魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第8話 犯罪行為

真夜の助言を受けてから2日後。教室で帰り支度の途中だった克也は、放送機にスイッチが入る微かな音を察知していた。

 

『全校生徒のみなさん!』

 

突然爆音で校内放送が流れはじめ、教室で世間話に花を咲かせていたクラスメイトが何事かと視線を上げている。

 

「きゃっ!」

 

ほのかが悲鳴を上げるほどにはかなりの音量だった。音量ぐらい調節してから放送してくれとも思わなくもない。

 

『…失礼しました。全校生徒の皆さん!』

 

少し決まる悪げにもう一度自己紹介してくれる。

 

「ボリュームを絞るのをミスったようだな」

 

反応する部分を敢えてずらしてからしれっと呟いてみた。

 

「「そういうことじゃないよ(です!)」」

 

雫とほのかに真顔でツッコまれる。深雪はなんとも微妙な表情を浮かべているが。まあ確かに場違いな発言であったことは否めない。もちろん克也も分かって言っているので反論する気はなかった。

 

『僕達は校内の差別撤廃を目指す有志同盟の者です!』

「差別撤廃ね…」

 

思わず口から零れてしまう。

 

『僕達は生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を求めます!ぼ…』

 

言葉が途中で途切れたのは、異常に気付いた職員が電源をカットしたからだろう。余計な仕事が増えたと気を重くしながら、下ろしていた重い腰を持ち上げる。

 

「深雪、呼ばれそうだから放送室に行こうか。ほのかも雫もまたね」

 

2人に挨拶をして深雪と放送室に向かう。

 

 

 

同時刻、E組でも同じような展開が起こっていた。

 

「ボリュームの絞りをミスったか?」

「いや、ツッコむとこそこじゃないから」

 

達也のボケ?にエリカがツッコむ。「エリカちゃんもね」と美月が思ったのはお約束だ。

 

「達也、どうする?」

 

レオがそのまま座ってても良いのか?という意味合いで聞いてきた。

 

「行かなきゃダメだろうな。委員会からお呼びがかかるだろうし早めに行くか」

 

達也が立つと同時に内ポケットの携帯端末が振動する。開いてみると予想通り委員会からの呼び出しだった。

 

「噂をすればなんとやらだ。じゃあ行ってくる」

 

レオ・エリカ・美月に報告してから放送室に向かった。

 

 

 

放送室に向かう途中、達也と合流して問題の場所へ到着する。「遅いぞ」という形だけの委員長の叱責に、「「すみません」」という形だけの謝罪を2人してしておく。

 

「現状はどうなっていますか?」

「奴等は内側から鍵をかけて立てこもっている。御大層にマスターキーも盗んできているという徹底ぶりでな」

 

明らかな犯罪行為に顔をしかめる。そこまでするならば、本気なのだろうと克也も改めて気を引き締める。

 

「多少強引でも短時間で解決すべきだ」

 

委員長の物騒な提案に、俺は頷きながら隣の大柄な上級生に聞く。

 

「十文字会頭はどうお考えですか?」

 

失礼かなと思ったが相手は気にしていないようだ。むしろよく聞いたという賞賛が含まれる表情で答えた。

 

「俺は交渉に応じてもいいと思う。言いがかりにすぎないことをいつまでも引っ張る必要はない」

「この場は待機ということでいいですか?」

「それについては決断しかねている。この程度の犯罪行為を取り締まるために、学校施設を破壊してまで突入する必要があるとは思わない」

 

つまりどう対応すればいいか悩んでいるということらしい。

 

「達也、壬生先輩の電話番号を知らないか?待ち合わせのために交換していたなら話は早いんだが」

「…わかった」

 

俺は最後の手段(大袈裟だが)を使うことにした。達也が電話をかけると、意外と直ぐに繋がったようだ。

 

「壬生先輩ですか?今は何処に…はぁ、それはお気の毒です。交渉に応じると十文字会頭は仰っています。ええ、壬生先輩の安全は保障しますよ。ええ、わかりましたそれでは。…すぐ出てくるようです。電話番号を保存しておいてある意味正解でしたね」

 

達也は一段落とでもいうように肩をすごめる。

 

「悪い人ですね達也お兄様は。でも壬生先輩のプライベートナンバーを、わざわざ保存していた件については、後程詳しくお聞きしますね?」

 

眼は笑っていない笑顔で深雪に脅された達也は、俺に卑怯者とでもいうような視線を向けてきたが黙殺しておいた。

 

「それより態勢を整えるべきです」

「態勢?君は今、彼女等の安全を保障すると言わなかったか?」

「俺が保障すると言ったのは壬生先輩1人だけです。それにどこを代表して交渉しているなんて一言も言っていませんよ」

 

達也の言葉に克也と深雪を除いた全員は呆気にとられた。やはり達也は「悪い人」の自覚がないようだ。

 

 

 

「私達を騙したのね!」

 

