マクロスΔ スイートプリキュアの軌跡   作:水無月 双葉(失語症)

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「フレイア、貴女はどんな思いで歌うの?」

 

 ライブ会場上空に差し掛かる直前に、美雲からの唐突な質問。

 

「え……どんなって…………」

 

 正面から見つめてくる美雲の雰囲気にのまれフレイアの足が震えだす、逃れるかの様に目を伏せ言葉に詰まっていると、それを知ってか知らずかマキナが小首を傾げた。

 

「じゃあ、クモクモはどんな思いで?」

 

 美雲は、美しい切れ長の瞳をマキナに向けると薄く笑い、ゆっくりとフレイアに視線を戻す。

 

「そうね、今日私を満足させられたら教えてあげる、出来なければ貴女はワルキューレに必要無い」

 

 息を呑むフレイアを美雲は楽しそうに眺める、果たしてフレイアはワルキューレに必要なのか、否、自分の隣に並びうる人物足るか。

 

「それに貴女達もね」

 

 意味深な目線を響達に向けた美雲は挑発的な笑みを浮かべた、響は逃げる事無く美雲の視線を受け止める。

 

「私は難しい事は言えないよ、でもね、私は音楽を楽しむ、だって……音を楽しむのが音楽だよ、それに音楽はそれだけで雄弁に語るからね」

 

 奏は力強く宣言した響に頼もしさを感じる、音楽一家に生まれ才能を開花させる前に音楽を嫌いになった、だが色々な経験をして音楽に帰って来てくれた、才能の蕾も膨らみ出した、そんな響と喧嘩も沢山した、角付き合った時期もある、だからこそ、だからこそ響と奏は強い思いで結ばれた。

 

「音楽は音の結晶……そして空気の詩、草のそよぎにも、小川のせせらぎにも耳を傾ければそこに音楽はある」

 

 奏は響の手を握ると響も握り返してくる、奏は頭の片隅で美雲の質問に答えては無いな、と思いながらも自分の音楽に対する思いを語って見せたる。

 

「二人は歌い手って言うより演奏者だからね」

 

 エレンは、響と奏に温かい視線を向け、2人の肩に手を添えながら一同を見渡す。

 

「私は人々の幸せの為に歌う、全ての人達が平和に歌える世界の為に、人は幸せだから歌うの訳じゃないの、歌うから幸せなのよ」

 

 異世界から来た3人の思いを聞いた美雲は、得も言われぬ気持ちに包まれる、腕を組み冷静を装いつつも激しく燃え盛り出した心に酔い出していた。

 

 フレイアは息を呑んだ、3人の思いを聞いて足元がぐらつきそうになる、助けを求める様に視線を彷徨わせれば、エレンと視線が絡み合う。

 

 モノレールで行われた最終試験、恐怖で足が竦んだのを救ってくれたのはエレンだった。

 

 

 

 

 

「貴方にも叶えたい夢があるのでしょう! こんな所で終わってしまって良いの?! 心を強く持ちなさい!」

 

「貴女の鼓動が…………それが貴女だけのビート、貴女の心の、貴女の魂のビートを信じなさい」

 

「フレイア、ワルキューレに夢を見る時間は終わっているのよ」

 

「次は貴女が夢を見させる番だよ、フレイア」

 

 

 

 

 

 エレンだけじゃない、響も奏も何時も自分の背中を支えてくれていた、自分と年が変わらない3人の背中が霞むほどに遠い、でも追いつきたい、プリキュアにも、ワルキューレにも、目を瞑り一度深呼吸をしフレイアはゆっくりと瞳を開けた、その瞳からは迷いは消えており足の震えも止まっていた。

 

「さ、話はもう良い?」

 

 カナメが全員を見渡し確認すると皆が頷き円陣を組む。

 

「響、奏、エレン、貴女達もいらっしゃい、貴女達はプリキュアなのでしょうが、ステージの上では私達と同じワルキューレよ、忘れないで」

 

 カナメは、響達の返事を聞かずに皆の中央に指でWを作り差し出す、次々と差し出されるW達、最初に動いたのはやはり響だった、少し顔を赤くしながらも皆と同じように指でWを作り差し出すと、奏とエレンもそれに倣う。

 

 カナメがもう一度皆を見渡すと、大きく息を吸った。

 

「じゃあ! 行くわよ!」

 

 カナメが気合を入れる。

 

「銀河のために!」

 

「誰かのために!」

 

「今、私たち!」

 

「瞬間完全燃焼!」

 

 マキナ、レイナ、フレイア、美雲が宣言しワルキューレ全員の視線が響達に注がれ響は小さく頷いた。

 

「ここで決めなきゃ女がすたる!」

 

「気合のレシピ見せてあげる!」

 

「心のビートはもう止められないわ!」

 

「「「「「「「「GO!」」」」」」」」

 

「「「「「「「「WALKURE!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 デルタ小隊が、カラフルなスモークの尾を引きながら、華麗なアクロバット飛行を披露し、ワルキューレの乗った、専用機の後部ハッチがゆっくりと開くと、機内にエンジン音に負けない大歓声が聞こえ、フレイアは喉を鳴らした。

 

 フレイアは、緊張と恐怖に捕らわれ出していた、少しずつ早鐘を打ち出していた心臓が、今は既に全力疾走しているかのように暴れ、フレイアの視界はドンドンと狭くなっていく、そんなフレイアを知ってか知らずか、ワルキューレのメンバーは後部ハッチに移動しだす。

 

 吹き付ける風にフレイアの小さな体は煽られる、そんなフレイアの肩と背中に3本の掌が添えられた。

 

「大丈夫だよ、フレイア」

 

 奏が、安心させるような温かい声を掛ける。

 

「フレイアなら出来る、コンテスト(オーディション)を見ていた私が保証するわ」

 

 フレイアはあの日のエレン(力をくれたビート)の背中を思い出す、ゆっくりとエレンに視線を向けると、エレンは優しく微笑んだ。

 

「先に下で待っていて、直ぐに行くから」

 

 響がまるで、一緒に遊びに行く約束をするかの様な気軽さで声を掛けた。

 

 フレイアは一気に視界が広がり、五月蠅かった心臓の音も今は全く気にしなくなっている。

 

 カナメ達は、そんな4人の見ているだけで照れそうな遣り取りに胸が温かくなっていた。

 

 次々と後部ハッチを蹴って飛び出して行くワルキューレ達、フレイアは自分の番になった時に一度響達に振り向く。

 

「先に下で待っているかんね」

 

 それだけ言うと、フレイアは力一杯ハッチを蹴って飛び出して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 機内に、ワルキューレの登場により会場が爆発したような歓声が届き、続いてワルキューレの歌が流れだし、会場がにいかに沸いているかがうかがえる。

 

 大きく旋回した専用機が、再び会場の上空に差し掛かると、機内に風が入り込み、響達3人の髪が大きくはためく中、響は乱れ舞う髪を気にした様子も無く大きく伸びをした。

 

「練習の成果、見せますか」

 

 何処までも気軽な態度の響に、奏とエレンは小さく声を上げて笑い、響も声を出してしばらく笑うと、3人の顔付きが一気に変わり、3人同時に駆けだした。

 

「「「レッツプレイ! プリキュア・モジュレーション!」」」

 

 キュアモジューレが激しい光を放ち、響達はその光りと供に大空に舞った。

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