魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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第80話 救出

決行の日の正午前。俺とリーナは【レプグナンティア】の本部がある廃ビルが、よく見える四葉家の所有するビルの屋上に来ていた。本部は一見普通の廃ビルのようだが、視界を広げると犯罪組織だとまるわかりな構造をしていた。

 

銃火器やサイバーアタックするための高性能なパソコン。爆発物や毒薬の開発システム。立ち入り調査をすれば速攻お縄な景色だ。だが、警察など呼ぶつもりもない。関わらせず終わらせるのが今回の任務であり、リーナの心を軽くさせるのが何よりの目的なのだから。

 

「リーナ、準備は大丈夫か?」

「ワタシを誰だと思っているの?〈USNA公認戦略級魔法師〉アンジー・シリウスよ。不安なんてあるわけないじゃない」

 

俺の問いかけに得意げに答えるリーナに、俺は安心より不安を覚えた。無理をして話しているのではないかと気になったが、本人はそんなことを心配されたくなさそうな空気をまとっていたので、わざわざ口には出さなかった。

 

「《ヘヴィ・メタル・バースト》の使用許可は深雪から出ている。リーナのタイミングでぶっ放してくれて構わない。ただ発動させるタイミングだけ教えてくれ。いきなり発動されたら困る」

「そ、そんなことしないわよ!」

「噛んだぞ」

 

ツッコまれたくない場所を突かれて、リーナは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。2年前と変わらない行動に懐かしさが溢れてくるが、今はそれどころではないことを思い出して気を引き締める。

 

地下につながる階段を、ひっきりなしに同じようなネックレスを首にかけた男達が出入りしている。そろそろテロを起こすために行動を起こすようだ。被害が出る前に抑えなければリーナの復讐もできなければ、〈十師族〉に顔も見せられない。

 

こちらも早々に行動を起こすべきだろう。

 

「リーナ、作戦を決行しよう」

「了解。じゃあ準備するわ」

 

リーナは呟いた後、《仮装行列(パレード)》を発動させて容姿を変化させた。背丈が伸び黄金に輝く髪がルビー色とでも言える深紅に変わり、蒼穹の瞳が金色の瞳に変わった。その変化に俺はつい見とれてしまい、リーナが問いかけてくるまで硬直していた。

 

「びっくりした?」

「…驚いたよ。想像以上だ。変身後しか見たことなかったら過程を見れるとは思わなかった」

「ふふ、これ以上の驚きを見せてあげるわ」

 

リーナの雰囲気をまといながらリーナとは違う人間性に違和感を感じながら、作戦を決行する準備を始める。

 

「じゃあ始めようか」

「ええ」

 

リーナが〈ブリオネイク〉を構え、魔法式を構築しようとした瞬間。緊急呼び出し音が鳴ったので予定を中止せざる負えなくなる。

 

「もしもし」

『克也さん?よかった。まだ作戦決行していなかったんですね!?』

「亜夜子か?今決行しようと思っていたところだ。それで用は何だ?」

『《ヘヴィ・メタル・バースト》の使用はお控えください』

「何?」

 

まさかの中止懇願に驚く。

 

「どういうことだ?」

『先ほど七草家。いえ、七草真由美さん個人から要請がありました。要人が囚われているらしいので、救出してほしいということです』

「特徴は?」

『電話での説明は難しいです。文弥がそちらに向かっていますので合流次第説明を受けてください』

「分かった」

 

電話を切ってリーナに作戦の一時中止を伝えてから、文弥が来るまで感じを続けることにした。

 

 

 

5分後。文弥が黒羽家の魔法師と共にやってきたので、別の作戦を瞬時に考えて伝えた。

 

「俺と文弥は廃ビルの正面から突入します。みなさんはリーナの護衛を。リーナなら問題ないと思いますが、万が一のためにこれをお持ちください」

 

黒羽家の魔法師の1人にCADを渡すと、首を傾げたので説明をする。

 

「これには達也が偶然発見した《キャスト・ジャミング》を無効化する魔法式が記録されています。実験機ですが、今回しか使いませんから気にしないでください」

「克也兄さん、よくそんなものを持っていましたね」

「【ブランシュ】のようにアンティナイトを持っていると予想していてな。もし突入する必要性が出てきたらリーナに持たせるつもりだったんだ。意外なところで役に立ってくれたよ」

「僕には必要ないんですか?」

「文弥はリーナと違って、勝手に行動しないから渡さなくても大丈夫だよ」

「それどういう意味よ!」

 