数分後に放送室の鍵が開けられた。そのタイミングを狙って、風紀委員が占拠していた生徒を押さえつける。案の定、壬生は達也に食って掛かった。まあ、安全を保障すると言われて出ようとすると、自分以外が拘束されたのだから仕方がない。

 

「司波はお前を騙してなどいない。交渉には応じよう。だがお前達のとった行動を認めることと、要求を受け入れることは別問題だ」

 

腹に響くような声で言われては言い返せない。壬生は達也から手を離した。

 

「お話し中悪いんだけど、彼女達を放してくれないかしら?」

 

突然の生徒会長の登場に全員が驚く。

 

「七草…」

「言いたいことはわかるけど今はこっちが優先よ。壬生さん1人じゃ交渉しづらいでしょうから。それからこの問題は生徒会に委ねられるそうです」

 

面倒くさいことは生徒会に丸投げ。そう思ったのは克也だけではないだろう。

 

「壬生さん、交渉に関する打ち合わせをしたいのだけれど、ついてきてもらえるかしら?克也君達は帰宅してもらって大丈夫です」

「ええ、構いません」

「「「わかりました」」」

 

壬生が応じて真由美についていく。3人は挨拶してから家路についた。

 

 

 

 

 

翌日、校門の近くで待機していると待ち人来たり。克也は他人の想子の保有量を知覚できるので、大勢に埋もれていても見分けることができる。彼女のような猛者であれば尚更だ。

 

「会長、おはようございます」

「あら、おはよう克也君。達也君に深雪さんも朝早いのにどうしたの?」

 

待たれているとは思わなかったようで、意外そうな表情を浮かべている。

 

「昨日のことが気になりまして」

「ああ、なるほどね。要約すると、彼女達は一科生とニ科生の平等な待遇を求めていたわ。でも具体的なことは考えていないみたい。むしろ生徒会で考えろみたいな感じだった。それで明日の放課後に討論会を開くことになってしまったの」

「それはまた急な展開で…」

 

達也も驚いているが、意外にも控えめな反応だった。

 

「相手に時間を与えない戦略は素晴らしいですが、それはこちらも同じですね。それで誰が討論するんですか?市原先輩ですか?」

 

そう聞いた達也は自分を指差しながら振り向く真由美に、今度こそ驚いていた。

 

「まさか会長お一人ですか?」

 

ご名答とでも言うように空を見上げながら呟く。

 

「1人なら小さなことで揚げ足を取られることもないし、もし彼女たちに私を言い負かすだけの案や情報を持っているなら、これからの学校運営に取り入れていけばいいだけなのよ」

 

真由美の持論に克也は感服した。

 

「すごいですね会長、そこまで考えていただなんて。少し(・・)見直しました」

「えへへ、そんなことは…」

 

照れていた真由美が克也をジト眼で睨み付ける。何か言ってはいけないことを言ったのだろうか。隣の2人を見ると少し離れて、他人の振りとでもいうようにいちゃつきはじめた。

 

「克也君、少し(・・)ってのはどういう意味かな?」

 

じりじりと近づいてくる真由美に、克也は後退りすることしかできなかった。

 

「別に深い意味はありませんよ…」

「克也君?」

 

真由美に授業が始まる直前まで、質問攻めにあったのは言うまでもない。

 

 

 

朝から真由美に精神HPを大幅に削られげっそりとした克也は、昼休みの始まりに摩莉のクラスに向かった。タイミングよく教室から出てきたので、引き止めることに成功する。

 

「渡辺先輩、少しいいですか?」

「なんだ克也君?どうしたやけにやつれているが…」

 

見ただけでわかるほどに弱っているらしい。

 

「…今朝、登校中に会長の地雷を踏んだようです。こってり絞られました」

「はははは、あいつの地雷はやばいからな。踏まないようにしないと死ぬぞ?」

「それ…早く言ってくださいよ…」

「で、どうした?引き止めたからには何か用事があるんだろ?」

 

抗議したがスルーされてしまった。

 

「相談というよりお願いなんですが」

「お願い?」

 

摩莉は不思議そうに聞き返す。

 

「ええ、討論会の最中に有志同盟のメンバーが下手な行動を起こさないよう、風紀委員で警戒していて欲しいんです。彼等が何かをしでかしそうな嫌な予感がするので」

 

克也のお願いに摩莉はしばらく考え込んでいた。

 

「私もそうするべきじゃないかと真由美に言ったんだ。そうしたら同じ学校の生徒だからしなくて大丈夫と言われてな。真由美がそう言うならしなくていいだろうと思ったんだが」

「警戒することに越したことはありません。万が一何かされても対応することができます。風紀委員に各々有志メンバーをマークさせてください」

 

摩莉も克也の案に乗ることにしたようだ。

 

「わかった。委員会メンバーには私から連絡する。真由美のガードは服部に任せるがお前はどうする?」

「俺は舞台袖から警戒します」

 

自分だけ仕事をしないつもりはない。楽しい学生生活を壊されるわけには行かないのだ。

 

「頼むぞ」

 

摩莉はそれだけを言って何処かへ向かった。

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