アルゼンチン帝国召喚   作:鈴木颯手

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遅くなりました。これから投稿速度はかなり落ちると思います。


第二十五話「滅亡」

第二十五話「滅亡」

「我ら2000隻に比べて相手は24隻しかいない。だが、陸では連戦連敗らしい。流石に負ける事はないだろうがそれなりの被害は出るだろう」

 

連合軍艦隊司令ハッキンは沿岸部に展開する敵艦隊を見てそう呟いた。2000隻の船団は北部諸国の防衛用の船を除いた全てで構成されている。しかも文明圏外国ではあり得ない戦列艦で構成されているため、火力も高かった。

その気になればパーパルディア皇国とも対等に戦えた可能性もあるだろう。尤も、パーパルディア皇国は亡びてしまったため検証のしようはないが。

 

「よし、全速前進!前方の敵艦隊を殲滅せよ!」

 

ハッキンの言葉に水兵たちは雄たけびを上げ、船を前進させていく。しかし、ある程度近づくと敵船がいきなり爆発音を出した。

 

「何だ?……まさか、魔導砲!?」

 

ハッキンはそこまで言った瞬間、乗艦していた戦列艦ごと吹き飛んだ。司令官が乗った船が真っ先に沈んだことで指揮能力は失われた。結果ある船は逃走しある船は敵艦隊に向かっていく。しかし、そんなバラバラな状態で逃げる船はともかく交戦する船はまともに戦う事も出来ずに沈められていく。そんな中五隻ほどが砲弾の雨をかいくぐり近づいていく。アイア共和国の船だ。

 

「進め!一発でもいいから敵船に当てるのだ!アイア共和国の意地を見せる時だ!」

 

五隻の船を纏める船長は声を張り上げ船首に立ち味方を鼓舞する。五隻の船は最初こそ固まっていたが直ぐに分かれてまとめて沈められないように動く。

と、右端を進んでいた船が砲撃を受け一発で沈んでいった。船の様子から水兵はほぼ戦死しただろう。砲撃は四隻の船に集中する。20隻を超える艦隊からの砲撃は激しく呆気なく船長が載る船以外が沈んでいった。しかし、四隻の犠牲を出し漸く魔導砲の射程距離に入る事に成功した。

 

「船長!射程距離に入りました!」

「よし!砲撃開s……!」

 

船長が砲撃の指示を出そうとした瞬間であった。

船に大きな振動と破壊音が響く。船長は突然の事態に床を転がりながらそれを見た。船の中央部に横一列のひびが入るのを。そしてそこから船は崩壊し船長は船の残骸と共に沈んでいった。

 

「……目標、沈没。次、敵後方の戦列艦」

「了解」

 

アイア共和国の船を沈めたUボートはその存在を察知されずに次々と船を沈めていった。艦隊より多いUボート50隻にどんどん船は沈んでいき、陽が沈むころには旧オチデ王国沿岸部には大量の木材が浮かぶのみであった。

北部諸国の連合軍艦隊2000隻は1500隻を超える損害を受け、逃げ延びた船も後日のUボートによる狩りで大半が沈められるのであった。

 

 

 

海での雌雄が決した今、北部諸国に防ぐ手立ては残されていなかった。圧倒的な戦車師団の速度と破壊力に戦線はどんどん広がると同時に手に負えなくなっていった。

 

「進めぇ!祖国を守るのだぁ!……ぎゃっ!?」

 

中には勇敢に立ち向かう者もいたが、そういった者は全て銃弾によって蜂の巣と化していった。

確かにナチス・アトランタ第三帝国の軍勢は少ないが、それを補って余りある一人一人の質と航空戦力の前に、北部諸国は呆気なく崩壊していった。

……最初に降伏したのは戦車師団が最も多く配置されていたアイア共和国であった。アイア共和国降伏後は北上しダルヤ王国へとその力を振るった。前線の砦にいたアルマースは後方を奪われたことを察して降伏した。この三日後、ダルヤ王国も降伏した。これにより戦況はナチス・アトランタ第三帝国軍によるレースと化した。ナチス・アトランタ第三帝国軍は部隊毎に主要都市への一番乗りを競い合いその速度を速めていく。途中にある砦や防衛戦など彼らの前には軽い障害物でしかなかった。更には沿岸部からナチス・アトランタ第三帝国海軍の攻撃も受け始めた。

ダルヤ王国降伏から十二日後、ゴルド公国、パーカ王国が降伏。その六日後にチラプナ王国も降伏した。チラプナ王国が降伏した事で北部諸国はナチス・アトランタ第三帝国の支配下となった。北部諸国もまた一月とたたずに新たな国によって亡びるのであった。

 

 

 

 

「ああ、なんという事だ……」

 

エモール王国は現在未曾有の大混乱に陥っていた。理由は一年に一度行われる空間の占いというものを行ったからである。空間の占いは98%の的中率を持ち、それはもはや未来予知と呼べるほどであった。しかし、その結果出たものが混乱を起こしていた。

 

神話の魔帝既に滅亡せり。魔帝を滅ぼした国、手に入れしラティストア大陸に乗り我らの元に向かわん。時も場所も分からないが、その国は我らを侵略する為に向かってきている。

 

その様な内容であったのだ。魔帝が滅亡した事に誰もが歓喜したが、その後の言葉に絶句した。自分たちですらかなわないと思わせる魔帝を滅ぼした国が今向かってきているというのだから。

 

「魔帝を滅ぼす国か……、侵略に来ているという時点でお察しだな」

 

占い師のアレースルは一人そう呟いた。今エモール王国は、鍵であると占いに出たアルゼンチン帝国への使者を厳選しているところだ。内陸国のエモール王国に船などないため神聖ミリシアル帝国に頼む事となる。その為の準備も行っていた。

エモール王国は魔帝復活などよりも世界の危機といえる事態に行動を起こすのであった。

 


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