拍手を送ろう   作:わさびは美味しくない

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東堂の異常さが全然出てないので、もっと頑張りたいです。
あと、一話あたりどれくらい書けばいいのかわからん。
誰か教えてクレメンス


試験

 受験会場である雄英高校の正門を少し過ぎたところで東堂葵は周りの同じく雄英を受けにきた受験生から奇異の目で見られていた。背丈やその筋肉質な身体だけならば異形系の個性で見慣れているが、およそ同じ中学生と思えないくらい強面に加え、左頬から額にかけて存在する大きな傷跡、髪型がドレッドヘアーを後ろで一つに纏めているのも拍車を掛けている。

 

(ここが雄英か、正門の大きさにも驚いたが校舎も他のヒーロー科がある高校とは比べものにならないな。ホームページで写真は見たが、生で見ると迫力が違うな)

 

 初めて見た雄英への感想を心の中で述べながら筆記試験会場へと向かう。隣に座る人には驚かれたが、与えられた受験番号が割り振られた席に着き、試験が始まるのを静かに待つ。

 

 いざ試験が始まったものの東堂は退屈していた。

 

(偏差値79と聞いていた通りの難解な問題が多かったがいずれも中学で学んだことの応用、解けない道理はないな)

 

 この東堂葵という男、凶悪な風貌とは裏腹に学力がとても高く、出身の中学の定期テストでは常に一位を獲得していた。雄英を受けると決めた日からそれまで以上に努力を続けた東堂は試験が少し物足りなく感じたが、筆記試験の後にある実技演習試験に期待を膨らませながら過ごしていた。

 

 試験がつつがなく終了し、昼休憩を挟んだ後の、実技演習試験の説明が始まろうとしていた。

 

周囲が暗くなり、ステージを照明が照らす。そこに立っているのはサングラスをかけ、自身の金髪をトサカのように逆立てた男だった。

 

 彼は自分のラジオ番組も持っており、No.1ヒーローのオールマイトやファンサービスがあまりないNo.2ヒーローのエンデヴァーと違って、存在が身近に感じられるボイスヒーロープレゼントマイク。突然のことに受験生達が困惑する中、ステージ上の彼が口を開く。

 

「受験生のリスナー!俺のライヴへようこそー!!!エヴァバディセイヘイ!!!」

 

 普段ならば、人気者である彼の言葉にレスポンスを返す声があっただろうが、受験生達は突然のことで目の前のことを脳内で処理するのにいっぱいいっぱいだった。

 

 レスポンスがないのは予想通りだったのか、それともアドリブなのか、受験生の反応はお構いなしに実技演習試験の内容について説明を始める。

 

 制限時間10分のうちに演習場である模擬市街地に三種の仮想敵を多数、ランダムに配置しており、それぞれの仮想敵の難易度に応じてポイントを設定している。武器の持ち込みは自由、他人への妨害は御法度というようなことを人前に出ることに慣れているのだろうか噛むことなく話し終える。

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

 説明が終わったのも束の間、受験生の一人が挙手をする。眼鏡をかけ、しっかりと分けられた頭髪で見る者に真面目な人間と印象を抱かせるような男だった。

 

 眼鏡をかけた男の質問は、おそらくこの場の受験生全てが聞きたかったことであろう4種類目の仮想敵のことだった。説明では三種の仮想敵と言ったが受験生に配られた資料に四種、仮想敵が記載されていた。

 

「ついでにそこの君!縮毛の君だ!さっきからボソボソと呟いているようだが、気が散る!物見遊山のつもりなら即刻立ち去ってくれ!」

 

 質問そのままに独り言を呟いていた受験生を注意する。気が立っていたのか注意にしては強い口調だった。指摘され、周りの迷惑になっていることに気づいたのだろう、縮毛の受験生は黙りこくってしまい少し気まずい雰囲気になるが、場を払拭するようにプレゼントマイクが明るく質問に返す。

 

「オーケーオーケー!ナイスな質問サンキュー!そいつは0Pの仮想敵、謂わばお邪魔虫ってやつだ。各演習場に一体、倒せないこともないが倒しても意味はない。リスナー達には避けながらポイントを稼ぐことを勧めるぜ!」

 

 この返答を聞いた受験生達はプレゼントマイクの助言に従い、0Pは相手にしないことを決める。しかし、これまでのやりとりを静かに聞いていた東堂は違った。

 

