異世界の神様からチート能力?を貰いました。   作:名無しの兵六

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第122話 襲撃者

 人目が無くなったのを確認し僕は走り出す。後ろから着いて来ている男たちも走り始める。靴音だけが響く。150mほど走って勢いが乗ったところで【風魔法】を自分の前に展開し、自身の体を後方へと跳ね飛ばす。跳びながら体勢を男たちと相対するように180度回転し、右手に【火魔法】の準備をする。男たちはすぐに反応できずに走る速度を緩めただけだ。

 

 まずは、真ん中の男からだ。その1としよう。男その1の顔を右手で掴み、頭蓋骨が割れないように力加減をし地面に叩きつける。それと同時に準備していた【火魔法】で顔を()く。男は痛みと熱さで叫び声を上げようとする。

 

 しかし、くぐもった音が(のど)から漏れるだけだ。男の顔は高温の炎によって、頭髪は燃え、皮膚はドロドロに溶け、瞼は塞がり、耳は溶け落ち、鼻も穴を残し無くなり、唇も溶けてくっついている。叫び声を上げようとすると、くっついた唇に力が入り痛みが増し、転げまわっても皮下組織が露出しているので、地面と接触し痛みが襲うという最悪の循環に入った。あまりの痛みに気絶をしては意識を取り戻しもんどりうつというのを繰り返している。あーあ、失禁もしているよ。

 

 僕の手?もちろん、僕の右手も手首から先がドロドロに溶けて全指(ぜんし)が一体化したけど、【ヒール】で治したよ。ちなみに他の2人の男は何が起きたのか理解した瞬間に(ひる)んでいた。ふむ、結構痛いけど、戦意を()ぐには有効だね。これは。

 

「さて、雇い主たちを教えるなら、この男のようにはならないが、どうする?」

 

 (わら)いながら尋ねる。男その2とその3の返答は懐からナイフを取り出すというモノだった。

 

「ふむ、どうやら、そこらのゴロツキとは違うようだ。貴族家の使用人かそれとも寄子の騎士か?」

 

 僕がそう言うと、少しの動揺が走ったのがわかる。チートで強化された五感だから感じ取れるものだね。心臓が早く脈打っているのが聞こえる。荒い息遣いも。視線をせわしなく相方に送り、襲い掛かるタイミングを伺っている。重心が軸足に乗るのがわかる。次の瞬間には、僕のいた場所に2本のナイフが突き出されていた。僕はそれをしゃがむことで回避した。ふむ、どうやら、子供を相手に襲撃するのは慣れていないようだ。僕ならそのままナイフを逆手に持ち替えて振り下ろすのに。

 

 男その2とその3の獲物を持った右手をそれぞれ掴み、握力にモノを言わせへし折り、潰す。呻き声と共に2本のナイフがそれぞれの右手からこぼれ落ちる。すかさず、それを掴み、下方からそれぞれの左肩、肩甲骨を目掛け突き刺す。筋肉と肉を切り裂き、骨を粉砕し、また筋肉と肉を切り裂き反対側から刃が飛び出る。2人ともくぐもった呻き声を上げながら後退(あとずさ)る。叫び声を上げなかったのは流石だね。しかし、その努力も無意味だ。

 

 そう思っていると、詠唱を始めた。ほう、【魔法】を使うんだね。でも、僕の方が早いし、威力もあるよ。すぐに【土魔法】で2人を分かつように、1人用の岩の牢獄を造り上げる。厚さ1m、高さ10m、内壁と外壁には鉄を貼り付けた岩の壁だ。そう簡単には破ることはできない。牢獄の中から一瞬だけ炎がチラつくのがてっぺんに見えた。【火魔法】をつかったようだ。

 

