魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第6話 事件

達也が委員長と風紀委員本部に向かい、深雪が書記の仕事を中条先輩から教えてもらっている間、俺は暇だったのでCADの点検をすることにした。

 

何処にも異常がないことを確認し、ホルスターにしまおうとすると、いつの間にいたのやら。俺の横から眼を輝かせながらCADを覗き込む中条先輩がいた。深雪に教えていたのでは?と思ったが、深雪の吸収力が高いために教える必要はなくなったのかと予測しておく。

 

「司波君と同じ形状ですね。でも少し銃身が長くてグリップが細いようですが、なんというCADなんですか?」

 

CADオタクと言われるだけあって、達也のCAD〈シルバー・ホーン〉だけでなく、俺の特注CADにも興味があるようだ。眼を輝かせている様子は小動物を思わせる。

 

「これは四葉家の技術者が俺専用に開発したCADです。名称は〈ブラッド・リターン〉。俺の想子にだけ反応しますので、俺以外が使おうとしても作動しませんよ」

 

説明すると中条先輩はさらに眼を輝かせて近づいてきた。何故か嫌な汗がでてきたが、中条先輩が満足するまで我慢することにした。

 

 

 

 

 

各クラブの部長・副部長には、新入生成績名簿のコピー(点数は記されていない)が先週の金曜日に渡されている。土日の間に誰を勧誘するかを決め、月曜から始まる新入生勧誘活動で行動に出る。そのせいで毎年この時期に大小問わずトラブルが発生するため、風紀委員の卒業生分の補充が早急にとされている。毎年生徒会推薦枠の風紀委員が決まらずに迎えてしまうことがあるのだが、今年は達也に決まったので心配はないらしい。

 

勧誘活動は放課後に行われるため、達也は風紀委員会本部で説明を受けていた。入学初日に最悪な出会い方をした森崎が、職員推薦枠で風紀委員に任命され、同じ場所にいることが達也にとっての懸念事項だった。

 

 

 

 

 

俺は生徒会役員である深雪と風紀委員である達也と、帰宅時間を合わせられるように部活に入ることにした。別に2人と時間を無理に合わせる必要はないのだが、3人でいたいという気持ちが強い。部活に入れば時間を無駄にすることはない。

 

今は魔法を使用する部活ではなく、一般的な運動部に入るつもりで見回りしている最中だ。顔写真付きの成績名簿が出回っているために、間髪入れずに勧誘がやってくる始末である。部活探し僅か10分程で、疲労がそれなりに溜まり始めていた。途中普通の生徒と比べると可笑しな動きをしている生徒がいたが、何か事情があるのかもしれないと思い忘れることにした。障害を持つ魔法師であっても、成績を残せるのであれば入学を拒まれることはない。

 

「よう克也。どの部活に入るか迷ってるのか?」

 

校内をうろついているとレオに声をかけられる。服装は制服ではなく運動着だったので、もう既に何処かの部活に入部したのだろう。魔法を使える者を無碍に扱わないというのが、魔法社会における不文律のようなものとして出来上がっている。魔法力が強かろうが低かろうが、魔法教育を受ける権利があるからだ。といっても学校内でさえ差別が起こる有様だ。社会ではこのようなことは日常茶飯事である。結局は不文律という肩書きがあるだけで、特に大した意味は無いのだ。

 

「レオか。魔法を使わない運動系の部を探してたら、予想より数が多くて悩んでたんだ。レオは入る部活を決めたのか?」

「おうよ。俺は山岳部に決めたぜ」

 

レオは良い笑顔でそう言ってきた。清々しい笑みなのは自分に合った部活が見つかったからだろう。早く参加したいというのが身体からあふれているようにも見える。

 

「山岳部ね。山を登るのか?」

 

俺の質問に待ってましたとばかりに笑みを深めて説明してくれた。

 

「俺も最初に勧誘されたときはそう思ったんだけどよ。見学しに行ったら予想と違ったんだ。なんでも肉体を鍛えるのは同じでも方法が違うらしいぞ。林間走とか崖登りとか魔法に頼らず、自分の身体を追い込む。んでもって、精神的に強くさせる部活らしいぜ。行った感じだと、一科も二科も分け隔てなく楽しくやってるようだな」

 

レオはすぐにでも参加したそうに身体を使って見せてくれた。話を聞くと面白そうだったので、見学にでも行ってみようか。レオが楽しそうな笑みを浮かべているので、悪い部活では無さそうだ。

 

「レオ、俺も見学しに行っていいか?入部するかは見てから考えるよ」

「マジで?ダンケ克也。なら早く行こうぜ。時間があれば体験させてくれるかもしれねぇからよ」

 

レオはそう言うと、山岳部が活動している演習場に俺を連れて行ってくれた。

 

 

 

結果からして俺は山岳部に速攻で入部した。

 

四葉では訓練しなかったことをやっていたことが決めた理由でもある。体験してみると楽しくて終始笑みが絶えなかった。レオと2人で新入生メニューではなく、上級生メニューに特別に参加させてもらい楽々クリアした。

 