(他の受験生への妨害は御法度だと言ったが、協力することについては何も言っていない。つまり、即席で近くにいる受験生と組むのはOKと見た。あくまで中学生相手にするロボットならば強度はタカが知れる。だが、お邪魔虫と公言するぐらいだ、他の三種より厄介だと予想できる)

 

 東堂はこの場でただ一人、どうやって0Pの仮想敵を行動不能にするか考えていた。これは東堂の目標を考えれば当たり前のことである。東堂の目標とは他者の救いとなるヒーローになることだが、ただのヒーローではない。オールマイトが笑って引退できる、頼もしいヒーロー。それが己を敵から救ってくれたオールマイトへの己から送れる最大の恩返しだと思っているからだ。

 

 たしかに彼我の力量差を見極め、撤退することも重要である。それは勇気ではなく蛮勇だからだ。それは東堂も理解している。理解はしても納得はしない、己の心が叫ぶのだ。その程度の試練を超えずしてオールマイトを超えるとは片腹痛い、と。

 

(俺の個性は0P敵を倒すのは無理。ならば、0P敵の詳細な情報はわからないが試験中に機械相手に有利に立ち回れる個性、電気や酸、部分転移などの個性を見つける必要がある。俺が出来ないなら出来る奴にやらせる、適材適所だ)

 

 0P敵相手にどう立ち回るかを考えながらバスに乗り、模擬市街地へと移動する。

 

 スタート地点で周りの受験生を見るが、東堂の食指が動くような受験生は見られない。天下の雄英と言えど玉石混合、むしろ不良達との個性を交えた喧嘩で実戦慣れしてる東堂が異常なのだ。

 

 周りの受験生にがっかりしながら、いつでもスタートできるように構える。今か今かと試験が始まるのを待っていると、

 

「はいスタート!!」

 

 突然の試験開始のアナウンス。だが、東堂ともう一人の受験生はスタートダッシュを決める。背後でまだスタートしていない受験生に対してプレゼントマイクが何か言っているが、今の東堂にはどうでも良かった。己と共にスタートした受験生に関心が向いていた。

 

 掌を爆発させて、飛びながら移動している。鍛えているのか、東堂と比べると見劣りするものの、しっかりと筋肉がついているのが見える。東堂は考える。

 

(恐らく個性は掌からの爆発、俺と共にスタートダッシュを決めたことから反射神経、瞬発力ともに優れている。身体もよく鍛えられている。こいつは受かるな)

 

 走りながら考える。筆記試験については含まず、スタートダッシュと個性だけを見て判断するが、確信があった。ヒーローになるための身体をつくっているようなやつが筆記を疎かにするはずがない、と。

 

「標的確認!ブッコロス!」

 

 機械音声が聞こえ、一度あの受験生について考えるのをやめる。東堂の個性は相手に危害を加えるようなものではない。故にこの試験において無個性として挑むことになるのだ。

 

 しかし、東堂の鍛えあげられた肉体はいとも容易く仮想敵を行動不能にする。体の動かし方を知っている、それだけで他の受験生より優れていると言ってもいいだろう。

 

 通常ならば、一般人より元ボクサーのほうが同じ体型でも強いパンチを打てるように、いきなり仮想敵を倒せと言われても、パンチの打ち方や強い蹴りの打ち方がわからない。故に個性頼りの動きにならざるを得ない。

 

 危害を加えるような個性ではない故に、東堂は不良達を全て個性を使わずに己の肉体のみでねじ伏せてきた。

 

 東堂は知っている。パンチの打ち方を、強い蹴りを繰り出すための足の動きを。故にロボットを鉄屑に変えることなどわけないのだ。

 

(予想通り脆いな、これなら俺でも高得点を狙える。しかし、機械相手に有利な個性が見当たらないな。あの爆発の個性ならある程度は有利に立ち回れるが0Pに通用するかどうか)

 

 いまだ姿を現さない0P敵に対抗するべく目当ての個性を仮想敵を時には殴り倒し、時には蹴り倒しながら探す。しばらく走り回っていると金髪に黒い稲妻のメッシュがある受験生を見つけた。

 

 軽薄そうな印象を受ける見た目だがそんなことはどうでもよかった。その受験生がロボットに触れるとロボットは黒い煙を上げながらショートする。探し求めていた人材に巡り会えた喜びに打ち震えながら話しかけようとしたその時。

 

 圧倒的質量の塊が姿を現す。それは3階建てのマンションを優に超える巨体。東堂は己の予想が的外れだったことに気づいた。

 

