魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第46話 情報提供

〈九校戦〉競技の練習は思ったようには進まず、生徒会も出場者も悪戦苦闘していた。〈スティープルチェース・クロスカントリー〉の練習は、克也達が〈パラサイト〉と交戦した第三演習場で行われている。といってもただ走るということしかできなかったが。

 

この練習の目的は、森林コースを普段と同じように走れるようになること・制限時間内にゴールするというものだった。7月中旬になっても制限時間内にゴールできたのは、出場予定の男子生徒・女子生徒ともに7割だけだった。本番はさらに魔法や障害物による妨害が追加される。誇張抜きにしても楽観できる結果ではなかった。

 

ちなみに3兄妹は余裕でクリアしている。

 

 

閑話休題

 

 

克也と達也はほぼ練習せず、ほぼ全ての競技種目の練習を手伝っている。〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉の練習では、克也が男子ペアと試合をして完勝してしまい、自信を失わせてしまったのではと心配されていたが...。克也の場合は、手を抜くのも失礼だと思ったので、普通に戦っただけなのだった。

 

試合の合間に克也と深雪が試合をしてみたらどうかという意見が出たのだが、達也の「学校に被害が出るから止めるべきだ」という言葉でなくなった。2人が試合をすれば学校どころか周辺にまで被害が拡大する可能性があったので、達也の判断は正しいと称賛するべきだ。

 

 

 

 

 

7月下旬になると全種目ともに選手が慣れてきた。一定の目処が立っていたので、九島家の陰謀を防ぐために達也は深雪と八雲と共に、7月20日の夜から奈良にある旧第九研に向かうことになっている。

 

定期試験も無事終了し、恒例行事のように教職員を悩ませる結果を2年生が残した。何故か教員に文句を言われ、仕方ないと思って欲しいと克也達が思ったかは定かではない。驚くことに幹比古が総合成績トップ10に入り、〈アイネブリーゼ〉でお祝いをした際、幹比古は恥ずかしそうにしていたがとても嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

達也と深雪が八雲と奈良に行った土曜日の朝。克也は学校に向かうコミューターの中で、木曜日の夜の会話を思い出していた。

 

 

 

『達也、俺は四葉の名前を背負っているから今回はついて行けない。九島家の陰謀を解き明かしたいけど、今の九島家を無断で〈十師族〉が調査するのはまずいから残るよ』

『本当は付いてきて欲しいが、お前の言う通り行かない方が懸命だろう。今回は極秘で動くからな。知られればこちらが動きづらくなる。お前の行動は間違っていないさ』

『頼んだよ2人とも。吉報を待ってる』

 

 

 

「…様。克也兄様」

「ん?どうした水波?」

「もう少しで降車駅です」

「すまない水波、忘れてたよ」

 

どうやら達也との会話を思い出していると、いつの間にか一高の最寄り駅に近づいていたらしい。自分の没頭ぶりに苦笑してしまう。

 

「そういえば水波と2人で登校するのは初めてだったな」

「そうですね。いつもは4人で登校していましたから新鮮です」

「俺も同じ感想だよ」

 

コミューターを降りて一高に向かう一本道で、水波と会話をしていると4人に会った。

 

「おはよう克也君・桜井さん。達也君と深雪はどうしたの?」

「おはようエリカ」

「おはようございます千葉先輩」

 

エリカが2人のいない理由を聞いてきたので、上手くごまかしながら答える。

 

「用事があるらしい。今日は学校を休んだよ」

「もしかして〈横浜事変〉で会ったあの人達に呼ばれたの?」

「そうだと思うよ。深雪まで呼ばれるとは思わなかったけど」

「思う?克也に教えなかったのか?」

「なんでも極秘らしくて俺には教えてくれなかった。そもそも達也の所属自体が極秘だしね」

 

俺の言葉の不思議さにレオが聞いてきたので、極秘という本当の意味での言葉を使って答えた。

 

「それなら仕方ないよ」

「そうですね。そのことに関係があるなら話すわけにはいきませんから」

 

幹比古と美月の似た考えに苦笑しながら頷いた。

 

 

 

「克也さん、深雪はどうしたんですか?」

「深雪は達也と一緒に用事があるからって。今日は休みだよ」

「達也さんも?」

「そうだよ」

 