終わった後にけろッとして2人で談笑していると、へろへろに疲れて寝転がっている2年生に、「お前らバケモンか?」と言われたのはご愛嬌だ。

 

 

 

その日の帰りに、レオが見つけていたカフェで勧誘活動での出来事を交換し合っていた。最も全員の興味を誘ったのは達也の捕獲劇だった。

 

「その桐原って人、殺傷性Bランク相当の魔法を使ったんだろ?よく怪我しなかったな」

「《高周波ブレード》は有効範囲が狭い魔法だからな」

「「「……」」」

 

レオの質問に達也が答えると、克也と深雪を除いたメンバーの眼が点になっていた。論点がズレた返答だったからかもしれない。

 

「…有効範囲が狭いからって対処できるとは限らないんだけどね。例え魔法が止まってたとしても、あの人の剣を見切ることは難しいよ。あ、そういえば達也君が止めに入った時に地面から揺らぎを感じたけど」

 

エリカの言葉に深雪は笑みを浮かべながら説明する。

 

「対処が優れていても、魔法を強制停止させるのは普通は無理よエリカ。それにその地面の揺れは達也お兄様のせいね。達也お兄様、《キャスト・ジャミング》をお使いになったでしょう?」

「深雪に隠し事はできないな」

 

達也は苦笑しながら答える。

 

「それはもちろん。克也お兄様と達也お兄様のことなら、深雪はなんでもお見通しなんですから」

 

そう言いながら克也と達也の腕を抱き寄せる深雪に、克也は苦笑いで達也は仕方ないなという顔をしながらも少し嬉しそうに微笑む。

 

ちなみに座っている位置は、克也が深雪の右側・達也は左側・達也の前にエリカ・美月・レオだ。

 

 

 

達也 エリカ

 

深雪 美月

 

克也 レオ

 

 

 

「それ兄妹の会話じゃねぇぜ!?」

「「そうかな?」」

 

レオは克也達にツッコミを入れたが、達也と深雪のハーモニーにたっぷり1秒間硬直した後、机に顔から突っ伏した。

 

「この兄妹にツッコミ入れようってのが大それているのよ」

「ああ、俺が間違ってたよ…」

 

しみじみ語るエリカに珍しく頷きながら、レオも同じくしみじみと同意した。

 

「その言われ方は著しく不本意なんだが」

「いいじゃありませんか達也お兄様。私達3人が深い愛情でつながっているのは事実なんですから」

 

深雪がさらっと爆弾発言をする。

 

「ぐはぁ!」

 

今度はエリカとレオが同時に突っ伏す。レオに至っては効果音までつけて…。

 

「俺まで巻き込むなよ…」

 

念のために克也は苦笑しながら突っ伏した2人に抗議しておく。伝わったかどうかは定かではないが…。

 

「深雪、冗談もほどほどにな。約1名には冗談が通じてないようだから」

 

そう言いながら残りの1人に眼を向けると、美月が顔を真っ赤にして俯いていた。帰るまで美月はエリカに弄られ続けたのは言うまでもない。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「達也君、昨日の昼に壬生をカフェで言葉責めしたというのは本当かい?」

 

2日後。半ば恒例化している生徒会室での昼食中に、突然摩莉が彼女らしくない言葉を使ってきた。克也は米粒を気管に誤って呑み込んでむせた。深雪が心配そうにこちらを見るが、大丈夫とジェスチャーで答える。

 

「先輩も年頃の淑女なんですから、そんなはしたない言葉を使うべきではありませんよ。それにそんな事実はありません」

 

達也は呆れたように冷たく答える。

 

「ありがとう達也君。こんな私を淑女扱いしてくれて。でも、カフェで壬生が顔を真っ赤にして俯いていたのを目撃した者がいるんだが?」

 

摩莉の言葉に、克也は片眉を上げるという不思議な技を身につけてしまった。

 

「…達也お兄様?一体何をしていらっしゃったのでしょうか」

 

深雪から氷点下の空気が流れ出し、飲み物や食べ物を凍らせていく。一瞬にして凍結した弁当や湯飲みを、克也は何故か微笑ましそうに眺めている。

 

「深雪さんって余程〈事象干渉力〉が強いのね〜」

 

真由美は興味深そうに凍ったお茶をつつきながら呟く。「そういうことではなく、ただ単に感情が具現化しただけです」とはさすがに克也でも言えず、黙りながらも深雪に《癒し》を施す。

 

「落ち着け深雪。ちゃんと説明するから」

 

達也も深雪を抑えるのを言葉をかけることで手伝う。深雪も達也の言葉で落ち着きを取り戻すが、終始あずさは怯え続けていた。

 

「そのような事実はありませんよ。壬生先輩の考えを聞いた後に疑問を投げかけたら、自爆していっただけです」

「ならいいんだが。頼んだよ達也君」

「何を頼まれているのかわかりませんが。問題にならないように頑張りますよ」

 

摩莉のお願いに苦笑しながら答える達也だった。しかし達也は気づいていなかった。自分の取った対応が望んではいない危険な方向に曲げてしまったことを…。

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