異世界の神様からチート能力?を貰いました。 作:名無しの兵六
「さて、私からの提案は至極単純です。ここから1km先にいる部隊を下げ、国境線を元通りにしていただきたい。対価として、今後10年間の白金貨100枚、つまり通算1,000枚の支払い及びガイウス殿の名声の保護、アドロナ王国の出入国者、輸出入されるモノへの関所での出入国税の2割の減税を約束いたします。今、決めていただければ、即、文書にしたためます。いかがでしょうか。」
おっと、先手を取られてしまったね。しかも、内容も悪くない。
「なるほど、中々に良い条件を出してくださいますね。しかし、現時点で1つ質問があるのですが、よろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
「国境線は元に戻すだけでよろしいので?相互不可侵の条約を求めないのでしょうか。はっきり言ってしまえば、帝国側の砦が再建されても、数分で瓦礫の山とすることができるのですよ。こちらは。」
「痛いところを突かれますな。相互不可侵条約を結ぶためには皇帝陛下のご裁断を
「10年間で白金貨1,000枚の支払いをイオアン殿が行うということですね。確かに、支払元が消えてしまえば意味が無くなる話しではありますね。」
「それに、失礼ですが、ガイウス殿は宣戦布告無しで砦を攻撃しております。退避勧告を行っていただき、将兵の命は助かりましたが、帝国国民の血税を使い建築した砦は破壊されました。この事実が帝国内に広まれば・・・。」
「私に対する復讐戦をするべきだという世論になるでしょうね。なるほど、だからこその私の名声の保護というわけですね。」
「そういうわけです。」
あれま、こりゃあ、完全に手の内だ。【遠隔監視】を使って、画面に映る隣に座るユリアさんの顔を見るけど、苦い顔をしていた。
「ハハハ、護衛のユリア卿には受け入れがたい内容だったようですね。ガイウス殿のいかがですか?」
僕は紅茶を口に含む。誰も口にしていない紅茶だからユリアさんが“あっ”という表情をする。対面のイオアンさんも“ほう”というような顔をする。僕は、一気に紅茶を飲み切り、お代わりをお願いする。すぐにメイドさんが注いでくれる。
「申し訳ありません。美味しい紅茶だったものでつい。」
「いえいえ、ガイウス殿。お褒め戴きありがとうございます。良い茶葉を持参した甲斐がありました。しかし、ふむ。ガイウス殿は豪胆であるようだ。ある意味、敵地ともいえる場所で出されたモノに
「もともと、平民の私には、そのような貴族のやり取りは好きではないのです。特に、回りくどいモノは。ですから、出されたモノには手を付けますし、お土産にもらったモノも口にします。」
「なるほど。貴族を長年やっていますと、なかなか難しいですね。それで、ガイウス殿、私共の提案を受け入れていただけますか。」
「イオアン殿。そう焦らずに。まあ、今回の件の早々の幕引きは私も望んでいることです。中央の貴族が出てくる前に収めたい。」
「でしたら・・・。」
「白金貨は年間200枚。10年間で2,000枚。国境線は元通りに、私の名声の保護、関所での減税は9割5分減でお話しをつけようじゃありませんか。」
「それは・・・、あまりにも酷い条件です。ガイウス殿。」
「ふむ、では、どうしたら?先程も言った通り、貴族の回りくどいやり取りは好きではありません。」
「・・・。白金貨は出せても年間150枚が限度です。それ以上は領の維持ができなくなります。税も同じでせめて5割減でお願いします。」
「では、それで。文書を用意していただきたい。」
そう言うと、みんながポカーンとした顔で僕を見る。
「ふむ、何かご不満がおありですか?イオアン殿。」
「いえ、こうもサッと条件を
「イオアン殿、再三言っておりますが、私は貴族の回りくどいやり取りは好きではないのです。自分が許容範囲だと思ったので、条件を
紅茶を飲み干しそう言って、ソファから立ち上がり背中に翼を生やし、天幕から出て行こうとすると、出入り口に控えていた護衛の騎士が槍を交差させ出入り口を塞ぎ「お戻りください。」と言ってきた。僕は2人の騎士それぞれの手をとり片手で投げ飛ばす。“ガシャン、ガシャン”と騎士の転がる音が響く。その音を聞きつけ、外に居た護衛の騎士が、「閣下!!」と言いながら入って来て僕に剣を向ける。
僕はすぐに、向けられた剣を折って騎士の懐に入り、掌底を喰らわせる。1人、2人と昏倒させていき、5人目に手をかけようとした時、
「お
背後を振り返ると、イオアンさんを中心に秘書官さんやメイドさんが
「申し訳ございませんでした。あれほど、ガイウス殿のご忠告があったのに無視をするような形をとってしまい。ガイウス殿相手に争おうなどと考えてはおりません。すぐに文書を作成いたします。どうぞ、お怒りを
「イオアン殿がそこまで言われるのであれば。それでは、私が傷つけた騎士のみなさんを治癒しましょう。【エリアヒール】。」
いつも通り金の膜が下りてきて、対象となった6人の騎士を包み込む。すぐに効果が現れ、昏倒していた騎士たちが立ちあがる。未だに僕に剣を向けようとしていたので、イオアン殿が注意する。
「大丈夫だ。お主たちが意識を失っている間にガイウス殿と話しがついた。元の配置に戻るがよい。なお、怪我の治療はガイウス殿が
騎士たちは1人1人、僕にお礼を言い持ち場に戻っていく。そして、僕たちも元の席に着く。その際に、ユリアさんが小声で、
「演技上手くいきましたね。」
と
文書を秘書官さんが3つ作成し、イオアンさん用、僕用、教会に預ける用のそれぞれに不備が無いかを確認し、署名と家紋印を押していく。全てが終わると、イオアンさんは長く息を吐き、
「ガイウス殿がこの先10年間は敵にならないことが決まっただけでも、大収穫です。」
と、疲れた様子で言った。最初から回りくどい手を使わなければよかったのに。そうすれば、僕も演技をせずに済んだんだけどなあ。
見てくださりありがとうございました。