その後の試合は《
服装は一回戦と変わらずそのままで行くと会場は満員だった。座席が急遽増やされたようで、観客がかなり増えていたがそれでも足りないようだった。それも仕方のないことだろう
一条家の跡取りであり、凜々しい顔立ちで上下ともに赤い制服を着用した《爆裂》の使用者、一条将輝。
対して端正な顔立ちで、明治時代の服装で世界でも10人しか使えない《
今回の新人戦最大の目玉にして、次世代の〈十師族〉同士の試合が行われるのだから注目されるのは当たり前だった。
合図とともにお互いが魔法を敵陣地に届かすが、将輝の氷柱は微動だにしない。対して俺の氷柱は前列4本が簡単に崩壊し、一高応援席から悲鳴が上がる。しかしこれは想定内だ。敢えて前列四本を弱い〈情報強化〉をかけておき、後ろに行くにつれて強くする。
前列を簡単に崩壊させて油断させる。しかし奥に行くにつれて威力を上げなければ貫通しないので、精神的ダメージを与え魔法構築を遅らせ自分のペースに持ち込む。
これが精神的に未熟な一条将輝の対爆裂用対策だ。魔法のこうしは精神状態に大きく左右される。それを理解しているが故の戦術だ。
俺は《
前列四本を簡単に《爆裂》で崩壊させたことで、将輝の心は余裕を感じだしていた。
所詮、噂には尾ひれがつくものだ。《
優勝するのはこの俺だ!
《爆裂》の照準を二列目の氷柱に向けた。
「簡単に壊されちゃったけど大丈夫なの?達也君」
エリカは決勝まで1本も触れさせなかった克也が、あっさりと壊されることに戸惑っていた。
「俺も気になったが大丈夫だろう。あいつのことだから何か策があるのかもしれない」
達也も少し不安なようだが、克也の勝利を疑うことは克也を裏切ることにつながると理解している。だから達也は克也が負けるとは一切思っていない。勝つこと以外に有り得ないからだ。深雪は胸の前で手を握りしめて祈っている。達也たち以外のメンバーも心配そうに見つめていたが、勝利を信じている眼を克也に向けているのはみんな同じだった。
「敢えて前列四本を捨てにくるとはな。あいつの考えることは予想がつかん」
「全く同感ね。《
「…」
摩莉はため息しか出ないようだ。真由美に至っては将輝の技量に感心している。鈴音は無言でポーカーフェイスを決め込んでいた。
何故だ?何故二列目から《爆裂》の効果が発揮されないんだ!?まさか一列目は捨て石だったというのか!後ろに行くにつれて〈情報強化〉が強くなっているだということか。だがこの強度は新人戦のレベルじゃない。一列目を簡単に壊せたことで優越感に浸らせ、二列目から潰せなくさせることで動揺を与えたのか?
まずいな非常にまずい。一度落ち着くんだ。そうすれば勝てる。
その僅かな時間の油断が、将輝にとって痛恨の失態だった。
一条将暉の動揺を感じ取った俺は、【第三の固有魔法】を発動させた。
将輝の《爆裂》が
《
魔法式そのものが燃やされただと!?
そんなことができるのか?ありえない、この俺が負けるわけがない!焦った俺は規定を大きく上回る威力の《爆裂》を、四葉克也を含めた範囲の氷柱に向けて発動させてしまった。
将輝が規定オーバーの《爆裂》を放ってきたが、克也はもう一度《
深雪・克人・真由美・摩利・吉祥寺は違和感を感じた程度である。
《
一条将輝の陣地の12本の氷柱はあっという間に固体から液体に、液体から気体に状態変化してすべて消え去った。一拍遅れてブザーが鳴り、俺が観客に向かってお辞儀をすると盛大な歓声が響き渡った。
最前列には友人たちが座っており、眼を向けると全員が感動しているようだ。ほのかと美月は雫とエリカにすがりついて泣いている。レオと幹比古はガッツポーズを決めて、達也は「さすが俺の兄だ」とでも言いたそうな表情をしていた。深雪は涙目になっていたのでウインクを送っておいた。
制服に着替えて更衣室を出ると、研究者や報道陣に囲まれてしまった。質問攻めに遭っていると一条将輝が引っ張り出して、関係者以外立ち入り禁止エリアまで連れてきてくれた。
「助けてくれてありがとう一条将輝。おかげで余計な疲弊をせずに済んだ」
「礼には及ばん。対戦相手が迷惑そうな顔をしていたら助けたくなるものだ。それにフルネームで呼ばずに将輝と呼んでくれ」
将輝は紳士らしく謙遜し始めた。知り合いにはいない人間性を持っていたので新鮮だった。
「わかったよ将輝。それでもお礼を言わせてくれ。助けてくれて本当にありがとう」
そう言うと将輝は照れ始めた。幹比古と似て褒められると照れるらしく、試合とは違う一面を見れて嬉しかった。
