魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第二話で話題に上った克也が魔法事故を起こした時の話です。


番外編①
事故と別れ


此処はとある場所にある魔法実験室。今此処では極秘に魔法の実験を行われようとしており、数人の研究者が機械を休む暇もなく操作していた。機械から出た幾重にも交わるチューブが、まだ幼い少年がかぶるヘットギア型の機械に繋がっている。機械のモニターには少年の脳波と想子のグラフが映し出され、正常であることを示していた。

 

「当主様、開始してもよろしいでしょうか?」

 

緊張した面持ちで許可を貰おうとしている研究者だが、即座に開始させてほしいと顔に書いてある。真夜でなくとも誰でも読み取るのは簡単だっただろう。このまま待たせてしまえば、焦らされたことで実験に失敗してしまうかもしれない。そう思った真夜は許可することにした。

 

「ええ、始めてちょうだい」

「実験開始!」

 

研究者たちは合図ともにグラフを観察し始めた。少年は実験室の中央に立ち、左手には腕輪型のCADを巻いていた。CADを操作すると想子が活性化し始める。

 

「想子の活性化を確認。必要量に到達」

 

研究者はモニターを観察しながら詳細を報告する。魔法式が構築され想子がさらに活性化する。起動式が展開され魔法が発動する瞬間、モニターから危険を告げる警告音が鳴り響いた。

 

「何!?どうしたの?」

 

真夜が血相を変えて問いかける。

 

「わかりません!突然鳴り始めました!」 

 

研究者たちは原因を見つけようと、各々パソコンを操作し始める。だがその前で克也が突然苦しみ始めた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!うぅぅぅぅぅぅ!っ!ぁぁぁぁぁぁ!」

 

尋常な痛みではない。身を裂かれるような痛みが、焼けた鉄の棒で身体中をまさぐられている。少年にはそう感じられた。

 

「まだ原因はわからないの!?」

「不明です!」

 

真夜の悲痛な叫びが響くがどうすることも出来ない。生粋の研究者ではない真夜には、改善策を用意することも出来ないのだ。

 

「魔法式を破綻させろ!」

「ダメだ!今の状態でそんなことをしたら、魔法演算領域に深刻なダメージがでる!運が良ければ助かるかもしれないが、悪ければ死ぬんだぞ!」

 

研究者たちが口論している間、真夜はどうすればいいかわからなかった。このままでは自分と同じ能力を使う魔法師がいなくなる。ましてやそれが四葉の人間で血を分けた甥なら尚更だ。

 

「想子観察機の魔法式構築プログラムを中止しろ!」

「…ダメです!応答しません!」

 

魔法式が崩壊すると同時に、荒々しい想子があたり一面に吹き荒れる。想子観察機へと過剰に流れ込み、想子不可侵防壁の許容量を大幅に超えて爆発する。

 

「ここは危険だ!全員地上に戻れ!」

 

研究者たちのリーダーは、この場にいる全員に逃げろと命じる。だが真夜は逃げるどころか克也の元に向かおうとする。

 

焦点を失った眼で見つめる。

 

「克也…。私の血を分けた子供…。克也…」

「奥様、危険です!」

 

虚ろな声で発する。小里早苗(こざとさなえ)が真夜の手を握り、地上に向かって駆け出した。その瞬間、爆発するかと思いきや想子の嵐が突然消えた。あれだけの量を一瞬にして消し飛ばした魔法は何かと、魔法の発射地点に眼を向ける。

 

そこには深雪に連れてこられ、右手を克也に向けたままの姿勢で立つ達也がいた。険しい目つきで逃げ出す研究者たちを睨みつけている。悲しそうな光が眼の中に見えたような気がした。

 

「達也さん…」

 

真夜が名前を呟いたときには、達也は克也に向かって走り出している。深雪もその後についていく。

 

「「克也(お兄様)!」」

 

2人が名前を呼びながら倒れた克也を抱き上げ、達也が左手を克也に向けて魔法を発動する。すると高圧の想子にさらされ、ただれていた皮膚が何事もなかったかのように綺麗な皮膚に戻る。

 

しかし、克也は目を覚まさない。

 

「克也お兄様、目を覚ましてください!兄さん、何故克也お兄様は目を覚まさないのですか!?」

 

深雪が泣きながら達也に聞く。達也も深刻な表情で答える。

 

「魔法演算領域がオーバーヒートして、神経にダメージを与えたのか。脳自体がやられたのか分からない…」

 

何故。何故克也がこんな目に遭わなければならないんだ。目を覚まさないのは俺のせいなのか?突然使用したことで余計なダメージを与えたのか?まだこの魔法を上手く扱えていないからなのか?

