異世界の神様からチート能力?を貰いました。   作:名無しの兵六

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第116話 クスタ君の選択

 アキームさんの執務室に入り、アキームさんとクスタ君と向かい合って座る。僕はまず再度の謝罪から始めた。

 

「アキーム殿、クスタさん、お訪ねするのが遅れてしまい、申し訳ありませんでした。」

 

 そう言って、頭を下げる。アキームさんは笑顔で言う。

 

「ガイウス様。1日など誤差の様なものです。お気になさらず。逆に1日遅れで良かったです。昨日、クスタは落ち着きが無かったものですから。」

 

「今日は、落ち着いているように見えますね。」

 

 僕はクスタ君を見ながら言う。クスタ君は僕を見て頷いてから言う。

 

「はい、昨日までは答えが出せずに迷っていましたけど、今はもう答えが出ました。」

 

「それは、嬉しい事です。その前に果実水でも飲んで一旦、気持ちを確認しなおしてみてください。後悔の残る選択をしてほしくないのです。」

 

 僕はそう言って、偽装魔法袋の【収納】からカラフェに入った果実水とグラスを3つ取り出し、果実水を注ぐ。3人で無言で果実水を飲み干すと、クスタ君が長く息を吐いた。やはり、少し緊張していたようだ。僕は改めて口を開く。

 

「では、クスタさんの答えをお聞かせください。」

 

「はい、是非とも、僕を、いいえ、私をガイウス様の(もと)で働かせてください。」

 

「クスタさんは、あと2年間、孤児院の庇護(ひご)(もと)にいることができます。それを投げうってでもですか?」

 

「はい、覚悟はできています。」

 

 真っすぐと僕の目を見て答えるクスタ君。これなら大丈夫かな。

 

「わかりました。アキーム殿、クスタさん。5月末に迎えに来ますので、身辺の荷物の整理をお願いします。働く場所は領都ニルレブとなります。オツスローフにはそう頻繁に帰ってくることはできないでしょうが、馬を使えば無理な距離ではありません。ああ、それと、僕の素の口調ですけど、公の場では使いませんので、ご了承ください。さっきのような偉ぶった言い方になりますのでムカつくこともあるでしょうけど、(こら)えてくださいね?」

 

 少しおどけたように言うと、2人とも笑ってくれた。その後は、とりとめのない話しをして、僕が2人の見送りで教会を出て騎乗しようとしたところで、ジギスムントさんと会った。

 

「ガイウス閣下、お久しぶりです。」

 

「うむ、ジギスムント卿も健勝そうで何よりだ。ところで、今日はどうされたのかな?」

 

「はっ、率直に申し上げますと、今後もゲーニウス領にて働かせていただければと思いまして、お願いに参った次第です。」

 

「おお、そうであったか。私は嬉しいぞ。」

 

 そして、僕は下馬してジギスムントさんに近づき、周りに聞こえないよう言う。

 

「ジギスムント殿、本当に大丈夫なのですか?」

 

「ええ、大丈夫です。駐留国軍総司令官のベレンガー閣下にも話しは通してあります。ベレンガー閣下から軍務大臣ゲラルト閣下に話しを通してくださるそうです。」

 

「あ、そうだったんですね。実は僕もダヴィド・アルムガルト辺境伯様にお願いをしていたんですよ。ダヴィド様と軍務大臣のゲラルト閣下とは知己(ちき)の仲だそうですので。」

 

「そうだったのですね。流石、ガイウス閣下は抜かりが無いですね。」

 

「周りの人達に恵まれただけですよ。しかし、辺境伯、いいえ貴族として振る舞うのは疲れますねえ。」

 

「ハハハ、それは仕方ありません。上に立つ者の責務だと思っていただければと思います。」

 

「あー、そうですね。仕方のない事ですよね。しかし、自分よりも年上の方々に偉ぶった口調で話すのは疲れますよ。」

 

「まあ、徐々になれますよ。私も兵を指揮することになったばかりの頃は、なかなか慣れなかったものです。」

 

 僕は頷き、少し離れて騎乗して言う。

 

「職務時間中に申し訳なかったな。ジギスムント卿。今回、話しができて良かった。それでは、私はこれで失礼する。」

 

「はっ、閣下。お気を付けて。」

 

「うむ、ありがとう。アキーム殿もクスタ殿も準備をよろしく頼む。」

 

「はい、ガイウス様。」

 

「わかりました。ガイウス様。」

 

「それではな。」

 

 そして、僕は門まで馬を駆けさせ、貴族証を見せて出門手続きを済ませる。そのまま、黒魔の森に入り、馬を【送還】、そこから【空間転移】し、ゲーニウス領のツルフナルフ砦の上空に戻る。すぐに翼を生やし、大きく広げ、滑空しながら砦の屋上へと下り立つ。すぐに守備兵さんが僕だと気付いて、応接室へ案内してくれる。彼は扉をノックし、

 

「パーヴァリ司令、ガイウス・ゲーニウス辺境伯閣下がお戻りになられましたので、お連れしました。」

 

「お通ししたまえ。」

 

 守備兵さんが扉を開けてくれる。僕は礼を言い中に入る。中には守備隊指揮官のパーヴァリさんとクリス達にアルヴィさん達が思い思いに(くつろ)いでいた。いや、思いっきり(くつろ)いでいるのは、クリス達“シュタールヴィレ”の面々で、パーヴァリさんとアルヴィさん達は少し緊張しているようだった。

 

「偵察に出た兵はまだ戻っていなかったかな?」

 

 僕がそう問うと、パーヴァリさんが直立不動の姿勢をとり、

 

「はっ、閣下。兵は戻って来ました。報告は閣下が(おっしゃ)られた通りの様子だったそうです。私には、あの轟音を発する筒が帝国の砦を破壊するなど信じることができておりませんでした。申し訳ありません。」

 

 そう言って頭を下げる。

 

「気にすることはない。誰しも初めて目にするモノには疑問を持つものだ。(けい)は指揮官として正しい行動をとればいい。」

 

「はっ、閣下。それでは、帝国の砦の残骸、手前1km地点まで部隊を1つ進出させ、帝国の出方をうかがいたいと思います。」

 

「うむ、(けい)の良いように。ただ、私は話し合いによる解決を帝国側の指揮官に提案した。その答えが返って来るまで、攻撃は控えて欲しい。」

 

「わかりました。帝国側とも調整しましょう。」

 

「頼む。無駄な血は流したくない。」

 

「閣下の思い、無碍(むげ)にはいたしません。」

 

 そう言って、パーヴァリさんは部屋を出て行った。さて、僕たちはもう少し、ゆっくりとするかな。慣れないことをして疲れたよ。




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