魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第77話 要請

謁見室に到着すると意外な人物が来ていた。相変わらず赤の好きな男だなと思いながらも、友人なりの挨拶をしておく。

 

「久しぶり将輝。お前も来てたのか?」

「克也か久しぶりだな。後輩の活躍する姿を見ておきたくて来ていたんだが、横槍が入ったから落ち着いてられん」

「仕方ないさ。魔法師を一般人が完全に受け入れてくれるまでの辛抱だ」

「回線の接続が完了しました」

「「ありがとうございます」」

 

回線が接続されたことで、大画面に〈十師族〉各当主が映り始めた。一条家は剛毅と将輝の2人で、四葉家は代理の克也だが驚く当主は誰もいなかった。深雪は重要な商談中なのだから克也がでるのは当然である。

 

事前に周囲へは、今日の代理が克也であると通達されていた。だからこそ緊急招集が克也に届いたのである。将輝の場合は、たまたま来ていたからなのだろう。正式に公表されていなくても次期当主なのだから、参加できる距離にいれば参加させるのもするも大きな問題はない。

 

『全員の準備が整いましたので、今回の議題についてお話ししましょう。七草殿よろしくお願いします』

『かしこまりました』

 

最年長の九島真言が口火を切り、弘一に説明を促した。

 

『皆様ご存じの通り、午後2時前に我が研究所である第七研がテロリストによって襲撃を受けました。目的は不明ですが、恐らく研究資料を狙っていたと思われます』

「ご報告ありがとうございます。襲撃者は捕縛したのですか?」

『いいえ。襲撃された際に被害を拡大させないため、当家の実行部隊を即座に向かわせましたが、捉えようとした瞬間に自爆され身元を確認できませんでした』

 

弘一の説明を聞いていた当主達は一斉に眉をしかめた。自爆と言う単語を聞き、昨年の師族会議でのことを思い出したからである。自分達は身の危険を感じた上に、一般人を巻き込んだことで反魔法師運動に繋がってしまった。忘れようとも忘れられない出来事だ。

 

「目的は研究資料だと弘一殿は仰いましたが、それ以外の目的ではなかったと断言できるのは何故でしょうか」

『パスワードブレイカーやハッキングツールを所持していたからですよ司葉殿。テロリストなどという低俗な輩の道具で盗まれるような柔な設計はしておりません。流出はありませんのでご安心を』

『七草殿、映像などは持っておられませんか?』

『ありますので少々お待ちを一条殿』

 

弘一が流した映像には、顔を覆面で隠した10人組の内の3人が、残りの7人に手伝ってもらい塀を乗り越えている様子を映し出していた。塀を乗り越えた3人組が一目散に研究所へ向かう様子は、このような犯罪行為に慣れているというより、魔法資料への執着心を持っているように見えた。

 

「襲撃者の技量はどれほどでしたか?」

『映像からもわかるように、裏仕事にかなり慣れている様子でした。その道の特殊訓練を受けた者、もしくはスペシャリストだと思われます。逃走した7名は十文字家に協力を要請しており、現在は共同で追跡中です。数日で捕縛できるでしょう』

 

閣下の警戒とタイミングが良すぎるが、偶然事件が起こったと考えるべきだろう。何より今は閣下と弘一を疑っている暇はない。侵入者を捕縛して背後関係を洗い出すことが最優先だ。

 

『これにて緊急会議を終了します。皆様多忙の中ありがとうございました』

 

九島真言がそう締めくくると、各当主が挨拶を済ませそれぞれ映像電話を切る。克也も映像を切り、ホテルの支配人にお礼を言って謁見室を出た。

 

 

 

会場に向かっている間、将輝が心配そうに聞いてきた。

 

「さっきの話のことだが。何か引っかかるのは俺の気のせいか?」

「どういう意味だ?」

「第七研に侵入して研究資料を盗み出そうとしたと予想するのは納得できるが、気になるのは侵入者の方だ。何故バレやすいパスワードブレイカーやハッキングツールを、大量に持ち歩いていたんだ?身元を偽造するか必要最低限の物で動くのが基本だ。そう思わないか?」