リーナの小さな声での抗議を無視して廃ビルを視る。

 

後ろの方で「無視するな~!」「克也兄さんだから怒っても無駄ですよ」というリーナと文弥のやり取りをBGMに、意識を情報の世界に向ける。

 

注意深く視界を広げると、廃ビルの地下から伸びる廊下の先に内部の視れない部分があった。

 

「見つけたが中が視えない。認識阻害の結界なのか俺の知らない魔法なのか。ここに要人がいるとみて間違いないだろうな。文弥、行くぞ」

「はい」

 

屋上から飛び降り、慣性中和の魔法と減速魔法で落下速度と身体にかかるGを軽減する。着地した瞬間から自己加速術式で、廃ビルの近くのビルまで肉薄して様子をうかがう。

 

人の出入りがなくなったな。最後の会議でもしているのか?だがそれなら好都合。《逃水(とうすい)》を使わなくても楽に侵入できそうだな。

 

頭の中で考えていると、文弥が到着したので廃ビル内に突入する。階段を駆け下りるためには、セキュリティシステムを突破しなければならない。下手なことをすれば警戒させてしまい、二度と殲滅させることはできないだろう。

 

なら今この場所から新しく道を作るのが最適解だ。足下に《燃焼》で廊下までの仮設のトンネルを作る。《跳躍》の魔法式で壁を左右に飛び交いながら降りていく。眼で視た深さより深くまで降りていくので時間がかかってしまうが、廊下を全速力で駆け抜けて予定時間の誤差を修正する。

 

「警備が全くありませんが?」

「日本の魔法社会で最高の諜報能力を持つ黒羽家でも、発見するのにかなり時間がかかったんだ。侵入者は想定していないのだろう」

 

文弥の質問に答えながら監視カメラを《燃焼》で消しながら、廃ビルの最深部まで進むと頑丈な扉が見えた。

 

「この先にいるんですね?」

「ここを何かしらで守っている。ここまでするということは【レプグナンティア】のメンバー、おそらく幹部クラスの人間にしか知らされていない極秘プロジェクトが行われているのだろう」

「そこの2人、何をしている!そのCADは貴様等は魔法師か?それにその顔、四葉克也と黒羽文弥。そうか貴様等が俺達のボスを殺したんだな!」

 

背後から聞こえた声に振り向くと大声で指摘してきた。俺達の顔を知っている且つ、魔法を使わない人間となれば雑魚もしくは協力者だろう。

 

「何を勘違いしているかは知らんが、俺達は自らの手で殺していない。それにボスとは一体誰だ?」

「しらばっくれるな!俺達のボスは矢口中尉だ。お前が会いに行った日の夜に死んだ。お前が魔法で殺したんだ!遅延発動術式のような何かでな!」

「なかなかの推理力だがすべて間違っている。俺は矢口中尉を殺していないし、遅延発動魔法など面倒な魔法は使わない。一瞬で人間を殺すか気絶させて拘束する。それが俺の戦闘方針だ」

「黙れ!お前等《キャスト・ジャミング》だ。俺がその間にこれで殺す!」

 

後ろに引き連れてきていた部下に命令し、日本刀の刀身を鞘から抜き出して構えた。ある程度様になっているのでそれなりの訓練をこなしてきたようだが、エリカの完成したものと比べればぎこちない。そんな気がした。

 

男達が真鍮色に輝く指輪をはめた拳を突き出すと、黒板を爪でひっかいたような不快な音が鳴り始めた。文弥が顔をしかめるが、俺は想子を操作して騒音を無音化させ、指輪に向かって《燃焼》を放った。

 

「何故《キャスト・ジャミング》の中で魔法が使える!?」

「確かに《キャスト・ジャミング》は魔法師に対して有効だ。だが耐性や対抗策があれば無効化できる」

「この化け物め!」

 

おなじみの有難い御言葉をいただき、後ろの男達もまとめて存在を消し去る。落とした日本刀は業物らしく、見事に使い込まれている上に手入れも丁寧に行き届いている。ここに置いておくのは勿体無いと思い持ち帰ることにした。

 

「さてと予定外の仕事があったけど本来の目的に戻ろうか。文弥、俺がこの扉を消した瞬間に《ダイレクト・ペイン》で重要人物以外を始末してくれ。文弥なら見ただけで誰が指令を出しているのかわかるだろう?」

「了解です克也兄さん」

 

