異世界の神様からチート能力?を貰いました。   作:名無しの兵六

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第173話 闇夜の狩人・その2

 銃弾の雨の中をルプスと共に駆け抜ける。

 

「『中佐、先程も言ったが私とルプスは【風魔法】で障壁を(まと)っているからフレンドリーファイアの心配はない。存分にやってくれ。』」

 

『了解しました。』

 

「さて、どこまでオーガに僕の実力が通用するのか楽しみではあるかな。」

 

 物陰に隠れていたオーガを見つけ、ジョージに習った通り頭部に1発、心臓に2発命中させる。それでもオーガは即死せずに手近にあった木材を手に襲って来た。さらに頭部に2発、心臓に4発撃ちこむ。そうすると目から生気を失い倒れる。

 

「ジョージの教えてくれたことは基本的に対人戦のことだから魔物に対しては臨機応変にだね。」

 

「うむ。油断してはならんぞガイウス。オーガ共はなかなかにしぶとい。我の爪や牙を急所に当てても即死しない厄介な相手よ。」

 

「へー、ルプスの牙に耐えるんだ。凄いね。」

 

 そう言いながら別のオーガの頭部に5発撃ちこむ。今度はすぐに倒れ伏す。よし、オーガにはこの射撃方法でいこう。集落の中心部ではカール・グスタフによる攻撃により爆発が断続的に起きている。中佐は「もっと持ってくるべきだった。」と言っていたけど、オーガ1体にカール・グスタフ1発だと流石にオーバーキルのような気がしちゃうよ。

 

 それで、あそこに近づくのはもう少ししてカール・グスタフの射撃が()んでからだなあ。早くこの集落を統率しているオーガを倒さないと。でもリーダー級のオーガを未だに発見できていないから最初の空襲か今の攻撃で仕留めている可能性があるね。上位種は結構いるんだけどねえ。

 

 おっと、そんなことを考えていると少し離れた場所にいたオーガアーチャーが投石してくる。「弓じゃないのか」と突っ込みを心の中で入れてそのまま【風魔法】の障壁で受け流す。仕留めようとMk17を構えると、そのオーガアーチャーは側頭部に銃弾を浴びて死んだ。銃弾が飛んできた方向を見ると1人のM20を構えたレンジャー隊員が親指をグッと立ててサムズアップをしてくる。僕も答礼をして応える。

 

 後ろを振り返ると他のレンジャー隊員達も班ごとに森から出てきて攻撃をしている。反対側である東側には隊員を降ろしたヘリコプター部隊が搭載されているミニガン?とか云うので援護射撃と逃げようとしているオーガを仕留めている。

 

 僕とルプスは積極的に動いて遮蔽物に隠れているオーガを仕留めていく。銃剣で足の腱を切り姿勢を崩したところに頭部に5、6発撃ちこみ仕留める。銃剣がすぐに歪んでしまうから交換を頻繁にしないといけないのが難点だね。ルプスも似たような感じでバランスを崩したオーガの喉に何度も噛みつき引き千切って仕留めている。

 

 それでも【気配察知】には多数のオーガの反応がある。やっと半分削り取れたくらいじゃないかな。インディアとジュリエットの空中攻撃部隊が早く戻ってきてくれると助かるんだけどね。通信を中継してくれているエコー1からの情報によればあと10分ほどということだからなあ。レンジャー隊員達の弾が切れちゃう方が早いかも?

 

「『中佐、聞こえるか?』」

 

『聞こえます、ガイウス卿。どうかなされましたか?支援が必要でしたら2、3班を派遣できますが。』

 

「『いや、各班の残弾状況を知りたい。エコー1との通信を聞いているからわかるだろうが、インディアとジュリエットが到着するまであと10分だ。その間に残弾状況が危うい班に補給をしておこうと思ったのだが。』」

 

『了解しました。確認を進めます。ちなみにカール・グスタフを追加で配備していただくことは可能でしょうか?』

 

「『可能だが装備が重くなりすぎないかね?』」

 

『ですが、現状では決定打に欠けます。いたずらに弾薬を消費するだけです。』

 

「『ならば、バレットM82A1はどうかね?』」

 

 カール・グスタフは本体と弾薬共に嵩張(かさば)るから対物ライフルのM82を代案として提示してみる。

 

『・・・いけるかもしれません。5.56mmでも射殺はできていますので12.7mmならば十分なほどです。連射もできるので制圧射撃には十分かと。』

 

「『では、それでいこう。各班には私が直接配る。フレンドリーファイアだけに気を付けるように通達を頼む。』」

 

『了解しました。』

 

 通信を終えてルプスを手招きする。

 

「さてと、ルプス。今から補給物資を配るために戦場を駆け回るよ。」

 

「うむ、わかった。」

 

 というわけで、インディアとジュリエットが到着するまでの間にバレットM82A1を配りまわったよ。半数の班に配り終えたあたりから【気配察知】に引っかかるオーガの気配が消える速度が上がってビックリしちゃった。