 

そう達也が考えている間、深雪は泣きすがりながら克也の名前を叫び続けていた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

眼を開ける。

 

「…知らない天井だ」

 

耳元から寝息が聞こえていたので、そちらに眼を向けると叔母の真夜が寝ていた。どうやらここは四葉の診療所的な場所のようだ。起き上がり立とうとすると、上手くバランスを取れずに尻餅をついてしまう。まるで立ち方を忘れたかのように足下が定まらない。

 

尻餅の音で目を覚ましたのか。叔母が起き上がり俺を見つめてから抱きついてきた。

 

「克也!?目を覚ましたのね!?」

 

耳元でそう叫びながら抱きしめてくる。

 

「叔母上!?何がですか?てかなんで抱きつくんですか!?」

 

そう言うと叔母は名残惜しそうに離れながら答えた。

 

「記憶が無いの?貴方は魔法実験に失敗して事故に遭った。立ち上がれないのは、たぶん事故による後遺症の1つだと思うわ。実験の失敗は貴方でも研究者たちのせいでもない。機械の誤作動よ」

 

事故と聞いて俺は思い出した。

 

《流星群》を発動しようとして、突然警告音が聞こえたかと思うと、想子が普段とは逆方向に流れ始めた。逆流してきたので魔法実験に失敗したかと思い、魔法式構築を中止しようとすると、身体中に痛みが走り出したことを。今思い出してみても、身体中が覚えていて震えが止まらない。

 

「誤作動したのは、俺が想子を上手く制御できていなかったからでは?」

「いいえ、貴方は失敗などしてません。私から見ても完璧に想子を制御できていたわ」

 

叔母は真面目な顔で教えてくれた。それだけ言うのだから俺が失敗したわけではないのだろう。これ以上深く考えれば、叔母にストレスを与えてしまうかもしれないと思い考えるのをやめた。

 

魔法を使えるかどうか試しに近くに置いてあった角砂糖を《浮遊》で浮かべようとすると、魔法式が途中で停止して発動しない。

 

何度も繰り返すが結果は同じで、自分が魔法を使えなくなったという事実に落ち込んだ。これでは四葉にいる価値(資格ではない)がない。追放されると考えていると、叔母がわかっているとでも言うように、後ろから優しく抱きしめながら話してくれる。

 

「大丈夫よ克也。絶対に四葉から追い出したりはしないわ。誰が何を言おうと貴方は当主の私が守るわ」

 

その言葉に安心して、俺は何をすべきかを理解した。

 

 

 

 

 

事故から半年後。達也と深雪は母の深夜と母のボディーガードである穂波さんの4人で、プライベート旅行として沖縄に向かった。俺は魔法事故のリハビリ中だったので同行は禁止された。

 

穂波さん・達也・深雪には残念がられた。特に深雪にだ。俺も行きたいのは山々だったが、リハビリに専念して不自由ない生活を送れるようにしなければならなかったので我慢した。特に達也と深雪と3人で遊ぶために。そう考えるだけで、やる気も起こり魔法が使えるような気がする。今頃4人は沖縄でゆっくりと過ごしているのだろう。

 

羨ましい限りだ。

 

 

 

それから3ヶ月後、俺は今まで通りに魔法を使いこなせるようになり、達也と体術の修行も出来るようになっていた。事故のきっかけにもなった《流星群》も、問題なく発動できるようになった。少なからず不安になることもあるが、魔法式に影響が出ることはない。

 

「心情が魔法に影響を与える」

 

一説に叔母からそう言われことがある。未だに定かではないが、俺は作用すると考えている。魔法を放つ際の心持ちによって、威力や精度などが上昇したりするからだ。ポジティブなら高威力高精度に。ネガティブなら低威力低精度に。これは個人的な意見なので正確かは分からない。四葉は精神の研究をしているので、これも研究対象で解明するまでにはまだ時間がかかるらしい。

 

 

 

あの日、旅行から帰ってきた達也と深雪はひどく落ち込んでいた。話によると大亜連合による侵攻を受け、敵艦を消滅(撃沈)するために、達也が魔法を発動する際に艦砲射撃を受けたらしい。達也を守るため、穂波さんは対熱防壁を展開したが、魔法演算領域のオーバーヒートを起こして亡くなったそうだ。

 

俺のように治る人もいるが、穂波さんは【調整体】だったので助からなかったようだ。正確には彼女が助けようとした達也に死なせて欲しいと願ったらしい。そして息を引き取った彼女の遺言通り、骨は2人によって海に流された。

 

しかし悲しいことばかりでなく、達也と深雪の関係も改善されたのだ。深雪は達也のことを「達也お兄様」と呼び、あり得ないほどくっつくようになった。さらに俺に対しても普段より甘えるようになった。

 

母さんは愉快ではなさそうだったが、俺達3人は気にせずに仲良くしていた。

 

 

 

 

 

来年は高校受験だが魔法科高校に進学するかは分からない。俺は進学したいが、できるかどうかは当主である叔母上が最終決定する。四葉が最強でいるために、おそらく通わせてくれるであろうが分からない。

 

叔母上が行けと言うのであれば行く。行かずに四葉本家で研究を手伝えと言えば手伝う。暗いことを考えていてもらちがあかないので、体術で気分爽快させようと思う。体術の先生に相手をしてもらえるよう頼むため、俺は訓練室に向かった。

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