「思うさ。なんとなくだが『我々を見つけてみろ』とでも言われているような気がする」

「挑発のつもりなのか?」

「こちらとしては乗るしかないな。反魔法師運動の一環なのであれば捨て置くことはできない。それにもう一つ気になることがある」

「何?」

 

俺は立ち止まり、将輝の眼を見据えながら口を開いた。

 

「目的だよ。研究資料が目的なら第七研でもなくていいはずだ」

「だから何だ?」

「つまり黒幕が意図的にそこを狙わせたんじゃないかということだ。第七研の研究テーマは《群体制御》。あらかじめ弾となるものを用意して、個々に独立した物体・現象を1つの生き物の如く操る。第七研が開発した《群体制御》は、少なくとも100以上の物体を同時に動かす魔法だ。ここまできたら何か気付かないか?」

 

将輝は少し吟味していたが、答えに辿り着いたようで眼を見開いて、嘘だろとでも言いたげな表情を向けてきた。

 

「分かったか?」

「他者に作用させる顧傑(グ・ジー)の魔法と似ている。今回の黒幕はあいつの関係者なのか?」

「確信できる証拠は一つも無い。だが俺の予想通りなら顧傑の協力者・弟子・同胞。あるいは…」

 

俺は言葉を一度切り言葉を続けた。

 

「そいつの背後にいる人物だ」

「…嘘だろ?まだあいつの後ろに何者かがいるとお前は言いたいのか?」

「さっきから言っているだろ?証拠は何一つ無いから予想でしかないって。だがあいつに近い何者かが手を出してきているのは間違いないと思う」

「今年も穏やかには過ごせなさそうだな」

 

まったくもって同感である。意味を含めてため息をつき、〈スピード・シューティング〉が行われている会場に向かった。

 

 

 

この時克也は思い違いをしていた。顧傑の背後にいる何者かは国外にいると考えていたのだが、実際は近いところに潜んでいることに気付いていなかった。そしてその魔の手は、着実に日本の魔法社会に影を落とし始めていた。

 

その日の夜は水波に同じ部屋で同じベッドで寝るよう強要され、翌日に水波を腕枕した際の痺れが左腕に残っていた克也だった。

 

 

 

 

 

〈クラウド・ボール〉では水波が、〈アイス・ピラーズ・ブレイク〉では泉美が優勝し、新人戦は少々ヒヤッとする場面もあったが新人戦優勝を果たした。今年の1年生の魔法力は気にかける必要はないようだ。

 

本戦〈ミラージ・バット〉では香澄が亜夜子と熱戦を繰り広げたが、惜しくも敗れて準優勝に輝いた。最終日の〈モノリス・コード〉決勝では、琢磨を含む一高と文弥を含む四高の因縁の対決が行われた。

 

一昨年のように瞬殺されることはなく、琢磨達は上手く戦略を立てていた。しかし〈師補十八家〉が〈十師族〉の一角、それも四葉家の分家である黒羽家次期当主の文弥に敵うはずもなく。戦闘開始から15分で琢磨達は戦闘不能にされ、〈モノリス・コード〉の優勝は四高に決まった。

 

一高は準優勝に終わったが、三高が3位に終わったため総合優勝で悲願の七連覇を果たした。

 

 

 

今年は〈九校戦〉自体で事件は起こらず、警備の強化を行っていたのが功を奏したようだ。自分達が在籍していた頃は毎年何かしらの邪魔が入ってきたので、毎回毎回対応しなければならなくなり余計な仕事をする羽目になった。そこで克也が深雪に〈九校戦〉の警備の強化を打診すると、深雪も同じ気持ちでいてくれたらしく、二つ返事で了承してくれた。

 

自分達のように自ら解決できる魔法師は、まだ育っていないだろうと克也達は思っており行動に移したまでだ。自惚れているように見えるが、決してそのようなことはなくむしろ控えめな行動だ。

 