文弥がしっかりと頷いたのを確認した後、《闇色の辺獄烈火(ベルフェゴール)》で結界らしきものを解除する。強固な扉を《燃焼》で消し去ると同時に、文弥が《ダイレクト・ペイン》で1人を除き無力化する。残った男に俺はCADを向けながら問いかけた。

 

「これでお前らの企みは潰えた。一応投降の勧告だけはしておいてやる。今すぐ武器を捨てて両手を後ろに組め」

「そんなつもりはないよ四葉家当主補佐 司波克也殿。それに分家の黒羽文弥さん」

「ほう、黒羽家が分家だとよく気付いたな」

「少し情報網を探ればわかるものです」

「普通なら無理なはずなんだがな。まあいい。看破した褒美として機会をやろう」

「機会?」

 

男は顔は驚きながらも内心はほくそ笑んでいた。

 

「お前の後ろにある刀で俺と勝負しろ。勝てたら見逃してやる。その代わり負ければ情報をもらう。どうだ?」

「免許皆伝のこの私に勝てるとお思いですか?」

「お前より強い剣士をこの眼で見てきたから強さを比べたくてな。文弥、そいつらを縛っといてくれ。今から少々荒っぽくなる」

 

先程拾った日本刀を鞘から抜き出し、身体の正中線上に構え少して腕を引くと、男も機械の椅子に立てかけていた刀をつかんで剣道のような構えをする。互いの呼吸が合致した瞬間、互いに動き克也が左上へ右下から切り上げると、男は右上から刀を振り下ろす。

 

刀同士がぶつかると大量の火花が飛び散り、双方の顔が明るく照らし出される。2人の顔は真逆だ。男は刀を持った構えと踏み込みを見て、克也が只者ではないと直感する。強者と戦えることへの喜びがにじみ出た笑みを浮かべ、克也は冷笑を浮かべていた。

 

克也自身、何故笑みを浮かべているのかわからなかった。強者に出会えたことへの喜びだろうか。それとも魔法以外で、自分の身体能力だけで戦えることへの歓喜だろうか。

 

そんなことを考えている間に何十もの回数刀を振り、互いの頬にかすり傷がみるみるうちに増えていく。刀を振りかぶり振り落とすと、互いの間合いのほぼ中間で相殺して鍔迫り合いに持ち込む。

 

「貴方の名前は?」

「私に勝てたら教えてやろう」

「では本気で行こうか」

 

力を込めて押し込むと、負けるつもりなどないのだろう押し返してきたので、その流れに乗るよう後退する。すると押し込んできた男の態勢が崩れた。その瞬間をつき自己加速術式を発動させる。

 

そして刀の切る面ではなく、反対の刃がついていない部分で男の胴を薙ぐ。確かな手ごたえを感じ振り向いた右手を下ろし、腹部を抑え片膝立ちになっている男へ、刀を鞘にしまい込みながら問いかける。

 

「まさか魔法を使うとは…」

「俺は一言も魔法は使わないなんて言っていないからな。さて名前と目的を教えてもらおうか」

「…名前は川倉基樹(かわくらもとき)、【レプグナンティア】本部の地下で魔法実験を行う責任者だ」

「研究目的は…」

「克也兄さん!」

 

質問しようとすると文弥に声を掛けられ、振り向くと拘束した研究員達が燃えだしていた。

 

「あれは何だ!?」

「ボスが我々の存在を消そうとしているのだ。私も直に消え失せるだろう。司波克也、お前ならこの国の闇を暴けるはずだ。頼んだぞ」

「闇だと?どういうことだ?」

 

克也の問いに答える暇もなく、《川倉基樹(かわくらもとき)》という名の男は、炎に包まれ存在が消え去った。

 

「克也兄さん、一体どういうことでしょう」

「《人体発火》を使ったんだろう。遅延発動式か遠隔操作なのかはわからないが。考察は後にしよう、。今は救助が最優先事項だ。この奥の部屋にいるんだろう?行くぞ」

 

文弥を連れて奥の部屋の扉を開け中に入ると、至る所に張り巡らされた数多の機械のコードが部屋を覆っていた。部屋の中央には、とてつもなくでかい機械が鎮座している。

 

「克也兄さん、ここがこの研究所の心臓部なんでしょうか」

「だろうな。これだけの機械とコードがあればそれで間違いないだろう。それで要人とは誰だ?」

「髪の長い10代半ばの少女(・・・・・・・・)です」

「…少女?」

「はい」

「何故こんなところに…。まあいい取り合えず探そう。ここにいるはずだ」

 