教室に入るといつものように俺の席に集まっていた雫に聞かれ、答えていると同じようにほのかも聞いてきた。

 

「たぶん〈横浜事変〉のことと関係があるんだと思うよ」

「たぶん?」

「詳しく話してくれなかったから」

 

雫もレオと同様に同じところを聞いてきたので、同じように答えて言葉を濁す。学校生活は達也と深雪がいない分さみしかったが、楽しさは何も変わらず当たり前のように過ごした。

 

 

 

達也と深雪が奈良から帰ってきた日曜日の夜、達也から報告を受けて俺は衝撃を受けた。

 

「…そんなことが許されるのか?狂ってるよ閣下は」

 

オブラートに包まない素の言葉で言った俺の言葉に、深雪は驚いていた。しかしそんなことを口にしてしまうほどの威力を、達也の情報は持っていたのだ。

 

「〈パラサイト〉を用いた兵器がP兵器の正体で、ネーミングが〈パラサイドール〉か。ピクシーのことを何処からか入手して作り上げたのかな。まったく忌々しい。それに大亜連合から亡命してきたいや、密入国したこの方術師の能力。タイミングが良すぎないか達也?」

「ああ、良すぎる。明らかに今回の実験のために、わざわざ送り込まれてきたように思える。木・石・金属で作った傀儡を操る術。傀儡にかりそめの意思を与える孤立情報体に働きかける精神干渉系統の魔法。他の術下にある孤立情報体の支配権を奪い取る魔法。この魔法は孤立情報体を術者の制御から切り離して、暴走させる術に長けていると書かれている。俺が旧第九研の〈パラサイドール〉の中に見つけた魔法の性質に似ていた。この情報は亜夜子からだから、また借りを作ってしまったな」

 

感謝と同時に申し訳なさが達也の表情からにじみ出ていた。

 

「亜夜子は貸しを作ったわけじゃないと思うぞ。これが彼女本来の仕事だから貸し借りなんて考えていない。亜夜子が求めているのは、この情報を使って俺達がどう対処するかだ。情報を無駄にするか有効利用するのか。それは俺達にかかってる」

「その通りだな克也。俺が間違っていた。亜夜子のためにもなんとかしないとな」

 

達也の決心に俺も頷いた。

 

 

 

 

 

〈九校戦〉会場に向かう道中は、去年のように事故は起こらず無事に到着することができた。まあ、あんなことが毎年起こっては困るというのが経験者の心境だが。ロビーに入ると、偶然歩いていた三高の生徒が友人だったので声をかけた。

 

「克也じゃないか。〈クロスカントリー〉の情報は手に入ったか?」

「いや、まだ何も分からない」

「家の力を借りなかったのか?」

()に力を貸してもらうと、対価を要求されるから嫌なんだ」

「ギブアンドテイクか。大変だな」

「その通り厄介なんだよ。将輝の方はどうだった?」

「…実は俺も調べていない。四葉家がしていると思ったからな」

「…おいおい」

 

意思疎通が出来ていなかったようで、どちらも調査しておらず気まずい沈黙になってしまう。

 

「将輝、今からそっちが調べることはできるか?」

「できなくはないが…。この短期間じゃ俺の家の情報収集能力では難しいぞ?」

「それでもいい。分かったことだけを伝えてもらえれば、それなりにお礼はする」

「分かった。部屋に戻ったら頼んでおく」

「頼んだ」

 

 

 

その日の夜、達也は〈スティープルチェース・クロスカントリー〉のコースを下見に行ったらしい。

 

『単独侵入は不可能。亜夜子と文弥でも同様。だが師匠によると、〈パラサイドール〉を何処に設置しても状況は変わらない』

 

というメールが届いてため息をついた。

 

やはり当日にならなければ撃破は不可能か。前日から配備などはせず、裏に隠しているとはな。用意周到でありさすが九島家だ。しかし亜夜子の魔法でも侵入できないとはね。警戒が前回とは比べものにならないほど厳しくなっている。敵が侵入しにくくなるのはいいが、こちらも動けなくなるのは痛い。

 

