異世界の神様からチート能力?を貰いました。   作:名無しの兵六

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第184話 海戦への準備

 ピーテルさんの屋敷にお邪魔してゆっくりと眠って起きたら壁に掛けられている暦が7月になっていた。そう思うだけで暑さを感じるね。ベッドの横には水差しとコップが準備されていたので、ありがたくそれを飲む。使用人さんが暦を張り替えて、寝起き用の水を置いてくれていたのは【気配察知】でわかっていたからね。でも起こしに来てくれたらお礼を言わないとね。

 

 さて、7月上旬には雨季が明けるからそこから本格的にアイソル帝国海軍西部方面艦隊が動くだろうね。なんで敵の艦隊名がわかったのかというと、昨日の夜、【空間転移】で戻ったエドワーズ空軍基地でRF-4Cが撮影した写真を見せてもらって、それを屋敷に戻ってからピーテルさんにも見てもらったからだよ。

 

 集結している艦隊の中にアイソル帝国西部方面艦隊旗艦であるレオニード級超大型帆船“ピョートル”がいたのがわかったからね。ピーテルさんの(はな)っていた間者の人達からはまだ情報が来ていなかったらしくてかなり驚いていたね。ま、これで敵の指揮系統がだいたいわかるというものだね。

 

 部屋にある机に紙を【召喚】して、優先目標となる船名と大体の船型(せんけい)、大きさ、船名を“年刊世界海軍図鑑”を参考にして描き出していく。それと、旗艦や大小指揮船、帝国西部各領海軍の指揮船の旗も描きだしていく。数が多くて大変だ。日が昇りきる前には描ききったけどね。

 

 起こしに来てくれた使用人さんに挨拶をして、水と暦のお礼を伝える。

 

 では着替えて朝食に行くとしようかな。【異空間収納】に描いたものをしまい食堂へと向かう。朝食を和やかに済ませると、ピーテルさんの書斎へと向かう。丁度、食後のコーヒーを楽しんでいたみたいで、出直そうとしたけど執事さんが僕の分もすぐに用意してくれて、おかわり用のコーヒーを置いて書斎に僕とピーテルさんだけにしてくれた。感謝だね。

 

「ピーテル卿、これを見てください。」

 

 【異空間収納】から先程、描いたものを取り出す。ピーテルさんはアッと云う顔をしていたけどすぐに表情を戻し、風魔法で防音壁を書斎内に作り出す。

 

「昨夜の事といい、これ以上の驚くモノは無いと思っていましたが、また驚かされました。これも口外しないように墓まで持っていきましょう。それで、これは・・・。ほう、敵の指揮官が乗船していそうな船を取り上げたのですね。わかりやすくてよろしいかと。例の写真・・・、でしたか。それを(もと)に描かれたので?」

 

「ええ、ただ素人なので上手くはないですけど。でも、写真を見せるよりもいいかなと思いまして。」

 

「そうですね、ここまで船型(せんけい)や旗などを描ければ十分かと。ただ、こちらの艦隊に行き渡らせるには量が量なだけ苦労しそうではありますが。」

 

「ああ、それなら大丈夫です。ご心配なく。また、今夜、エドワーズ空軍基地に行って用意してきますから大丈夫ですよ。」

 

「わかりました。私の胃のためにも詳しい方法は聞かないでおきましょう。」

 

 そう言いながらピーテルさんはコーヒーを飲む。僕も同じようにコーヒーでのどを潤す。

 

「それでですね。具体的な作戦を立てていきたいなと思いまして。」

 

「閣下。それは難しいでしょう。閣下の【召喚】した4隻の鋼鉄艦と我々の木造船では性能が違いすぎます。もっと大雑把(おおざっぱ)なものでよいかと。取り敢えずは帝国艦隊を2(にぶ)し、殲滅するのは決まっておりますので、そこから作戦を形作りましょう。」

 

「私が考えたのは、帝国艦隊をこちらの領海に引き込む際にシントラー海軍を使用しますので、領海深くに引き込んだ時点で王国海軍、オリフィエル海軍が合流できるはずです。その際に突出した敵を半包囲してもらいたいのです。できれば南側に展開してほしいですね。そして、私の鋼鉄艦が西から敵艦隊の南北分断を(はか)ります。」

