魔法科高校の劣等生~双子の運命~リメイク版   作:ジーザス

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13章 捜索編
第86話 行動


俺は幹比古と久しぶりに話せたこと、同盟を結べたことに喜びを感じながら帰宅していた。本家に入ろうとすると、慌ただしい雰囲気を感じ、何があったのか気になりながら敷居をまたいだ。

 

使用人や執事が、必死な形相を浮かべながら廊下を走り回っている。俺の帰宅に気付かないほどに。

 

「リーナ、何があったんだ?」

 

偶然通りかかった金髪碧眼の少女に話しかける。信じたくない、そして伝えることに悩んでいる表情で振り返った。俺はその表情と慌ただしい雰囲気から、良くないことが起こったのだと察知した。

 

「リーナ、教えてくれ。一体、何があった?」

「…」

「リーナ!」

 

尚も回答を拒否するリーナの肩を掴み、無理矢理こちらに顔を向けさせようとが、それでも顔を合わせようとしない。昔のようなツインテールではなく、左肩の後ろ辺りに髪を流してポニーテールの様にしたリーナの顔は、前髪で隠れて俺の角度からでは見えなかった。

 

しばらく返答を待つが、答える様子がないので他に当たろうと背を向けて歩き出そうとすると、背広の裾を掴まれた。

 

「リーナ、一体何だ?」

「…のよ」

「何?」

「水波が拉致されたのよ!」

「なっ!」

 

俺は雷に打たれたかのような衝撃を受けた。取り乱したとは思えないむしろ頭が冷えた硬質な声が、自分の口から発されるのが耳に入る。

 

「何故拉致されたと分かった?」

「…辰巳さんの遺体が、渋谷の大型ショッピングモールの一角で発見されたの。15分前に身元の確認ができたって連絡があったわ」

「水波の居場所は?」

「わからない。目撃証言もゼロ。相手はかなりの腕前みたい。それと関係があるのか分からないけど、奇妙な人を見たって人がいるの」

「奇妙?」

 

魔法師や一般人、ましてや人間に使うような言葉ではないことに違和感を俺は抱いた。

 

「ええ、見た目は普通だけどなんだか生きているように見えない。そんな風だったって」

「確かに奇妙と言えるな。それでこのことを達也と深雪は知っているのか?」

「まだ知らないけど雰囲気で薄々感づいてるかもしれないわ。真夜様と葉山さんが伝えるべきか会議中よ」

 

当主に伝えるべきだが、不安を与えたくないので伝えるべきではないと俺は結論付けてリーナに伝言を託す。

 

「リーナ、今からその場所に行って俺の伝言を伝えてきてほしい『深雪と達也には伝えない。水波が見つかるまで隠してほしい』と」

 

リーナは目を見開く。その蒼い眼で見つめ返してきたが、俺はそれを無表情に見つめ返す。

 

「カツヤ、貴方はもしかして単独で動く気?」

「水波は俺の妻だ。誰にも触れさせない。四葉家に援軍を頼むと大人数を動かすことになる。そうなれば相手に警戒させることになりかねない。単独で動いた方が相手に警戒されずに済む」

「なら、せめて黒羽家を連れて行きなさい!貴方が捜索に向かうのは止めないわ。でも単独じゃ非効率的よ。少しは分家の血を信じなさい」

「…分かったよ。でも人数は最小限に抑えてくれ。これは命令だ」

「わかった。真夜様にはそう伝えておく」

 

俺はリーナの返事に頷きを返し、吉田家の誓約書をリーナに渡してからそのまま玄関を出る。

 

「今から行くの?」

「この行動を見たらそれしかないだろう?早く見つけないと俺の気が収まらない」

 

言うべきことだけ言う。それ以外は時間の無駄とでもいうかのように玄関のドアを閉めて出て行く。リーナは克也の背中を、ただ心配そうに見つめることしか出来なかった。

 

捜索に加わりたいが自分は派手すぎる。分かっていてもままならないのが人間の心だ。そんな物があるから自分は大切なときに動けず、誰かにすがることしかできない。

 

カツヤ、貴方は自分の身が壊れてでも救うの?自分が死んでもいいとでも思っているの?

 

リーナがそう思ってしまうほど、克也の背中は覚悟を決めているかのように見えた。

 

 

 

克也は連絡をくれた警察と、第一発見者に直接何を見たのか聞きに行くため、コミューターではなく自家用車で渋谷に向かっていた。コミューターより普通に運転する方がよっぽど速く着く。時間を無駄にしないためには、最短時間で目的を成さなければならない。

 

克也は不安と怒りを強靱的な精神力でねじ伏せる。なんとか抑え込んでいたが、水波の無事な姿を見ない限り、そして水波を拉致した何者かを消し去らない限り、この感情は消えない。克也の頭にあるのは「水波の安全」と「何者かの消去」の2つだけだ。それ以外は無意味な物だと切り捨てている。

 

1時間もかからず渋谷に到着し、辰巳の発見場所からほど近い交番に向かう。自分と同い年ぐらいの警官が、交番前で立っていたので声をかけてみた。

 