克也と達也なら【無頭竜】でさえ、情報だけ渡せば自分達で事態を収拾することができるほどだ。それだけの実力を持っているのであれば天狗ではないだろう。

 

 

 

 

 

〈九校戦〉終了後、会場から四葉家新本家に帰宅し仕事部屋に入ると、スポンサーや企業との商談を終えていた深雪が事務処理をしていた。その隣には達也が優しく微笑みながら深雪を見ていた。そんないつもと変わらない様子に俺まで頬が緩んできたが、それを隠そうとせずに2人に声をかける。

 

「ただいま2人とも」

「お帰り克也」

「え?あ、お帰りなさいませ克也お兄様」

 

達也と違い仕事に集中していた深雪は、達也の視線を感じなくなり顔を上げる。俺が立っていたことに、ようやく気付いたのでワンテンポ返事が遅れた。

 

「〈九校戦〉はどうだった?」

「なかなか良かったよ。母校が優勝する場面を目撃できて嬉しかったな」

「ほう、一高が七連覇したと?」

「ああ、文弥と亜夜子も活躍していたからあとで褒めてあげないとな」

 

この10日間商談尽くしだった2人は、〈九校戦〉の結果を目にする暇がなかったらしい。俺が話すまで頭の中から抜けていたようだ。達也に限って言えば思い出せないことはなく、ただ忙しくて思い出す暇がなかったのだろう。

 

「エリカから連絡が来てたぞ。どうやら関東の剣術で有名な学校や流派を全て倒したらしい」

「相変わらずやることが分かりやすいなエリカは。関東を制圧したとなれば次は東北か?それとも中部か?」

「さあな。そこまでは書かれてなかったから、エリカの行きたいところに行くだろ。ただ全国制覇なんぞされたら、俺達でも太刀打ちできそうにない気がする」

 

達也の言葉に試合で負けた瞬間を思い浮かべる。あの人をイラつかせるのが得意な悪い笑みを浮かべながら俺を見ているエリカの顔が浮かぶ。その流れでつい舌打ちを漏らしてしまう。もちろん本気でイラついているわけではない。

 

レオの気持ちが理解できるので、よく3年間も耐え抜いたなと称賛したくなる。レオの名前を思い出し、今頃何をしているのか気になった。

 

「そういえばレオはどうしてるんだろう」

「ドイツに渡ってから連絡が来ないからなんとも言えん。レオのことだから、肉弾戦の戦い方を伝授させられているのかもしれんな」

「西城君ですからありえますね」

「あいつってドイツ語喋れたっけ?」

「「あ…」」

 

俺の素朴な疑問に2人は硬直してしまった。俺は自分が爆弾を投げ込んだことを後悔し、シャワーを浴びてくるという名目で仕事部屋から逃げ出した。

 

数日後、レオからの手紙で『ドイツ語を覚えさせられているため、まだ一度も目標の【も】という字も見えていない』と書かれていた。俺の悪い予感が的中し3人で引きつった笑みを浮かべることしかできず、それを見ていた水波は首を傾げていた。

 

 

 

 

「ううううう…」

 

リーナは頭を抱えながら、その歳相応の可憐な顔を歪めていた。決して恋という名の乙女な可愛い悩みではない。ここ最近USNA国内で頻発している魔法師排斥運動に頭を悩ませていた。

 

魔法師排斥運動が起こるのはいつものことなので、心中は「またか」という具合である。だが最近の運動はより過激で死者が出るありさまだ。死者が出ても運動を続ける彼等に、USNA政府は毎日国会で激しい討論を繰り返している。魔法は抑止力にもなるが危険なものであるとも分かっているため、どうすればいいのか板挟みになり、膨大な時間を浪費していた。

 

リーナが訓練に向かおうとしている最中、突如警報が基地内に響き渡る。

 

『これは火災警報?いえ違うわこれは非常警報!でも何でこんなことが。何者かが侵入したとでも言うの?ありえない。ここは国内でも有数のセキュリティの強い場所よ。簡単には侵入できない。カツヤだってそう評価していたわ』

 

