魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第41話 入学式

放課後、あずさが1人の生徒を生徒会室に連れてきて紹介を始めた。

 

「紹介しますね。今年度の新入生総代七宝琢磨君です」

 

あずさが紹介した少年が、生徒会メンバー+αの克也に一礼する姿はまずまずだった。

 

「初めまして七宝君、部活連副会頭の四葉克也です」

「こちらこそよろしくお願いします七宝、琢磨です」

 

克也の手を握り返しながらお辞儀をする様子は、同年代の少年少女と比べてきっちりとしていた(〈数字付き(ナンバーズ)〉、正確には〈師補十八家〉だから当たり前だが。名字を強調したことは少し不愉快であり、その後の行動がさらに克也を不愉快にさせた。

 

「副会長の司波達也です。よろしく七宝君」

「…七宝、琢磨ですよろしくお願いします」

 

名字を強調するのは変わらなかったが、達也のエンブレムに眼が釘付けになっていた。あずさによる魔工科の説明にどうでもよさそうに相づちを打ち、次の生徒会員・深雪に向くと引きつった顔を浮かべる。

 

〈氷雪の女王〉と自分の背後には〈灼熱の王〉が降臨していたのだ。それも仕方ないことだろう。その態度が2人にとっては気に食わないものだったのだから。

 

「同じく副会長の司波深雪です。よろしくお願いします」

「…七宝琢磨です。よろしくお願いします」

 

深雪の友好的とはほど遠い自己紹介に琢磨も名乗ったが、前後からとてつもないプレッシャーをぶつけられながら、挨拶した精神力はなかなかのものだ。不機嫌な深雪の反対に同じく不機嫌な克也が立っている。

 

その後ほのかが精一杯明るく自己紹介したことにより、少なからずとげとげしいムードは吹き飛んだ。しかし打ち合わせ中ずっとぎくしゃくした空気は生徒会室に漂い、終わるまで居座り続けた。

 

 

 

その夜、克也はリビングのソファーで落ち込んでいた。

 

「克也、そろそろ通常運転に戻れ。お前の気持ちは嬉しいがいつまでも落ち込まれてはこっちにも影響が出そうだ」

「でも、あんな態度をとったのは先輩として情けない」

 

克也が落ち込んでいる原因は達也の自己紹介の際、興味のない風に達也の学科の話を流した琢磨の行動に怒って、想子を活性化させてしまったことだ。深雪も自分の大人げない行動に少し落ち込んではいたが、達也による慰めで気分を回復させたというより、機嫌を爆発させて無かったことにした。その間水波は洗濯などの家事をすると言い訳し、げんなりしないために逃げていた。

 

 

閑話休題

 

 

「なら、明日から何もなかったかのように振る舞えば許してくれるだろう」

「そうか?…ならいいや。でも達也、七宝のお前に向ける感情は異常だったぞ」

「…ああ、あれは嫉妬というより対抗心だろうな」

「対抗心ですか?」

「去年の新入生総代は深雪、お前だ。お前を越えようと思ってもおかしくはないさ。俺達のような年頃の男なら誰にも負けたくないという感情があるが、七宝はそれが人一倍強そうだ。自分の邪魔になるような相手には、反射的に攻撃的な態度をとってしまうのだろう」

「私達は邪魔などしておりませんが」

「認められたい奴等からしたら、既に認められている人間が邪魔なんだよ深雪。ある意味、承認欲求とも言えるかな」

 

深雪の質問に克也が自分の経験を含ませながら教えた。

 

「あとは克也、お前もだろうな。お前は《十師族》である四葉の名を背負っている。対抗心を持たれてもおかしくはないさ」

「任せろ達也、そこは抜かりなしだ。さすがに四葉本家にまで喧嘩は売らないだろうけど」

「さすがだな克也。だが彼は俺達が四葉の関係者だと感づいているかもしれない」

「〈師補十八家〉にそんな力があるのでしょうか?」

「俺達の知識が全てじゃないよ深雪。念のため用心した方がいいかもな達也」

「ああ」

 

この時達也と深雪は、自分達が四葉ではなく七草家と関わりがあるため警戒されているとは知る由もなかった。

 

「そろそろ寝ようか。明日は入学式だから早めに寝た方が良い」

 

達也の言葉に各々動き始めて就寝準備に入った。

 

 

 

俺が風呂から上がり寝室に向かうと、部屋に人の気配を感じてゆっくりとドアを開ける。そこにはパジャマ姿で枕を抱きしめた水波が、ベッドの上に座っていた。

 