 

「では、南側に残った帝国艦隊のみを我々、連合艦隊と飛龍(ワイバーン)達で殲滅すると?」

 

「その通りです。北側の帝国艦隊のさらに北部海域には私の配下の“鋼鉄の鳥”により文字通りの火の海を作り上げます。帝国艦隊の退路をこれで断ちます。後は、まぁ蹂躙となるでしょう。」

 

「ふむ、簡単でわかりやすいですな。これでいきましょう。ところで閣下。」

 

「なんでしょう?」

 

「船が沈めば敵の将兵は海に投げ出されます。その敵兵はどうしましょう。救助しますか?それとも放っておいて溺死させますか?今回は帝国艦隊を文字通りに殲滅しますので、帝国側が救助できる可能性は限りなくゼロに近いでしょう。」

 

 う~む、重い内容だね。誰も好き好んで大量殺戮者にはなりたくないから、助かる人は敵でも助けたいけど、どうするかなぁ。

 

「帆船、櫂船(かいせん)大小問わず艦歴が古くても構いません。なんなら廃船間近のモノでも構いません。それらの武装を外し出来るだけの短艇を搭載あるいは牽引させて救助用の船隊を組ませましょう。そして、運用を教会に任せましょう。勿論、白旗を掲げて。」

 

 んー、僕が考えられるのはこんな所かな。白旗とフォルトゥナ教の旗を掲げた非武装船なら帝国も攻撃しないだろうし。

 

「それならば、準備に時間がかかりますな。オリフィエル領内の教会には私が話をつけましょう。フォルトゥナ様の使徒である閣下の御一筆があると助かるのですが。」

 

「それは、すぐにでも。書くものを貰えますか。」

 

 万年筆とオリフィエル家の紋章の入った紙と封筒を貰い教会にあてた文章を書いていく。・・・うん、これでいいかな。

 

「できましたよ。封蝋印を押すので蝋を貰えますか。」

 

「はい、こちらに。」

 

 書いた文書を封筒に入れ、ゲーニウス家の紋章の入った封蝋印を押す。これで大丈夫だね。

 

「それでは、私はこちらを教会に持っていきま・・・せん。閣下を残しておくと何かをやらかしそうですから。いえ、屋敷の心配では無くて、使用人たちの心労の方を心配しているので勘違いをなされないでください。」

 

「ん~、充分にヒドイ言葉だと思いますが。まあ、私がやらかしてきたのも事実ですので否定はしません。それでは一緒に行きますか、教会。ナドレンの神父様や司祭様にはご挨拶をしていなかったですから。」

 

「では、馬車と先触れの用意をしましょう。いきなり行くと迷惑なので。」

 

「そこのあたりは任せます。まだ、覚えている途中なので。」

 

「わかりました。そして、申し訳ありません。わざわざお書きになってくださったのに。」

 

「ああ、気にしないでください。教会の方々も文書があった方が動きやすいでしょうから無駄にはならないと思いますよ。」

 

「確かに、そうですな。先日まで国の(うみ)を出すために、権謀術数に明け暮れていたので、物的証拠は極力残さないという思考が抜けきっていないようです。さて、それでは、準備を致しましょう。」

 

 そこからは、使用人さん達が先触れを教会に向かわせたり、家紋付きの馬車を用意したり、僕の正装への着替えを手伝ってくれたりと、せっせと働いてくれる。おかげで先触れの人が戻ってきた頃には教会に出発できるようになった。

 

 屋敷の警備をしていた衛兵分隊から2人と、その人達を指揮するために軽鎧に身を包んだルカさんが馬車を囲むようにして護衛してくれる。ちなみにクリス達シュタールヴィレの皆は近くの森に遠距離攻撃の練習に行っているよ。馬車の中には僕とピーテルさん、奥さんのマヤさんのみだ。

 

 同じ領都内にある教会だから馬車だとすぐに着く。教会で馬車から降りるときには、司祭様と神父様を始めとして、神官さんに巫女さんが最敬礼していたので、すぐに楽な姿勢をとってもらうように言う。司祭様はアウレールさん、神父様はウードさんと自己紹介してもらえた。

