魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第16話 九校戦②

幹比古たちとの話し合い後、深雪と達也が七草先輩たち首脳陣に呼ばれたらしい。付いていこうとしたが、自分は別に呼ばれた訳でもないので、行かなくてもいいだろうと思ったのでやめておいた。

 

今俺は小野先生に、【無頭竜】の構成員とアジトを調査してもらえるようお願いしていた。叔母に頼んでもよかったのだが、対価を要求されそうだったのでやめておいたのだ。小野先生からすぐに連絡が返ってくる。そこには「何故その名前を知っているのか。何故そんなことを自分にさせるのか」と書いてあったが、素直に答えるつもりはなかった。

 

「一高が狙われているようなので、対策を立てるために必要なんです。それと犯罪組織の名前を知っているのは、実家からの情報提供です」と送る。

 

嘘をつきたくはないが、このまま放っておいて深雪に何かあれば正気を保っていられる気がしない。ならば深雪に危害を加えられる前に防ぐのがいい。相手を叩き潰すことがもっとも効率がいいが、面倒くさいので他に任せたい。

 

そうこうしていると2人が帰ってきた。話を聞く限り、どうやら先ほどの呼び出しは委員長の代わりに、深雪を本戦に出場させることを達也に許可を貰うためだったらしい。深雪なら本戦でも問題なく優勝できるので、達也も拒否しなかったようだ。俺もそう思っていたので応援することにした。

 

 

 

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大会4日目からは新人戦が始まる。

 

克也・深雪・雫・ほのかの出番だ。雫のエンジニアは達也で、予想通り余裕で決勝トーナメント進出を決めている。午後、一高の天幕では昨日までの重い空気が一変して軽かった。理由は女子〈スピード・シューティング〉で、上位を一高が独占したからだ。真由美が達也を褒め称えているが、達也はそれほど喜んでいないようだ。

 

「独占したのは俺ではなく選手なんですが…」

「もちろん分かっているわよ。でも達也君がいなかったら、こんなことは起こらなかったのよ」

 

真由美はご機嫌で達也の肩を軽く叩いていた。

 

「ちなみに一回戦で使用された北山さんの魔法は、《インデックス》に正式採用するかもしれないと打診が来ています」

「それって新種の魔法として登録されるってことなの?」

「ええ」

 

真由美の質問に頷く鈴音。

 

「そうですか。では登録名は北山さんの名前でお願いします」

「そんな駄目だよ!あれは達也さんのオリジナルなのに…」

「最初の使用者が登録されるのはよくあることだぞ」

 

雫の反論に達也は首を横に振る。また達也の悪い癖が出たなと思いながら克也は雫に話しかけた。

 

「達也は自分が実戦で使いこなせないという恥をかきたくないから、雫の名前で登録してほしいんだ。分かってやってほしい」

 

これにはさすがの雫も渋々頷いてくれた。

 

「達也君、この後もこの調子でお願いね。克也君も頑張って」

「「はい」」

 

真由美からの応援を2人で素直に受け止めた。

 

 

 

 

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午後に予定されている試合は、〈バトル・ボード〉の第四レースから第六レースだ。ほのかの出番は第六レースなのでかなり後である。緊張症のほのかの緊張を和らげるために、女子メンバーが談笑しているのをBGMに、男4人は深刻な顔をしていた。

 

「幹比古、何かおかしなことはないか?」

「今のところは特に何もないよ」

「俺も何も感じねぇけど、この先良くないことが起きそうな気がするぜ。誰が仕掛けてくるのか分からねぇから、対策の練りようもねぇよ」

「仕方ないさ。人間は万能じゃないんだから」

 

その後に行われたレースでは、水面に光を反射させて目くらましする戦略を使った達也の戦略(悪知恵?)のおかげで快勝だった。視界が十分でない状態でコースを走るのは危険すぎる。視界が回復してから残りの3選手は進み始めたが、順位を上げることのできないほどの距離がほのかとはできていた。

 

 

 

 

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大会5日目。新人戦2日目は克也・深雪・雫の出番だ。今日は〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉が行われるが、深雪の優勝は確定しているに等しい。振動魔法を得意とするので、この競技は深雪のためにあるとでも言えよう。

 

〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉では、服装は公序良俗に違反しない範囲であれば自由に着用可能だ。とはいえ水着などの服装は9割9分有り得ないが。着用するとすれば、魔法師兼グラビアアイドルなどを目指す生徒ぐらいだろう。注目を集めるのは間違いないだろうが。制服のまま出場する選手もいれば、流行に乗った服を選ぶ選手もいる。

 

達也はてっきりそうなると思っていたのだが…。

 

「…本当にその服装で出るのか?それに振袖が邪魔にならないか?」

「もちろん。ルールに違反してないんだから、お洒落はしないと勿体ない。それに袖が長いなら襷を使うから問題なし。こういった大きな場所で着ないのは勿体無いよ」

 

その台詞に達也は頭を抱えたくなった。そう、雫の出場する服が振袖だったのだ。彼女の容姿と合っているので、着替えろとは言えない。

 

まあ、そのおかげかはわからないが雫が登場すると歓声が漏れる。雫は達也から学んだ《共振破壊》の応用をなんなく使いこなして勝利した。流石一科の上位者なだけはあると思った達也だった。深雪の登場はよりすさまじかった。神々しいと表現するのが妥当な佇まいなほどに。CADの代わりに鈴などを持たせれば、巫女と呼べるそれだけの存在感だろう。

 