達也と深雪は既に寝室で夢の中なので、少し大きな音を出しても起きることはない。だが何だか自分の呼吸と地面をこする足音が2人に聞こえ、部屋に入ってくるかもしれないという疑念に囚われてしまう。何とか平常心に戻して水波に近づく。

 

「何で水波が俺の部屋にいるんだ?」

「ガーディアンとしての務めです」

「達也は深雪と離れて寝てるけど?」

「達也兄様は特別です」

「昨日までは別だったよな?」

「達也兄様と深雪姉様が起きていらっしゃったからです」

「つまりここから出るつもりはないと?」

「その通りです」

 

水波に質問という形の拒否をぶつけるが、効果は無いようで開き入れてもらえない。入学式が翌日なのにこんなのでいいのか?と思ったが、早く眠ることに越したことはないので就寝することにした。ベッドに潜り込むと、水波が当然とばかりに横に入り込んできた。

 

「あの、同じ布団で眠るんですか?」

 

どうやら俺は動揺すると、歳の差に関係なく女性に対して敬語になってしまうようだ。

 

「それ以外に何がありますか?」

「俺は床で寝ようかと思いまして」

「ダメです。それではいざというときに対処できません」

 

もう反論する元気もなくし、仕方なく許可することにした。

 

「そういえば2人でこんなに話すのは4年ぶりですね」

「そうだな。穂波さんが亡くなった日以来だ。泣き止まない水波を、ベッドの横で眠れるまで頭を撫でていた記憶があるよ」

 

昔を懐かしみながら話していると水波から寝息が聞こえ、しばらくすると規則正しくなったので眠ったようだ。ようやく眠ることができるので、俺も眼を閉じ眠ることにした。

 

寝れん!

 

しばらくして俺は心の中でそう叫んでしまった。いくら家族に近い存在であろうと、水波のような美少女が自分と同じベッドで寝ていれば俺でも気まずい。俺にもそんな気持ちがないわけではないが、精神的に苦痛だった。そんな気持ちを追い出して再び眠りにつこうとする。

 

寝れるか!

 

数十分後、またしても寝付けず心の中で叫んでしまった。何故俺がこんな拷問を受けなければならないのだろうかと思ってしまう。水波、さすがに俺でもそういう気持ちに少なからずなってしまうぞ。頼むから明日からは別々にしてくれ。深雪と達也に見られればどうなることやら。

 

 

 

克也が眠りにつけたのは深夜3時のことだった。克也の不安が翌日に現実となるとは、2人とも思ってもいなかった。

 

 

 

 

翌朝、朝食の準備をしていた深雪は未だに起きてこない2人を心配していた。

 

まだ寝ていられるのかしら克也お兄様と水波ちゃんは。珍しいこともあるのですね。

 

深雪はよもや2人が同じベッドで寝ているなど思いもしなかった。

 

「達也お兄様、克也お兄様を起こした方がよろしいでしょうか?」

「そうだな。早めに行かなきゃならないからそうしたほうがいい」

「では起こしてきます」

 

コーヒーを飲みながら今朝のニュースをタブレットで見ていた達也が、苦笑しながら答えて深雪が起こしに行った。

 

 

 

深雪が硬直するまで5秒前。

 

やれやれ。朝に弱いのはいつものことだが今日は特に遅いな。

 

4秒前

 

俺達が眠った後にCADでもいじっていたのか?

 

3秒前

 

それとも夜空を見ていたか?

 

2秒前

 

どちらでも自業自得なのは変わらんか。

 

1秒前

 

まったく手のかかる兄だな。

 

 

 

深雪の感情が揺らいでいる!?何だ?

 

達也は深雪の後を追って克也の寝室に向かった。

 

 

 

硬直するまで深雪はクスクスと笑いを堪えていた。

 

硬直まで5秒前

 

朝に弱いのはいつものことですけど今日は特に遅いですね。

 

4秒前

 

CADを弄っていたのでしょうか?

 

3秒前

 

それとも星を眺めていたのでしょうか?