(0P敵が他の仮想敵と同じサイズだと思い込んでいた、考えればすぐに辿り着くはずの答えだったッ!各演習場に一体で他の三種と同じサイズなら、いくら強度があったとしてもお邪魔虫足り得ない)

 

 己の予想が的外れであり、巨大な0P敵を倒す術が見当たらない事実を前にしても、優秀な東堂の頭は回転し続ける。

 

(あれほどの巨体、受験生に重傷者が出てもおかしくない。いや、逆に考えろ。受験生に重傷者が出ないつくりになっているとしたら?そう仮定するならばまだやりようはある)

 

 東堂が0P敵を視界に収め考えに至るまで、この間わずか0.1秒。0P敵を倒すために迅速に行動する。まずは目の前で今にも0P敵から逃げようとしている金髪の受験生に声を掛ける。

 

「そこの金髪、話がある」

 

 突然東堂に話しかけられた受験生は驚きながらも早く逃げたいのか早口で答える。

 

「俺⁉︎なんか気に触ることした?」

 

 東堂も試験終了時間が迫っていることをわかっているので、少し強い口調になってしまう。

 

「いいから来い」

 

 金髪の受験生を素早く小脇に抱えて移動を始める。拉致するような形になり、金髪の受験生が慌てた声を出すが致し方ないと東堂は己に言い聞かせ、0P敵を倒すために必要なもう一人を探そうとすると落ち着いたのか金髪の受験生が声をかけてくる。

 

「俺が走るより速いからいいけどよ、なんでこんなことするんだ?」

 

 東堂は目的を小脇に抱えている男に告げる、0P敵を倒そうとしていることを。当然男は反論する。勝てるわけがない、無理だ、諦めろ、と。しかし東堂は、やれる、とただ一言、男の目を真っ直ぐ見つめてそう言うと、抱えられている男はしばらく黙った後、頭を掻きながら諦めたように口を開く。

 

「あーもう!わかったよ!十分ポイントは稼いだし、そんだけ自信たっぷりに言うんだから絶対に倒せる作戦があるんだろ!どうやって倒すんだ?」

 

 ありがたいことだが0P敵を倒すにはあと一人足りないことと、探している受験生の特徴を東堂が伝えると、金髪の受験生はその特徴に該当する男を見たと言い、その男が移動していった方向を示す。

 

 走っていくと仮想敵数体を相手に余裕をもって破壊している己と共にスタートダッシュを決めた男を見つけたので、己の目的を話す。

 

「そこの爆発男、お前に話がある」

 

 男は突然話しかけてきた東堂を無視する気は無いのか、睨みつけながら先を促す。東堂は続けて話す。0P敵を倒す気はあるか?と。男は苛ついているのか乱暴な口調であるならやってると答える。その返答を聞き、東堂は語り始める。

 

「俺には目標がある、オールマイトが笑って引退できるような頼もしいヒーローになる。そして、平和な世の中をつくりオールマイトが平和の象徴として君臨していた頃より安心して暮らせると未来の人々に言わせるという目標がな。だが、一人ではダメだ。敵の犯罪は全国各地でおきている。最近あったヘドロ事件もオールマイトがいなければどうなるかわからなかった。一人のヒーローに頼り切りにならないためにも多くの頼もしいヒーローが必要だ。あの0P敵をお前達の個性なら倒せると思った。そして、お前達は将来必ず俺の思う頼もしいヒーローになると思ったらだ。だからお前達を選んだ、やってくれるか?」

 

 ヘドロ事件という言葉に一瞬男が反応するが、黙って東堂が話し終わるのを待ち、質問をする。

 

「メリットは?」

 

 それは残り時間で取れたはずのポイントを逃してまで0P敵を倒す必要性が感じられないが故の質問だった。納得できる理由が無ければこの男はすぐにでもこの場を離れ仮想敵の殲滅に戻るだろうと東堂は思った。東堂は0P敵を倒すことによるメリットを説明する。

 

「プレゼントマイクはこう説明していた。0P敵は各演習場に一体、避けることをおすすめする、と。そして、その言葉通りに受験生達は動いた、機械に対して圧倒的に有利な個性である金髪でさえ誰かと協力することをなど考えずにな。他の演習場でもおそらく受験生達は0P敵を避けるはずだ。ならば、唯一0P敵を倒した者がいたとするなら、これを見ている審査員は注目せざるを得ない。あの巨大なロボットを沈められる強個性、即席でチームをつくり実行できる行動力。確実に一目置かれるだろう」

 

 魅力的な提案ではあった。しかし、男を乗り気にさせるには足りなかった。背を向け仮想敵を探しに行こうとすると、

 

