魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第32話 真相

あれから2日経ったがレオはまだベッドの上だ。常人なら意識を失うほどの精気を吸われたのだから、すぐに回復するとは思っていないのだが。今朝はまだ来ていないエリカと幹比古の話題で達也が美月と話していたのだが、登校してきたエリカと幹比古の顔を見て首を傾げる。

 

「…おはよう」

「…おはよう達也・柴田さん」

 

2人の挨拶にいつもの元気がなく、疲れが見えるほどの疲労が溜まっているようだ。聞く前に始業のチャイムが鳴ったので、達也は理由を聞くことができなかった。

 

 

 

その日の昼食は珍しく人が少ない。エリカが昼休みの間も寝ており、幹比古が保健室に行き、レオは病院なので男2人は少し居心地が悪かった。しかし女性陣は、普段なかなかない面子であることを楽しんでいたのだった。

 

 

 

その日の夜、俺は吸血鬼を追いかけていた。達也達には叔母からの命令で、四葉家の者と行動していると伝えているがそれは嘘だ。今は七草家と十文字家によって結成されている捜査チームで行動している。

 

「七草先輩、どうですか?」

「何もなしね。このままじゃまた収穫なしと父に伝えてため息をつかれるのがおちだわ」

 

七草先輩もどうやらエリカ同様に疲れ切っているらしい。

 

「十文字先輩、どうしますか?」

「どうにもこうにも吸血鬼が現れない限りどうしようもない」

 

まだ2人には吸血鬼の正体を教えていないが、知られると真っ先に俺が達也に疑われるので心苦しいが黙っておいた。

 

 

 

 

 

数日後。家でゆっくりしていた俺と達也は、幹比古から連絡をもらいバイクにまたがって向かった。

 

「2人とも無事か?」

 

達也は赤髪に金色の瞳の人物と交戦していたエリカと幹比古に声をかける。達也が声をかけると2人は安堵した空気を醸し出した。

 

「あ、克也君と達也君だ」

「克也・達也、来てくれたんだね」

「連絡をもらったんだから来るしかないだろ?」

 

俺は少しおどけながら答えるが、エリカの服の様子に少し焦ってしまい眼を背けた。

 

「ねえ、眼を背けたままじゃなくて何か羽織るもの貸してくれない?」

「ああ、すまない」

 

俺がコートをエリカに被せると、寒かったのだろうか肩の震えが止まった。

 

「あいつ許さないんだから。絶対に服を弁償させてやる」

 

エリカの服は至る所が破れていたので、愚痴りたくなる理由は分かった。自身の恋愛事には無関心でも、服装に関しては気にする。こう見えてエリカも年頃の女子なのだ。

 

「あいつは右鎖骨を痛めていたようだが」

「達也君、それはそれでこれはこれよ。ところでミキ、いつ連絡したの?聞いてないんだけど」

「位置を見つけたときだから15分ぐらい前かな」

「せめて言ってほしかったわ」

「いいじゃないかエリカ。また現れたときに倒せば良い」

 

時間的にも帰った方が良さそうなので帰ることにした。

 

「そろそろ帰った方がいいんじゃないか達也?」

「そうだな。エリカ、乗ってくか?」

「うん、お願い!」

 

そう言って達也の後ろに乗り嬉しそうに腰に手を回した。女子がバイクの後ろに乗りたがる衝動は、一昔前から変わらず今でも残っている。そう思っていると、いつの間にか達也はエンジンをかけて走り出していた。エリカにコートをとられたままの俺とエリカに怒られた幹比古は、置いていかれたことに気付くまでその場に立ち尽くしていた。

 

「…幹比古、後ろに乗っていくか?家まで送るぞ」

「…ありがとう。お言葉に甘えてお願いしようかな」

 

俺はいつもより鈍い動きでバイクにまたがり、幹比古が乗り込んだのを確認してから発車させた。

 

 

 

エリカと幹比古を自宅に送った俺と達也は、先程の戦闘の話をしていた。

 

「達也、どうしたんだ?やけに深刻な顔をしてるけど」

「いや、さっきの敵は厄介だなと思ってな。あれは《仮装行列(パレード)》だった」

「《仮装行列(パレード)》だって!?…九島家の秘技じゃないか」

「そのはずだ。だが閣下の弟さんが渡米して家庭を築いていたんだから、その子供に遺伝して使えてもおかしくはない。リーナだよ。おそらくあの赤髪の魔法師は」

「まさか…。姿形が変わるなんてありえない」

「叔母上に聞きたい。連絡を頼めるか?」

「わかった」

 

帰宅してから四葉へ秘匿回線で連絡すると、すぐ叔母が電話に出た。

 

『あら、克也から連絡をくれるなんて【ブランシュ】以来ね。それに達也さんも深雪さんも久しぶりだこと』

「「「お久しぶりです叔母上(叔母様)」」」

『それで用件は何ですか?』

「失礼します叔母上。実はお聞きしたいこととお願いしたいことが一つずつありまして」

『構いませんよ』

 

達也の突然の割り込みに、叔母上は見かけ上は優しく頷く。

 