2人で手分けしてかなりの広さの部屋で捜索していると、コードに繋がったまま寝かされた少女を見つけた。

 

「文弥、いたぞ。この子か?」

「はい、その子で間違いありません」

 

抱き上げて文弥に聞くと、本人らしいので一安心する。

 

「息はしているが浅くて速い…。危険な状態だな」

 

独り言を呟き《回復(ヒール)》で目を覚まさせると、暴れ始めたので《癒し》で不安を取り払う。

 

「落ち着け。俺達は七草真由美嬢の依頼を受けて救出に来た。怯えることはない」

「…真由美さんのお友達なの、です?」

「友達というより先輩・後輩の関係だよ。名前は?」

「【わたつみシリーズ製造ナンバー二十二】個体名・九亜、です」

「シリーズ…【調整体】か。今から君を連れて地上に戻る」

 

お姫様抱っこをしながら部屋を出て行こうとすると、九亜に引き止められた。

 

「待ってほしい、です」

「どうした?」

「助けてほしい、です」

「今から助けるつもりなんだが」

 

克也は九亜の言うことが理解できなかったが、それは観察ミスに近い失態だった。

 

「私だけではなく、私達(・・)を、助けてほしい、です」

私達(・・)とは、ほかにも【わたつみシリーズ】がいるのか?」

 

俺の質問に九亜は小さく頷いた。

 

「分かった。この奥にいるようだから連れてくる。文弥、少し待っていてくれ」

 

2人にここで待っておくように命じてから九亜を地面に下ろし、部屋の行き止まりまで進んで視界を広げると、奥にも道が続いているのが視える。12個の個室がありそのうちの4つが空っぽだ。1つは九亜の部屋だろうか。残りの個室はどうなったのかわからないが。

 

「12人の【調整体】にこの大規模CAD。…まさかな」

 

壁塗料を塗り込んで入り口を隠していたのだろう。上手く細工されており、言われなければ気付かないほどの巧妙さだ。壁を《燃焼》で灰に変え、中に踏み込むと消毒液の匂いが鼻を突いた。

 

「この扱いは人間に対して行うことじゃない。もはやモルモットでもない。家畜以下じゃないか」

 

8個の個室のドアを消し飛ばし、寝込んでいる8人の九亜と同じ顔の少女を担ぎ、先ほどの部屋に運ぶ。全員に《回復(ヒール)》を施すと全員が目を覚まし、1人が明確な敵意を向けて聞いてきた。

 

「…お兄さんは誰?何をする気?」

「俺は四葉家当主補佐 司波克也。七草真由美の要請により九亜を保護しに来た。九亜が君達を助けてほしいと願ったから助けた。ただそれだけだ。文弥、9人を連れて先に行ってくれ。俺にはやることがある」

「分かりました」

 

8人を文弥が誘導していると、先ほど質問してきた少女が泣きそうな顔で再び質問してきた。

 

「お兄さん、私達を見捨てる気?」 

「研究所のデータを残しておいては、君達を助けたことにはならない。別の君達が利用されるだけだ」

「お兄さん。ううん。克也さん、お願いすべてを消して」

「言われなくてもそのつもりだ」

 

笑顔で返事をすると、九亜とは違う雰囲気をまとった少女は少し顔を赤くさせて、可愛らしい笑みを浮かべてから8人を追いかけた。

 

それを見送りCAD調整機のデータを開こうとすると、いつの間にかハッキングされており全データが消滅していた。

 

「藤林さんか?いや、このハッキングの粗さはあの女性じゃない。素人に近いがすべて持ち出すとなると、川倉という男に命じる権限を持つ幹部あるいは別の人間か…。今ここで考えている暇はないな。それよりこの大型CADを処理するのが先だ」

 

10人が十分離れたのを確認し、自分も少し距離を置いて研究室の内部だけを消し去るため、《地獄の業火(ヘル・ヘイム)》を限定条件で発動させて消し去った。発動と同時に爆風が背後から届く前に10人のところまで自己加速術式と体術で走り、強めの〈領域干渉〉を展開して全員を守る。

 

全員が無事なのを確認後、侵入してきた仮設のトンネルを飛行術式を使って、全員を地上に上げる。安全を確認してからリーナが待つビルの屋上に向かった。

 

こうして克也達は【レプグナンティア】の最終会議を邪魔せず、30分で目標の第一段階を終了させた。

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