「お前は本当に評価基準が三種の仮想敵を倒すことだと思うか?」

 

 その言葉に足を止める。男も疑問に思っていた。単純な戦闘力だけで天下の雄英に合格できるのか、対人に特化した個性をもつ人間も十分にヒーローになる素質はある、ならば受験生に知られていない評価基準があるのではないかと。そんな男の考えを知ってか知らずか説明を続ける。

 

「ここはヒーローを育成するための機関、講師もプロヒーローが揃っている。そんな人達が今も我先にと0P敵から逃げている者達を合格させるだろうか、そんな筈はない。おそらく俺達の知らない評価基準がある、そしてそれは0P敵を倒すことで直接ではなくとも間接的に獲得できると俺は思っている」

 

 男はふと、己の目標について考える。己の目標はオールマイトを超えるヒーローになることだ。男は憧れているヒーローがこんなときはどうするか考える。答えはすぐに出た。

 

「テメェの下手くそなプレゼンには惹かれねェが気が変わった。やってやるよ」

 

 憧れのヒーローはいつ何時も笑顔を絶やすことなく困難を突破し、人々に希望をもたらしてきた。それを超えるためにはこの程度、出来て当然と男は考えた。

 

 東堂の言葉を聞き、これまで静かに二人のやりとりを見ていた金髪の受験生が口を開く。

 

「俺の名前は上鳴電気、個性は帯電、よろしく!」

 

 いきなり自己紹介を始めた上鳴に対して、何を言ってるんだこいつ、と言わんばかりの視線を二人は送るがお互いに自己紹介もしないまま話していることに気づき、上鳴に続くように二人とも自己紹介をする。

 

「爆豪勝己、せいぜい俺のためにお膳立てしやがれ金髪にマッチョ」

 

「東堂葵だ、提案しておいてなんだが俺は今回何もできないから、逃げ遅れた受験生がいないか探させてもらう」

 

「え⁉︎東堂はなんもやんないのかよ!」

 

 俺では絶対に勝てんと言ったがさすがに何もしないとは思わなかったのか、思わずといった風に上鳴が声を出す。声を出してはいないが爆豪も驚いたのだろう、少し目を見開いてこちらを見ている。

 

「言っただろう、俺では無理だと。だからお前達二人だ」

 

「アァ⁉︎役に立たねェなら作戦だけさっさと伝えてすっこんでろ!」

 

「それに今回の主役は上鳴だ。爆豪、お前が上鳴のお膳立てをするんだぞ」

 

「えぇ、俺⁉︎マジで⁉︎」

 

 己の発言に驚いている二人に大まかな作戦と、細かい部分は二人の個性がどこまでできるか次第だと伝えると、上鳴から許容W数を超える電力をしようすると脳がショートし、なにもできなくなること。爆豪からは汗腺からニトロのようなものが出ており、最大出力の爆発を連続で起こすと掌から出血し、火花程度の爆発しか起こせなくなることを聞き、作戦を話す。

 

 東堂が二人に提案した作戦はとてもシンプルなものだった。その作戦とは、爆豪が上鳴を0P敵の頭上まで運んだ後、爆豪の個性で0P敵の頭の装甲の一部を破壊し、剥き出しになった中身に上鳴が個性の最大出力を喰らわせるといったものだ。

 

 爆豪に人を一人抱えて個性で飛べるか東堂が聞いたところキレ気味に、できるわ!、と返ってきたことに東堂と上鳴は短い付き合いながらも、キレているのではなくて素なのだろうと理解した。

 

 

    *

 

 

 地上で東堂と別れた後、0P敵の頭上に向かって個性を使って移動中、無言が気まずかったのか上鳴が口を開く。

 

「なぁ爆豪、俺達ほんとにあの0P敵倒せると思うか?」

 

 爆豪におんぶされている上鳴が不安そうに聞く。東堂が推測したことには東堂の願望が幾分か入っていた。重傷者が出ないように0P敵の装甲はそこまで厚くないはず、ヒーローに相応しい者が入れるように受験生に知らせてない評価基準がある、といったようなことだ。その事を考えた結果、こうして0P敵を目前にこんなことを聞いている。

 

 そんな上鳴の質問を爆豪は鼻で笑って返す。

 

「あのマッチョに指図されんのは気に食わねェが、ヒーローになるならこのくらい出来て当然に思え」

 

「なんかお前達見てると自分が情けなく思えてくるぜ。俺なんか、強い個性だしヒーロー目指してみっかって感じだからよ〜」

 

