マクロスΔ スイートプリキュアの軌跡 作:水無月 双葉(失語症)
「話してる最中にごめんね、響ちょっと良いかな?」
声を掛けられた響はエレンを離しながらミズキに顔を向ける。
「何? ミズキ」
余り接点の無いミズキに声を掛けられ響は小首を傾げる。
ミズキは少し酔っているのか顔が少し赤くなっており、その手にはアルコールの入ったグラスが持っていた。
「響って、柔道の試合で艦長を投げたって本当?」
「艦長? あぁ、アーネストさん? うん、投げたよ」
何でも無い様に響は答え、取り分けておいた料理を口に運ぶ。
「本当だったのね……ね、どうやって投げたの?」
「どうやってって、んー」
箸の先端を咥え斜め上を見ながら少し考えだす響。
「アーネストンさん大きいし力もあるから、懐に入り込んでアーネストさんの勢いを利用して、えいって投げた」
響の話を聞き騒然とする一同、ミズキは眉間にしわを寄せながら響に顔を寄せると、響はミズキから漂って来るアルコールの匂いに驚き、取り違えない様に自分のグラスを引きよせた。
「えいって……そんな簡単な話し? 艦長二メートル越えよ、怖くないの?」
簡単に話す響に呆れ顔のミズキ、響は自分のグラスに口を付けると半分ほど勢いよく飲む。
「大きいけど、戦っていた相手はバルキリーぐらいの大きさがほとんどだったし、それとアーネストさん迫力が凄かったから、かえって燃えた」
響はグラスに残っていた残りを全て喉に流し込む、響の話に対してエレンも特に突っ込まない事からテーブルに居たミズキ達は何とも言えない雰囲気に成ってしまう。
「ねえ、みんなも歌うの?」
気まずい雰囲気を打ち破ったのはチャックの妹のエリザベスだった、いつの間にかテーブルに寄って来ており無邪気に問いかけて来る。
「いいや、俺はエアショーをするんだ」
ハヤテが、普段見せない優しい表情でエリザベスに答えると横目で響に目線を送る。
「私達はワルキューレの後ろで演奏するんだよ」
響はエリザベスに笑い掛けながら教える、響の言葉を聞きエリザベスの目が輝く。
「ワルキューレと同じステージなんてすごい」
「エリザベス、まだ秘密だから内緒だよ」
エレンが少し笑いながら話すと、エリザベスは大きく頷き嬉しそうにテーブルから移動する、小走りで走ってくエリザベスを見送った後に、ミラージュがテーブルに目線を送りながら少し雰囲気を変える。
「例のアンノウンが現れる可能性もあります、気を抜かず私の指示に従う様に」
ミラージュの真剣な声色に響とエレンは表情を引き締めるがハヤテは何時ものペースを崩さない。
「ほいな、ほいな」
真剣味のかける返答にミラージュは眉を寄せるがフレイアがハヤテを睨む。
「あー、それもしかして私の真似?」
「さあねえ」
ハヤテとフレイアのやり取りを見ていたミラージュは表情を曇らせる、響は自分の皿に料理を乗せながらもミラージュに声を掛ける。
「任せてミラージュさん」
響はミラージュに笑いかけると悠然と食事を再開した。
「で、レディMは何だって?」
「フレイアの能力が安定するのを持っている時間は無いって…………」
アラドとカナメがカウンターで少し近づきがたい雰囲気を醸し出しながら会話を始めていた。
「荒療治か……フォールドレセプターの話は?」
「今はまだ…………」
アラドの問い掛けにカナメは少し俯き小さく呟く。
「ハヤテ君には?」
俯いていた顔を上げアラドに問いかけるカナメ。
「こっちも、まだだ」
アラドがグラスを軽く揺らすと氷の澄んだ音が踊る。
「あと、響達については?」
「可能な限り手元に置いておく様にと、報告には彼女達のDNAデータも添えてあります、彼女達と私達のDNAは変わり有りませんでした」
溜め息を吐きつつアラドがグラスを傾け口を湿らせ、虚空を見つめる。
「異世界人って言い方で良いのか分らんな、それとプリキュア件は何か言っていたか」
「戦闘データも出来るだけ集めて欲しいと、前回の戦闘データを私達のも含め送ってあります」
「データ収集……ね、確かにあの力は野放しに出来んしな」
グラスを置くとアラドの視界にメッサーが入り、半身を向けるとカナメもそれに倣いメッサーに視線を向けた。
「戻るのか?」
「たまにはゆっくりしてったら」
「いえ、基地で待機しています」
アラドとカナメに答えるメッサーの表情は柔らかい、カナメはそんなメッサーを見ながら周りにも今の表情で付き合えばいいのにと思わずにはいられない。
「そうか……」
「お疲れ様」
「メッサーさん待って下さい」