 

2秒前

 

どちらでも自業自得なのですけど。

 

1秒前

 

これは一度怒らないといけませんね。

 

深雪は笑顔の下でそんなことを考えていた。達也と同じ結論に至るのは、血だけでなく心も繋がっているからだろう。

 

「克也お兄様、よろしいですか?入りますよ?」

 

 

 

「克也お…」

 

深雪は眼前の様子に硬直した。

 

 

 

達也が深雪の元に駆けつけ、事情を聞きながら中を見て同様に硬直する。

 

「深雪、どう…」

 

そこには布団が3分の1めくれ上がり、幸せそうな顔をして克也に抱きついて寝ている水波がいる。その横には抱きつかれて少し疲れながら寝ている克也がいた。克也は達也と深雪の感情の揺れによって発生した想子波で目を覚まし、2人を見て硬直する。

 

「た、達也・深雪!!こ、これには、じ、事情が…」

「克也、お前がそんなやつだったとは…」

「克也お兄様、なんてことを…」

 

ドアを閉めながら離れていく2人に何故か謝りながら事情を説明する。しばらく理由を説明すると、なんとか許してもらうことができた。

 

 

 

「水波、その気持ちはありがたいが克也の精神面を考慮してやってくれ」

「…申し訳ありません」

 

水波は居心地悪そうに身じろぎしたが達也は怒らずなだめる。

 

「克也を守りたいというその気持ちはありがたいが、具体的な行動は慎んでくれ。克也を守る気持ちがあれば俺たちはお前と敵対するつもりはない。頼むぞ」

「はい、ご期待に添えられるよう誠心誠意努力いたします」

 

水波は達也の言葉に頭を下げて受け入れるのだった。

 

 

 

4月8日、一高入学式当日。早めに家を出た4人は生徒会室に来ていた。

 

「おはようございます克也さん・達也さん・深雪」

「「「おはようほのか」」」

「おはよう、四葉君・司波君・司波さん」

「「「五十里先輩、おはようございます」」」

 

少し早めに来たつもりだったが、もうすでに五十里が着席していた。

 

「早いですね」

「性分でね。早く来た方が落ち着くんだ。ところで後ろの子は新入生かな?」

「ええ。水波、挨拶を」

「はい、克也兄様」

「兄様?四葉君、妹さんがいたのかい?」

 

予想通りの質問が来たので、あらかじめ作っておいた嘘を話す。

 

「いえ、達也と深雪の従妹(・・・・・・・・)です」

「初めまして五十里先輩、桜井水波と申します。いつも兄様と姉様がお世話になっております」

「よろしくね」

 

水波の堅苦しすぎない挨拶に、五十里は違和感はなかったようだが別の疑問をぶつけてきた。

 

「でも何で桜井さんは四葉君のことを『兄様』と呼んでいるんだい?司波君」

「水波が克也さんでは嫌だと言いまして。それと自分と仲良く話しているのを見て、呼びたいと言い出したからです」

「なるほどね理解したよ司波君」

 

達也の嘘に気付かずに納得してくれた。先輩を騙すのは嫌だったが仕方がない。

 

 

 

「おはようございます。もしかして私が最後ですか?」

「おはようございます中条先輩。生徒会長が最後に登場しても文句を言う人間はここにはいませんよ。それでは、打ち合わせを始めましょうか。来賓の誘導は深雪に任せる。それから…」

 

この打ち合わせは生徒会長がするはずなのだが、克也に任せても何の問題がないことを、この1年で知っている水波以外のメンバーは文句を言わなかった。そして水波がここにいることに不信感を覚えたメンバーは1人もいない。

 

「それでは俺と達也は新入生の誘導に行ってきます」

 

深雪と水波に見送られ、克也と達也は正門前や校内を歩いて、迷子の新入生を講堂に誘導しに行った。

 

 

 

克也と達也がこの役割を与えられたのは、前年度の3月末だった。去年2人が真由美と出会ったのは、彼女が同じ仕事をしていたからなのだが、生徒会長がするような仕事ではないはずだ。今思えば、緊張をほぐすための気分転換だったのだろう。克也は途中で達也と別れて正門に向かう。正門には昔から何も変わらず、桜が満開に咲いて祝福を送ってくれているようだ。

 

あれからもう1年経ったんだな。

 

克也の言葉には2つの意味が込められている。達也と深雪と暮らし始めたこと・第一高校に入学したこと。どれも克也にとってはかけがえのない思い出だ。数人の新入生を誘導した後、もう一度同じ場所を巡回していく。そこで達也と偶然合流して講堂に向かっていると、よく知る人物と出会うことになった。

 

