アルゼンチン帝国召喚   作:鈴木颯手

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皆さんお久しぶりです。ぼちぼち投稿を再開します。


第二十六話「ペスタル大陸からの亡命者」

北部諸国を滅ぼしたナチス・アトランタ第三帝国とアルゼンチン帝国の関係ははっきり言えば微妙であった。国交樹立国であり演習をする程度には友好的であったがトーパ王国に向かって以来関係性は微妙になっていた。

ナチス・アトランタ第三帝国は手に入れた北部諸国領から様々な資源を採掘しているが唯一取れない石油をクイラ王国から輸入していた(そのおかげでクイラ王国は更に発展していた)。アルゼンチン帝国とも貿易を行っているが量は少ない。

前世界から中立政策を取っているナチス・アトランタ第三帝国はアルゼンチン帝国主導の極東国家連合と距離を置いているのだ。

 

「西サハラ帝国、高天原帝国、カンプチア連合共和国……。どれも国力が低くはんば我が国の即刻となっている中彼の国は対等の国家として付き合いたいという事か」

 

アイルサン・ヒドゥラーはそう感じたためナチス・アトランタ第三帝国とは特に変わりもなく今の距離感を貫いた。

一方、この世界ではアルゼンチン帝国の次に軍事力を有する神聖オーストリア・ハンガリー帝国は新たに手に入れたフィルアデス大陸西部の開発を行っていた。一から帝都を建設しインフラを整備し税や法の制定を行い国家として再建しつつあった。アルゼンチン帝国と協力し海域の見回りや訓練などにも精を出しその牙を鋭く研いでいた。そして定期的に休暇を取らせ士気の回復も行っていた。

ラルフ・アイヒラーもその一人であり一日だけだが休暇を貰ったため沿岸部をあるいていた。彼が所属する第14狙撃師団の兵舎があるのは帝都ウィーンは未だ建設中の為休暇を貰っても特に娯楽施設などはなかった。その為こうして散歩するくらいしかやる事がないのだ。

 

「ふぅ、そろそろ戻ろうかな」

 

昼を少し過ぎた頃、ラルフはお腹の減りを感じ来た道を引き返し始める。こうしてゆっくりと流れる時間がラルフは嫌いじゃなかった。訓練中はどうしても素早い動きが求められるためゆっくりとなんかしていられないからだ。

 

「……ん?」

 

ラルフはふと、海岸に何かがあるのを見つけた。海岸にはたまにだがいろいろな物が流れ着く。木材や船の廃材や、酷い時には水死体なんかも流れてくるときがある。そう言ったものを見つけた時には自分で撤去するか専門の部隊に知らせるのが通例となりつつありラルフも可能なら自分で、出来なくてもどんなものか把握する為にそれに近づく。

 

「……これは」

 

流れ着いていたのは女性であった。元は純白であったであろう汚れたドレスを着こんだ若い女性は下半身を海に使った状態で倒れていた。

美人だなと思いつつ何処かの令嬢か?と疑問を持つ。たかが一般兵のラルフに他国の令嬢の事など分かる筈もなく見つけた事を若干後悔しながら確認していく。

その時であった。

 

「……う、」

「!まだ生きてる!?大丈夫か!?」

 

ラルフは急いで脈を測る。か細くではあったが動いておりラルフは急いで近くの民家などに向かい女性の救助を開始した。

女性の救助で一日を費やしたラルフは上官に事情を話し兵舎へと戻る。

 

「よう、ラルフ。聞いたぜ?漂着した美少女を助けたんだってな?」

 

そう言って声をかけてきたのは同期のエミールである。誰とでも仲良くなれる素晴らしい性格をしているが少し揶揄い癖のあるラルフの困った同期である。

ラルフはうんざりしながら隣を歩くエミールに返事をする。

 

「ああ、そうだな。……毎度の事だがお前の耳はどうなってんだ?」

「へへーん。揶揄うには新鮮な情報が大事なのさ」

 

ラルフのジト目にも全く動じずに胸を張るエミール。彼に何を言っても無駄だな、と思いつつも兵舎に向かう。途中、エミールは真面目な表情となった。

 

「だけどあんな令嬢は見た事ないぞ」

「むしろ周辺国家の令嬢を大体把握しているお前が可笑しいんだからな?」

「いやいや、真面目な話だって。……見た事がない令嬢という事は余程の箱入り娘か若しくは」

「……別大陸の令嬢だと?」

「可能性はあるだろ?もしかしたらフィルアデス大陸北部の国の貴族や王族の可能性もある。その場合ナチス・アトランタ第三帝国との関係が心配になるな」

「一度は戦争を行った仲だからな」

 

神聖オーストリア・ハンガリー帝国とナチス・アトランタ第三帝国は転移する前に一度戦争を行っていた。ヌナブト連邦共和国と先住民族の間で起きた北米先住民戦争と呼ばれるものが起きた。神聖オーストリア・ハンガリー帝国は先住民族を支援したがヌナブト連邦共和国を助けるためにナチス・アトランタ第三帝国が介入してきたのである(アルゼンチン帝国は両国が友好国の為介入はせず中立に徹した)。

新大陸にやって来る神聖オーストリア・ハンガリー帝国軍を見つけては潜水艦や戦闘機により沈められていった。

結局神聖オーストリア・ハンガリー帝国は戦争から手を引くしかなく苦い思いをしていた。今回も一人の令嬢からそうなるのでは?と懸念したのである。

 

「可能性はあるがそれならパンドーラ大魔法公国の海岸につくはずだろう?恐らくアルタラス王国、ロデニウス大陸、後は少し離れているがペスタル大陸か」

「ペスタル大陸かぁ、確かあそこもかつてのロデニウス大陸みたいになってなかったか?」

 

ペスタル大陸の国々とは特に関係はなく現状では朧げな情報しか入っていなかった。

結局一般兵の二人では真相などたどり着けるはずもなく何もなければいいな、と願うのみだった。

 

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