 さて、では1人ずつ処理していこう。まずは、その2のほうからだ。岩の牢獄に穴を開け、中に入る。熱気が凄い。その2は僕が入ってきた穴から出ようと僕に体当たりしてくるが、すぐに穴を塞ぎ、(かわ)す。彼はそのまま鉄の壁にぶつかり痛みに呻き声を上げる。いや、それだけじゃない。呼吸の速度が異常に早い。もしかするとと思い、刺さったままのナイフを引き抜く。その2の呻き声と共に血飛沫が上がるが気にしない。ナイフを【鑑定】すると、毒が塗ってあった。すぐに、その2に【ヒール】をかけ解毒のみをする。それに気づいたその2が荒い呼吸をしながらも口を開く。

 

「な・・ぜ・・だ・・・?」

 

「死体は話しができないからな。その3も解毒してやらんと死んでしまうな。このナイフは没収だ。自死されても困るからな。それと、舌を噛み切って死のうとしても無駄だと先に言っておこう。奥の手はまだあるのだよ。」

 

 (わら)いながらそう言って、その3のほうの牢獄へ入る。こちらは毒が大分回ってきているのか、青い顔をして意識が朦朧(もうろう)としていた。すぐにナイフを引き抜き、【ヒール】で解毒のみをする。しかし、既に意識が落ちてしまったようだ。仕方がない。尋問はその2に対して行おう。【鑑定】で名前と【遠隔監視】の過去再生機能で誰が命じたかはわかっちゃったから、すぐに口を割るとは思うけどね。

 

「やあ、元気かね。グイード・シャルエルテ卿。」

 

 そう言いながらその2ことグイード卿の牢獄に入る。自分の名前を知られていたとは思わなかったようで、かなり動揺している。

 

「はな・・し・・たのか?」

 

「その3ことアルト卿のことかね?彼は解毒したら意識を手放したよ。今は呻きながら気を失っている。話すことすらできなかった。」

 

「それで・・・は・・・」

 

「それでは、なぜ?と聞きたいのかね。忘れているようだが、私はフォルトゥナ様の使徒なのだよ。君たちが口を割らないから勝手に調べさせてもらった。指示を出したのはラウレンツ・コルターマン子爵と彼のお仲間だ。ま、家族を人質に捕られれば仕方があるまい。しかし、拉致ができなければ殺せとは、なんともまあ短絡的な指令だ。しかもラウレンツ卿はお仲間同士で血判状まで作っている!!わざわざ証拠を残してくれるとはな。全くお笑い草だ。」

 

 そこまで言うと、グイード卿は顔色をどんどん白くさせる。

 

「さて、グイード卿、君には2つの選択肢がある。1つは君の家族や仲間たちと共にゲーニウス領に移り住み、私の部下となること。もう1つは、このまま衛兵に突き出されて本当の牢獄に入ること。この2つだ。早く選びたまえ。ああ、それと、最初に私の【火魔法】を受けたロルフ卿だが、治療を早くしないと死ぬぞ。」

 

 僕が(わら)いながらも真面目な声で言うと、グイード卿は、

 

「わかった・・・。」

 

 と呟いた。僕はその言葉に頷き、

 

「それでは、治療をしなければな【ヒール】。どうだ?どこか不具合はあるか?」

 

「・・・いえ、ありません。ありがとうございます。閣下。」

 

「うむ、では、他の2人も助けようではないか。その後はラウレンツ卿を捕縛するための作戦会議だ。」

 

「なぜ、我らをすぐに信じられるのですか?」

 

「私を裏切ったとしても逃げ切れないし、家族も危ないとわかっているのだろう?ま、恐怖による呪縛だ。これがある限り、(けい)らは逃げない。それに、ラウレンツ卿の下にいるよりはマシな生活が送れるとは思うがね。特に、騎士である(けい)らに対して暗殺などは指示しないな。こういうのは専門の者に頼むべきだ。」

 

「ご自分が殺されそうだったのに、そのような考えを持てるとは閣下は何者ですか。」

 

「さっきも言ったと思うが、フォルトゥナ様の使徒にしてゲーニウス領領主、ガイウス・ゲーニウス辺境伯だ。」

 

 そう笑いながら言う僕をポカンとした顔でグイードさんは見ていた。




見てくださりありがとうございました。
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