「七草先輩、お久しぶりです」

「あら、克也君と達也君じゃない。2人とも生徒会入り?」

「俺は手伝いですよ。達也が生徒会に入りましたが」 

「ほら、言った通りになったじゃない。それにしても魔工科の制服を着てるからなのかな?1ヶ月と少ししか経ってないのに、随分変わった気がする」

「そんなにですか?」

 

達也自身は変わったところなんてないと思っている。だが克也や深雪は知っている。達也が少なからず魔工科に在籍できることに喜びを抱いていると。

 

「ええ、肩の荷が降りた。そんな感じかな」

「自分では自分の変化には気付かないものですね。七草先輩も別人のよう(・・・・・)になりました」

「あ、ありがとう?…それはどういう意味かな達也君?」

 

どうやら真由美の地雷を踏んだらしく、面倒くさい事態になっているようだ。

 

「そのままの意味ですが?」

「本当に?」

「2人とも落ちついて…」

 

克也がヒートアップしていく真由美と達也をなだめていると。

 

「こらーっ!」

 

声がして振り向くと、克也の顔見知りが走ってきた。

 

「「香澄(ちゃん)!?」」

「お姉ちゃんから離れろこのナンパ野郎共!」

 

どうやら克也と達也をナンパと認識しているらしい。慌てた真由美は慣れないヒールに足下がおろそかになったらしく、倒れそうになるが達也が肩を支えて転倒を防ぐ。しかしそれが余計に香澄をヒートアップさせる。達也は親切心からの行動だったが、それが火薬に着火する火種になるとは思わなかったようだ。克也もそうだが…。

 

「離れろって言ってるだろ!」

 

残り10mから空中に浮き放物線を描かず、一直線に加速しながら飛んできた。

 

「香澄、ストップ!」

「え?克也(にい)!?」

 

克也が慌てた声で香澄の名前を呼ぶと、魔法を中断するが突然効力を失った身体は地面に落下する。

 

「わわわ、わぁ~!!」

 

乙女らしからぬ声を上げながら落下していく。入学式当日しかも式の前に怪我をするなど、恥ずかしいという感情だけでは済まない。克也がキャッチしようと動く。だが魔法の発動兆候を感じて動きを止めた。すると、魔法式が香澄にまとわりつきゆっくりと着地させる。

 

「香澄ちゃん、大丈夫ですか?」

「泉美、助かったよ。あいつ強いからあれやるよ」

「えっと、香澄ちゃん?」

 

どうやら魔法を使ったのは泉美と呼ばれた少女のようだ。事情が読めずに疑問符を浮かべる泉美とは反対に、香澄はやる気満々だったが…。

 

「いい加減にしなさい!」

 

真由美から雷と拳が落ちて一件落着する。うずくまりながら頭を抑えているところを見ると、見た目以上によほど痛かったようだ。

 

「2人に謝りなさい!」

「で、でも…」

「申し訳ありません。姉が失礼なことをいたしました」

「泉美まで?…すみませんでした」

「構わないよな達也?」

「問題になってないから気にしないさ。それに怪我をしていたとしても文句は言わなかった」

「ということで謝罪を受け入れます」

 

すると3人はほっと息を吐いた。時間的に式が始まるのでそこで別れることにした。

 

 

 

「2人を知ってたんだな」

「ああ、何度か会ってたし魔法を教えたこともあったからね」

 

生徒会関係者専用入り口に向かいながら、克也と達也は先程の話をしていた。

 

「それより達也、想子観測機のデータを消した方が良いんじゃないか?」

「だな、見つかれば面倒くさいし。ピクシー、今から10分前から記録された、正門前から前庭までの想子観測機のデータを抹消しろ」

『了解しましたマスター。…データ抹消を確認』

 

音声ユニットで〈3H〉の中にいる〈パラサイト〉個体名ピクシーに呼びかけて、データ証拠の命令をして終了したことの報告を確認後講堂に向かう。達也はこの春休みの大半をかけて藤林の指導を元に、ピクシーに監視システムへのハッキング方法を伝授した。

 

元々〈3H〉は電子頭脳であるため、機械へのハッキングはお手の物であり、お陰でピクシーは校内という限定付きだが、システムへ侵入することができるようになった。そのため今回のような事故も、当事者が口を割らない限り知ることはできない。

 

真由美が在籍していた3月までなら、彼女に頼んで消して貰うことができた。彼女がどうやって手に入れたかは知らないし知りたくもないが。おそらく家名でも使って、非合法的に入手したのでは?と克也は思っている。

 

当然その権利は継承されることはなく消滅したため、達也がピクシーに伝授したという経緯であった。

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