異世界の神様からチート能力?を貰いました。   作:名無しの兵六

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第111話 条約締結

 困ったなあ。とりあえずこれは聞いておかないと。

 

「ツァハリアス殿、ソファにおかけください。そのような姿勢では話しがしにくいですから。やはり同じ目線でないとこういう話しは出来ませんから。」

 

 そう言うと、ツァハリアスさんはソファに座ってくれた。僕は彼の目を見て問う。

 

「貴方にとって民とは何ですか?」

 

「民ですか?それは、奴隷なども含めてということでしょうか?」

 

「そうです。貴方の施政下にいる人々のことです。」

 

「ならば、答えは簡単ですな。民とは我々、貴族が(まも)るべき存在であります。彼らがいなければ貴族は生きてはいけません。様々な仕事に従事している彼らがいるからこそ、今日のように夕食を楽しくとることができます。そして、我々も彼らに(まも)られております。」

 

「ほう。」

 

 今まで会ってきた貴族の人たちと同じような回答だ。これだけでも満足だけど、ツァハリアスさんは続ける。

 

「“我々、貴族が民を(まも)っているのだ。だから、民は貴族の言うことを聞く義務がある。”という(やから)がおりますが、逆です。我々は、民を(まも)ると同時に(まも)られているのです。簡単なことです。国軍や領軍に所属する者は、下級貴族の者もおりましょうが、その大部分が(まも)るべき民であります。彼らは(みずか)らの命をもって我々に力を貸してくれているのです。まあ、個人それぞれの思惑というのはあるでしょうが。」

 

「なるほど。では、貴族は税を取らずに民の守護をすればいいのでは無いですか?」

 

 ちょっと意地悪な問いかけをしてみる。

 

「それは、閣下、結論の飛躍というモノです。確かに我々、貴族に王家の方々は民よりの税を生活の(かて)としています。しかし、税はそれ以外にも使われます。例をあげるならば、街の整備、街道の整備、衛兵に対する給与の支払いなどなど、公共性の高い物に税は投入されます。もし、税をとらなければ、確かに民の(ふところ)(うるお)いましょう。しかし、街や街道の整備のため、使用料という名目で徴収をし、事件が起これば駆けつけた衛兵に対してその人数分の金を払わなければなりません。富める者はよいでしょう。しかし、下層階級と呼ばれる人々はどうなります?私は彼らを見捨てたくはありません。だからこそ税があることで、富める者や貧しい者が平等に公共物を使用できます。また、富める者から多くとり、貧しい者からは少なくとるこの累進課税の制度は素晴らしいと思います。“富める者から貧しい者へ”これのおかげで、我々は気兼ねなく公共事業を進めることができますし、貧民の救済ができます。それに・・・。」

 

「ああ、もう結構です。丁寧に答えていただきありがとうございます。先程のご提案をお受けいたしましょう。ただし、条件があります。」

 

「どのような条件でしょう。」

 

「そうですね。名付けるなら相互安全保障とでも言いましょうか。ようはシントラー領が僕の庇護下に入るのではなく、お互いに危機に(おちい)れば助け合いましょうというモノです。いかがでしょうか?」

 

「それはよいですね。しかし、我が領の軍は海軍が7、陸軍が3という割合ですからご期待に沿えるかどうか・・・。」

 

「そのための冒険者ギルドではありませんか。彼らに依頼として出せばいいのですよ。」

 

「しかし、それでは、ゴロツキが混じる可能性も・・・。」

 

「その時は、そのゴロツキの方々には不幸が訪れるだけですよ。」

 

 笑顔で答える。ツァハリアスさんが引き攣った笑みを浮かべる。うーむ、普通の事を言ったつもりだったんだけどなあ。ま、いいや。話しの腰を折ったわけでもないし。

 

「さて、相互安全保障の件について詳しく煮詰めていきましょう。これは、条約として締結し施行するべきです。しかし、時間がありません。明日には、僕たちは帰りますから、せめて形だけでも作り上げましょう。」

 

「わかりました。」

 

 その後、僕たちは夜遅くまで話しを詰めた。ちょっと(ゆる)いところもあるけど領同士の決め事なのだから、あまりキツくし過ぎてもね。それに余裕があった方が解釈の幅を広げて使いやすい。

 

 条約の草案をまとめ上げ、2人して長く息を吐く。締結は今、現在をもってと決まった。それぞれに署名し、家紋印を押す。公布と施行は、ゲーニウス領に僕が着任してからとなった。これから、この相互安全保障条約には様々な条文が追加されていくのだろう。

 

「いやはや、閣下。これほどまでに事務仕事に熱を入れたのは久しぶりかもしれません。」

 

「ハハハ、僕は初めてのことなので楽しかったですよ。色んな条件を考えていくというのは。」

 

「いやあ、艦隊司令として艦隊指揮や野戦をしていた方が楽でいいですな。将兵の命を守りながら敵に勝つことを考えればいいだけですから。早く、息子に家督を譲りたいものです。」

 

「フィン殿のことですか?実はぼくの祖父もフィンという名なのです。奇遇ですね。」

 

「おお、そうなのですね。これも縁でありましょう。それで、我が子の事についてお話しをする機会がありませんでしたね。娘は3人いて学園(アカデミー)を卒業後みな嫁いでおります。そして、息子は長男のフィンと次男のアンテロの2人いて成人しております。今頃、それぞれ戦隊を率いて外海を哨戒しているころでしょう。戻ってくるのは、明後日、いえ日付が変わっているので、明日、月曜日ですね。ちょうど、閣下とは入れ替わりになりますね。」

 

「なるほど、それは残念ですね。みなドゥルシネアさんとの間のお子さんですか?」

 

「ええ、彼女が頑張って5人も産んでくれましたよ。しかも、みんな大きな病気も無く元気に育ってくれました。それにドゥルシネアは美しいですから側室や妾を取る気にはなりませんでしたね。」

 

「そうなんですね。そのように一途なツァハリアス殿から見れば、僕は女好きの遊び人に見えるのでしょうけど。」

 

「いえいえ、愛や恋と云ったモノは人それぞれです。私はドゥルシネアと子供達にしか愛を(そそ)げなかった不器用な男ですよ。」

 

 ハハハと笑うツァハリアスさんは、しかし、その言葉とは裏腹にとても幸せそうに見えた。




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