「そんなもん気の持ちようだろうが、オレやマッチョは明確な目標がすでに見つかってる。テメェはこれから見つければいい、それだけだろ」

 

 軽い自虐に走る上鳴に対して爆豪はなんでもないように答える。事実、爆豪としてはなんでもないようなことなのだろうが、上鳴はその言葉がとても嬉しかった。

 

「なんか敵みたいなヤツだって思ってたけど結構いいヤツなんだな」

 

「ンだとコラ!テメェみてェな個性しか取り柄がねェようなペラッペラなヤツに言われたかねェわ!」

 

「やっぱお前ひでぇヤツだわ...」

 

 会話をしているうちに0P敵の頭上に辿り着く。上鳴と爆豪はこれから行うことの最終確認をする。爆豪が個性で装甲を破壊し、内部を剥き出しにする、そこを上鳴の個性の最大出力で0P敵を行動不能にした後、動けなくなった上鳴を爆豪が回収して地上に戻るという段取りとなっている。

 

 段取り通り爆豪は0P敵の頭の装甲の一部を個性で破壊し、中の配電盤が見えることを確認したら一度上鳴を置いて離れる。上鳴の個性の最大出力に巻き込まれないためにある程度離れる必要があった。

 

「爆豪!マジで頼むよ⁉︎ここから落ちたら「うるせェ!さっさとしろカス!」わかったよ!いくぜ!無差別放電130万V!」

 

 目も絡むような光が上鳴を中心に発生する。数秒後、光が収まったそこには黒い煙を上げて動かなくなった0P敵と、見たこともないようなアホ面を晒す上鳴の姿があった。

 

 ショートしたことで姿勢を保つこともできないのか0P敵が倒れていく、頭に上鳴を乗せた状態で、

 

「ッ!クソがッ!」

 

 頭の上にいた上鳴は踏ん張ることができず、重力に従って落ちて行く。爆豪は素早くそのことに気づくもすでに落下は始まっており、叫び声を上げながら上鳴は落ちていた。

 

「ウェェェェェェイ」

 

「情けねェ声上げてんじゃねェぞアホ面!」

 

 爆破による加速で上鳴に追いすがるが、距離は一向に縮まらない。最悪の事態が爆豪の頭を過ぎる。そのとき、

 

「爆豪!」

 

 自分の名を呼ぶ声。出どころを見ると上鳴の落下するであろう地点に東堂がいた。

 

「上鳴を抱えて片手で飛ぶことができるか!」

 

 この状態でこんな悠長とも取れるような質問をする東堂に一瞬殺意が湧くが、おそらく東堂の個性で現状の打破を試みようとしていることを察して答える。

 

「そんなん余裕だ!考えがあるならさっさとしやがれ!」

 

「わかった!信じるぞ爆豪!」

 

 東堂がその場で手を叩く、瞬間、爆豪の見ている景色が変わる。先程まで必死に追っていたアスファルトに落ちていく上鳴が自分に迫って来ており、その上鳴の後ろには東堂がおり、さらにその後ろには青空が広がっている。突然のことに爆豪は混乱する。

 

(アホ面がオレに迫ってきてやがる、重力が反転してる?違う!さっきまでオレが見てたのは落ちていくアホ面と一面黒色のアスファルト、なによりさっきと違うのは、宙に浮いてたはずのオレがこうして地に足つけて空を見上げてることだ!このことから考えるにアイツの個性は位置の入れ替え、おそらく景色が変わる直前の手を叩くことが条件。クソッ!個性発動すんのなら自分の個性ぐらい説明しろや!)

 

 東堂への文句を心の中で言いながら素早く個性を使い飛び上がり、上鳴を受け止める。片手を爆破させ、その力を利用し、回転しながらなんとか上鳴はキャッチするが問題は東堂だった。東堂はその見た目からわかる通り体重もそれなりに重く、80kgを超えている。

 

「上鳴を持って早く着地しろ!」

 

その言葉で東堂のやりたいことを理解した爆豪は上鳴を連れて地上に降り、東堂を見る。

 

「さっさとやれやマッチョ!」

 

東堂が手を叩く、景色が変わった瞬間に爆破で落下速度を減らして着地する。着地してすぐさま爆豪は東堂に詰め寄る。

 

「テメェの個性の説明ぐらいしとけや!」

 

「悪い悪い、咄嗟のことで説明するのを忘れてた」

 

「ウェェェェェイ」

 

