異世界の神様からチート能力?を貰いました。   作:名無しの兵六

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第64話 先達者のアドバイス

 歓迎会を途中で抜けた僕は、依頼(クエスト)も受注せずにギルドを出て、街中を抜け、門でドルスさんに挨拶をして、黒魔の森に来た。そして、躊躇(ためら)いなく足を踏み入れ、僕が出せる最高速で森を駆け抜ける。途中で出会う魔物は全て狩り【収納】していく。

 

 目指しているのはグレイウルフの“ルプス”の元だ。僕のこの気持ちを理解してくれるのは、同じリーダーという立場にいる“彼”だけだろう。アンスガーさんでも良かったのかもしれないが、貴族としての教育を受けた彼より、自然の中でリーダーとしての資質を身に付けたルプスのほうが適任だろう。

 

 30分ほど全力疾走していると、【気配察知】で前方から近づいてくる何かを捉えた。移動速度的に4足歩行。グループで行動している。おそらく、来た方向からしてグレイウルフだろう。僕は一気に跳躍して距離を詰める。そこには、驚きに目を見開いたグレイウルフが3匹いた。

 

 僕が(かぶと)を外すと、

「おお、知っている匂いがすると思ったらガイウス殿ではありませんか。」

 

 先頭の1匹が声をかけてくる。3匹は尻尾を振っている。モフりたい。

 

「やあ、昨日ぶりだね。実はルプスに相談したいことがあってね。君たちの住処に向かっていたところだったんだよ。」

 

「そうなのですね。実は我々もルプスから高速で近づいてくるモノがいると告げられ、こうして物見に参った次第です。さあ、我らの住処はすぐそこです。先導しましょう。」

 

 そう言われては大人しくついて行くのが一番だ。彼らよりも速く走れるけど、今は彼らの速度に合わせよう。5分くらいで森から抜け岩場に着いた。小川が近くに流れている。水が確保されているのはいいね

 

「ここが今の我々の住処です。そして、ルプスはあちらに。」

 

「ありがとう。」

 

 そう言って頭をなでる。気持ちよさそうな顔をしてくれた。良かった。さて、ルプスの所に行くかな。

 

 ルプスは寝そべっていた。近づくと頭をあげ、こちらを見た。

 

「やあ。」

 

「やはり、ガイウスであったか。この森であれほどの速さで動けるものを我は知らん。飛竜(ワイバーン)どもなら可能であろうが、奴らは飛んでくるでな。」

 

「厄介?」

 

「フムン。状況にもよるな。このような開けた場所では不利だが、森の中では互角よ。」

 

「奇襲されたりしないの?」

 

「神が、我に生きとし生けるものの気配を察知できる【能力】を授けてくれた。それのおかげで、ガイウスよ、お主が来るのも察知できたというわけだ。」

 

「なるほどね。」

 

「それで、今日はどうしたのだ。昨日、会ったばかりではないか。」

 

 ルプスは寝そべった姿勢からいわゆる“お座り”の姿勢に変えた。2つの目がジッと僕を見つめる。僕もルプスの前に座り、

 

「実は相談したいことがあってね。」

 

「ほう。何かね。我に答えられるものであれば答えよう。」

 

「昨日見たかもしれないけど、僕も君たちふうにいえば群れのリーダーをしているんだ。今は、4人を率いている。」

 

「ほう、昨日より1人増えたか。それは良い事よ。お主が強き者という証明にもなる。」 笑いながら祝ってくれる。

 

「強さ云々(うんぬん)はいいんだけどね。まあ、それで、ちょっと悩んじゃって。今の僕はリーダーだ。率いる立場だ。纏める立場だ。決断する立場だ。そう思うと、無性に怖くなってしまって。」

 

「何を恐れる?」 意外そうな表情で尋ねてくる。

 

「仲間を死に追いやってしまうのではないか。という不安が積みあがっていくんだよ。そしてそれが離れない。」

 

「なるほど。その気持ちはわからんでもない。我もこの群れを率いる立場になった時には不安があったものだ。」

 

「どうやって、それに打ち勝ったの?」

 

「ハハ、打ち勝ってなどおらんよ。その事を極力考えないようにした。」

 

「“逃げた”と言うこと?」僕が問うと、

 

「ふうむ。確かに取りようによっては“逃げた”ということになるのだろうな。我は“仕舞った”と考えているが・・・。だが、ガイウスよ。ずっと、そのことについて考えすぎてしまい、他の思考が(にぶ)ってしまったり、自分自身が潰されてしまったりしては意味がないだろう?本末転倒というやつだな。妥協を知るべきだ。」

 

「妥協・・・。」

 

「まだ、子供であるお主には難しいであろう。世の中は白と黒のみで出来ているわけではない。2択のみではないのだ。・・・ふむ、人間はモノを仕舞うのに長けておる。儂と同様、その思いを一旦仕舞うのだ。さすれば、必要な時に取り出せる。」

 

「仕舞う・・・。」

 

 僕はその言葉を反芻し、自分の積みあがった不安を崩し、それぞれを頭に思い描く“袋”に1つずつ入れていく。ルプスは穏やかな目で僕のその様子を見守ってくれている。すると、不思議なことに、心が少しずつ楽になっていくような感じがした。

 

「上手く仕舞えたかの?」ルプスが穏やかに問うてくる。

 

「さあ、どうだろうか。でも、心が楽になったような気がするよ。」

 

「それは重畳(ちょうじょう)。さて、ガイウスよ。夜はどうする?我らと共にするかね?」

 

「いや、みんなが町で待っているから。」

 

「ああ、あの嫁たちだな。うむ、戻った方が良いだろう。」

 

「そうだ、相談に乗ってくれたお礼に、ロックウルフの肉を置いて行きたいんだけど、何体分必要かな?」

 

「15体分あれば足りる。すまぬ。気を遣わせた。」

 

「いいよ。お礼といったでしょう。」

 

 笑って言いながら、【収納】から15体分の毛皮を剥ぎ取ったロックウルフの肉を出す。

 

「それじゃ、今日はここで失礼するね。」

 

「ああ、ガイウスには必要ないだろうが、気を付けて戻るのだぞ。」




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