく首を横に振ると爪型デバイスを操作する、部屋中の壁がモニターになり外の演習が映し出される。
「ハヤテ……?」
まるでフレイアの呟きに合わせる様にハヤテの乗るVF-1EXに無数のペイント弾が撃ち込まれる。
「ああぁ……」
フレイアの小さな悲鳴を聞きながら、響はミラージュは絶対に容赦はしないと考えていた。
最初、ミラージュから演習の相手を頼まれた時は彼女に認めて貰えたと感じ喜んだ、だがきっと自分は最後の最後で勝ちを譲ってしまうと考え、せっかくの申し出を断った。
複雑な思いで画面を見ていたが一瞬ハヤテの機体の挙動がおかしくなる、響の脳裏に数日前のハヤテと飛んだ日を思い出す。
「まさか、AIを切ったの……」
響は眉を寄せ小さく呟き、画面に向かって思わず叫んだ。
「ミラージュさん早くAIを入れて! ハヤテが墜ちちゃう!」
響の叫びに部屋の中が一瞬静まり返る、フレイアは恐怖で表情を歪める。
「ハヤテが墜ちる……?」
カナメは響の言葉とフレイアの呟きを聞き演習の音声を室内に流す。
「ブルー、高度急速に低下!」
「アンコントロールの模様です!」
ブリッジ内の緊迫した雰囲気が伝わり固唾を見守る中、フレイアが震える自身の肩を抱きしめる。
「アン……コントロール……」
「ハヤテ・インメルマン候補生、ただちに脱出しなさい!」
「うるせえ!」
ミラージュの指示をハヤテは即座に拒絶をした、フレイアは息を飲み、響達は墜ちて行くハヤテの機体から目を外せないでいた。
「負けたら飛べなくなる……」
絞り出されたハヤテに言葉を聞いた奏は一瞬眉を寄せる。
「……ミラージュ! 強制脱出を」
アラドの指示に安堵の息を漏らす一同、しかし響はモニターを睨みつけたままだった。
「了解……駄目ですサポートだけではなく遠隔操作も切られています」
切羽詰まったミラージュの声が室内に響く。
「「あの馬鹿!!」」
アラドと響の声が重なり室内が重苦しい雰囲気に包まれる。
「消化班及び救護班! 緊急待機!」
「「了解!」」
アーネストの言葉を受けオペレーターが的確な指示を飛ばす。
水面に吸い込まれる様に墜ちるハヤテ機を見ていた響は、奏とエレンに目線を向けると2人は当然の様に頷き3人は机の上に無造作に置いてあったキュアモジューレに手を伸ばす、響達の行動と同じくしてフレイアが部屋から飛び出そうとしたがその行動を止める声が室内に響く。
「何処に行くつもり」
普通に発せられた美雲の声に4人の動きは止まってしまう。
「今はレッスン中よ」
美雲の声は穏やかだが逆らう事は出来ない力を持っていた。
「でも、ハヤテが……」
絞り出したフレイアの言葉に美雲は、フレイアから目線を外さないで言葉を続ける。
「彼は今自分の戦場で戦っている」
美雲は腰かけていた手すりから滑る様に下の段に移動するとフレイアに向かって歩く。
「フレイア・ヴィオン、貴女の戦場は何処なの?」
美雲の言葉に息を飲むフレイア、美雲はキュアモジューレを持ったまま立ちすくんでいた響達に目線を向ける。
「美雲……」
エレンは小さく美雲の名前を呟くと、手に持っていたキュアモジューレを机に戻す。
「エレン……?」
少しだけ咎める様な響の声色にエレンは辛そうに微笑む、2人を交互に見た奏は首を小さく横に振り響の肩に手を添える。
「響……薄々気が付いているよね……」
奏の言葉に唇を噛み締め小さく頷く響、3人のやり取りを見ていた美雲は満足そうに微笑んだ。