「《仮装行列(パレード)》の仕組みを教えていただけませんか?」

『あらあら、九島家の秘術ですよ。私が知っているわけがないじゃないですか』

「叔母上は閣下のご指導を受けていたと伺っていますが」

『…教えてもらえなかったのよ。いくら聞いてもね』

「失礼しました」

 

達也は不甲斐ない自分を恥じたようだが仕方がない。

 

「《仮装行列(パレード)》。仮装のエイドスというものを魔法式として自分自身に投射し、一時的に外見を変えると共に、魔法的な照準を仮装の情報体にすり替えることで、自分自身に対する魔法の作用を防止する魔法なのではないのですか?」

『【変身】が不可能だということは、達也さんが一番分かっているでしょう?』

「姿形を変えるだけでいいなら光波干渉系魔法で可能です。問題は光波干渉系魔法では、俺と克也の《眼》をごまかせないということです」

「お兄様方が正体を見抜けない相手など…」

「それだけじゃない。俺の《雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)》と克也の《闇色の辺獄烈火(ベルフェゴール)》の照準も外された」

 

深雪の驚きに俺は頷いた。この行動は達也の言葉が本当であるということを意味し、言葉の信頼性を高める目的がある。

 

『…《仮装行列(パレード)》は弟さんの方が上手だったと聞いたことがあります』

 

それが上手く作用したかはわからないが、叔母上から重要な情報がもたらされた。

 

「それだけで十分です。それと今回の事件は我々の手に余るようなので援軍を頼みたいのですが」

『…それが許しを請う方の用件なのですね?いいでしょう風間少佐との接触を許可します』

「ありがとうございます」

 

十分な情報と許可をもらい達也は満足した。電話が切れると、達也は少し安堵したような声を出す。

 

「これではっきりした。今日の敵は〈アンジー・シリウス〉ことリーナだ。明日も学校だが、リーナとは自然に接することにしよう。それとこのことはみんなに内緒だ」

 

達也の言葉に俺と深雪は頷いた。

 

 

 

 

 

次の日。俺と達也は登校中、七草先輩に「放課後、クロス・フィールド部の第二部室に来てほしい」と言われた。クロス・フィールド部は十文字先輩が所属していた部活だから、使用することに誰も反対しなかったのだろう。

 

「司波、単刀直入に聞く。昨日の夜は何をしていた?」

「バイクで外出をしていました」

「何処へだ?」

「件の吸血鬼と交戦していた吉田と千葉に呼ばれて克也と2人で向かい、そこで吸血鬼を追跡してきたであろう正体不明の魔法師と出くわしました」

 

放課後、クロス・フィールド部の第二部室に4人で集まっていた。達也の報告に七草先輩が視線を送ってくるが、瞬きで「バレますよ」とジェスチャーする。向こうも分かってくれたようで、何もなかったかのように達也に話しかけた。

 

「どんな人だったの?」

「赤髪で金色の瞳でした。強力な魔法師だという以外には何も分かっていません」

「そうか。司波、捜査に加わってくれないか?」

「構いませんよ」

 

達也が2つ返事で承諾したことに2人とも驚いていた。

 

「いいの?」

「ええ、克也がいれば四葉家から情報が来るでしょう。それに2人と克也が共同で捜査しているのもなんとなく知っていましたから」

「えっ!」

「なっ!」

 

達也の言葉に七草先輩と俺は絶句し、十文字先輩も無言で驚いていた。

 

「克也、お前は顔に出てたんだよ。今日も手掛かりなかったみたいな表情をな」

 

達也の言葉を聞いて、七草先輩が睨んできたので頭を下げて謝っておいた。

 

「…司波、お前は四葉と組んでこちらとは別に単独行動してほしい」

「いいんですか?」

「構わん。チームに入っても個人で動かれては統率の意味が無い。勘違いだけはするな。これはお前を邪魔者扱いしているわけではない。お前の行動力と計画性を推し量って言ったことだ。だが1つ言っておきたい。手に入れた情報は包み隠さず話すこと。これが単独行動させる条件だ」

「わかりました。何か分かればお伝えします」

 

もう既に1つを隠しているのだが。昨日、秘密だと話し合ったばかりなので、この場で言うつもりはなかった。

 

その後に七草先輩からもらった情報の中で、個人的に目新しいものは3つあった。1つ目が被害の規模。予想以上の被害の増え方に驚かされた。2つ目は、単独ではなく複数による仕業であると。3つ目は捜査チームを妨害する第三の勢力。これはおそらく〈スターズ〉であろうが、確信はないのでなんとも言えなかった。そしてリーナはほぼ確定で第三の勢力だろう。

 

その後は少し他愛のない会話をし、幸せそうな深雪を連れて帰宅した。

 

 

 

土曜日、達也は廊下を偶然通りかかったリーナに右肩を軽くたたきながら挨拶した。

 

「やあリーナ、学校はどうだい?」

「はいタツヤ、楽しんでるわよ」

 

お返しにとばかりに達也の肩を軽くたたいてすれ違うのだった。

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