踵を返し店から出て行こうとしたメッサーを呼び止める声に、アラドとカナメにメッサーは声の方に振り向くとそこには奏が立っており、手に紙袋を持っていた。
少し大股でメッサーに近づくと奏は手に持っていた紙袋を強引にメッサーに押し付ける。
「何だこれは」
紙袋を手に訝しむメッサーに、奏は笑顔を向けた。
「サンドイッチとカップケーキです、もしかすると先に帰られると思ったので夜食です、カップケーキは甘さ控え目なのを入れてあります、メッサーさんに私の気合のレシピ見せてあげます」
奏は少し胸を張りふんすと鼻を鳴らすと、取り付く島も無く厨房に戻っていく、カナメは声を殺して笑っておりアラドは肩を揺らしていた。
「メッサーお前の負けだ、持って行ってやれ、食ったら感想ぐらい言えよ……ククク」
アラドの言葉にメッサーは憮然としながらも紙袋を手に持ち店を出て行く。
少し遠くでマリアンヌが絶望的な表情をしていたのを誰も気が付かなかった。
「少し、良いですか」
奏が、3人分の飲み物と数種類のカナッペを盛った皿を乗せたトレイを持って立っており、アラドとカナメを見ていた、アラドは席を移動しカナメとの間を開けると奏を促す。
「話ってのはなんだ」
「ミラージュさんの座学から少し気になる事がありまして、
少し眉を寄せ言葉を選んでいる奏を横目で見て、アラドは奏の持って来たグラスに口を付けた。
「アル・シャハルでの戦闘で上空に居た所属不明機の事ですが、少し気になる事があるんです、それは………………」
「ううぅぅぅ……お腹が……ゴリゴリ…………」
裸喰娘娘のテラス席に移動した響達は、テーブルに突っ伏して呻いているフレイアに呆れていた。
「ほら、食いすぎだっつうの」
ハヤテがフレイアの目の前に飲み物を置く、その脇にはカップケーキの残骸が幾つも置いてあった。
「あれだけ食った後に、それだけカップケーキ食べればそうなるだろ」
「だって美味しかったんだもん」
テーブルに突っ伏したまま情けない声で言い訳をするフレイアが、のそりと起きてグラスに手を伸ばす。
「あんがと」
ハヤテの用意した飲み物を一気に飲むフレイア、ルンが小さく光りフレイアが元気になっているのが分かる。
「うん、あぷじゅー!」
「アップルジュースな」
ご機嫌なフレイアに呆れたハヤテの突っ込みが入る、2人の様子を見ていたマキナがフレイアに言葉をかける。
「ラグナにもなれたみたいね」
「ほいな、何だが私の村に似ている気がするんよ」
フレイアが少し遠くを見つめ懐かしむ。
「それって、ウィンダミアの」
「風がすっごく気持ちよくって、空も大地も真っ白で雪が積もってリンゴ畑があって……」
フレイアは、瞳を閉じ故郷の情景を浮かべながらひとつひとつ愛おしそうに言葉を紡ぐ、その姿を見ていた響は、今は遠い自身が住んでいた街『加音町』を思い出す。
「あんまり」
「似ている要素ないけど……」
マキナとレイナが首を傾げながらぼやく。
「え? ……ぁ、本当だ、何でかねぇ」
フレイアは後頭部を掻きながら照れ笑いを浮かべる。
「雰囲気が似ているのよ、きっと」
後ろから掛けられた言葉に全員が振り向くと、エレンがコップを人数分乗せたトレイを片手に立っていた。
「雰囲気……?」
フレイアの呟きを聞きながらエレンは響の前にコップを置くと、両手を出したマキナにトレイを渡しながら思案顔になる。
「そう、フレイアに分かりやすく言うと、多分……街の風が似ているのよ」
顎に手を添え考えていたフレイアは、エレンの付け加えた言葉に大きく頷く、そのやり取りを見ていたハヤテは、会話から逃れる様に夜の海を眺め物思いに耽る。
「故郷か…………」
小さく呟かれたハヤテの言葉は海風にかき消され誰の耳のも届かなかった。
響は会話に加わらず加音町に思いを馳せていた、少し前までは嫌いだった音楽の街、生まれた事を疎ましく感じた時期もある、だが色々な経験を積んで好きになったあの街の、今は全てが懐かしい。
響は、手に持ったカップケーキを一口で頬張ると、望郷の念と一緒に飲み込む。
瞼に残るはアル・シャハルでの光景、街は炎に包まれ、瓦礫の影で泣いている幼子を抱きしめた、だから今はこの世界の事だけを考えよう、プリキュアの使命は人々の心を守る事なのだから。
色々とキャラ崩壊を起こしておりますが、タグ追加した方が良いですかね。
エレンがクール系に成りつつあったり、響はミラージュになついたり、しかし、一番書いていて驚いたのが、奏がやたらとメッサーに絡む絡む、此からもこのような感じて進んでいくと思いますが、お付き合い頂けましたら幸いです。
後、個人的には最後の部分が特に気に入ってます、皆さんにも気に入って頂けたら嬉しいです。