マクロスΔ スイートプリキュアの軌跡 作:水無月 双葉(失語症)
「キュア……ビート……?」
いきなり光に包まれ姿の変わった女性にフレイアは驚きを隠せないでいた、確かにワルキューレ達はステージ上で衣装が変わるが、目の前のキュアビートは明らかに違っていた。
ビートは猫の様なしなやかな動きで一気に男性に近づくと動けない様に押さえ込む。
「ワルキューレってのが来るまで押さえててあげる、私は貴方を傷つけたくないし、貴方にもこれ以上他人を傷つけさせたりしないわ」
ビートは鋭い眼光で男を睨み動けないようにすると男性に力強い声で呼びかける。
「正気に戻りなさい! 貴方にも叶えたい夢があるのでしょう! こんな所で終わってしまって良いの?! 心を強く持ちなさい! 自分の心のビートを信じるのよ!」
フレイアはキュアビートと名乗った女性の言葉を聞いて雷に打たれた気がした、自分が何でワルキューレに憧れたのか、自分の心が押さえきれなくて密航をしてまでなりたかったワルキューレ、特別に受けさせて貰ったオーディションで委縮して何も出来なかったのではなか、こんなのは自分の人生をかけた未来じゃない。
フレイアは覚悟を決め一歩前に踏み出した。
小さいが力強い歌声が車内に響く、ビートが押さえている男の頬に手を伸ばしフレイアは想いの限り歌を歌う、男の顔に浮いていた血管がゆっくりと収まる、フレイアの歌が確かに届き男は救われたのだ、男の力が抜け倒れそうになるとビートが受け止めそのままシートに横たえる。
周りがざわめく中1人の女性がフレイアに近づく。
「はいこれ」
何時のまにか落としていたフレイアの音楽プレイヤーを黒い髪を高い位置でポニーテールにした女性が手渡してくる。
「大切な物なんでしょう」
微笑む女性を見つめフレイヤは小さく呟く。
「あ……その声……」
ポニーテールの女性は一歩下がり手を広げながらクルリと1回転し高らかに宣言する。
「Welcome to WALKURE World」
楽しそうにその女性は近くに控えていた2人の女性の側に立つと先ほどまで広告や警報を表示をしていた床が光り出すと、3人の女性は下から輝きながら着ていた服も髪型も全てが変わる。
「美雲さん! ど、どう言う事かね」
いきなり現れたカナメを除くワルキューレのメンバーにフレイアは混乱し状況が分からなくっていた。
「これが最終オーディション」
「さっきの声チクチク気持ち良かった」
マキナとレイナが嬉しそうにフレイアに告げると美雲の隣でカナメのフォログラフィが現れる。
「合格よ! フレイア・ヴィオン!」
カナメがワルキューレのシンボルでもあるWを指で作ると、光る床の上に居たフレイアの衣装もワルキューレの物に変化した。
「今日から貴女も」
「ワルキューレ」
レイナとカナメが言葉を分けい合いフレイアを祝福する。
「私が……ワルキューレ……?」
乗客たちが次々にフレイアに祝福の言葉を掛ける、ヴァール化した男性も大量の血を流していた女性も全員が最終オーディションのメンバーだった、ただ1人キュアビートを除いて。
「どう言う事かしら……?」
底冷えする様なビートの声に祝福ムードは一変する、カナメが一歩前に出るとビートに対して頭を下げる。
「貴女がキュアビートね、ごめんなさいね巻き込んでしまって本当ならスタッフ以外は乗車させないはずだったのだけれど、どこかで手違いがあったみたいで……」
ビートは周りを見渡すと盛大に溜め息をついた。
「要するにコレは、歌姫を決めるコンテストって訳ね、貴女達ずいぶんと性質が悪いのね」
ビートは怒りを露わにし、不機嫌そうに椅子に乱暴に座り足を組む。
「街の騒ぎも嘘で誰も怪我とかして無いなら良いわ、コンテストって事で我慢してあげる、押さえ込んだ時全然力を感じないから不思議だったのよ」
ビートは足を組み直し頬杖を突いてまた溜め息を吐いたのちに淡い光に包まれて変身を解く。
「キュアビート、貴女にはこのまま私達とマクロス・エリシオンに向かって貰います」
「行く必要は無いわ」
目を細めカナメの言葉に間髪入れす答えるエレン、だが美雲が喉の奥で笑いながらエレンに声を掛ける。
「キュアメロディ、キュアリズム、フフ……どう? これで着いてくる気になった?」
美雲の言葉にエレンはすぐさま立ち上がり鋭い視線を投げかける。
「響と奏に何かしてみなさい……絶対に許さないから!」
第2話終了となります。
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