「仕事中にすみません。この近くであった殺人事件の被害者の関係者なのですが、連絡をしてくださった方はおられますか?」

「あの方のお知り合いなのですね?上司に確認いたしますので、少々お待ち下さい」

 

若い警官は人を優しく包むような笑顔で返事をし、交番の中に入っていた。落ち込んでいるだろうと思い、元気づけようとしたのだろう。親しい人物がつい先程殺されたばかりなのに、笑顔を向けられるのは気持ちの良いものではない。

 

気遣いは必要といっても余計な気遣いは人の心に影をつくり、人間関係を悪化させる原因にもなる。空回りすれば自分も気まずくなり、相手との会話もギクシャクしてしまう。

 

「上司の許可が下りました。こちらにどうぞ」

「ありがとうございます」

 

先程の思考をなかったかのように振る舞いながら、交番内に入り奥の部屋に通される。そこには50代と思しき、ドラマで見るような正義感に溢れた人物が待っていた。

 

「ようこそ渋谷第一交番へ。貴方が伺いたいのは殺害された人物のことのようですが。関係とはどのようなものなのか教えていただけませんか?」

「構いませんよ。彼は自分の師匠であり、5年前までボディーガードでした。今年から妻のボディーガードとして護衛させていましたが」

 

こちらの情報を盗む気なのか信頼するために聞き出しているのか分からないが、この程度知られたところで大した問題ではない。辰巳が殺されたことや、水波が拉致されたことに比べれば…。

 

「そうでしたか。では何をお聞きしたいのですか?」

「彼の死因と発見当時の現場について」

「故四谷辰巳さんの死因は、内臓破裂と背後からの多数の刺し傷による出血多量死です」

「背後からですか?」

 

克也は内臓破裂という単語より、背中の傷について聞き直していた。辰巳が背後を取られるなど克也は思っていなかったのもあったが、それより多数の傷という単語を気にしていた。

 

「はい。奇妙なことに全ての刺し傷の幅の形状が、まったく同じだったのです」

「一寸の狂いもなくですか?」

 

その警官は重々しく、信じられないとでも言うように頷きながら話を続けた。

 

「普通なら同じ人物が同じ包丁で刺しても、角度や力加減によって傷口の深さや角度は変わります。それは機械でも同じです。ありえないのですよ。全ての傷がまったく同じような形状なのは」

「武器も分からず使用者も予測がつかないとは困ったものです。現場を見ることは出来ますか?」

「出来ますがどうなされるのですか?」

「現場を見れば何かわかるかもしれませんから」

 

その言葉に納得したかのようにその警官は頷きながら立ち上がり、部下に待機するよう命じて克也を連れて現場に向かった。

 

 

 

現場には規制線が張られ、複数の警官が警備にあたっているのでまだ鑑識が仕事をしているようだ。規制線を越えることは許されたが、鑑識が終わるまでは自由に動くことは出来なかった。しかし運良く10分ほどで鑑識は撤収した。

 

「ここに辰巳が血を流して倒れていたと」

「その通りです。この場に俯せになって倒れていました」

 

克也は辰巳が倒れていた場所に膝をつき右手を地面につける。警官は克也が何をしているのか理解できずにいたが、冥福を祈っているように見えたことだろう。

 

だが克也がしていたのはそんな優しいことではない。辰巳に致命傷を与え、死に至らしめた魔法の痕跡を探しているのだ。残存想子は感知できたが、生憎微量でノイズが酷い。克也でも解析できるような代物ではなかった。時間が経っているのと事件までに人通りが多かったからだろう。

 

残念に思いながら顔を上げると、謎のへこみが店の看板横にあることに気付く。そこにはかなり激しい勢いでぶつかったようなへこみがあり、深さが5cmにもなっていた。

 

「これは…」

「そこにも彼の血や衣服の繊維が付着していました」

「魔法ならもっとへこむはず。体術じゃなきゃこんなことにはならない」

 

克也は警官の説明も耳に入らず独り言を呟いていた。ポケットから取り出した携帯端末で、様々な角度から撮影し、証拠を消されないように残しておく。

 

「第一発見者の方とお話は出来ますか?」

「申し訳ないがその女性は回答を拒否されている。思い出したくないと」

 

どうやら発見当時のことは知ることが出来ないようだが、肝心なことを忘れていた。

 

「監視カメラの映像と想子測定器の録画はどうでした?」

「どちらも不審な点は見当たりませんでした」

「見当たらない?カメラに映っていないのに女性が見つけているんですよ?」

「ええ、ですがカメラにはデータの改ざんが見られなかったのです。想子測定器にも」

「ありえません。必ず何者かの介入があったはずです」

「しかし…」

 

再度調査をしようとしない警官に愛想を尽かして、俺は家路についた。




リーナの髪型を上手く表現できませんでした。NARUTOをご存知の方は疾風伝 山中いのを思い浮かべてください。前髪をいの自身から見て右頬側に流し、後ろ髪は左肩に向かうような感じです。
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