リーナは指令室に何があったか聞きに行く途中で、最悪の事態に出くわした。基地内の軍人が大勢の男に囲まれ、ナイフで刺されている場面を目撃し、思考停止に陥ってしまう。こちらを見てきた男の眼の光を見て、瞬時にリーナの意識は回復する。優秀な魔法師としての危険意識と、軍人として培った訓練の賜物である。

 

その男の眼の光は尋常ではない。魔法師に対する憎悪を含んでおり、リーナは戦わず遠回りしてから指令室に逃げ込んだ。指令室の壁は重機関銃の攻撃に耐えられるように特殊加工されているので、基地内で一番安全な場所だ。

 

「大佐、何が起こっているのですか!?」

「落ち着いて聞いてくれ総隊長。今から言うことは全て事実だ。つい先ほどこの基地に【レプグナンティア】のデモ隊が不法侵入した。警備隊が制圧に向かったが、あまりの数にデモ隊によって警備隊が制圧された。その流れで基地内に侵入し悪態の限りを尽くしている」

「そんな…」

「大佐!」

 

2人が話している最中に、よく知った軍人が指令室に見たことのない必死な表情をしながら入ってきた。

 

「罰は後程お受けします。しかし今すぐにお伝えしたいことがあります!」

「カノープス少佐、この非常事態に罰など与えません。それでどうしたのですか?」

「デモ隊の一部が兵器保管庫に乗り込もうとしています。今は水際でなんとか凌いでいますが、防衛線が破られるのは時間の問題です」

「なっ!では私が行きます!」

「総隊長はおやめください」

「ベン、何故ですか!?」

「彼等は危険ですが、総隊長の手を借りる程ではありません。総隊長にはここから逃げていただきたいのです」

「カノープス少佐の言う通り。総隊長には逃げていただく」

 

信頼する2人に諭されてはリーナでも受け入れるしかない。心配されるのはあまり好きではないが、自分の身を本気で気にかけている2人の思いを無礙にはできないと感じ、素直に受け入れることにした。

 

「…分かりました。どちらに逃げればよいのですか?」

「日本だ」

「日本…ですか?」

「このような事態を想定して、一昨年から逃走経路を確保していた。既に亡命先は、貴女を受け入れると快く引き受けてくれている。安全を求めるなら今すぐに避難するのがいい。総隊長はUSNAの希望の光。貴女を失うわけにはいかないのだから」

「分かりました。要望を受け入れてくれた方々はどなたのですか?」

「それは着いてから自分の眼で確認してくれ。カノープス少佐、総隊長をヘリポートへ」

「イエスマム」

 

 

 

カノープスに連れられて、リーナは基地内のヘリポートに来ていた。幸いここまではデモ隊が進行していないようだが、到着するのも時間の問題だろう。基地内とはいえ、端から端まで車で移動すれば10分程度だ。徒歩であろうと、時間が多少あれば辿り着ける。デモ隊が不法侵入してから15分しか経っていないのだから、基地のほぼ中央にあるこの場所まで来ていないのは当然なのだが。

 

ヘリに乗り込んで離陸準備に入っていると、カノープスがリーナに厳重にロックされた何かが入った箱を渡した。リーナは頭の上に?を浮かべながら箱を受け取って開けてみる。そこには本来はあるはずのない〈ブリオネイク〉が収納されていた。

 

「ベン、これは?」

「何かが起きた時のための護身用です。上から許可は降りていませんが、本来ならばそれは総隊長の所有物です。この際、無断で持ち出してもとやかく言われることはありません。このような事態ですから、政府もこのことを気にする余裕もないでしょう。総隊長、お気をつけて。安全が確認でき次第、我々もそちらに向かいます」

「ベン、約束ですよ?日本で必ず会いましょう。バランス大佐と一緒に必ず来てください」

「約束しましょう。USNA世界最強の魔法部隊の魔法師として、必ずお迎えに上がります」

 

リーナとカノープスは戦友として握手を交わし、互いにハグをして離れた。

 

 

 