三者三様とはこのことだろうか、一人は怒り、一人は笑い、一人はアホ面を晒し、0P敵を倒したことを喜ぶこともせず過ごしていると試験終了のアナウンスが響き渡る。幸い、三人とも怪我はなく五体満足で試験を終えることができた。

 

「なぁ、俺たち本当に0P敵倒したんだよな?夢じゃないよな?」

 

 アホの状態から復活した上鳴が自分がしたことを信じられないのか、二人にわかりきった質問をする。

 

「当たり前だろが!見りゃわかるだろ!」

 

 東堂への怒りが冷めていないのか素の口調なのか判断が難しいが、爆豪は強い口調で上鳴の質問に答える。

 

「ありがとう、お前達のおかげだ」

 

 東堂は感謝を二人に伝える。

 

「もし俺たち三人とも受かってたら飯でも食いに行こうぜ!じゃあな!」

 

 そう言って上鳴は帰って行き、爆豪は特に何も言わずに去っていった。

 

 

    *

 

 

 ここではプロヒーロー達が受験生の行動をモニターで見ていた。その中の一人が話し始める。

 

「YEAH!!まさか一日に二回も0P敵がぶっ壊されるのを見れるとは思わなかったぜ!今年は大漁だな!」

 

 モニターには四人の人物が写っていた。一人目は緑谷出久、彼は一人で0P敵を壊すという偉業をやってのけたことによりプロヒーロー達の注目を浴びていた。

 

 残りは言わずもがな、上鳴電気、東堂葵、爆豪勝己の三人だった。この三人は一人目とは違った注目の浴び方をしていた。あわや雄英高校における入試で死者が出るかもしれなかったのだ。否が応でも注目を集める。

 

 プロヒーロー達の話題は0P敵から試験結果に移る。敵Pが0、つまり救助活動Pだけで合格した者がいるからだ。

 

 プロヒーロー達が緑谷出久について話している中、0P敵を倒した残りの三人の資料を見ている男がいた。ボサボサのロン毛に無精髭という清潔感があまり感じられない男だった。名を相澤消太、抹消ヒーローイレイザーヘッドとして活躍している男だ。

 

(東堂葵、筆記試験1位、個性はシンプル故に応用が効く。素の身体能力も高いな。知らされていない採点基準について気付ける頭がある。爆豪勝己、筆記試験4位、長時間戦闘を続けることができるタフネスと個性を使った飛行ができるほどズバ抜けたセンス。東堂の突然の個性使用に対して変化する状態に迅速に適応していた。上鳴電気、筆記は前の二人と比べると見劣りするが強い個性だ、個性を活かし敵Pを多く稼いでいる。近接格闘においてこれほど厄介な個性は珍しいな。触れられないというのはそれだけで武器になる、この三人は文句なしの合格と言っていいだろう)

 

 三人について思考を続けていると、雄英高校の校長であり個性が動物に発現したという稀有な存在である根津校長がこの場にいる全員に聞こえるように解散をするよう言う。

 

 続々と部屋からプロヒーロー達が出て行く中、根津が相澤に話しかける。

 

「それじゃあ、相澤くん。彼の指導をよろしく頼むよ、彼は次代の平和の象徴になるかもしれない子だからね」

 

「別にどうもしませんよ。見込みがあれば指導する、見込みが無ければ落とす、それだけです」

 

 

    *

 

 

 数日後、東堂の家に雄英高校から郵便物が届く。東堂が封筒を開くと中には小さな黒い物体が入っていた。それを取り出そうとして、誤って床に落としてしまう。小さな黒い物体の正体は小型のプロジェクターのようなものだったようで、床に落ちた衝撃で映像が再生される。

 

 部屋の壁に映っているのは、ヒーローを志そうと思った切っ掛けである存在、東堂葵の起源、No.1ヒーローのオールマイト。オールマイトに驚いている東堂を置き去りに、映像のオールマイトは語り始める。

 

 映像のオールマイトが語る内容は、東堂の試験結果について。筆記試験1位、実技試験4位、そして隠された評価基準である救助活動Pを含めた総合成績2位とい結果。これに加え、試験中に起きたアクシデントについての注意と東堂に対する激励だった。

 

 憧れの存在から直々に激励をもらったことで、東堂はかつてない幸福感に包まれるのも束の間、映像のオールマイトの前で一人決意を口にする。

 

「長く険しい道のりになるだろう。だがしかし、貴方が笑って引退できるよう、後の世を人々が笑って過ごせるような頼もしいヒーローになるために、俺は貴方を超えるぞ、オールマイト」




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