「それより優勝おめでとう。まさか負けるとは思っていなかった。...それに俺は規定違反の威力をお前に放ってしまった。普通なら失格になるはずだったが、お前が消してくれて助かったよ。本当にありがとう」
「気にするな何もなかったんだから問題ないさ。それと俺のことは克也と呼んでくれ。将輝とは良い友人同士になれそうだ。〈モノリス・コード〉に俺は出場しないが負けないぞ」
そう言いながら右手を差し出す。将輝も右手を差し出して握りながら答えた。
「俺もそう思ったよ。だが次は負けない。〈モノリス・コード〉は俺たちが勝つぜ克也」
互いに握手をするとそれぞれの天幕に向かった。
天幕に入ると拍手で迎えられ、森崎でさえ笑顔を浮かべていた。
「お疲れ様克也君。あなたのおかげで三高とリードを広げることができたわありがとう」
「素晴らしい戦いだったぞ四葉。さすがは〈十師族〉の一部を担う四葉家当主のご子息だ。後はみんなに任せてゆっくり休め」
七草先輩から褒められた後に十文字先輩からも喜ばれた。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせていただきます」
そう言って俺は自室に向かった。
夕食では達也たちと一緒に食べて満喫した。話題はもちろん俺が優勝した魔法のことを聞かれたりはしたが、秘密ではないので素直に話した。
その夜に俺はベッドで横たわり、夕食の余韻に浸っているとベルが鳴る。ドアを開けると私服姿の鈴音が立っていた。
「どうした?」
「優勝のお祝いを言いたくて」
モジモジとする鈴音の言葉に俺は納得する。優勝してから俺はあちこちを移動していたので、2人きりになることはなかった。よって言葉を交わすタイミングも作ることができなかった。
「そこに立ってないで部屋に入ろうか」
そう言って入るように促すと鈴音は部屋に入る。鈴音が椅子に座ったので、ベッドに腰かけて相対する。
「優勝おめでとうございます。流石四葉家ですねお疲れ様でした」
「ありがとう応援してもらってたし、それぐらいはしないとな。もう遅いから送るよ」
そう言って鍵を手に取り、部屋から出ようとすると鈴音に抱きつかれた。
「鈴音?」
「少しだけこのままでいさせてください」
鈴音は俺の背中に顔をうずめたままそう言ってくる。鈴音は満足すると普段の顔に戻り離れた。
部屋に送り、別れる前に鈴音がキスしてきた。不意打ちを食らい驚いていると、鈴音は小悪魔的な照れた顔で笑顔を向けてくる。呆然としていると、目の前でドアを閉められしばらく俺は廊下に立ち尽くしていた。
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次の日、鈴音はいつもと変わらない様子で作業していた。俺は逆に動揺しまくりで、ドジを踏みまくっていた。パソコンからアラーム音が鳴る度に、周囲から視線を受けるほどに。
大会7日目。新人戦4日目でここでは〈九校戦〉のメイン競技である〈モノリス・コード〉と、〈ミラージ・バット〉の予選が行われる。〈モノリス・コード〉に森崎が、〈ミラージ・バット〉にほのかと里見スバルが出場する。
達也はほのかとスバルのエンジニアを担当し、見事予選を勝ち抜いて決勝トーナメントに進出した。
達也は今自室のベッドで横になり、〈クリムゾン・プリンス〉こと一条将輝と、〈カーディナル・ジョージ〉こと吉祥寺真紅朗を思い出していた。
大亜連合による沖縄侵攻に同調して行われた新ソ連の佐渡侵攻に対して、弱冠13歳にして義勇兵として防衛戦に加わり、現当主一条豪毅と共に《爆裂》を以て、数多くの敵を葬った実戦経験済みの魔法師。
そして弱冠13歳にして、仮説上の存在だった〈基本コード〉の一つを発見した天才魔法師。この2人が同じ学校の同じ学年にいるのは反則級の偶然だ。
この2人がタッグを組む〈モノリス・コード〉は苦戦を免れない。森崎たちも善戦するだろうが、勝つことは不可能に近いだろう。森崎たちが本気で撃ち合っても、一条将輝1人に倒されるのは目に見えている。
そこまで考えてから睡魔に身をゆだねた。
昼寝から覚め天幕に向かうと、パニック一歩手前の空気が会場からではなく、各校の天幕が置かれているエリアから流れていた。
その原因は〈モノリス・コード〉での事故が原因だった。
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