ドラゴンボール レッドリボン軍創設秘話   作:ヒアデス

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第四話 大盛

『ジンジャータウンで起こったテロ事件から早3年、国王様はかの街を訪問し二度とこの悲劇を起こさぬよう西部地区との連携や政策の見直しを慰霊碑に誓い……』

 

 スマホのTVアプリを消した。ゲロはすでにこのテロの裏側で起こった茶番を知っている。

 テロ組織『西部地区独立実現同盟』は西部27地区軍と中の都から派遣されたヴァーミリオン中佐が率いる大隊にアジトを急襲され壊滅した。

 西部の内戦を未然に防いだこの功績でヴァーミリオンは勲章を授与され大佐に昇格したが彼はほどなく軍を除隊、にも関わらず今までよりはるかに大量の装備を秘密裏にゲロや他の武器商人から注文している。

 彼が3年前にしていた話が本当なら国王軍にクーデターを起こすための軍を水面下で組織しているのだろう。

 注文量から予想より政府に反感を持ってヴァーミリオンに賛同した者は多いらしい。明らかにスポンサーもついている。

 そしてゲロの息子ゲボは軍学校を卒業間近で退学、その姿を消した。どこへ行ったのか予想はつくがヴァーミリオンに問い詰めようとはしなかった。

 一方ゲロは事件以来ロボット開発をやめカプセルコーポレーションへのヘッドハンティングの話も断り武器を作りヴァーミリオンに横流ししている日々を送った。

 

 

 

 そしてその受注もある程度落ち着いたころを見計らって、気晴らしにある島を訪れていた。

 東の都から少し海を渡ってところにある島だ。自然豊かで人間から離れた生活を送りたいと思っていたゲロにはぴったりの島だった。……あちらこちらに廃墟がなく何より現代も使われている家や畑がなければ、

 船から降りて島を探索していると小さな家を経て大きな廃墟を見つけた。崩れ落ちた壁から見える中はガラクタが散乱していた。

 

「ここは……まさか何かの研究施設だったのか」

 

 しばらく機械類は見たくないと思ってやってきた離島でまたわずらしいものを見つけたものだ。

 

「お前さんここに何の用だ?」

「――!?」

 

 突然声を掛けられ後ろを振り返ってみれば左の目元に浅い傷のある老け込んだ男が立っていた。……いや本当は自分とほぼ同じ年かもしれない。何しろ自分もあの事件以来一気に老け込んだと言われるからだ。

 

「同業者のようだな。研究所を観察している時の目を見ればわかる。まさかあの研究を再開しようと政府から送られてきたのではあるまいな」

「研究? 何のことを言ってるのかわからんが政府からの依頼など受けたくもないな」

 

 ゲロの答えに老人はゲロをしばらく見つめそれから探るように言い始めた。

 

「……中性子星」

「……?」

「ブラックホール」

「?」

「光速、タキオン、ワームホール、エキゾチック物質、宇宙ひも、量子重力、セシウムレーザー、素粒子リンク・レーザー、ディラック反粒子」

「待て待て何を言っている?!」

 

 老人の唱え始めた単語の意味が分からずゲロは思わず尋ね返す。

 

「時間の壁を超えるための理論だよ。どれも仮説で証明されたことはない。それどころかこの11の理論の中でさえある理論を別の理論が否定しているといった有様だ。宇宙ひもなど宇宙のどこかに存在している物質を利用すれば可能とする理論もあるが、ロケットさえまともに作れん政府には見つけ出すことはできんよ」

 

 老人の説明にゲロはようやく老人や廃墟の正体に気づく。

 

「まさかここは時間に関する研究所? 政府はこの島でタイムマシンを作ろうとしていたのか?」

 

 老人は驚くゲロを見つめかぶりを振った。

 

「どうやら本当に知らなかったようだな」

「じゃああんたはまさか……?」

「私は大盛徳之進。タイムマシンを作るため政府の支援を受けてこの島で研究を主導していた」

 

 ゲロは仰天した。大盛といえば時空工学の権威だ。

 

「あんたが大盛博士だったのか。何度か耳にしたことはあるよ……しかし研究所の有様を見るとやはり……」

 

 大盛はうなずく。

 

「助手が高圧ガスの調整を間違えてな……大事故が起き私は軽い傷で済んだが研究所は大破、妻を含め大勢が犠牲になった。そして政府はこの島を見捨て私だけがこの島に残った。それ以来ここには私だけが住んでいるよ」

「そうだったのか……」

 

 政府の都合で妻を亡くした。自分と同じだ。ゲロは大盛に親近感を覚えた。だがそれと同時に疑念も浮かんだ。

 

「しかし政府はなぜタイムマシンを作ろうとしたんだ? 政府ぐるみで改変したい過去の出来事など全く思い浮かばんぞ」

「表向きにはな……だがあんたぐらいになると政府の連中の愚かさくらいわかるだろう。国王は善良だがその分その下にいる議会の思惑には全く気づいておらん。過去を変えられればどんなくだらないことをしでかそうとするか、想像するだけで反吐が出るわい……それにもっと早く気づいて研究理論を公開しなければこんな研究所は作られず事故は起きなかったんだ……」

「……」

 

 そう吐き捨ててうつむく老人を見たその瞬間ゲロの中で何かがはじけた。

 あんなくだらない連中のために自分の妻や大盛の妻や部下たち、その他大勢やその家族が苦しんでいるのだ。

 ゲロは船を停めてある島の簡易港に足を向ける。

 

「どこへ行く?」

「都へ戻る。今後のことについて考えたい」

 

 そう言ってさらに足を進めようとするゲロだがそれを大森が止めた。

 

「何をする気か知らんがもう日が沈み始めている。オバケ鮫が活動を始めるころだ。よほどでかくて武装を積んだ船でなければ丸呑みされてしまうぞ」

 

 思わぬ言葉にゲロは大盛の方を見た。

 

「オバケ……鮫? どのくらいの大きさだ?」

「島の半分近くだな。さすがに人が鮫に食われるところを見るのは気分が悪い。今日は島に泊まっていくしかないな」

「この島に休憩所は?」

 

 ダメ元でそう問いかけるゲロに大盛は無常に言った。

 

「ない! 私の家だけだ。今日一日だけ泊めてやる。朝になったら都に帰るといい」

 

 ゲロはげんなりした。自分と同じ境遇の大盛には親近感を覚えたがさっきの話で空気はますます悪くなった。もしかしなくても面白い滞在にはならないだろう。

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