亜夜子の得意魔法《極致拡散(きょくちかくさん)》は、指定領域内における任意の気体・液体・物理的なエネルギーの分布を平均化する魔法である。夜に紛れ込むのが得意である亜夜子が侵入できないとは驚きを隠せない。通称《極散》は、達也の使う《分解》と事象改変の方向性が似ている。

 

小学生の頃、本家において自分の特性が理解できず悩んでいた亜夜子は、達也がわかりやすく実演したことで使えるようになった。達也が亜夜子の魔法特性を視て魔法式を解析し、亜夜子にもわかるように図式化した。亜夜子は自分のために魔法式を書き換え、そのCADを作った俺と達也に、【黒羽亜夜子】という人間を作ってもらったと思っている。

 

このようなことがあったためか、達也を単なるガーディアンと見下すことができず、それは文弥も理解している。それが達也を過大評価してしまう原因であると気付いていなかった。

 

2人は親戚一同が、達也の存在を否定していることを良く思っていない。だからもし深雪が次期当主になれば、自分達は黒羽家と縁を切り、深雪と達也あるいは俺の手足になるつもりでる。親になんと言われようと他の分家になんと罵られようと、俺達3人に命を捧げると2人は心に誓って、その時が来るのを待っている。

 

文弥は四葉家の次期当主候補であるが、次期当主から外れると黒羽家の当主になると決まっている。しかし文弥は四葉家当主になりたいとは思っていない。ましてや分家の当主にもなろうとも思っていない。だが自分が黒羽家を継げば、達也の待遇が変わるのであれば継いでもいいと思っている。

 

俺は2人が達也に対して特別な感情を抱いてくれていることに、嬉しさを感じている一方で申し訳ないとも感じている。2人が達也を慕っているのを、四葉家の関係者全員が知っているからだ。嫌がらせを受けたりはしていないらしいが、微妙な視線を受けたことがあるらしい。

 

2人は何故向けられたのか原因が分からないと言っていたが、その事を聞いた俺達3人は申し訳ないと思った。だが突き放すことはできない。2人は俺達にとって数少ない身内の味方なのだから。

 

布団に寝転がりながら考えていたせいで、いつの間にか眠ってしまったらしい。翌日に朝風呂する羽目になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

8月5日、2096年度の〈九校戦〉が始まったが一高は浮かれてはいられなかった。一高最強世代が卒業したことで、苦戦することを上級生は理解していたからだ。

 

大会初日。

 

〈ロアー・アンド・ガンナー〉女子ペア 1位 

〈ロアー・アンド・ガンナー〉男子ペア 3位 

〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉女子ペア 決勝トーナメント進出 

〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉男子ペア 決勝トーナメント進出 

 

まずまずの結果だった。

 

不安だった〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉男子ペアも、克也の特訓のおかげか圧倒的な強さで勝ち残っている。彼ら曰く、「相手の魔法発動速度が遅すぎて面白みがない」らしい。その言葉を聞いた首脳陣は苦い笑みを浮かべていたが。

 

大会2日目

 

〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉女子ソロ 決勝トーナメント進出 

〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉男子ソロ 決勝トーナメント進出 

〈ロアー・アンド・ガンナー〉ソロは男女とも4位

 

得点0という惨敗に終わった。

 

深雪と克也の突破は確実視されていたが、〈ロアー・アンド・ガンナー〉ソロは首脳陣の懸念通りの結果だった。最初から得点は望めないと予想していたので、ダメージは小さかったが精神的ダメージは大きい。

 

 

 

その日の夜、克也は将輝からメールを受け取っていた。お茶会の前に送られてきて良かったと思いながら、メールを開いて概要を読むと納得する。

 

将輝の情報曰く『国防軍内の対大亜連合強硬派が裏で暗躍。首謀者は酒井大佐。4年前の佐渡侵攻での最高指導者であり父親の旧友。今は意見の食い違いで絶縁関係。反乱するかもしれないと噂されていたが、今回の競技変更がそれの可能性有り』ということだった。

 

この短時間でここまでの情報を集められるとは。将輝の自分の家の情報収集能力への評価は過小評価だったらしい。黒羽家とは比較できないが、〈十師族〉の中でもなかなかの腕を持っていると思える。

 

達也にそのままメールを送り、お茶会の準備をするために作業者に向かった。

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