マクロスΔ スイートプリキュアの軌跡   作:水無月 双葉(失語症)

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 体勢を立て直そうして呻くハヤテの声が室内に響く、墜ちて行くVF-1EXに手を伸ばしハヤテを助けようとするフレイア。

 

「フレイア、貴女の心は今、どこにあるの?」

 

 後ろからエレンに声を掛けられ、フレイアが振り向くとエレンは自分の胸に手を添えていた。

 

「私の心……」

 

 フレイアは小さく呟くと、エレンに倣い自らの胸に手を置く、ゆっくりと頭のルンに光が集まる。

 

「分かるでしょう、貴女の鼓動が…………それが貴女だけのビート、貴女の心の、貴女の魂のビートを信じなさい」

 

 エレンが見つめる中、奏がフレイアに声を掛ける。

 

「ねえフレイア、ワルキューレに夢を見る時間は終わっているのよ」

 

「夢が終わったん…………?」

 

 エレンと奏を交互に見つめ小さく呟き瞳を閉じた。

 

 瞳を閉じたフレイアの耳に響の優しい声色が届く。

 

「次は貴女が夢を見させる番だよ、フレイア……」

 

 響が諭す様にフレイアに言葉を掛けると、今までにないほどの光を見せるフレイアのルン、ゆっくりと瞳を開き、紡ぎ出されるフレイアの歌声。

 

 墜ちて行くハヤテに手を伸ばし思いを紡ぐフレイア、墜ちていたハヤテの機体が安定しだす。

 

 シンクロするフレイアの歌とハヤテのVF-1EX、その2人に寄り添う様に室内に流れ出すピアノの音。

 

 奏は音の主が響である事は直ぐに分かった、何度も一緒にピアノの演奏をしたのだ分からない訳が無い、奏はピアノを弾いている響を眩しそうに見つめた後、隣に座り響に合わせ連弾を開始する。

 

 エレンは連弾を始めた響と奏を見て口元を緩めると、側に置いてあったギターを爪弾きだす、フレイア、響、奏、エレン、4人の音が重なりハヤテの背中を押す。

 

「フォールドレセプターアクティブ」

 

 レイナが数値を確認し、一緒に数値を見たマキナが小さく喜びの声を上げる。

 

 カナメが安堵の息を吐くと、美雲がクスリと笑い響達を見てからフレイアに視線を動かし音源を流しだす。

 

 歌に演奏に熱がこもる、美雲は心地よい音に身を任せ聴いていたが体の疼きが止められずに4人の中に入っていく、美雲が歌いだしたのが分かったマキナとレイナも頷き合うと楽しそうに歌いだす、カナメは歌いだした仲間達を眺めた後、しょうがないといった表情をしつつも自らも歌いだす。

 

「まだ試験は終わってないぜ! 教官殿!」

 

 ハヤテはミラージュの後ろに着けると、一気に攻撃を開始するが、ミラージュはあっさり避けてそのまま激しいドッグファイトを繰り広げる。

 

 ミラージュがハヤテを完全に捕えたと思った瞬間、ハヤテは機体を強引に垂直に立ち上げる、機体全体で風を受けブレーキをかけると、ミラージュは一瞬攻撃をするのを躊躇してしまう、ハヤテはその隙を逃さずにガウォークに変形すると一気に上昇し、ミラージュの視界から逃れ太陽を背にしバトロイド形態でミラージュに強襲し、数発のペイント弾を見事に命中させた。

 

「ぃぃいょっしゃー!」

 

 室内がハヤテの勝利に沸いている中響は演奏を止めると、ミラージュの機体を何とも言えない表情で見つめている。

 

 奏とエレンは響の手が止まった事により演奏を止めるが誰も気が付いて無く、モニターに映るハヤテのバトロイドの踊りに見入っていた。

 

「響……」

 

「大丈夫、ちょっと悔しかっただけ、フレイアの背中押したけどね……」

 

「そうだね………………」

 

 奏は響の胸の痛みが理解出来ていたので言葉を続けられなかった、手を握り合うと響は力なく笑う、響と奏の肩にエレンが手を置くと、3人はただ踊り狂っているハヤテの機体を見つめていた。

 

「踊っている」

 

「ひらひら~」

 

 レイナの言葉に合わせマキナが上機嫌でクルリと回る。

 

「この子の歌で……」

 

「インメルマンダンスってとこかしら……?」

 

 カナメが感嘆の声を出し、美雲が両掌を踊る様に動かしハヤテの動きをトレースしていた。

 

 ハヤテの機体がバトロイドからファイター形態の戻り大空を翔ける。

 

 遥か上空からハヤテの機体にペイント弾が撃ち込まれメッサーの機体が迫って来た。

 

「何時まで踊っている」

 

 熱を感じさせないメッサーの声に室内が静まり返る。

 

「いきなり卑怯だぞ」

 

「それが戦場だ、正々堂々、一対一の戦いなど存在しない」

 

 メッサーはハヤテの後ろに受けるとそのままついて行く、やり取りを聞いていた響と奏の瞳が一瞬細められる。

 

「そっち最新鋭機だろう」

 

「死にたくなければ戦う術を身につけろ」

 

 ハヤテの機体がメッサーによって塗りつぶされていく、その姿を見た奏はカナメの側に近寄るとカナメは小首を傾げた。

 

「こちらの声を向こうに伝えられますか?」

 

「出来なくは無いわ、何処まで通信できるようにしたいの?」

 

 奏のいきなりの願いに戸惑いながらもカナメは答える。

 

「ブリッジ含め全てでかまいません、お願いします」

 

 頭を下げた奏を見て、カナメは小さく息を吐き通信を可能にすると、奏に目配せをした。

 

「メッサー中尉、そのまま撃ち続けて下さい」

 

 奏のありえない提案に室内が騒然とする、そんな奏を眺めながら響は、日ごろ「さん」付けで呼んでいるメッサーを階級で呼んだ事により、如何に奏がハヤテに対して怒っているかを理解し、響も語りだした奏の側に移動する。

 

「ハヤテ聞こえているよね、メッサー中尉の言葉は本当だよ、相手は力の差なんか関係なく攻撃してくるし、ましてやハヤテが強くなる事なんて待ってはくれない、今日ハヤテは何回墜ちたと思う?」

 

 奏は大きく息を吸うと更に目付きが鋭くなる、奏が声を出そうとした時、響が奏の肩を掴む、しばらく見つめ合うと奏は小さく頷いた。

 

「ハヤテは気が付いている? 今日、ミラージュさんは私達に教えてくれたマニューバしか使っていない事に、ミラージュさんはもっと色々な飛び方を知っているのに、ハヤテの知らない技術は使っていなかったんだよ、知らないよね! ミラージュさんの講義を碌に出て無いから、ハヤテ……いい加減目を覚まそうよ、これ以上メッサーさんやミラージュさんを悪者にしちゃ駄目だよ、アラドさんに誘われたのが原因でも入るって決めたのは……ハヤテだよ、忘れないで!」

 

 美雲は画面を睨みつけ鋭い声を出す響を眺めながら小さく笑みを漏らす、それを横目で見ていたカナメは、美雲と響は似た者同士だと感じずにはいられなかった。

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