 

 笑顔のアウレールさんとウードさんに案内されて応接間に入る。着席と同時に僕の書いた文書の入った封筒を応接机の上に置く。アウレールさんが(うやうや)しく受け取り開封して中の文書を確認する。読み終わるとウードさんに無言で渡す。彼も無言で読む。なんか緊張するね。

 

 ウードさんが読み終わった文書を封筒に入れ机の上に丁寧に置く。口を開いたのはアウレールさんからだ。

 

「ガイウス様、この度の海戦の救助隊の件、お受けいたします。文面に在った通り、敵味方の関係なくの救助でよろしかったでしょうか。」

 

「うむ、そのようにお願いしたい。敵とはいえ我々と同じくフォルトゥナ様を神としているのだからな。神の救済に差別があってはならん。そうだと思わんかね?アウレール殿。」

 

「仰る通りです。流石は“フォルトゥナ様の使徒様”であられますな。お若いのにしっかりとした考えと信仰心をお持ちのようだ。」

 

 アウレールさんのような人から改めてそう言われると何だかむず痒い感じだね。いや、まあ、フォルトゥナ様とは直接会ってるし、なんなら別の世界、別の星の神様にも会っちゃっているんだよねぇ。凄いことになりそうだから言わないけど。

 

「司祭であるアウレール殿にそう言われると光栄だ。」取り敢えずお礼を言う。

 

「いえいえ、とんでもないことです。ピーテル卿、申し訳ない。つい、ガイウス様に心を惹かれてしまった。(けい)も毎年、多額の寄付金をしてくれているというのに。」

 

「気になされるな。教会に、いやフォルトゥナ様に仕えているお主達の気持ちはわからんでもない。それに、私は領主から代官となったのだ。寄付金は少なくなるだろう。」

 

「寄付金の多い少ないは関係ないのですよ。その心が有り難いのです。」

 

 そこからは、お茶も運ばれてきたのでみんなで世間話をして盛り上がった。でもどこで切ったらいいかわからない。ダレカタスケテ。そう思っているとピーテルさんが、

 

「閣下、お時間がそろそろ。」

 

 と切り出してくれた。ありがとう、ピーテルさん。心の中で感謝しつつ、

 

「うむ、そうだな。アウレール殿、ウード殿、お時間を()いてくれたことと救助隊の件を改めて感謝する。それでは。」

 

 そう言って、席を立つとすぐにアウレールさんとウードさんが先導して教会の馬車止めまで案内してくれる。お礼を言い、ピーテルさん、マヤさんと共に馬車に乗り込む。すぐに馬車が出る。

 

 馬車の中で一気に脱力する。

 

「疲れた~。」

 

 そう言いながらスライムのようにグデ~としていると、

 

「あら、可愛らしいお姿ですこと。」

 

 と、微笑んでいるマヤさんに言われてしまった。“しまった”と思って、居住まいを正す。顔を真っ赤にして俯く、その僕の頬にマヤさんの手が触れ、

 

「閣下、別に馬鹿にしたわけではありませんのよ。私たちの息子も閣下のような時代があったと懐かしんでいたのです。ですが、息子はもう1人立ちをしようとしています。嬉しくもあり、悲しくもありますが。」

 

「それなら、お2人ともお若いのですからもう1人か2人、お子様をもうけたらいかがです?」

 

 あっ、失言かも。そう思っているとマヤさんがピーテルさんに顔を見て、

 

「あなた、閣下の仰る通り、子供が欲しいわ。」

 

 と凄く直接的な言葉を放った。車内が微妙な空気になるなか、ピーテルさんはマヤに向かって微笑みながら、

 

「取り敢えず、屋敷でゆっくりと話そうか。閣下、申し訳ありませんでした。」

 

 と言い、僕に向き直り頭を下げてきた。

 

「気にしないでください。私が変なことを言ってしまったので・・・。」

 

 ちょっとだけ甘い空気に包まれた馬車はピーテルさんの屋敷に無事に着いた。僕は、サッサと降りて、借りている部屋に駆け込んだ。あ~、まだ午前中なのになんか疲れちゃった。




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