異世界の神様からチート能力?を貰いました。   作:名無しの兵六

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第144話 お仕事

 ニルレブに戻って来てからは、基本的な移動はクレムリンと行政庁舎間のみで、ヘニッヒさんに領の状態を教えてもらいながら、今後の領地運営を考えていくということをしていた。他のみんなは黒魔の森に依頼(クエスト)をこなしに行っている。クリスも9級から8級に昇格し、さらにやる気を出している。

 

 僕のほうは書類仕事に追われている。王領から辺境伯領への移管のための沢山の書類に目を通して署名をしていく。急ぎではない領軍の編成とかの書類とかは脇に追いやる。北の帝国は領が接しているイオアン・ナボコフ辺境伯と相互不可侵に近い条約を結んだので、ナボコフ辺境伯軍がでてくることはまずない。あるとすれば、帝国軍本隊だけど、さて、どうかな?呂布隊もいるし、いざとなったら榴弾砲と航空機で一方的に蹂躙(じゅうりん)できるからねえ。

 

 あー、しかし、サポート役が欲しい。ラウニさんとかカールレさんみたいな秘書が欲しい。今のところの有力候補はクスタ君かなあ。年齢も1つ上だし、いいんじゃないかな。最初は文官として実践して、その後は僕の秘書となってもらう。うん、これがいい。その間はクリスに頼もうかな。学園(アカデミー)を出ているわけだし。

 

 学園(アカデミー)といえば、トマスとヘレナはどういう扱いになるんだろうか。辺境伯の弟と妹だから学園(アカデミー)に行かせた方がいいのかな。それに父さんたちもどんな扱いになるんだろうか。終業後にヘニッヒさんに聞いてみよう。

 

 他は、んーっと、そうだ、相互安全保障条約を結んだシントラー伯爵領との恒常的な連絡手段の確保が必要だね。速さと正確性を考えるなら竜騎士(ドラグーン)を使うのも一つの方法だ。しかし、育成にも時間が掛かる竜騎士(ドラグーン)をそのように使ってもいいものか・・・。

 

 そうだ、駐屯軍として竜騎士(ドラグーン)を含む小規模の部隊 (小隊~中隊規模かな)をシントラー伯爵領の領都ネヅロンに置けばいい。そうすれば何かあった時に、駐屯部隊が対処できるし、竜騎士(ドラグーン)による伝令ができる。これは、領軍編成の案としてまとめておこう。

 

 こんな感じで思考があっちに行ったりこっちに行ったりしながらも午前中の仕事を終えた。手伝ってくれていた文官さんに昼食休憩を取るように伝える。彼は一礼してから部屋を出て行った。僕もお昼を食べようと思って、【異空間収納】から朝市で買った肉串とスープ、果実水を出そうとしたところに、ノックの音が響く。

 

「どうぞ。鍵は開いている。」

 

「失礼します。」

 

 ヘニッヒさんがやって来た。どうしたんだろうと思っていると、

 

「昼食をご一緒にしないかと思いまして、お誘いに参じました。」

 

「ご一緒してもいいのですか?」

 

「ええ、いつもはラウニと共に摂っているのですが、折角でので閣下もいかがかと思いまして。」

 

「では、お言葉に甘えて。」

 

「それは、よかった。実は既に席を予約していたのですよ。」

 

 そういうわけで3人で昼食のためにお店に向かったのだけど、そのお店の名前が“風と光の丘 ニルレブ本店”だった。僕が店名をじっと見ているのに気づいたのか、ヘニッヒさんが声をかけてきた。

 

「閣下。なにか不都合でもございましたか?こちらの店は見ての通り平民でも入れる店ですので、それがご気分を害されたならば別の店に・・・。」

 

「ああ、いや、先日オツスローフに行った時にここの支店で昼食を摂ったのでな。奇妙な偶然だと思っていたところだ。平民云々とかでは無いよ。それに私も元々平民だ。」

 

「左様でしたか。同じ店だと新鮮味が無いでしょうからやはり別の店を探しましょうか?」

 

「いや、いいよ。以前、気になって食べられなかったメニューがあったからね。そう言うモノを楽しみたい。それに、オツスローフ支店は美味かった。ここも美味いだろう。だろう?ヘニッヒ卿。」

 

「ええ、味の保証は私の舌がします。それでは、中へ。」

 

 自然とラウニさんが扉を開けてくれる。僕は「ありがとう。」と礼を言い、店内に入る。ヘニッヒさん達も入ると店員さんがやって来た。

 

「これは、ローエ子爵様 (ヘニッヒさんの家名だよ)。いつもご利用ありがとうございます。また、本日はご予約ありがとうございます。お席にご案内いたします。ご予約の通りのいつものお席でよろしかったでしょうか?」

 

「ああ、それでお願いする。」

 

「では、こちらへ。」

 

 へー、ヘニッヒさん常連なんだ。店員さんも慣れている感じだね。案内された席は一番奥まった席だった。

 

「では、ご注文がお決まりになりましたら、呼び鈴をお鳴らしください。」

 

 店員さんはメニューを3つ置いて席を離れた。なんでこんな奥まった席にしたんだろう。窓際とかならこのお店はガラス戸を使っているから明るいのに。

 

「なぜこの席にしたのか疑問をお持ちのようですね。」

 

「うむ、いえ、はい。なんでですか?」

 

「閣下。良くご覧ください。この席は、店内の一番暗い隅にあります。そして、店内が見渡せます。私はよくここに食事に来てはこの席から客の様子を眺めているのです。幸いこの店は敷居が低く平民でも入店できますし、様々な者が来ます。その様子や聞こえてくる会話の内容で市井(しせい)で何が起きているのかを知ることができます。」

 

「なるほど。勉強になります。」

 

「まあ、ここの料理が美味いというのも大きな理由の一つですが。さあ、時間もありませんので、料理を頼みましょう。」

 

 そうだった。しっかりとたくさん食べて昼からの仕事に備えないと。僕はしばらくメニューと睨めっこするのだった。




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