マクロスΔ スイートプリキュアの軌跡 作:水無月 双葉(失語症)
『アイテール分離、重力制御異常なし』
『フォールドエネルギー、コンデンサより順次開放』
『恒星間航行モード始動、アイテール、トランスフォーメーション開始』
『艦内重力制御モードC、ヒートパイルクラスター接続、各部異常なし』
『現在フォールド航行中、デフォールド予定時刻まで30分』
艦内放送が流れる廊下を響は何時もより大股で控室に向かっていた、その後ろを奏とエレンが遅れない様に早足で歩く。
「響、そんなに怒ったって状況は変わらないよ」
不機嫌さを隠す様子も無く荒々しく歩く響に、奏は溜め息混じりに声をかけると響は勢いよく振り返る。
「だってアラドさんもメッサーさんも信じてくれないじゃん! 私嘘なんて言って無いのに!」
「いきなりあんな話を信じろと言っても無理だよ、それに私達だってひかる達から聞いた時、最初は信じられなかったでしょう」
奏の発した言葉に響は一瞬言葉に詰まり、ばつの悪そうな顔をした。
「そうだけどさぁ、信じて貰えると思ったんだよ、ミラージュさんからあの話を聞いた時はさ」
「短時間で、出来る人も限られている、って言ってたでしょう」
口を尖らせた響を、エレンが宥めながら奏に目線を送ると、奏は分かっているとばかりに頷いた。
「今日のライブが終わったら、もう一度私からも話をするからって、フレイア?」
奏は思い詰めた表情で歩いていたフレイアを見つけ、響に掛けていた言葉を途中で飲み込む。
いぶかしむ奏に響も奏の目線を追うが、響が見たのは、角をまがったフレイアの背中だけであった。
「格納庫…………」
「ええ、きっとそうよ」
奏の発した独り言にエレンが合いの手を入れる、2人の話を小耳にはさみながら響は、格納庫に行くべきかと思案していた、きっとデルタ小隊の皆は出撃前で集中力を高めている筈だ、その邪魔だけはどうしてもしたくは無い。
「どうしよう…………」
「響?」
小さく呟いた響に奏が声をかけるが響は一向に返事をしない、奏は眉を寄せると響の肩に手を置いた。
「わっ、びっくりした、何? 奏?」
「何じゃないよ、気になるんでしょう?」
奏は、分かっていると言わんばかりに、響を促す。
「気になるけど、出撃前の邪魔はしたくないよ……」
「なら、むしろフレイアを止めないと不味くない?」
2人の会話を聞いていたエレンが言葉をはさむと、響は一瞬虚を突かれた顔をしたが、直ぐに表情を改めて格納庫へ早足で向かいだす、その姿を見た奏とエレンは軽く笑うと、響に追いつくために小走りで足を進めた。
「飛べば飛べる! 人生30年! 考えてる暇があったら飛び続けんとやね」
格納庫から聞こえたフレイアの言葉に響達の足は止まり、お互いの顔を見合わせた。
「……30年?」
絞り出す様に奏が呟くと響が眉を寄せる。
ハヤテに感謝の言葉を述べ、意気揚々と格納庫から小走りで去って行くフレイアをつい見送ってしまう。
「行こう」
響は一度大きく深呼吸をし、格納庫へと入って行く。
見た事のないカラーリングを施されたバルキリーの側に居たのは、ミラージュとハヤテ、整備兵のガイとハリーだった。
「ミラージュさん出撃前にゴメン、今の話ってどう言う意味?」
訓練中稀に見せる表情で、話しかけて来た響にミラージュは一瞬目を伏せたが、覚悟を決め顔を上げる。
「良い機会だから教えておく、だが、同情はするな、良いな」
ミラージュは、響達を見まわし一度咳ばらいをする。
「ウインダミア人は、身体能力の高さと引き換えに短命な種族、平均寿命は…………30年だ」
響はミラージュの話を聞き、知らず知らずのうちに喉を鳴らす。
「30年って…………どうにもならないんですか? だって……ワープだってあるじゃないですか!」
ミラージュに詰め寄るとその腕を掴み響は声を荒げる、その姿を見たハヤテとハリー俯きガイはきつく目を閉じた。
「科学技術凄いんでしょう!」
「同情はするな、と言ったはずだ」
ミラージュの腕にすがり、懇願するような叫びを上げた響に、間髪いれずミラージュは無表情で言い放つ。
「響」
エレンは響の肩を掴むと、強引に自分の方に体を向けさせ抱きしめた。
「フレイアは全てを受け入れてこの場に居るはず、その思いを、気持ちを踏みにじっては駄目」
「そうだよ響、響がフレイアを大切に思う様に、ミラージュさんもハヤテも、ううん、エリシオンの全ての人達がフレイアを大切に思っている筈、なら私達に出来る事をしようよ」
奏の声色は優しく温かさを感じさせた、その声は側に居たハヤテやガイ達、そしてミラージュの心をも癒していく。
響とエレンを抱きしめた奏の姿を見たミラージュは、温かい気持ちに包まれる、何にでも全力な響、その響を理解し、寄り添っている奏とエレン、ミラージュは如何に自分が他人と距離を取っていたのかを思い知る。
ミラージュの祖父母は伝説のエースや天才と呼ばれ、響の両親も世界的な音楽家と聞いている、なのに響はそれ受け止め、自分の音楽に対して糧にしている、だがミラージュは人に頼る事も無く1人で模索していた。
響達と出会う事でミラージュの心が変わりだしていたが、ミラージュ本人はその小さな変化に気が付いていなかった。