ドールズフロントライン(仮) 作:サクサクフェイはや幻想入り
少し小洒落たバーの中に入り、人を探す。 何時もならマスターが居るはずなのだが、今日は居ないようだ。 とは言え、奥の方で気配がするので無人というわけではないらしい。
すぐに足音が聞こえ、見慣れたマスターが来る。 ここのマスターは寡黙と言うより無口な人物だ。
だから、俺を何か言いたげに見ている。 それなら喋った方が早いのでは無いだろうか、そんな事を思っていると、呆れたような目で見た後、俺の後ろを指差す。 接客するような態度では無いと思いつつ、指さされた方向を見ると時間を書いた看板が。 ふむ、どうやら開店時間かなり前に来てしまったようだ。 とは言え、用があるのはここのバーでは無い
「すまない事をしたな。 だが、用があるのはここの地下に居る人物達だ」
なら仕方ないと言うように、鍵のかかったドアを開けるマスター。 俺はそれに礼を言い、今度は客として飲みに来る事を約束して階段を降りる。 階段を降りて直ぐに探していた人物と目が合う
「久しぶりだな、デール」
「げ、トラウベ......」
あからさまに嫌そうな顔をしたのは、デールという男だ。 デールは整備士で非合法な人形などのメンテナンスをしている。
「お得意先に対して随分な態度だな」
「自分で言うか普通。 いや、お前は普通じゃ無いが。 お得意様だろうが何だろうが、僕はお前が嫌いだからな」
「クク、まぁそうだろうな」
お得意様というのは、修理する際のパーツや、人形というより銃の装備品などを俺が卸しているのだ。 後は、面倒な客との
「新しく引っ越しても、なんでお前は追ってこれるんだよ」
「ん? シーアから聞いてないのか?」
「クッソー!そっちだったか!」
「デール、騒がしいけど、どうしたの? あれ、トラウベさん?」
奥から顔を出したのはシーアという女性で、主に値段や接客などの交渉役をしているのだ。 シーアは奥から出てくると、俺の目の前まで来て一礼をする。 ・・・・・・俺が世界で関わった女性で、一番の常識人だなシーアは
「いらっしゃいませ、トラウベさん。 今回もパーツの卸ですか?」
「まぁ、それもあるが二人に仕事の話があってな」
そう言うとシーアは表情を引き締め、デールは面倒そうな顔をする。 正反対というかなんというか、気にせずに話を続ける
「グリフィン&クルーガーに就職してな、そこに技師とオペレーターとして二人をスカウトしたいと思ってな」
「ほら!やっぱり面倒事だ!」
「デール!すみません、トラウベさん。 ですが、それは......」
デールの方は予想通りだが、シーアの表情を見るに、やはり難しい話らしい。 とりあえず、今回卸すパーツと銃の装備を見せながら話を進める
「個人的には悪くないと思うが? このままガラの悪い連中を相手にするより、一応名の売れてるPMCだ。 俺の基地所属になるから、ある程度の自由を利かすつもりだ」
「ぐぅ...... それは確かにそうかもしれないが、ぐぬぬ......」
「有難いお話ではあるんですが、一応もう受けてしまった依頼もありますのですぐにというわけには......」
「ん? あぁ、なるほど。 真面目だな、シーアは」
「え?」
不思議そうな顔をするシーアに苦笑する。 まぁ、俺の言い方も悪かったか
「別に今すぐというわけじゃない。 二人で相談する時間も必要だろうし、依頼があるのは承知の上だ。 だから二人の都合のいい時で、というわけだ。 こちらとしても、優秀な人材を埋もれさせるには惜しいと思ってのお誘いだ。 それを理解してくれさえすればいいさ」
「あ、えっと...... はい」
褒められて戸惑っているのか、それとも慣れていないのか、シーアは顔をそらしていた。 それで、デールの方を見ると珍しそうな顔で俺を見ていた
「なんだ」
「いや、お前がそんなこと言うとはな」
「実際、優秀だと思ってるぞ。 お前は自分のことを天才だと言っているが、俺もそれは認めている。 でなきゃ、お前に依頼などしない」
「・・・・・・釈然としない」
「知らん」
「トラウベさん、今回の全部買わせていただきます。 値段はこのぐらいなのですが、どうでしょうか?」
「問題ない」
流石に現金を生でというのはリスクしかないので、後日振り込んでもらっている。 商談も終わり、立ち上がる
「トラウベさん、今回のお話前向きに考えさせてもらいます」
「シーア!?」
「良い返事を期待してる。 一応、基地までの順路などはこの紙に書いておいたが、もし無理そうだったら迎えにこよう。 連絡は連れの方に頼む」
「わかりました」
店を後にすると、もう空は暗くなり始めていた