 

 徐々に頭部の無くなったオーガの死体が増えていく。最初から配備しておけばよかったね。ゴブリン、オーク、コボルトが脆かったから少しオーガの防御力を()めていたかも。慢心はダメだね。

 

『こちらインディア1。待たせたな。これより西から進入し攻撃を開始する。各班ビーコンのチェックをしてくれ。フレンドリーファイアはごめんだからな。』

 

『こちらエコー1。展開中のレンジャー各班より“ビーコンチェック完了”の通信を受けた。』

 

『こちらインディア1。エコー1の通信中継に感謝を。オール・インディア、オール・ジュリエット攻撃開始。』

 

 “シャッシャッシャッ”というロケット弾の推進音と“ヴァァァァァッ”というバルカンポッドの音が頭上から響いてくる。遅れてインディアとジュリエットの編隊が羽音を立て通過していく。

 

 結局、今夜の戦闘の決定打はカール・グスタフにバレットM82A1とヘリコプター部隊による上空支援だった。一気にオーガたちの抵抗心を折ってくれた。そこからは、逃げ惑うオーガを駆逐していくだけの単純作業のようになってしまったよ。しかし、ヘリコプター部隊も凄かったけど人間よりも強いオーガに対して冷静に善戦していたレンジャー隊員達も素晴らしかった。

 

 生き残りのオーガいないかを【気配察知】とレンジャー隊員達の目視確認で行う。ルプスは硝煙と炎の臭いでむせている。嗅覚が良いというのも考えモノだね。ちなみにこの集落の長はオーガロードだったようだ。集落の中心部で半分炭化している状態で発見できた。もちろん、討伐証明部位を切り取るのを忘れずにね。

 

 5,000近いオーガの死体の焼却処理も24時前には終了し、レンジャー隊員達の負傷者の有無を確認する。まあ、当たり前のようだけど誰一人として怪我はしていなかった。

 

 エドワーズ空軍基地に帰還するために集落跡地に着陸した“ブラックホーク”と“チヌーク”に搭乗していくレンジャー隊員達を見ながら、もし帝国の大規模侵攻や黒魔の森でスタンピードが起きたとしても彼らなら上手く防いでくれるだろうと思う。あー、でも呂布隊と島津隊とルーデル大佐だけでも片が付きそうなんだよなあ。レンジャー連隊とナイトストーカーズまで投入すると過剰戦力かな?

 

 ちなみに僕はヘリコプターには乗らずに【空間転移】を使ってルプスを群れの所に送ったあと一足先にエドワーズ空軍基地に戻ったよ。基地に戻ったらすぐにシンフィールド中将、レドモンド大佐、コールドウェル大佐の3人と共に今回の戦闘の詳細を分析して次回に活かせるように案を出していく。やっぱり重火器の配備ないしは近接航空支援の拡充、戦闘支援部隊の早期配備が挙がる。

 

 時間も午前2時前だったので僕は先にクレムリンへと戻って遅い夕食を摂ってベッドに潜りこむ。レドモンド大佐とコールドウェル大佐は帰艦した部下たちと共にさらにミーティングをするそうだ。無理をしないように伝えておいたけど大丈夫かな?

 

 16日の金曜日の朝、朝食を摂ったあと行政庁舎にクスタ君と共に向かう。途中でエドワーズ空軍基地のほうを眺めながら馬に揺られていたら、兵舎の近くの運動場で走り込みをしているレンジャー隊員達が見える。

 

「僕よりも後に帰ってきたのにタフだねえ。」

 

「ああ、あの方たちがガイウス様の新しい私兵の方々ですか?」

 

 馬を並べて進めるクスタ君が尋ねてくる。

 

「ええ、そうです。」

 

「朝食の席で伺ったお話しですとガイウス様の指揮で5,000を超すオーガを討ち取ったのですよね?流石はガイウス様です。」

 

「まあ、頭を吹き飛ばしたりしたので討伐証明部位の右耳は半数ぐらいしか取れませんでしたけどね。」

 

「ですが、オーガロードを討ったのです。それが十分な証拠になるかと。」

 

「そうですね。取り敢えず昼休憩の時間にでもギルドに行きましょう。」

 

「はい、お供します。」

 

 ニルレブ北門の衛兵さんの顔がわかる距離になると、すぐに1人の衛兵さんが軽い駆け足でやってくる。就任当初は全速力で駆けてくるものだから僕の時はゆっくりでいいと伝えたらこんな感じになったんだよねぇ。

 

「おはようございます。ガイウス閣下。クスタ秘書官。」

 

「おはよう。今日もよろしく頼む。」

 

「おはようございます。」

 

 さて、お仕事を頑張って明日はナトス村に父さんたちを迎えに行かないとね。




読んでくださりありがとうございます。

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