ドラゴンボール レッドリボン軍創設秘話   作:ヒアデス

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第三話 報復

 ゲロが到着したころ、ジンジャータウンはテロの犠牲者、安否の確認に来た家族、救急隊員や西の都の地区軍とその応援と情報収集のため中の都から駆け付けた王立防衛軍によってごった返していた。

 ゲロは軍人の一人を捕まえ尋ねる。

 

「ゲロという者だが、テロ被害にあった家族の安否確認を要請するメールを見てきた――妻はどこにいる?」

「えっ?……少々お待ちください!」

 

 突然尋ねられた兵士は困惑し待てと言ってから端末を開きタッチパネルを押していく。ゲロの名前を検索しているのだろう。

 

「出ました! C地区の病院に移送されています……ですが…」

「っ……」

 

 兵士はその先の言葉を言いよどむ。ゲロもその意味はメールを見た時から知っていた。

 ゲロは兵士に礼を言うのも忘れC地区へと駆けた。

 

「大丈夫か!」

 

 病室に駆け込むなりゲロはベッドに横たわる妻に声をかける。無駄だとは知らされていたがもしかしたらという可能性を捨てたくなかった。

 

「……」

「父さん」

 

 ベットに寝かされゲロの呼びかけもむなしく反応を示さない妻の遺体とその傍らの椅子でうなだれる息子ゲボがそこにいた。

 

「……バカな!……なぜだ…なぜ……」

 

 ゲロは涙を流しその場に崩れ落ちた。

 ゲロの妻は学会に出席していたところ会場に潜り込んでいたテロ組織『西部地区独立実現同盟』の構成員が乱射した凶弾によって胸部を数か所撃たれその時点で重傷だったという。

 

(妻が何をしたというのだ……彼女はただの科学者ではないか……西部の政治とは何の関係もない)

 

 ゲロの妻は夫同様科学者でバイオテクノロジーを専門としていた。そのため夫の会社とは無縁の研究をしており、よく会社に泊まり込んでロボット開発をしていたゲロとは冷え切っていて息子の軍学校入学と同時にジンジャータウンに移り住み西部を拠点としていた。

 とはいえ実際に二度と妻が帰ってこないとわかるとゲロに大きなショックと悲しみが襲ってきた。

 

「ゲロ! やっと来たか!」

「ヴァーミリオン……」

「ヴァーミリオン中佐!」

 

 ヴァーミリオンの登場にゲロとゲボは思わず立ち上がる。

 

「ゲボも来ていたんだな。…こんな時だ敬礼はいい」

 

 敬礼をしようと右手を上げようとするゲボをヴァーミリオンは止める。

 父の友人のヴァーミリオンはゲボと何回か会ったことがある。ゲボはヴァーミリオンに尊敬を向け、ヴァーミリオンもゲボを年の離れた兄弟のように可愛がっていた。ゲボが軍人への道を選んだのもヴァーミリオンの影響が大きいだろう。

 

「お気遣いありがとうございます中佐」

「いい、俺にだってカミさんと息子がいるんだ。気持ちはわかるさ……ショックを受けているところすまないがゲロ、ちょっと顔貸してくれないか? 俺もあまり時間は取れないんだ」

 

 ゲボへの気遣いもそこそこにゲロに水を向けるヴァーミリオンにゲロはうなずき応じる。中の都の士官であるヴァーミリオンの多忙も管轄外のはずの西部に来た理由もゲロには察しがついている。

 

 

 

 

 

「奥さんの件は残念だな。インスタントや菓子ばかりだったが奥さんからごちそうになった時は感謝している」

「食欲旺盛なのに家事はからきりだったからなあいつは……」

 

 屋上に場所を移しヴァーミリオンとゲロはそう苦笑しあう。

 

「奥さんの自宅には被害が及んでいないそうだ。ほとぼりが冷めたら行ってみるといい。遺品があるかもしれん。あんたの研究の役に立つ代物なんかもな」

「すまないな……もっとも研究といっても私のメカトロニクスと妻のバイオテクノロジーではかみ合わずこうして別居する羽目になったんだが……バイオテクノロジー自体は私もかじったことがあるんだがな、夢と合わなかった……ところで学会には政府も注目していたそうだが奴らの狙いはやはり…」

 

 本題に入ったゲロにヴァーミリオンはうなずく。

 