カノープスはヘリで遠ざかるリーナを見送りながら、約束が果たせないだろうと感じ始めていた。ここにいる軍人の数では、侵入してきたデモ隊に押し切られるのが眼に見えるほどの戦力差がある。善戦しても数日持ちこたえるのが関の山だと。

 

救援要請を各基地に送っているが、援軍の到着とこの基地が占領されるタイミングが際どく、彼らに捕まれば斬首されるだろうとも予測している。デモ隊を殺すことは許可されており、《分子ディバイダー》の使用も認められている。

 

人間を幾人も殺してきたカノープスだが、罪悪感がないわけではなかった。殺す度に手が心が自分自身が汚れていくのが分かった。最初の内は嘔吐など精神的なダメージがあり、軍人を辞めたいと思ったこともあった。しかしいつからか何人殺しても嘔吐などをしなくなった。だがそれは人を殺すことに心が慣れてしまっただけだ。

 

それからというもの、自分にとって耐え難い苦痛を味わうようになった。上からは命令通りに動き、要望通りに任務をこなしてくれる軍人。部下からは魔法力があり人徳のある頼れる上司。人が求める人間になっていたにもかかわらず、カノープスの心は満たされなかった。

 

しかしそんな時、1人の金髪碧眼の少女と出会った。そこでカノープスの生き方は変わった。自国を守るために人を殺すのではなく、普段は頼りない普通の年端も行かない少女のために人を殺すのだと。彼女が任務を遂行できるよう補助するために、人を殺すことが自分の存在理由なのだと。

 

自分の娘と2歳しか変わらない少女に教えられた。気付かせてくれた少女のために自分は死ぬのだと誓い、今日まで生きてきた。

 

カノープスは《分子ディバイダー》を発動するための武装デバイスを自室に取りに行き、水際で防ぎ続けている部下の増援に向かった。

 

 

 

リーナがバランスに知らされる数分前。克也はもう関わることがないだろうと思っていた人物からの緊急要請に驚いていた。

 

「こちら四葉家執事の葉山です」

『お久しぶりです葉山殿。私はUSNA統合参謀本部情報部内部監察局第一副局長 ヴァージニア・バランスです。緊急の要請をお願いしたくご連絡いたしました。克也殿をお願いできますか?』

『少々お待ちください』

 

葉山は突然のバランスからの連絡にも驚かず、恭しく答えて克也に声をかけた。

 

「克也様、お電話です」

「俺に?どちらからですか?」

「USNA統合参謀本部情報部内部監察局第一副局長 ヴァージニア・バランス殿からです」

 

名前を聞いて俺は嫌な予感しかしなかった。だが出ないわけにはいかず、葉山さんから受話器を受け取った。

 

『お電話変わりました司波克也です』

『お久しぶりです克也殿。今回は緊急の要請をお願いしたくご連絡させていただきました。どうか我々の要請をお受けしてもらいたいのです』

『要請とは?』

『【スターズ】総隊長 アンジー・シールズことアンジェリーナ・クドウ・シールズを保護していただきたいのです』

『…理由をお聞きしてもよろしいですか?』

 

リーナの保護を求めるなど普通では考えられないことなので、事情を聴きだすことにした。

 

『先ほど【レプグナンティア】のデモ隊が基地指令室に不法侵入しました。今はどうにか持ちこたえていますが、制圧されるのは時間の問題です。そこで総隊長を危険から遠ざけるために国外へ避難させることにしました。総隊長と親交のある貴方に保護してもらえないかと思い、四葉家へ連絡させていただきました』

『分かりました。要請を受け入れましょう』

『…よろしいのですか?』

 

要請を受け入れた克也にバランスは驚いていた。

 

『自分は四葉家当主補佐です。当主の決定と自分の決定は優先権が違うだけでほぼ同じ効力があります。それに事情を知れば当主も同じように承諾するでしょう』

『ありがとうございます克也殿。この御恩は一生忘れません。総隊長の到着ですが、翌日の夕方頃だと思われますよろしくお願いします』

 

その言葉を最後に電話は切れた。そしてこの会話が最後で二度と話をすることができなくなるとは、克也も知らなかった。

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