どこにでもあるような河川敷に男がいた。その男は付近の中学校の制服を着ていた。ここまでならどこにでもいる普通の中学生だがそれ以外があまりにも普通の中学生とはかけ離れていた。
日本の成人男性の平均身長である170.6cmを優に超えているであろう背丈に加え、鍛え上げられた筋肉が服の上からでもわかるほど学生服を押し上げている。何より異常なのはこの男が近隣でも有名な不良達がピラミッドのように積み上げられた山の頂上に佇んでいることだろう。
男と不良達の間で喧嘩があったことなど一目瞭然だというのに男には傷一つなく、沈んでいく夕陽をじっと見ている。そんな中、夕陽を見るのに飽きたのだろうか、男が口を開く。
「あんたらは俺を生意気と言ったがお前達も年上だろうと生意気は生意気だろ」
それは男の椅子代わりであり現在進行形で気絶してるであろう不良達に対しての言葉だった。もちろんそれを聞いてる人間は男自身この場には誰もいない。だが、そんなことお構いなしに男は話し続ける。
「あんたらが俺をナメて、俺がナメられてると感じる、その瞬間にゴングはすでに鳴っている。当たり前の事だろう?」
男は己と不良達の喧嘩になった切っ掛けのことを話していた。この喧嘩は河川敷に座って夕陽を眺めていた男に通りすがりの不良達が、目つきが生意気だ、と言ったことが発端だった。不良達は自分達が通っている高校にも行かず、パチンコ屋で一日を潰した帰りに暇潰しがてらカツアゲをする相手を探していたのだ。
その相手として河川敷に一人佇む男に目をつけたのだ。不良達は十人以上いる自分達に逆らうようなことはしないだろうとタカを括り、これから弱い者をいたぶれるという優越感でニヤつきながら男に話しかけたのが運の尽きだった。瞬く間に一人、また一人と蹴散らされて今のような状態になったのだった。
「俺はヒーロー志望なんだ、例え正当防衛だとしても問題視されかねん。これに懲りたらもうこんなことはするなよ」
男は言いたいことを言い終えたのか、己の所有物であるスマートフォンをいじりながら帰路に着く。画面に映るのは『国立雄英高等学校』のホームページ、そこには今年度からオールマイトが教員として所属することになると書いてある。
男はオールマイトへ憧れがあった。幼い頃、敵に襲われそうになったときに現れ、あっという間に敵を捕縛してしまった世間で一番人気な名実ともにNo.1ヒーロー。そのときに誓ったのだ。己も他者の救いとなるヒーローとなる、と。雄英でなくともよかった、ヒーローになれるなら特別有名でない高校でも男にとっては十分だった。
だが状況が変わった。憧れの対象を間近で見ることができ、教えを受けられるとあっては動かずにはいられない。
「受けてみるか、雄英高校」
その男、名を東堂葵。本来なら存在しない男の行動によって未来がどう変化するか、ご照覧あれ。
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