「政治家が学会に参加していたようだ。それも中の都から派遣された大物がな。そいつらを抹殺するつもりだったらしい。あんたや奥さんが狙いだったらこんな事は起こさん。無傷で誘拐して協力してもらうさ」

「西部の独立だと?……地球すべてが統一されているから戦争は起こらないはずなんだ……それなのに、そんな勝手な理屈のためになぜ善良な市民が犠牲になる?」

「……政府が弱いからだろうな」

 

 憤るゲロに対してヴァーミリオンは冷ややかに告げる。

 

「なんだと?」

「地方への影響が弱いくらい政府が弱いからそんな存在してもしなくても変わらない連中から独立しようとする奴らが出てくるんだ……数百年前突然国王になった初代王はすべての国民が自然と従う威光を放ってたんだが、二代目以降にはそれがなかったらしい。今の国王にいたってはただの傀儡だ。地区の勝手を許し、中央の政府の中にさえ王を無視してよからぬ企てをたくらむ奴らがいる」

「まさか……ヴァーミリオン! お前も国王に反感を持っているというのではあるまいな」

 

 ヴァーミリオンの政府への中傷にゲロはもしやと思う。

 

「強い政権を作るべきだ……そういう考えを持ってる点では俺は政府や国王に不満を持っている……それになゲロよ。政府に力を貸して奴らに報復しようと考えても無駄だぞ。先を越される」

「先を? どういうことだ」

「俺たち中央軍が来たのはテロ組織への情報収集のためじゃない。そんなものはとっくに済んでいる。奴らのアジト、そこに伏せてる数、協力している企業、団体すべて政府はつかんでいる……ないのは独立しようと市民への扇動しかしていなかった奴らを攻撃する口実だ。そして今日政府の力を削ごうと奴らは暴挙を起こした。政府がそれを待ってたことも知らずにな!」

 

 ヴァーミリオンが告げた事実にゲロは当惑する。では政府は今日のテロを予測していたということではないか。

 

「まさか政府が……国王は、このことを知っているのか?」

 

 ゲロの問いにヴァーミリオンは首を振る。

 

「いいや、知らされていないだろう。今頃事件のことを聞いて、明日あたりに今回のテロと軍が突き止めたテロ組織のアジトの話を聞いて奴らへの攻撃を命じる書類にサインをするだけだろうな」

「バカな……それでは国王は何のために存在するというんだ?」

 

うなだれるゲロにヴァーミリオンは憐みの視線を注ぐ。

 

「ゲロ。俺は一軍を率いて奥さんの仇を晴らす。あんな奴らに殺されるつもりはない。だがこれが終われば俺は軍を抜けもっと大きな敵と戦う準備をするつもりだ」

「大きな敵…だと?」

 

 ゲロははっとしてヴァーミリオンの方を見る。

 

「政府だ! 存在価値のない国王だ! 俺は軍に命令するだけの政治家に頭をたれながら腹を立てていた。奴らが弱くて腹黒いからこんなテロが起きた! 俺は強い軍を作り地方が無視することができずどいつも逆らう気も起こせない政府を作ってやる!……そこでゲロ、お前も協力してくれないか?」

「協力? 私に何ができるというんだ?」

「ロボットだ! 兵器だ! あんたの作るあれらは国王軍の持ってるそれよりはるかに高性能で強力だ! あんたが力を貸してくれれば俺たちは政治家や国王にとって代わりこの地球を隙の無い軍事国家にすることができる! 奴らこそ奥さんの本当の仇なんだ!」

 

 ヴァーミリオンに共感しそうになりながらゲロは思いとどまる。

 

「しかし地方に影響が及ぼせないくらい弱体化しているとはいえ、一応地球すべてを統治している国家の政府だぞ。お前さんとロボットだけで倒せるとは思えんな」

 

 ゲロの指摘にヴァーミリオンは首を振る。

 

「もちろん俺だけじゃない。志を同じくする同志が軍に多数いるんだ。時間をかけて裏付けも取ってある。密告の心配はない。……だから今回の事が起こるまでは間に合わなかったが」

 

 謝るヴァーミリオンを横目にゲロは考え込む。

 

「兵器類を買いたいなら言ってくれ……ただし企業と客としてだ。私やゲボまで巻き込まんでくれ」

 

 ゲロとしてはそう言うのが精一杯だった。

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