深雪は開始直後に、《氷炎地獄(インフェルノ)》を発動させて相手を秒殺した。相手の精神的ダメージが気になったが、深雪の魔法力には相変わらず驚かされる。《氷炎地獄(インフェルノ)》は、A級ライセンス試験で度々課せられる魔法で受験者に涙を流させる程の難易度だ。深雪からすれば、この程度は朝飯前なのだが。だからこそ恐ろしいと思ってもいいだろう。

 

 

 

ようやく克也の出番が来た。雫や深雪の試合を見て早く戦いたいとうずうずしていたのは、達也や深雪からすればわかりきっていた。順当に行けば、決勝で一条将輝とぶつかる。そこが本番なので、それまでの予選は軽い準備運動のようなものだ。決勝までは汎用型で遊び、観客の驚く顔を見ることにした。

 

克也が登場すると、女子生徒から黄色い声援が聞こえた。今の克也の服装は、明治維新の頃を意識したデザインだ。四葉家に頼んで特注してもらったのだが、普段は目にすることができない服装と端正な容姿で、数多の女子生徒を虜にしていた。

 

無意識による魅了は、克也の得意分野且つ十八番である。

 

「…あの容姿にあの服装は反則でしょ。相手も気合いを入れてきたみたいだけど完全にのまれてるよ。そんなことを言ってるあたしもそのうちの一人なんだけどね...」

「確かに。僕でも気負いするね…」

「…ある意味凶器だな」

「似合いすぎですね…」

「…絵になる」

「かっこいいです!」

「私でも惚れてしまいそうです克也お兄様」

「相変わらずだな」

 

エリカ・幹比古・レオ・美月・雫・ほのか・深雪・達也の順の感想だ。それだけの威力があった。

 

同じ頃、3年の場でも話題になっていた。

 

「何なんだあの魅力は?確かに市原を落とすだけの威力はありそうだが…」

「…私も驚いたわ、まさかここまでとはね」

「…」

 

カシャ!カシャ!カシャカシャカシャカシャ!

 

摩莉と真由美が感想を綴っていると、隣から連続したシャッター音が聞こえた。横目で見てみると、情報端末で克也を撮った鈴音がいる。

 

「…市原、お前は何をしているんだ?」

「絵になっているので写真を撮っただけですが。何か問題でも?」 

 

すまし顔でしれっと語る鈴音に摩莉は脱力する。

 

「…こいつは克也君が関係すると別人だな」

 

摩莉の独り言に顔を真っ赤にして俯く鈴音であった。

 

 

 

そんなことが観客席で起こっているとは露程も知らず。克也はCADを構えた。合図とともに両陣地に魔法が発動するが、克也の陣地はぴくりとも動かず、反対に相手の陣地の氷柱は高温で溶け始めていた。自陣の氷柱に〈情報強化〉をかけ、相手の魔法の侵入を防ぎながら魔法を行使する。

 

地獄の業火(ヘル・ヘイム)》は空気の温度を急激に上昇させ、対象物の構造を破壊して燃滅(・・)(消滅ではない)させる魔法だ。急速冷凍された氷は中に数多の気泡を形成するため、もろく崩れやすいため簡単に崩壊する。

 

「…これは《地獄の業火(ヘル・ヘイム)》か?こんな高等魔法を1年で使えるというのか」

「…流石四葉家の直系ね。こんな魔法を当たり前のように使えるなんて、3年生になったらどうなるのかしら」

 

摩莉も真由美も驚愕している。

 

地獄の業火(ヘル・ヘイム)》は、深雪の使う《氷炎地獄(インフェルノ)》と違い、A級ライセンス取得時に課せられることはない魔法だ。だが使えるのはごく少数で日本に1人、世界でも10人しかいないと言われているので眼にする機会はない。使用された瞬間を撮影した映像の粗いもの以外には、克也が使う以外に眼にすることはできないのだ。

 

試合は僅か10秒で終了し、克也は着替えた後一高の天幕に呼び出された。そこには一高の首脳陣が集まっていた。

 

「克也君、貴方は一体何者なの?あの魔法は日本で使う人は1人だけだって言われていたけど。それが貴方だったなんて…」

「黙っていたのは申しわけないと思っています。しかし()から許可するまで使うなと言われていたので、今まで話せませんでした。お許しください」

 

真夜のことを()と呼んだのは、設定を疑われてはいけないからだ。

 

「四葉、顔を上げろ。俺たちはお前を責めるために呼び出したのではなく、優勝してもらうために呼んだのだ。そんなに思い詰められるとこちらが困る」

 

顔を上げると克人は穏やかな表情をしていた。強面なのは変わらないが…。他の上級生も恐怖を浮かべている様子はなく、むしろ前向きな表情をしていた。特に服部は不敵な笑みを浮かべている。

 

「四葉、必ず優勝しろ。お前にはそれだけの力がある。おそらく決勝は一条家の跡取りだろうが、今のお前なら敵にはならないはずだ。お前のやりたいようにやれ。これは〈十師族〉十文字家代表代理としてではなく、一高の先輩としてだ」

「ありがとうございます。期待に応えられるように全力を尽くします」

 

克也は克人の言葉に強く応えた。

 

 

 

天幕を出た後、達也たちの元に向かうと質問攻めに遭った。達也に「助けて」とアイコンタクトを送ったが、「人気者は仕方ないさ」と返されしばらくの間拘束されるのだった。




地獄の業火(ヘル・ヘイム)》・・対象物の周囲の温度を急激に上昇させ対象物を燃滅させる魔法。日本には1人、世界でも10人しか使用者がいない珍しい魔法。
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